BRAIN and NERVE Vol.75 No.2
2023年 02月号

ISSN 1881-6096
定価 2,970円 (本体2,700円+税)

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特集 多系統萎縮症の新診断基準とこれからの診療

多系統萎縮症の診断は,2008年に発表されたGilman分類second consensus statementを用いて行われてきた。しかしその後の研究の進歩により,正確さや早期診断の感度における課題が明らかになり,2022年に新たな診断基準であるThe Movement Disorder Society Criteria for the Diagnosis of Multiple System Atrophyが提示された。本特集ではGilman分類の問題点を総括するとともに,本邦から新診断基準の作成に参画した委員による解説を含め,新診断基準のねらいや使用にあたっての留意点を示す。さらに日常診療や臨床試験における活用法,疾患修飾療法開発の展望について学ぶことを目的とする。           

Gilman分類second consensus statementの問題点  渡辺 宏久 , 長尾 龍之介 , 水谷 泰彰 , 伊藤 瑞規
多系統萎縮症(multiple system atrophy:MSA)の診断に関する第2回合意声明は,MSAの概念を統一するとともに,臨床研究や創薬研究を大きく前に進めてきた。しかし,その後の研究の進歩により,さまざまな課題が明らかとなった。ここでは,第2回合意声明の有していた問題点について,診断感度,起立性低血圧の取扱い,診断カテゴリー,除外基準(高齢発症,家族歴,認知症),進行性核上性麻痺との鑑別,画像所見の問題を中心に整理したい。

Movement Disorder Societyによる多系統萎縮症診断基準—改訂のポイントと注意点  下畑 享良
多系統萎縮症(multiple system atrophy:MSA)の新しい診断基準が作成された。この診断基準は臨床試験への患者登録の向上につながる病初期の診断精度の向上を目標としている。その特徴は,診断の確実性を4つのレベルに分けて定義したことである。本論は本診断基準において,これまで使用してきたGilman分類第2次コンセンサス基準との相違点を説明するとともに,使用するうえでの注意点を示したい。             

New MDS criteriaの注目点—全体像および遺伝学的観点から  辻 省次
多系統萎縮症の診断基準としては,2008年に発表された診断基準が幅広く用いられてきたが,早期に信頼性の高い診断を可能にすることを目的として,新診断基準が提案され,“clinically established MSA”,“clinically probable MSA”,“possible prodromal MSA” という新たなカテゴリーが設定され,実用性の高いものとなっている。一方,遺伝学の点からは,家族性MSAへの積極的な言及が含まれておらず,課題となっている。             

New MDS criteriaの注目点—自律神経障害の観点から  榊原 隆次 , 澤井 摂 , 尾形 剛
多系統萎縮症(multiple system atrophy:MSA)の自律神経障害について,新診断基準に触れながら述べた。MSAは,自律神経障害と運動障害(小脳性運動失調,パーキンソン症候)をきたす代表的な神経変性疾患である。MSAの自律神経障害は,泌尿器科,循環器内科,消化器内科,耳鼻科・呼吸器内科などと,脳神経内科がオーバーラップする領域であるので,本疾患をよく知り,各臓器科と協力し,患者の治療・ケアに当たる必要がある。また,脳神経内科医も,エコー残尿測定を行ってみることが勧められる。MSAは根治が難しい難病であるが,それぞれの症状に対して適切な治療・ケアがあるので,積極的な治療介入が望まれる。             

New MDS criteriaの注目点—病理学の観点から  三木 康生 , 若林 孝一
多系統萎縮症(multiple system atrophy:MSA)の臨床診断基準が2008年に発表されて以来,いくつかの改善すべき点が明らかとなった。つまり,MSAと臨床診断された患者にはパーキンソン病や進行性核上性麻痺など他の病態(MSA look-alike)が混入している可能性があること,MSAの治療にはMSAを病早期に高い精度で診断する必要性があること,などである。本論では,今回改訂された新臨床診断基準を臨床病理学的な立場から解説する。             

New MDS criteriaの日常診療・臨床試験における使用方法  松島 理明 , 矢部 一郎
新たに改訂された多系統萎縮症の診断基準は,従来の診断基準と比較して,起立性低血圧の基準が緩和されたところがある一方で,MRIや残尿測定などの検査を要する項目も設定された。従来は診断確度の低いpossibleであった例が,新診断基準ではより診断確度の高いclinically establishedの判定になることがある。ただし,自験コホートの検討においては,診断に必要な症候や検査項目が未確認の場合は診断基準に当てはめられない事例があった。臨床試験に関して,介入研究の場合はclinically establishedまたはclinically probableが対象となり,観察研究ではpossible prodromalの重要性が増してくると考えられる。今後は病理学的に診断精度を確認するとともに,支持的バイオマーカーとして挙げられている諸検査のエビデンスを蓄積して,より有用な診断基準としてブラッシュアップしていくことが求められる。          

New MDS criteria時代の新しい治療  長谷川 隆文
多系統萎縮症(multiple system atrophy:MSA)の病態理解が進む中,疾患修飾療法開発に努力が注がれている。これまでにαシヌクレイン蛋白の凝集抑制,神経炎症,栄養因子低下を是正する複数の疾患修飾薬開発が試みられてきたが,ほとんどは失敗に終わっている。この度MSA診断基準が改訂され,より早期に信頼性の高い診断が可能となるとともに,新たに前駆期MSAの基準が制定され,トランスレーショナルギャップの縮小が期待されている。

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特集 多系統萎縮症の新診断基準とこれからの診療

Gilman分類 second consensus statementの問題点
渡辺宏久,他

Movement Disorder Societyによる多系統萎縮症診断基準──改訂のポイントと注意点
下畑享良

New MDS criteriaの注目点──全体像および遺伝学的観点から
辻 省次

New MDS criteriaの注目点──自律神経障害の観点から
榊原隆次,他

New MDS criteriaの注目点──病理学の観点から
三木康生,若林孝一

New MDS criteriaの日常診療・臨床試験における使用方法
松島理明,矢部一郎

New MDS criteria時代の新しい治療
長谷川隆文


■総説
カルシウムイメージングによる神経活動の計測
坂本雅行

神経系における幹細胞治療
新妻邦泰

■原著
マンガの文脈に基づいて色を想起する際の脳活動
室谷悠斗,酒井邦嘉


●医師国家試験から語る精神・神経疾患
第2回 せん妄へのアプローチ
金井光康

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