医学界新聞

第70回日本感染症学会開催

70周年記念講演,ジェンナー記念講演会も企画



 第70回日本感染症学会(会長=杏林大教授 小林宏行氏)が,さる4月18-19日に東京の京王プラザホテルで開催された。

一般演題を重視した構成

 今回の学会の特徴としては,特別講演やパネルディスカッション等を排し「研究の出発点」(小林氏)である一般演題を重視したプログラム構成があげられる。これは若手育成にも配慮した小林氏の意向によるもので,ウイルス,免疫不全,遺伝子診断など各領域の演題約250題が発表され,それぞれ討論時間を十分にとり充実したディスカッションが交わされた。
 さらに「感染症学研究の進歩」の主題のもとで15題の会長要望講演も行なわれ,第一線で活躍する演者が現場での実践を紹介した。
 なお同学会は,1926年に日本伝染病学会として発足以来今年で70周年を迎える。このため会期中に創立70周年記念講演が行なわれた他,学会前日の17日には「日本感染症学会創立70周年記念国際シンポジウム」が開かれ,来日した感染症各領域の第一人者である7人の演者が講演を行なった。
 創立70周年記念講演では,同学会の前理事長である清水喜八郎氏(聖マリアンナ医大難治研客員教授)が「日本感染症学会の課題」と題して講演。将来に向けた日本の感染症学の研究体制について各種のデータから考察した。
 清水氏はまず同学会の課題として,「地球規模の環境変化による感染症分布の変動や新しい感染症への対応」を提示。このためには組織化された研究体制が必要であるとして,現状と展望について語った。清水氏はこの中で,日本の現状では感染症医の育成が困難ではないかとの疑問を呈し,感染症科が診療科として独立しているアメリカの例から,病院疫学やインフェクションコントロール医の検討も必要であると述べた。さらに教育・診療における関連学会との連携や情報交換の必要性を指摘。国際的視野を持った研究や研究費の獲得など,今後の努力を期待して講演を結んだ。

ジェンナー種痘発見200年を記念して

 会期中には,イギリスでE.ジェンナーが天然痘予防のため種痘法を発明(1796年)してから今年で200年にあたることから,これを記念した講演会(司会=国立予研 山崎修道氏)も同時開催された。
 この中ではまず記念式典でイギリス大使が祝辞を述べ,引き続き加藤四郎氏(阪大名誉教授)と蟻田功氏(国際保健医療交流センター理事長)が講演を行なった。
 加藤氏は,ジェンナーについて,種痘法発見前後の経過などを解説。ジェンナーが最初に種痘を接種したのは村の少年であるが日本では誤訳によって「まず息子に試みた」という美談が流布したことなどのエピソードも含めて語り,最後に「ジェンナーの贈り物はワクチンなどいろいろあるが,『予防は治療に勝る』と教えてくれたことが最高の贈り物」だと述べた。
 一方蟻田氏は,WHOの天然痘根絶計画本部長を務め計画遂行の中心となった人物。天然痘根絶(1980年)の経験から1988年に始まったポリオ根絶計画の概要や,麻疹の撲滅の可能性など,地球規模の感染症対策の将来について展望した。
 この他,学会では緊急講演「プリオン病―狂牛病とのかかわり」(長崎大教授 宮本勉氏)も企画。話題となっているプリオン病の病像や現在までの知見が紹介され,感染症分野への示唆も与える講演となった。