医学界新聞

対談
パワフルで効果的なプレゼンテーションを!
学会シーズンを迎えて        
メッセージを聴衆に理解してもらうには

齋藤英昭(東京大学助教授・手術部) 木村健二郎(東京大学講師・第2内科)

プレゼンテーションには周到な準備が必要

齋藤 最近,学会やその他の集会で若い医師の方が自分の研究や症例をプレゼンテーションする機会がどんどん増えています。また,パソコンを使って,プレゼンテーションのためのスライドやOHP原稿も容易に作れるようになってきました。
 そこで本日は,効果的な学会発表について,木村先生をお迎えして話し合いたいと思います。プレゼンテーションする側の言いたいことを聴き手に容易に正確に理解してもらうようにするには,何が大切で,どんなことに注意したらよいか。ここにポイントをあてて話を進めます。

何を話したか記憶にない

齋藤 まず,木村先生は何度もプレゼンテーションをされていると思いますが,初めての時の記憶はありますか。
木村 研修医の時に日本内科学会の地方会で症例を発表したのが最初でした。数分の発表のために本当に一生懸命用意をしました。当時はいまと違って手書きで作った原稿を専門の人がブルースライドにしてくれましたが,あまりごちゃごちゃ書かずにシンプルに,なるべく必要なことだけをスライドに載せるつもりで準備したことを覚えています。
 しかし,ほとんどディスカッションがなく終わってしまって,がっかりした記憶もあります(笑)。
齋藤 私の場合は,いまから25年ぐらい前のことです。そのときも,自分の手書きの原図を写植にして,その写植を何回も訂正してブルースライドにしてもらいました。原稿も,ワープロがないので原稿用紙を何枚もだめにしながら書いた記憶がありますね。いざ本番のときは,終わってから何を発表したのか何も記憶になく,手足が震えていたことだけよく覚えています。
木村 先生は25年前ですか。私は20年前でした(笑)。

事前に十分な論理構成を

齋藤 こんな失敗があったというような経験はありますか。
木村 劇的な失敗はあまり記憶にないのですが,事前の準備が十分にできていなかったことはあります。
 スライドは技術的な問題できれいに作ることができるのですが,いくらきれいなスライドを作っても,発表の要旨や論理構成,また見せ方や内容の吟味など,そういうことがきちんとできていないと,やはり内容が聴衆に伝わりません。ですから,自分は何を伝えたいのかを十分考えて,それをどういう論理構成で見せていくかをきちんと練っておかないといけませんね。その後にスライドを作るなどの準備をすることが必要だと思います。
 それが十分でなかったときなどはもう,こちらがしゃべっている内容が聴衆に伝わらないことがよくわかって,非常に孤独感を味わってしまうわけです(笑)。
齋藤 なるほど。前もってどんなメッセージを聴衆に伝えたいかというポイントを絞って,それに沿った論理的なストーリーをきちんと立てておくことが重要ですね。

メッセージは少ないほうがよい

木村 それと,対象,つまりどういう人に話すかを考慮して,わかりやすく伝えるためにはどうしたらよいかをよく考えておかなければいけません。学会での発表と医師会などでの講演は全然違いますから。
齋藤 前もって聴衆がどういう方なのかを知っておく必要がありますね。
木村 それから,よく内容が伝わった時というのは,論理構成がきちんとできていてメッセージがはっきりしている場合です。メッセージは少ないほうがよいですね。あまりたくさんメッセージを入れてしまうとわかりにくくなるし,理解してもらえません。メッセージがはっきり伝わった時は聴衆の反応が非常によいですし,それがよくわかります。
齋藤 つまり聴き手の立場に立って話をしているということですね。準備の段階で,一度聴き手の立場に立ってみることが大切でしょうね。
 プレゼンテーションが終わったあとは,多くの場合,その研究を1つの論文に仕上げることになると思いますが,先生はどのようなプロセスを踏まれますか。
木村 理想的には,学会で発表するときにはある程度論文の骨子ができているのがいちばんよいと思います。なかなかできないのですが(笑)。学会発表の前に論文の骨子ができていると,構成やプレゼンテーションの仕方が整ってきます。また文献の背景などをよく勉強しておかないと論文はできませんから,そういう知識が裏にあることがプレゼンテーションの時の自信になると思います。

