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神経症状の診かた・考えかた 第2版
General Neurology のすすめ

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ガイドラインに基づいた「無難な」標準的診療方法を記載した書籍は多いが、それで診療ができるかと言えば実際には難しい。そんな時代に登場した本書は、この領域にはめずらしい「通読できる本格的な神経内科書」として、神経内科学の「1冊目の本」の地位を固めた。神経内科臨床のリーダーとして知られる著者の「経験」に基づく歯切れのよい記載と、一貫した神経症状へのアプローチが、さらにパワーアップした待望の第2版!
福武 敏夫
発行 2017年09月判型:B5頁:424
ISBN 978-4-260-03059-5
定価 5,720円 (本体5,200円+税)
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初版の序



 初版から3年が過ぎた。普通に考えれば,多くの医師が知っておくべき症状がこの短期間に新たに現れるわけでなく,「神経症状」に関する本を3年で改訂するのはまれなことだと思われる。それでも改訂しようと思ったのには3つの理由がある。
 第一の理由は,この手の本としては嬉しいことに評判がよく,Amazon人気ランキングなどで長くベストセラー上位にあって,神経疾患を扱う医師,神経内科医だけでなく,脳外科医や総合内科医,医学生にまでよく読まれたことである。換言すると,医学生や内科医などに拡がる慢性疾患 “Neurophobia(神経嫌い)” を克服する方向性を示せたことである。
 第二の理由は,「傍らに上級医がいるようだ」など,多くの分かりやすいという声とともに,私の1年後輩の,したがって十分経験豊富な神経専門医から,「2回も通読した。もっと多くの実例を記述してほしい」という有難い言葉をもらったことである。
 第三の理由は,同僚の一人(神経放射線科医)から,ある英文誌に掲載されていた“The failure of modern textbooks”(「現代の教科書の欠陥」)という論説(Allen RK: BMJ, 2010;340:c2132)をご教示いただいたことである。誤解を恐れずに私なりの言葉で紹介すると,「現代の多くの教科書には膨大な研究と事実の生き生きしていないリストが地下鉄の時刻表のように記載されているが,著者の経験やピットフォールなどが抜け落ち,読者と『情熱』を共有しようという気持ちが喪われている。そうしたつまらない還元主義的なマニュアルの中に,魅力的な,語り口のスタイルを吹き込もう」というもので,初版の序に述べようとして言い足りなかったことが主張されていた。
 これらの理由を踏まえて,この改訂増補版では,第I編に「ふるえの診かた」と「脊髄症状」,「『心因性』と間違えられやすい疾患」の章を新たに設けるとともに,自験症例数を134例から171例へと大幅に増やし,さらに記述を少しでも分かりやすく印象的にするよう努力し,Memoや欄外の注釈などを増やした。
 かくて,この改訂増補版により,「神経学はとっつきにくくない」,「神経診察は病歴に始まり病歴に尽きる」,「そこに簡単で本質的な診察手技を加えれば,神経疾患患者の90%以上をカバーできる」,という筆者の考えをご理解いただき,日常診療の糧にしていただければ,筆者の意図が成就されることになる。
 最後に,症例の中に登場していただいた多くの患者さん,その担当医・指導医,貴重なコメントを下さった多くの先生方,さらに改訂作業に尽力いただいた医学書院のスタッフに,前版同様に,深謝の意を表したい。

 2017年8月
 福武敏夫


初版の序

 本書は,神経内科の日常診療の中でよく遭遇する症候や病態について,筆者の経験をまとめたものであり,もちろん臨床神経学の全ての領域をカバーするものではない。遺伝学や生化学などいわゆる高度医療の側面には触れていない.それらを高速道路建設に例えると,本書は街中の交通渋滞に対処するものである。
 本書を執筆しようと思ったのにはいくつかの動機がある。臨床神経学の教科書として有用で網羅的な書籍は多いが,日常診療の中で症状をどう捉え,どう診断に結び付けていくかという具体的な道筋を示してくれるものは少ない。圧倒的な情報量の前に立ちすくんでしまう初学者に対して,ありふれた症状や疾患の具体的様相や鑑別の仕方を常にカンファレンスやセミナーの中で解説してきたので,それらを書籍の形で著したいと考えたのが第一である。特に初学者などが誤まったキーワード設定で,つまみ食い的に診断したり,鑑別診断の方向を見失ったり,患者に余計な検査を行い負担をかけたりしているのをしばしば見聞してきたので,ありふれた症状や疾患のまず第一に考慮すべき大切なポイント(訴えの内容分析や年齢などの患者背景の把握など)を示すことに力点を置いた。その際,常に意識していたのは観察と推理の天才であるシャーロック・ホームズのことである。本書には彼愛用の帽子や拡大鏡,パイプのイラストが散りばめられている。
 第二の動機は,多くの教科書が分担執筆であったり,欧米の教科書の受け売りだったりするので,筆者一人による一貫したものの診かたを提示し,病歴聴取と神経診察の実際の経験をなるべく具体的に示したいと思ったことである。臨床神経学の最高の教科書である“Adams and Victor’s Principles of Neurology”の少なくとも古い版では,客観的な教科書的記載以外に,しばしば「We」で始まる,著者らの経験が述べられていた。そこにこそ日常診療上の興味深いヒントがあったし,臨床神経学を学問としてもっと発展させる方向性があった。本書もささやかだが,そうした役割の一部でも果たせればという思いがある。
 第三の動機は,神経学の巨星であり,脳卒中学の創始者であるチャールズ・ミラー・フィッシャー教授が2012年4月14日に98歳で逝去された際に,そのポートレートを書く機会を与えられ,同教授が80歳代以降でも自らの閃輝暗点への考察や神経学と精神医学の境界領域に関する臨床的な総説を著し,90歳代になっても若いレジデントと回診していたことを知り(『BRAIN and NERVE』64:1443-1448, 2012),個人的な経験でも重要と思われることを書き遺すことの重要性を改めて認識したことである。筆者の恩師である平山惠造教授も臨床神経学・神経診察学・神経症候学におけるエッセンスの「伝授と伝受」の重要性を強調されている。
 第四の動機は,日常診療の中でよく遭遇するコモンな症候や病態を具体的な症例記載を多く用いて解説することにより,本邦ではまだなじみの薄い“General Neurology(総合神経学)”の事始めにしようと考えたことである。欧米では大学の神経内科には少なくとも8~10名の教授陣(と同数程度の部門)があって,その一人(1つ)にGeneral Neurologyの教授(部門)が存在する。そこでは頭痛やめまい,疼痛などへの対処や研究がなされ,同時にあらゆる神経疾患患者の入口の部門としての役割を果たしている。総合診療が一種のブームであるが,神経内科(臨床神経学)は昔から,頭の先から足の先までの各種の症状を扱い,またほとんどの訴えが感覚神経系を通じてなされるので,もともと総合診療を行ってきたのである。本書がGeneral Neurologyの面白さや有用性を伝える一助になればと思う。

