理学療法ジャーナル Vol.55 No.6
2021年 06月号

ISSN 0915-0552
定価 1,980円 (本体1,800円+税)

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Inner & Intrinsic Muscles――筋による関節の安定化,姿勢調整機能を探る

 インナーマッスルは深層筋の総称であり,関節安定化機能を有し,姿勢保持や動作の安定化に寄与するとされている.運動器疾患ではインナーマッスルの弱化と拮抗するアウターマッスルの相対的強さが病態の特徴として示されることが多い.またイントリンシックマッスルは手関節,足関節より遠位に起始停止を持つ筋とされているが,両者は,筋自体の有する関節トルクよりも安定性,固有受容器からの感覚などのように捉えきれていない側面がある.本特集によりこれらの筋に焦点を合わせ,最近の進歩について深く理解するきっかけとしたい.

頸部深層筋の姿勢調整機能とエクササイズの効果 谷田惣亮
 頸部は身体最上部の頭部を安定的かつ協調的にコントロールするという機能的特性を持っており,頸部深層筋が重要な役割を担っている.頸部深層筋には,身体の他の部位より高密度に筋紡錘が存在するという特徴があり,感覚器としての機能に優れていることから姿勢調整にも寄与していると言える.こういった特性を持つ頸部深層筋をエクササイズすることにより,頸部の安定性が向上し,身体バランス機能が改善する可能性がある.

外側翼突筋の担う咀嚼力の調整と関節安定化機能 古泉貴章
 顎関節を構成する筋群に閉口筋である咀嚼筋群,開口筋である舌骨筋群,協調筋である頸部筋群がある.顎関節のインナーマッスルは咀嚼筋群に属する外側翼突筋である.外側翼突筋は上頭と下頭に分かれ,関節包や関節円板に付着することから咀嚼力の調整や関節の安定性に貢献すると報告されている.外側翼突筋の機能低下により頭部前方位増強や頭部側方偏位が出現しやすく,頸部・肩疾患においても重要な意味を持つ筋肉である.

野球における回旋筋腱板トレーニング 岡田匡史
 プロ野球投手における投球は強度,投球数ともに高いレベルが求められ,肩関節にかかるストレスも相当なものになる.筆者はプロ野球選手のリハビリテーションに携わっており,投球動作中の肩関節における筋電図学的知見を参考にリハビリテーションから再発予防を目的としたトレーニングを実施している.試行錯誤している最中であるが,その一部を紹介する.

手内在筋と投球障害――ボールリリース時の手の機能から内側型野球肘障害を考える 栗田 健
 投球動作における肘の障害に内側型野球肘障害があるが,ボールリリース付近で疼痛が生じる群に手内在筋の萎縮や機能不全が目立つことに着目してきた.手内在筋は大きく中手筋群と球筋群の機能的な群に分けて評価とその治療について述べた.従来投球障害の治療は下肢からの運動連鎖を中心に治療を組み立てることが多く手の機能は見落とされがちだが,運動連鎖の最後のフェーズにあたるボールリリース付近での手の機能にも着目し,手内在筋と手外在筋を協調させた動作の再構築が望まれる.

骨盤底筋と姿勢,股関節との関係 槌野正裕
 本邦における骨盤底筋に関する報告は,女性の骨盤底機能障害に対するトレーニング効果に関するものが大半である.骨盤底筋の一つである肛門挙筋は,本来動物の尾を動かすことが役割であったが,直立二足歩行を行うヒトでは,その役割が骨盤内臓器の保持へと変化した.つまり肛門挙筋は姿勢の変化による影響を受け,その役割が変化したと考えられる.本稿では矢状面の姿勢と骨盤底機能,股関節と骨盤底筋の関係について解説する.

腰部多裂筋に対する評価とmotor control training 隈元庸夫
 多裂筋はpostural control, stabilityの機能を有し,local stability muscleである深層多裂筋,global stability muscleである表層多裂筋が関節安定化と姿勢調整機能に関与する.制御されていない動きを評価,修正し,腰部安定化することが腰部多裂筋motor control trainingの目的となる.

