医学界新聞

資料 老人保健福祉審議会最終報告

「高齢者介護保険制度の創設について」概要(抜粋)

1996年4月22日


介護サービスのあり方

7.家族介護
・介護保険制度においては,現物給付が基本となるべきである。家族介護に対する現金支給については, 消極的な意見と積極的な意見があり,さらに広範な国民的議論が期待される。

介護保険制度のあり方

2.保険者
・保険者の機能には,給付主体(サービスの給付決定)と財政主体(介護保険料の設定・徴収・管理) の両面があり,給付主体については市町村とする意見が多数である。
・一方,財政主体については,給付主体と財政主体の一致が望ましいことなどから市町村を基本とする 方式,保険財政の安定性などから国とする方式などの意見があった。

3.被保険者および受給者
・高齢者介護問題が最大の課題となっていることから,65歳以上の高齢者を被保険者とし,保険料負担 を求めることが適当である。この場合,高齢者介護の社会化は家族にとっても大きな受益であることなど から,社会的扶養や世代間連帯の考え方に立って,若年者にも負担を求めることが考えられる。
・若年世代の要介護状態については,公費による障害者福祉施策で対応するが,初老期痴呆などのよう な処遇上高齢者と同様の取扱いを行なうことが適当なケースについては,特例的に介護保険から給付すべ きとの意見が有力であった。
・こうした考え方に対し,介護サービスの必要性は年齢を問わないことや負担についての若年者の理解 を得る観点から,若年者の介護サービスも社会保険化し,被保険者を20歳以上あるいは40歳以上とする意 見がある。また,年金と同様に長期保険的な制度とし,若年者も被保険者とした上で,受給権の発生を65 歳以上とする意見もあった。

4.介護保険料
・市町村保険者の場合,市町村のサービス水準に応じた保険料水準の設定が基本となるが,その設定に ついては,当面定額保険料とするが低所得者には軽減措置を講ずる案や,所得の状況に応じて所得段階別 の定額保険料とする案,定額+定率保険料とする案がある。
 また,一定額以上の老齢年金受給者については,年金からの特別徴収を検討するとともに,保険料の 未納対策も検討する必要がある。

5.高齢者と若年者の負担
・被保険者を高齢者とする場合は,高齢者と若年者の負担割合については,1高齢者・若年者を通じて 1人あたりの平均負担額を同水準とする考え方,2高齢者世代の負担総額と若年世代の負担総額を同額と する考え方,3人口構造が成熟する時点(2020年)においてそれらの額が同水準となるようにするという 考え方がある。2,3については,高齢者の負担が大きくなることから,それを軽減し,公費で補填する ことが考えられる。
・若年者は世代間連帯,社会的扶養の観点から費用の一部を負担することとなるが,世代間扶養の理解 を得るための啓発努力を行なう一方,滞納に対する措置を含め,その確実な収納を確保する仕組みが必要 である。

7.利用者負担
・受益に応じた公平な負担という観点から,定率負担(1割)とすることが考えられる。これに対して は,2割とする意見,8%とする意見があった。また,低所得者への負担軽減や高額医療費と同様の仕組み を導入することが適当である。

基盤整備等

2.施行の時期と方法
・施行に当たっては,必要な準備期間を置き,できる限り円滑かつ早期に制度が実施されるよう努力す べき。また,円滑な施行という観点から,在宅サービスを先行して実施するなど段階的な施行についても 検討する必要がある。