医学界新聞

モニターだより 学生の立場でみた卒後研修

酒井利恵 奈良県立医科大学6年



 昨年の夏休みに,卒後臨床研修について考える機会を得ました。私たちの学年はおそらく,卒後研修 義務化になる前に研修を始めることになるため,自分自身で卒業後のことを真剣に考えなければならない はずなのですが,大学受験の時のように学校や予備校からの豊富な情報を得るような機会が少なく,悩ん ではいるがそれ以上どうにもならないと考えている人が多いと思います。私もその中の1人です。
 週刊医学界新聞や,他によく送られてくるパンフレット,そして幸運なことに相談できる(それも医 学教育を専門にする)先生が身近にいらしたこともあり,比較的情報もありましたが,私はプライマリケ アを学習することが難しいといわれる大学病院中心のローテート研修を希望していました。その最大の理 由は,いわゆる「大学神話」。つまり大学の医局に入局していないと……のような噂を気にしていたこと だと思います。
 しかし,夏に在宅医療,デイケア,診療所,中小病院,大学病院等を見学する機会を得て,私自身の 「大学神話」を改めなければならないことに気づきました。まず,入院から退院まで,さらに今後増える であろう在宅医療,術後のフォローなど,よほど積極的にならないかぎり,体験することができないと思 いました。臓器別の専門医になるとしても,患者に質問されることもあるでしょうし,そういうことを知っ た上で,治療法等を研究していくのはとても大切なことのように思いました。次に,研修医が大学に集ま りすぎて,十分な指導を受けづらいのではないかという不安。また,在宅医療の場でしか学べないこと, 診療所でしか学べないことが多いことを発見したこと,などと理由はたくさんあります。
 そこで疑問だったのが,中小病院のあり方です。中小病院はベッド数が足りない等の理由で研修指定 病院ではないところがあり,指定病院をベッド数で決めてよいものだろうかと思います。大病院でベッド 数が多ければ,それだけ研修医が多くの症例数を経験できるかというと,そのごく一部にすぎません。む しろ,中小病院で経験する症例数の方が多いかもしれません。また,多くの症例の表面だけを見るより, 少ない症例でも,入院から退院までじっくり見る方が,得ることが多いかもしれません。ですから,卒後 研修の義務化の前に,研修指定病院の整理も必要ではないかと思います。認定医制度のこととも関係して きますので,ぜひ取り組んでいただきたい問題です。結局,私自身の卒後研修は,こういったことが整っ ていないと希望通りの方向に進めないのでは……と思っています。