医学界新聞

“21世紀の医療への挑戦”をメインテーマに

第46回日本病院学会 開催



 第46回日本病院学会が藤澤正清会長(福井済生会病院院長)のもと,さる6月6-8日の3日間,福井市の福井フェニックスプラザ他において開催された。
 今回のメインテーマは「21世紀の医療への挑戦-ロマンと人間回復」。会長講演に続いて,特別講演2題,シンポジウム「21世紀の病院医療はどうなるか」,「今,求められている看護-21世紀に向けて」,特別フォーラム「療養環境の向上をめざして」,中小病院のひろば「中小病院経営戦略」の他,タレントの永六輔氏,ジャーナリストの大宅映子氏らによる公開講演3題が行なわれた。
 会長講演で藤澤氏は,超高齢化社会,インフォームド・コンセントを含めた医療のあり方,医療経営,遺伝子医療技術などの最先端医療技術を駆使した高度医療・難病治療への挑戦などを列挙して,今回のメインテーマの意図を説明。「人間回復に焦点が当てられる21世紀の医療の実践は,ホスピスの完成であろう」と結んだ。

21世紀の病院医療はどうなるのか

 シンポジウム「21世紀の病院医療はどうなるのか」(司会=日本病院会長 諸橋芳夫氏)では,厚生省,日本医師会,日本病院会,日本看護協会,医事評論,病院長などの立場からのシンポジストが参加して,21世紀に求められる病院のあり方が討議された。
 まず磯部文雄氏(厚生省健康政策局指導課長)は,厚生行政の視点から日本の医療の動向を概説。平均入院日数の短縮,人口あたり病床数の減少,患者への情報提供,薬価抑制など,ソフト・ハード両面にわたる問題の是正によって,欧米に追いつきつつあるとし,病院の機能評価,技術料,またきたるべき「医療法改正」についても解説した。続いて津久江一郎氏(日本医師会常任理事)は医療費の国民負担率に触れて,「医療は消費ではなく,投資であるとともに生産である」と医療サービスの特徴を指摘し,医療費を抑制しようとする国の動きに疑問を示した。
 また,中山耕作氏(日本病院会副会長)は「21世紀には,規制緩和と特定療養費の増大によって,国民皆保険制度に守られてきた医療担当者たちも自由競争の荒波に巻き込まれていくであろう」と述べ,一般高機能病院の競争は熾烈を極め,二極分化の方向に向かう病院がそれに対応するには,患者の尊厳や意思を尊重する「医の原点」に戻ることが重要であると強調した。

“患者の権利”と“自らが選ぶ病院”

 一方,看護の立場から見藤隆子氏(日本看護協会長)は,ボストンのベス・イスラエル病院における「患者の権利」を例にあげ,これを守るために医療・看護はいかにあればよいかを示した。そして,そのために必要な質の高い医療・看護を実践するためには,さらに高度な看護教育が必要とされることを指摘し,「専門看護師・認定看護師の活用」の有効性とともに,准看護婦養成停止の必要性を訴えた。
 さらに,行天良雄氏(医事評論家)と三浦将司氏(福井県済生会病院副院長)がそれぞれの立場から発言し,それに引き続いて,「自らが選ぶ,求める病院とはどのような病院か」という司会の諸橋氏の設問に対する各シンポジストの回答に基づいて「21世紀の病院医療」のあり方をめぐって討論が展開された。
 最後に諸橋氏が特別発言を行ない,医療はサービス業であることを強調。そして,治療・検査などの設備のみならず,談話室や喫煙室,シャワールームなどの患者やその家族のためのアメニティの充実,サービスを提供する側である医療担当者の増員が必要であるとし,「21世紀にきたるべき医療は,あくまでも患者が中心にある」と改めて確認した。