医学界新聞

「看護の役割拡大-くらしの場と看護」をテーマに

第21回日本精神科看護学会が開かれる



 第21回日本精神科看護技術協会総会・日本精神科看護学会が,鹿島清五郎会長(北林病院看護部長) のもと,さる5月29-31日の3日間,青森市の青森市文化会館を会場として開催された。今学会のメインテー マは「看護の役割拡大-くらしの場と看護」で,基調講演やシンポジウムはこのテーマで統一された。ま た,一般演題はSST(生活技能訓練)や服薬指導などをテーマに165題の発表が行なわれた。
 初日の会長挨拶で鹿島氏は,「精神障害者の社会復帰・参加促進を掲げた精神保健福祉法が昨年 から施行された。精神障害者の治療の場が病院から家庭,地域へと変化してきている。看護教育の場では 新カリキュラムの改正により明年4月から精神科看護が専門科目として実施される。しかし講師と実習施 設の不足が問題。現場での教育が未解決のままであるが,次の世代を担う後輩の育成に力を注がねばなら ない。教育現場からの要請には答えていきたい」と協会が担うべき責務などについて述べた。
 同協会は,1947(昭和22)年に男子だけで発足し,1957(昭和32)年には女子を含めて「日本精 神科看護技術協会」に,1966(昭和41)年には社団法人として認可,今日2万9000人の会員を擁する団体。 年1回の総会のほか,(1)老年期精神科看護,(2)精神科リハビリテーション看護,(3)精神科救急・急性期看 護,(4)思春期・青年期精神科看護の専門学会を開催している。また,精神科認定看護婦・看護士の認定に 関する事業も展開。教育研修講習会もすでに実施しており,認定試験の実施に向けて動いている(この精 神科認定看護婦・看護士制度については,本紙7月看護号で詳しく取り上げる)。

地域で生活するために

 基調講演を行なった櫻庭繁氏(千葉大)は,「精神障害者の社会復帰活動は病院から社会復帰施設へ, さらに地域および暮らしの場へと拡大してきている。地域で生活するためには,住む場,働く場,憩いの 場の確保が必要」と発言。さらに暮らしの場につながる看護援助と役割については,「継続した医療の確 保や人間としての基本的ニードの確保,地域でのサポートシステムの構築が必要」であるとし,その中で の看護者の関わりかたについて「(1)指導や指示はだめ,(2)生活環境と家族のコーピング能力(患者との 関係に配慮する),(3)修正しながら援助システムを構築する,(4)遊びができる,(5)ステップアップを図 ろうとしない(患者自身が獲得するのを待つ)ことが重要であり,患者も看護者も地域で共感した暮らし ができることが必要」と指摘した。
 また,これからの看護サービスの方向性についても言及。地域・看護状況にあった看護援助シス テムの確立を訴えるとともに,看護の役割拡大遂行に必要なものとして,質の高いケア,実行力,教育, 倫理,協調性,財源の6つをあげた。