スライドは必ずプレビューを

齋藤 私の失敗談ですが,外国での発表の時に,会場へ着く時間が遅れたことがあります。それで,着いてすぐにスライドをカーソルに入れて,プレビューをしなかったのです。そうしたら,いざ本番の時にスライドが上下逆になっていたんです。あわててそれを直してもらったら,今度はスライドの順番が間違っていまして(笑)。この時は本当に恥ずかしかったですね。
 プレゼンテーションというのは,学会を組織している方が演者に時間をくださっているものです。ですから無駄に時間を使ってはいけないわけです。したがって,スライド作成の準備も重要でしょうが,いざ発表するときも,相当心構えをする必要があります。この失敗以来,5分から10分の短い発表でも,1時間の講演でも,スライドは全部自分でスライドホルダーに入れて一度映写してみて,それから発表するように心がけています。
木村 それは大事ですよね。


リハーサルの重要性

齋藤 ところで先生は発表の際に原稿を読みますか,それともそらで話しますか。
木村 最初の頃は原稿を読んでいました。しかしやはり,読んでいると話し言葉とは違いますから,どうしてもメッセージが伝わりにくいですね。聴衆がいるのですからそちらに向かって語りかける形で話さないと。それをずっと感じていました。ですから,デンマークでの留学から戻ってきてからは,もう読まないで話そうと考えました。

原稿をきちんと作ってこそのアドリブ

木村 ただ,それで1つ失敗があります。読まないからと,原稿を作らずにいきなり発表したことがあるのですが,だめですねこれは(笑)。やはり原稿をきちんと作って,何度も読んでその趣旨や話す順序や内容を頭に叩き込んでおき,そしていざ本番の時には,ある程度アドリブ的にやっても大丈夫だということがわかったのです。

聴衆を見て話すように

齋藤 「原稿を読む」形式のメリットとしては,自分の話したい内容を落とさないで済むということがありますね。ただ,先生がおっしゃるように聴衆に向かって話してはいないので,自分が話したいことがなかなかストレートに伝わらないという欠点があります。
 それからもう1つ,最近はポインターを使ってスライド上の強調したい点を指しながら話をするスタイルが日本でも多くなりましたが,原稿を読みながらではやりにくいですね。
木村 読んだ上にまたあらためて指すので繰り返しになりますからね。時間をとってしまい,限られた時間で効果的に話すには無理が出てきます。聴衆を見て話すことが大事だと思います。
齋藤 先生が講演で話すスピードは,どれくらいですか。例えば1分間に原稿用紙にして何字くらい話せますか。
木村 1分だと300字で少し多いかもしれません。
齋藤 250~300字くらいですかね。英語で発表する場合の目安はありますか。
木村 わりと英語のときは早くなってしまうのですが,どのくらいでしょうか。
齋藤 私の場合1分で100語ぐらいかと思います。それ以上になると,ネイティブスピーカーでないと難しいですね。

必ず他人の目を通すこと

木村 準備段階で人に聞いてもらうのは非常に大切ですね。1人でやっていると,自分は当然だと思うことが,相手にはわからないことが結構ありますから。先輩や後輩に関係なく聞いてもらうことが必要です。医局の学会予行だけでなく,研究室の仲間うちで何度もリハーサルすることも非常に大事だと思います。
齋藤 リハーサルは,まず研究グループや自分の仲間うちでやって,それから医局や教室全体で行なうことになりますね。リハーサルのときに若い人のスライドを見せてもらうと,誤字脱字があったり,言いたいことがしっかり書いてあるかどうか疑問に思うことがあったりします。先生のご経験でもそうですか。
木村 ええ,やはりあります。作ってから気がつくんですね。作る前にこちらがきちんとチェックしなければいけないのですがよくあります。医局でのリハーサルの時に指摘されたりすると,指導する立場のこちらも 「しまった 」と思い,恥ずかしいですね。
齋藤 スライドを作ったことで安心してしまわないで,他人にもう一度必ず目を通してもらうべきですね。
木村 ええ。論文と同じですね。医師にはわりとプライドが高い人が多くて,他人に見てもらうのは沽券に関わるという人もいますが(笑)。そうするとわかりにくいプレゼンテーション,わかりにくい論文になってしまいます。

