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- 総合リハビリテーション Vol.51 No.1
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今月のハイライト
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障害・疾患を認識する
障害のある方が広く社会参加や復帰を進めていくためには,自らの障害や疾患,ひいては自分自身を認識し,それを深めていくことが必要であり,新たなスタート地点になると考えます.本特集では障害や疾患の認識についての研究や臨床に携わっている専門家に執筆をお願いしました.それぞれの当事者が障害や疾患にどのようにして気づき,認識し,さらには自己認識を深めていくのか,また支援する専門職あるいは周囲の人たちはどのような点に配慮をして対応していくとよいのか,などについて解説していただきました.読み応えのある,そして考えさせられる論文が多いです.
心の中の身体──運動機能障害を克服するための身体認知メカニズム 松宮 一道 氏
「治療的介入により身体の運動機能が向上しても,その向上効果が持続しないことが多い.身体の運動機能に障害を有する患者は,運動能力が単に低下しているだけでなく,心の中で感じている自分の身体にも異常が生じている.そのため,この『心の中の身体』の異常をいかに修正するかが持続的な運動機能回復の実現の鍵であると考えられている」という始まりを読むだけで,期待感が膨らむ論文である.しかし,ちょっと難しい.じっくり向き合っていただきたい.本論文で紹介されている知見は,リハビリテーション治療の新たな方法の開発という点でも重要な示唆を与えるという著者の言葉は納得できる.
高次脳機能障害のアウェアネス 野路井 未穂 氏
高次脳機能障害者の安定した社会復帰のためには,自分自身の障害認識は必須とは言わないまでも,有利に働く場合が多いと考える.本論ではアウェアネスという用語の解説から,評価方法,社会参加を目的とした介入方法,事例報告などを執筆いただいた.紹介された2例は,読者の皆さんも体験したことがあると思われる内容の事例であり,障害認識の過程と支援の実際が丁寧に描かれ参考となる.アウェアネスの介入には可能な限り多職種でかかわり,当事者のアウェアネスを多角的にアセスメントすると同時に,互いの見方や価値観をモニタリングし合い,当事者と対立しないよう協働することが望まれる.
自分と出逢い,社会とつながる──ニーズを明確化し社会変革に至るまでのプロセス 綾屋 紗月 氏
著者自身が自閉スペクトラム症の診断を受けており,長年当事者研究を行われている.診断を得てから社会参加のための具体的なニーズをいくつか言語化し,他者に伝えられるようになるまでに10年近くかかったという.今回,そのプロセスを「周囲とのズレへの気づきを承認される段階」,「自身の特徴を把握し言語化する段階」,「ニーズを明確化し社会変革へと向かう段階」の3段階に整理し,各段階における支援のあり方を提案されている.そして,「社会参加ができるようになればハッピーエンドかと言えば,残念ながらそうではない」という著者の言葉はすべての人に当てはまる.われわれが反省すべき点も多い.
知的障害のある人のライフストーリーの語りからみた障害の自己認識──なぜ「障害がない」と語るのか 杉田 穏子 氏
知的障害のある人の中には,自分の障害を認識している人もいるが,認識していない人もいる.それはなぜか.明確な1つの答えがあるわけではない.著者は欧米での過去の研究を解説するとともに,著者自身の調査による当事者自身が語るライフストーリーを詳細に紹介・分析している.一見矛盾してみえる本人の語りも「ふつうをよそおうことの新しい見方」からみると,いかに社会が障害に対して生きにくさを作り出しているのか,逆に配慮された場面では障害があっても生きやすさを作り出しているのかを掬い取ることができるのではないだろうか,という記述にはハッとさせられる.
聴覚障害児・者の障害認識と障害受容に関する一概説 濵田 豊彦 氏
ちょうどこの原稿を執筆している時期にテレビドラマの「silent」(川口春奈さんと目黒蓮さん主演)が大評判となっている.ドラマでは若年発症の聴覚障害が取り上げられているが,こうした中途失聴・難聴者と幼少期からの聴覚障害児の障害認識に違いがあることは想像に難くない.先天・幼少期からの障害では「喪失感」は存在しないため「障害受容」という用語は適切でない.しかし障害児自身の自立活動のためには「障害認識」の獲得は重要であり,自己肯定感を育てることも重要である.同時に,不安を抱えた保護者に対して「保護者の障害受容」支援を行っていくことも必須である.
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特集 障害・疾患を認識する
心の中の身体──運動機能障害を克服するための身体認知メカニズム
松宮 一道
高次脳機能障害のアウェアネス
野路井 未穂
自分と出逢い,社会とつながる──ニーズを明確化し社会変革に至るまでのプロセス
綾屋 紗月
知的障害のある人のライフストーリーの語りからみた障害の自己認識──なぜ「障害がない」と語るのか
杉田 穏子
聴覚障害児・者の障害認識と障害受容に関する一概説
濵田 豊彦
●ひと
第60回日本リハビリテーション医学会学術集会会長になられた出江 紳一氏
中尾 真理
●入門講座
住環境整備の基礎知識 ⑧
利用可能な制度と業者選定のポイント
西村 顕
リハビリテーションロボット ①
リハビリテーションロボットの定義・分類
平野 哲,他
小児リハビリテーションに必要な評価法 ①
日本語版ASQ®-3
橋本 圭司
●実践講座
リハビリテーション治療に生かすエコー ①
運動器リハビリテーションにおけるエコーの活用
宮田 徹,他
●紹介
放課後等デイサービスを利用する児の母親の思いの分析
川﨑 美沙,他
●第50巻記念 特別連載
「総合リハビリテーション」の50年──印象に残った記事から読み解く ⑫
脊髄損傷,脳性麻痺,慢性関節リウマチ,切断と義肢に関する特集から(付 Sweet Spotの概観)
上田 敏
●精神保健福祉に関する支援とサービスの活用 ⑦
障害者虐待の発見と対応
石川 博康
●障害者の就労支援 ⑥
就労支援の視点からみるハローワークの取り組み
小田 芳幸
●YouTubeの使えるコンテンツ/アプリの紹介 ⑥
認知症アプリの作成と活用
浦上 克哉
●物理療法update ④
筋萎縮予防としての電気刺激療法
千田 益生
●Sweet Spot 文学に見るリハビリテーション
能の『松風』──幻覚への対応
高橋 正雄
●Sweet Spot 映画に見るリハビリテーション
「仁義なき戦い」「博奕打ち 総長賭博」「県警対組織暴力」「緋牡丹博徒 お竜参上」──芸術文化体験としてのヤクザ映画だった
二通 諭