老年看護学 第9版

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  • フレイルやサルコペニアなどの新しい概念、ならびに終末期医療に関する新しいガイドラインなどを押さえた内容に更新し、国家試験の新出題基準にも対応しました。
  • 80歳以上の高齢者や認知症の高齢者が手術や急性期的な治療をふつうに受けるようになったことをふまえ、外来・検査・入院・手術・救急・急性期への対応など「治療を必要とする高齢者の看護」に関する内容を充実させました。
  • 近年の認知症医療・ケアの発展に伴い、最新の情報に更新しました。
  • 高齢者の療養の場の広がりに伴い、グループホームや小規模多機能施設、サービス付き高齢者向け住宅の記載を充実させました。
  • 「系統看護学講座/系看」は株式会社医学書院の登録商標です。

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はしがき

 2017(平成29)年の時点で,わが国の最高齢は117歳であり,平均寿命は男性が約80歳,女性が約87歳である。この数字から老年期は,最長で50年,平均でも20年程度の期間になると見込まれる。この短くない老年期を過ごす間には,健康なときもあれば,病気をわずらい治療が必要なときも必ずある。また,老いに加えて障害を伴うこともまれではない。
 老年期の特徴は,老年期にあるすべての人が,人生のこの段階で亡くなるということである。つまり老年看護に携わるということは,その人のエンドオブライフケアに関与することでもある。人生の終盤を,「住み慣れた場所で最期まで」とは,人々に共通の願いだろう。高齢者が住み慣れたところにいるときも,治療のために入院しているときも,看護職は最善の看護のために力を尽くすことが求められる。また,地域の人々やほかの専門職と手を携えながら,住み慣れた場と治療の場とを橋渡しする役割も期待されている。このように,老年看護にあたっては1人ひとりの人生を念頭におきながら,健康レベルの多様な水準と場の広がりに対応できる能力が求められている。
 本書は第1章から第3章を総論部分,第4章から第10章を各論部分とし,看護師国家試験出題基準を,おおむね網羅するように構成した。
 第1章では老いを生きる高齢者その人に焦点をあて,老化理論や発達課題をわかりやすく紹介した。第2章では現在の超高齢社会の様相を,統計資料を用いて提示するとともに,身体拘束や高齢者虐待などの倫理的課題,ならびに介護保険や成年後見制度など高齢者の自立と権利をまもるための社会制度について解説した。これらを受けて,老年看護の基本的な考え方,および老年看護に関連の深い理論を第3章で示した。
 第4章以降の各論部分は既習の内容をふり返りつつ,加齢変化,病,障害を合わせもつ身心をどのようにとらえ,それに基づいてどのように生活を整えるか,という学びを得られるよう書き進めた。第4章では器官系統別の加齢変化とアセスメントの方法を具体的に解説した。第5章では,座る・立つという基本動作を基盤とする食事・排泄・清潔といった生活行為と,それらが繰り返し展開される生活リズム,さらには生活を円滑に進めるために不可欠なコミュニケーションについて,高齢者に特有の不具合と援助技術を紹介した。さらに第6章では高齢者に特有な症状や疾患・障害に応じた看護,第7,8章は健康状態や受療状況に応じた看護,第9章は場の特徴をふまえた看護,家族支援ならびに多様なニーズに対応するために不可欠な多職種連携について解説した。最後に,今後ますます重視される高齢者のリスクマネジメントを第10章とし,医療安全,救命救急および災害看護について提示した。
 今回の改訂では,本書の中核ともいえる第5章「生活機能を整える看護」ならびに第6章の「回復を促す看護」を基盤に,治療を必要とする高齢者への看護(第7章),エンドオブライフケア(第8章),介護予防や家族支援を含む生活・療養の場における看護(第9章)を重層的に構成し,内容の充実に大きな力を注いだ。それは予防からエンドオブライフケアまで,地域から施設までを意識できる視野の広さが「住み慣れたところで最期まで」を実現する地域包括ケアの時代の老年看護に求められていると考えたためである。またNOTE,Columnと名づけた小さな囲み記事も多く配置した。これは本文の理解を深める補足のほか,重要なキーワードを解説しているので,読み飛ばさずに注目してほしい。さらに,各章の最終頁の「ゼミナール」を活用し,学生の事前・事後学習を促進してほしい。
 本書が講義,演習,実習,そして卒業後も,あなたの傍らに置かれていたら本当にうれしく思う。どうぞ忌憚のないご意見を賜り,あなたとともに学びを深めていくことができたなら,本書の執筆に携わった者として望外の喜びである。

 2017年12月
 執筆者を代表して
 北川公子

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第1章 老いるということ,老いを生きるということ (北川公子・竹田恵子)
 A 老年看護を学ぶ入り口
 B 「老いる」ということ
 C 老いを生きるということ

第2章 超高齢社会と社会保障 (北川公子・萩野悦子・井出訓)
 A 超高齢社会の統計的輪郭
 B 高齢社会における保健医療福祉の動向
 C 高齢者の権利擁護

第3章 老年看護のなりたち (北川公子)
 A 老年看護のなりたち
 B 老年看護の役割
 C 老年看護における理論・概念の活用
 D 老年看護に携わる者の責務

第4章 高齢者のヘルスアセスメント (三重野英子・小野光美・末弘理惠・長瀬亜岐・山田律子・萩野悦子・佐々木八千代)
 A ヘルスアセスメントの基本
 B 身体の加齢変化とアセスメント

第5章 高齢者の生活機能を整える看護 (白井みどり・北川公子・佐々木八千代・長畑多代・北村有香・山田律子・原等子・三重野英子・末弘理惠・萩野悦子・植田恵・竹田恵子・荒木亜紀)
 A 日常生活を支える基本的活動
 B 食事・食生活
 C 排泄
 D 清潔
 E 生活リズム
 F コミュニケーション
 G セクシュアリティ
 H 社会参加

第6章 健康逸脱からの回復を促す看護 (山田律子・高岡哲子・三重野英子・末弘理惠・萩野悦子・長瀬亜岐・菅原峰子・荒木亜紀・北川公子)
 A 症候のアセスメントと看護
 B 身体疾患のある高齢者の看護
 C 認知機能障害のある高齢者の看護

第7章 治療を必要とする高齢者の看護 (吉岡佐知子・長瀬亜岐・岡本充子)
 A 検査を受ける高齢者の看護
 B 薬物療法を受ける高齢者の看護
 C 手術を受ける高齢者の看護
 D リハビリテーションを受ける高齢者の看護
 E 入院治療を受ける高齢者の看護

第8章 エンドオブライフケア (荒木亜紀)
 A エンドオブライフケアの概念
 B 「生ききる」ことを支えるケア
 C 意思決定への支援
 D 末期段階に求められる援助

第9章 生活・療養の場における看護 (北川公子・桑田美代子・高岡哲子・松岡千代)
 A 高齢者とヘルスプロモーション
 B 保健医療福祉施設および居住施設における看護
 C 治療・介護を必要とする高齢者を含む家族の看護
 D 多職種連携実践による活動

第10章 高齢者のリスクマネジメント (桑田美代子・吉岡佐知子・長瀬亜岐・松岡千代)
 A 高齢者と医療安全
 B 高齢者と救命救急
 C 高齢者と災害

付章 看護過程の展開 (北川公子・松岡千代)
 A 看護過程の考え方
 B 事例展開の実際
 C 実習におけるヒヤリ・ハット

資料 (山田律子)
索引

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本書の記述の正確性につきましては最善の努力を払っておりますが、この度弊社の責任におきまして、下記のような誤りがございました。お詫び申し上げますとともに訂正させていただきます。

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