仲間の指摘は大事に受け止める

齋藤 先生はお若い方を指導している立場ですが,リハーサルの際にはどんな点を指摘されますか。
木村 まず,原稿の作り方ですね。どう構成していくかです。また,プレゼンテーションの仕方に限って言えば, 「はっきりとわかりやすい言葉で 」ということからですね。歯切れよくしゃべること,どうしても早口になってしまいますからゆっくり話すこと,強調したいところをきちんと言うこと,そういう点をまず注意します。
 それからポインターの使い方でよくあるのですが,ポインターをぐるぐると……。
齋藤 振り回す(笑)。画面いっぱいにポインターがかけめぐるあれですね。本当に強調したいところを指してほしいのに。
木村 ええ。ものすごく見にくい(笑)。そういった点も含め,言いたいことがきちんと伝わるように発表するという観点で注意します。
齋藤 医局や研究室仲間は,なんと言っても自分の味方だと思います。学会に行くと意見の対立する方もいますからね。やはり仲間は親身になってアドバイスしてくれる存在だと思いますから,リハーサルでの指摘は大事にすべきだと思います。
木村 そうですね。それと,実際に発表した時に受けた批判によっても,どういうところがうまく伝わらなかったかなどを自分で考えますから,場数を踏まないとなかなかうまくならないような気がします。発表しっぱなしだとどうしてもだめですね。


プレゼンテーション時の経験的アドバイス

齋藤 冒頭にお話ししたように,私の初めてのプレゼンテーションの時には手足が震えてあがってしまいました。先生は何かあがり対策のようなものをお持ちですか。
木村 ないです(笑)。私はいまでも緊張します。始まる前,次演者席に座るともうドキドキしますね。壇上に立ってしまうとわりと落ち着くのですが。

あがっていると思うのは自分だけ

齋藤 次演者席にいるときは私もやはりドキドキします。ただむしろ,ドキドキして緊張感があるほうが発表する準備段階としてはよいのではないでしょうか。準備体操のようなものではないかと私は思っているのですが。
木村 そうかもしれません。あがるのは仕方ないと思います。「他人もあがるのだ」と思っていればよい気もします(笑)。そういう状態になってもスムースに発表できるのはやはり練習の成果でしょう。
齋藤 それに,あがっていることが聴衆にわかる場面は実際には少ないですよね。あがっていると思っているのは自分だけで,聴衆のほうはそうは思っていないのではありませんか。
木村 そうですね。はた目には非常に落ち着いて発表している人でも,聞くと「自分はものすごく緊張する」と言いますから。

質疑応答の心構え

齋藤 それから,発表している間はまだしも,その後の質疑応答のときに,あがっているのか質問内容がよく理解できていないのか,チンプンカンプンな質疑応答になることがあります。国内の学会でもありますが,特に日本人が外国で発表するとままあることですね。
木村 しょっちゅうですね(笑)。私も人のことを言えないのですが,やはり質問が理解できないのが主な理由です。それも,聞き直せばよいのですが,自分で理解したと思った通りに答えてしまい,相手はあきれてそのまま引っ込んでしまうから,本人は全然気がつかないという場面もある。あとで言われて,「ああそうだったのか」となるのですけれども(笑)。
齋藤 すると,質疑応答の対策を立てておくのもいわゆるあがり対策の1つになりますね。先生は質疑応答の想定問答集のようなものを作りますか。
木村 最近はあまりしていませんが,やはり準備はしたほうがよいと思います。ただ,どんなに準備してもとんでもない質問をする人はいます(笑)。
齋藤 私は若い人が外国で発表するときには,必ず質疑応答集を自分で作りなさいと言っています。質疑応答集をつくることによって,自分の発表の欠点が浮き彫りにされますし,それに対する答えを用意しておくことは,その発表を論文の形にするときに非常に役立ちます。