腹横筋は胸腰筋膜と連動して働き,骨盤底筋群・横隔膜とともに作用することで効果を発揮する 村上幸士
 下部胸椎‒腰椎‒骨盤の安定性には,腹横筋と胸腰筋膜が連動して働き,加えて,骨盤底筋群と横隔膜が大きな関与を示す.これらの組織はすべて深部に位置し,視診・触診,表面筋電図などでの測定は困難である.その測定には,深部をリアルタイムに画像化できる超音波診断装置が主に用いられている.今回,下部胸椎‒腰椎‒骨盤の安定性に働く組織のメカニズム,さらにそれらを数値化するための取り組みの2点について報告する.

横隔膜の姿勢調整機能についての検討 立石貴之
 横隔膜は,主たる呼吸筋と理解されているが,呼吸機能だけではなく,姿勢調整機能をも担うことが示唆されている.本稿では,ヒトにとっての呼吸,横隔膜の機能解剖,横隔膜と姿勢・動作の関係性について整理し,横隔膜への機能評価,アプローチの視点,症例提示を通して横隔膜の姿勢調整機能について検討する.

歩行と走行に着目した腸腰筋の役割 治郎丸卓三
 腸腰筋は,腸骨筋と大腰筋から構成される.なかでも大腰筋は,体幹と下肢を結ぶ人体唯一の筋肉である.腸腰筋は歩行速度や走行速度を速める役割を持ち,さらに,姿勢制御や股関節を安定させる役割も持つとされている.したがって,腸腰筋は身体を安定させながら,素早く動いていくのに重要な筋であると考えられる.そこで本稿では歩行と走行に着目しながら,腸腰筋の役割について考える.

足内在筋のはたらきと姿勢との関係 大竹祐子
 ヒトは二足で立ち活動するが,その際唯一地面と接しているのは足底であることから,足の内在筋は安定した動作を遂行するためのサポート役としてはたらいているように感じる.本稿では,足の内在筋のはたらき,なかでも足趾屈曲運動に関連する部分に焦点を合わせ,足趾のポジションによって立位の安定性にどう影響するかについて,これまで筆者が行ってきた研究活動で得た知見を紹介する.

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頸部深層筋の姿勢調整機能とエクササイズの効果
谷田惣亮

外側翼突筋の担う咀嚼力の調整と関節安定化機能
古泉貴章

野球における回旋筋腱板トレーニング
岡田匡史

手内在筋と投球障害――ボールリリース時の手の機能から内側型野球肘障害を考える
栗田 健

骨盤底筋と姿勢,股関節との関係
槌野正裕

腰部多裂筋に対する評価とmotor control training
隈元庸夫

腹横筋は胸腰筋膜と連動して働き,骨盤底筋群・横隔膜とともに作用することで効果を発揮する
村上幸士

横隔膜の姿勢調整機能についての検討
立石貴之

歩行と走行に着目した腸腰筋の役割
治郎丸卓三

足内在筋のはたらきと姿勢との関係
大竹祐子


■Close-up 「足」を理解する
「足」が担う身体のベース機能
園部俊晴

「足」の機能の巧妙さ――裸足と履物・路面・スピードへの対応
伊佐地弘基

「足」の機能変化と身体運動
木下和昭


●とびら
“つながり”がもたらす素敵な未来
櫻井健太郎

●目で見てわかる 今日から生かせる感染対策⑪
感染予防の常識を今一度確認しましょう②
高橋哲也,他

●再考します 臨床の素朴な疑問⑥
起こすと血圧が下がるので,足に弾性包帯を巻こう.
本当に効果があるの?
中尾周平

●診療参加型臨床実習⑥
診療参加型臨床実習の取り組みの現状と展望
 回復期大学病院
児玉慎吾

 回復期基幹病院
村井直人,他

●国試から読み解く⑱
胸部X 線から病態を推測する
正保 哲

●臨床実習サブノート
診療参加型臨床実習――「ただ見ているだけ」にならないように!
人工膝関節全置換術
藤浦 達

●私のターニングポイント
人が人を診るという意味
高木康彰

●症例報告
右上肢の筋力低下を主症状とする顔面肩甲上腕型筋ジストロフィー症患者に対する単関節型HAL®の試用評価
稲葉塁希,他

●文献抄録
髙橋容子・中村絵美・松尾大樹・波平萌子

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