医学界新聞

第4回全国老人ケア研究会開催

ケアマネジメントとケアプランの重要性を明確に意識



 第4回全国老人ケア研究会(会長=都老人研 鎌田ケイ子氏)が,さる7月6日,東京の豊島公会堂にて開催された。

ケアプランのための共通スケール

 公的介護保険法案の今国会提出は見送られたものの,その策定過程で提起された「ケアマネジメント」と「ケアプラン」が今後の高齢者ケアのキーワードになることは間違いない。今回「公的介護保険に向けて,学び,高めあおう」をテーマに開かれた同研究会においても,このことは明確に意識されていた。
 教育講演「ケアマネジメントとケアプラン」を行なった会長の鎌田氏は,ケアマネジメントを具体的に可能にする手段がケアプランであると位置づけた上で,そのためには保健・医療・福祉の枠を超えた共通のスケールが必要であると指摘。現時点ではアメリカで開発されたMDS/RAPs(Minimum Data Set/Resident Assessment Protocols),およびその在宅版でInter RAIという国際研究者グループが開発したMDS-HC(Home Care)/CAPs(Client Assessment Protocols)が最も優れていると強調した。またアセスメントからプランニングへ直接結びつかないという批判に対しては,「研修をすれば必ず習得できる」と述べた。

ケアマネジメントの担い手が具体的展開を紹介

 その後のパネルディスカッションは「ケアマネジメントをどう進めるか」をテーマに進められた。保健婦の上村恵子氏(ルーテルホーム在宅介護支援センター)は,1週間ごとにシーツを無料貸与するリネンサービスが行政サービスとして制度化された例を紹介し,ケアマネジメントの開発的機能の重要性を示唆した。また支援センター職員が市役所の相談窓口に出向いて市民からの第1次情報を得る試みや,市役所の保健婦に声をかけ積極的に同行訪問するなど「動く支援センター」を印象づけた。
 一方,看護婦の上野桂子氏(訪問看護ステーション住吉)は,「様々な機関から多くの職種が参加する在宅ケアにおいては“小さなズレ”を見逃さないことが大切」と述べ,そのため各機関からステーションに集まってもらいケース検討会を開催していることが報告された。上野氏は,そのケースに最も身近に関わっている機関がコーディネート機能を果たすべきであり,「動かない機関」は他の機関からも住民からも信頼されないことを強調した。
 これらに対しホームヘルパーの山本栄子氏(倉敷市水島社会福祉事務所)は,高齢者サービスチームなどのフォーマルな組織が機能しないため自主的に集まった専門職グループがケアマネジメントを行なっている例を紹介。処遇困難ケースに関わる中での,利用者の価値観や生活観にまで踏み込んだ援助の重要性を指摘する一方,熱意だけでは継続的な支援につながらず,制度改革をめざした働きかけも必要であると述べた。
 公的介護保険が制度化された場合に実質的にケアマネジメントを担うであろうこれらの機関からの発表は,「ケアマネジメントの必要性を述べる時期は過ぎ,これからはどのように展開していくかという方法論を積み上げることが大切」(井上千津子副会長)との期待に答える内容であった。