医学界新聞

初の専門看護師6人誕生

日本看護協会平成8年度通常総会開催



 日本看護協会〔会長=見藤隆子氏,会員数42万5190人(1996年3月現在)〕の平成8年度通常総会が, さる5月15-17日の3日間,東京・渋谷区の代々木国立競技場第一体育館を主会場に開催された。今回は, 代議員がこれまでの正会員100人に1人から200人に1人になった初の総会となった。

協会設立50周年に初の専門看護師誕生

 開会式冒頭に会長挨拶を行なった見藤氏は,今年が協会設立50周年にあたること,初の専門看護師6 名を誕生させたこと,長年の課題とされてきた「准看護婦問題」の解決に努力してきたことなどを強調。 特に准看護婦問題では,「准看護婦制度廃止のための第1歩として,まず准看護婦養成停止に踏み切る」 と断言し,その方向性を示した。また,「膨らむ一方の医療費をどうするのか看護職も考える必要があ る。 看護職は,使われる立場から医療を変える担い手になるべき」との提言を行なった。
 その後の来賓祝辞の中で菅直人厚生大臣は,「高齢化社会を迎えるにあたり,より質の高い看護 が求められてくる。その要請に応えられるべく政治面からもバックアップしていく」と挨拶。さらに准 看 護婦問題に対して,「8月に出されるであろう調査検討会の結果を待って,年内中に何らかの方向性を 示 したい」と述べた。
 なお,今総会に提出された議題は,(1)名誉会員の推薦,(2)平成8年度スローガン,(3)看護制度改 正推進,(4)平成8年度事業計画,(5)平成8年度収支予算の5議案。いずれの議案も賛成多数で可決された。
 また,同協会が1987年来検討を続けてきた「専門看護婦制度(1994年度より専門看護師資格認定 制度)」の1つの答えとして,「精神看護」「がん看護」の2領域において実施された第1回専門看護師 認 定試験の合格者が,総会初日に発表された。これによると,「精神看護」では川名典子氏(聖路加国際 病 院),深沢裕子氏(長谷川病院)の2名,「がん看護」では近藤まゆみ氏(北里大学病院),中村めぐ み 氏(聖路加国際病院),濱口恵子氏(東札幌病院),吉田智美氏(神戸大医学部付属病院)の4名で, 実 践の場での今後ますますの活躍が期待されている。一方で並行する認定看護師制度については「救急看 護」 「WOC看護」の2領域での教育が,本年10月より開講されることが公表されている。

准看護婦制度廃止に向けて

 総会提出議案のスローガンにも掲げられ,また「看護制度改正推進」の1項目にあげられている「准 看護婦制度廃止」については,新たな動きが見られた。
 准看問題について会場からは,「長年の要求である准看護婦制度廃止の早期実現を図るため,今 総会の間に日本看護協会全体の意見として厚生省に養成停止の請願を行なってほしい」「8月の検討会 報 告を待つのではなく先行した行動を」「協会として明確な移行措置の対策を」などの多くの意見が述べ ら れた。これに対して執行部から「移行措置についてはプロジェクトを組んで検討を進めている」などの 答 弁があった。
 またこの問題は,16日の看護婦職能集会でも,シンポジウム「准看護婦養成停止にむけて」(座 長=群馬大医療短大助教授 林千冬氏)として取り上げられた。シンポジストの中島幸江氏(名大附属 病 院)は,「1日も早く准看護婦養成停止と准看護婦制度廃止を実現させ,すべての准看護婦が看護婦と し て働けるように」と発言。黒岩祐治氏(フジテレビニュースキャスター)からも「患者の目から見ると, 看護婦と准看護婦の区別すらつかない。もっとマスコミなどを使ってアピールして世論を動かし,准看 護 婦養成停止への力にすべき」など,それぞれの立場から准看護婦養成停止に関する意見が述べられた。
 これらの意見を受けた協会執行部では総会最終日の17日に,(1)准看護婦養成を停止し,看護婦教 育の一本化を図ること,(2)准看護婦養成停止後,准看護婦が看護婦資格を取得できるよう多様な諸施策 を 協力に推進すること,の2項目を内容とする決議案を提出。満場一致で採択され,その場で組織された 陳 情団が,要求実現を求める陳情を行なうべく厚生省に向かった。
 また任期満了に伴う役員改選で,第1副会長南裕子氏の後任に稲田美和氏(日赤)が,また専務 理事には松林恵子氏(前常任理事)らが選出された。なお,明年の通常総会は神戸市で2日半にわたっ て 開催され,各職能集会は最終日に行なわれることが,役員会で決定されたとの報告があった。