ポイントは質問を「聞き直す」こと

齋藤 質疑応答集を作る作らないは別にしても,チンプンカンプンな応答になってしまう最大の原因は語学力でしょうか。
木村 外国の場合はやっぱり語学のハンディが大きいですね。そういう時は,やはり聞き直すことが大切です。最近は,英語での発表が非常にうまい人が増えてきて,安心して聞いていられることが多いですが,中には,発表はきちんとできるけれども,質疑応答になるとまったくわからないという方がいます。座長が一生懸命フォローしますが,ある程度の語学力は必要で,準備しておかないといけないことでしょうね。
齋藤 なるほど。
木村 日本の学会でもチンプンカンプンな質疑応答はたまにありますね。発表者の理解力の問題,つまり相手の質問の趣旨がよくわからないという場合もあります。また逆に,質問者のほうがよくわかっていずに的外れな質問をすることもあります。そのあたりは座長が整理してくれないと困るでしょうね。
齋藤 私も外国では質疑応答でだいぶ失敗したり恥ずかしい思いをしたことがあるのですが,質問の内容を十分理解できないことがいちばん大きい原因だと思います。ですから聞き直すことと,質問の内容をもう一度「こういうことをお聞きになっているのですか」と相手に確認してみることも大切ですね。

英語はできるだけ短い文で

齋藤 先生は英語の発表の原稿を作った時に,ネイティブスピーカーの方に見ていただきますか。
木村 はい。そうしないと相手にわかる英語になりませんね。それから外国での発表のときには,原稿を何度も読んで,最終的にはネイティブの人の前で原稿を見ないで発表する練習を繰り返しました。
齋藤 やはり外国での英語の発表は,それなりに努力を積み重ねないといけないということですね。
 私自身が気をつけ,また若い方にいつも言うのは,できるだけ短い文章にするということです。科学的事実を述べているのだから短い言葉で言えば通じるはずだと。また,30分や1時間の長めの講演をする時は,ネイティブの方に読んでもらってそれを録音し,その録音を聞きながらもう一度発音の練習をするようにしています。


プレゼンテーションのためのパソコン利用

齋藤 さてここで少し話題を変えますが,最近プレゼンテーションが容易になってきたことの背景に,パソコンの普及があります。スライドを作る時には先生もパソコンをお使いになるということですが。

スライド作りにはセンスがもろに出る

木村 はい。マッキントッシュを使って自分で作ります。グラフなどの他に,私はもともと形態学をやっていたので顕微鏡写真を使うことが多いのですが,1枚のスライドに1枚の顕微鏡写真を使うのではスライドの数が膨大になってしまいます。ですから昔はよく,スライドの顕微鏡写真から焼いたカラープリントを自分で小さく切って組み合わせて,これを写真に撮って1つのスライドにしていました。
 しかしいまは全部マッキントッシュで作っていますから,何枚かの顕微鏡写真を組み合わせて1枚のスライドにするのは簡単です。フォトCDにスライドで撮った写真をためておき,それを加工します。
齋藤 スライドの中に自由に文字や矢印を挿入できる点は便利ですね。
木村 非常に便利です。昔は写真を貼ってレタリングをして,それをまた写真に撮りますから,ものすごく画質が落ち,鮮明でなくなってしまうんですね。それを鮮明にしたいために,私はわざわざスライドそのものを切り貼りしたこともあります。しかし現在はそのような苦労はなくなりました。プリントアウトしてポスターセッションで使うことも可能です。費用も安い。
齋藤 スライドの作成は,昔は他に依頼することが多かったですが,いまはほとんど発表する人が作りますね。
木村 そうですね。専門の店に頼むとお金がかかりますから,やはり自分で作るようになります。
 そうすると今度は,自由に作れるということが,利点にもなり欠点にもなります。その人のセンスがもろに出ますから。センスの悪い人は悪いなりの色使いや構成になり,センスのよい人は非常にわかりやすいきれいなものをつくる。個性が非常に出ますから,かえって怖いですね。

パッと見て伝わるものを

齋藤 いまセンスの問題だとおっしゃいましたが,センスのよいスライドとは,具体的に言うとどのようなものでしょうか。
木村 色使いもありますね。すっきりしていて目になじむもの。そして,メッセージがその1枚の中でパッと伝わるようなスライドがよいと思います。よけいなことが書いていないものですね。ですから,字もあまりごちゃごちゃ入れないで,せいぜい5行とか10行とか,その程度にしたいですね。
齋藤 最近,「方法」や「目的」,「結論」など,それぞれ20行ほど論文調で書いてあるスライドがよくあります。
木村 ごちゃごちゃと書いてあっても,短い時間では聴衆は読めません。読んでもらえないスライドを作っても意味がないのですから,必要なところだけ書くべきでしょうね。論文ではないのだから,方法などは本当に簡単に書かないと。
齋藤 むしろシェーマみたいなものにしたほうがよいでしょうね。
木村 私もなるべくシェーマを書くようにしています。

コツが必要な文献検索

齋藤 それから,最近はインターネットなど,コンピュータを介した情報の交換が非常に進んできました。文献検索は論文を書く時には絶対に必要ですが,どのようになさっていますか。
木村 私はインターネットが使われる前からDIALOGというアメリカのデータベース会社と契約していて,パソコン通信でMedlineにアクセスして文献を検索していました。非常に引きやすいです。その後図書館や医局にCD-ROMのMedlineが入ったのですが,比較するとCD-ROMは使いにくいですね。それでいまでもインターネットを経由してDIALOGにアクセスして,Medlineを参照しています。
齋藤 若い人に「こういうものを調べてみたら」と言うと,その言葉でしか検索してこないために,膨大な文献が出てきたり,あるいはまったく関連のないものが出てきたりすることがあります。パソコンでの検索はコツが必要ですね。
木村 ええ。それを勉強しないとうまく検索できないし,自分のほしい文献がなかなか見つかりません。私はDIALOGを5~6年前に始めたのですが,ともかく引き方を十分勉強しなければいけないと考え,講習会に何回か行きました。
齋藤 また一方で,私は「ときにはIndex Medicusを読みなさい」と言います。リストには自分に関係ない文献もたくさんありますが,眺めていると,自分の仕事で何か別の発想ができるような論文名が出ていることがあるからです。時間のあるときにはじっくりと文献リストを見てみる態度も必要ではないかと思っています。
木村 たしかに,対象を絞るだけではなくて,ある程度広がりを持つことも必要ですね。


「目的」と「結論」が合致した研究を

齋藤 ここまでスライドプレゼンテーションを中心にお話ししてきましたが,プレゼンテーションのもう1つの方法として,ポスターセッションがありますね。
 私はポスターセッションについて,長時間にわたって自分の演題を多くの方に見てもらえること,それから自由にディスカッションができ,その時間が限られていないことなどの理由で,非常によい形式だと思っているのです。
木村 そうですね。

ポスターセッションは収穫が大きい

齋藤 若い方で,口演かポスターのどちらに採用されるかという時,ポスターになると残念に思う人がいるようですが,そういう考えはどうでしょうか。
木村 私は個人的にはポスターのプレゼンテーションが好きですね。先生がおっしゃったように,時間が長いことの他に,本当に関心のある人が来てくれてディスカッションできるということがありますし。口演で数分間発表するよりはポスターでいろいろな人と話すほうが,終わってから自分にとって実りがあったという気がすることが多いです。
齋藤 日本でもそうですが,国外の学会でも,論文で知っているような著名な先生がポスターを見にきてくれますね。あれは非常に後々の仕事に役立つと思います。
木村 そうですね。雲の上の存在のように思っている方が来ていろいろなことを言ってくれると,常に励みになります。だからポスターセッションも悪くないと思っています。
齋藤 若い方も,ポスターセッションになっても全力投球でよいプレゼンテーションにするようにしてほしいですね。
木村 まったくそう思います。

目的と結論が合致しないと言いたいことがわからなくなる

齋藤 さて,本日はパワフルなプレゼンテーションのためには何を考えればよいかということでお話しいただきましたが,最後にこれだけは言っておきたいということはありますか。
木村 ぜひ言っておきたいことが1つあります。これは論文を書く時もそうなのですが,「目的」と「結論」がきちんと合致するように,気をつけてもらいたいのです。これが一致しないと,何を言っているか全然わからなくなります。よくあることなのですが。
齋藤 本日の対談の目的と結論は合っていましたか(笑)。いまのお言葉でこの対談を終わりにさせていただきます。どうもありがとうございました。(おわり)