 本書では,まず第I編として,日常的によく遭遇する症状を扱う。頭痛,めまい,しびれ(痛み)の外来・救急を訪れる患者の最も多い症状を取り上げ,次いでパーキンソン病とその周辺,物忘れ・デメンチア(認知症),精神症状,高次脳機能障害を取り上げた。その最後に,しばしば「何でもない」「気のせい」と扱われる「奇妙」な症状の章を設けた。それらの症状の半数は他章に記載したものである。筆者の専門分野の1つである脊椎脊髄疾患についてはしびれや第II編の急性四肢麻痺,神経診察の手技の中で一部扱ったが,これまでにたくさん書いてきた脊椎脊髄疾患に関する症例報告と総説は,別の書籍に譲りたいと思う。
 第II編として,緊急処置が必要な病態として,けいれん,意識障害,急性球麻痺,急性四肢麻痺,脳梗塞の章を設けた。脳血管障害の中のくも膜下出血については,第I編の頭痛の章で扱い,脳出血の症候はいくつかの症例で触れたが,多くは脳梗塞に準じて捉えられるので省略した。
 第III編として,神経診察の手技上のポイントと考えかたに加え,画像診断におけるピットフォールの章を設けた。
 全編を通じて,多くの具体的症例を紹介したので,その病歴,診察内容,検査や診断の経過を行を追うように読んでいただきたい。これらの症例記載はホームズの事件簿に相当するという思いがある。なお,画像のうち,MRIについては,そのほとんどが現在の勤務地である亀田メディカルセンターのものであり,水平断がOMライン(眼窩外耳孔線)に-20°である点に注意いただきたい。CTスキャンと一部の以前の勤務地のMRIはOMラインと平行である。これらをいちいち記載するのは煩瑣であるので,省略した。

 最後に,症例や記述の中に取り上げた多くの患者とその家族に最大の謝意を表したい。本書は彼らから教えてもらったことのまとめに過ぎない。次に,個々に名前を挙げないが,筆者とともに患者の診療に当たった同僚医師とメディカルスタッフ,多くの先達,文献の著者達,以前の勤務地の症例の発表を許可していただいた各責任者に深謝したい。本書が日の目を見たのには医学書院諸氏の励ましと尽力があったことを特に記す。

 2014年4月
 福武敏夫

*:作家アーサー・コナン・ドイルが創作したシャーロック・ホームズは1854年に生まれ,1874年に最初の事件を依頼され,1877年に大英博物館のすぐ裏で私立探偵として開業した。Baker Streetに移ったのは1881年のことで,最初の事件簿『緋色の研究』が出版されたのは1887年である。総計60の事件薄があり,104か所に脳卒中,けいれん,髄膜炎,中毒性神経疾患などの神経疾患が登場する。国立神経疾患病院(Queen Square)において1878年に創刊された神経専門誌“Brain”を助手のワトソン博士共々読んでいたと思われる。彼は諸方面に広い知識があるだけでなく,(1)研ぎ澄まされた感覚から注意深い観察を行い,知識と推理力とに結び付けた。(2)細かな点にも注意を払い,食い違いを見つけるのが得意だった。(3)事例の中にある多くの選択肢を常に熟慮した。(4)何が重要で何がそうでないかを見極めるのに長けていた。これらは現代においても神経診断学の方法論をなす。

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第I編 日常診療で遭遇する患者
 第1章 頭痛
  A 頭痛を主体とする疾患を実践的に分類する
  B 患者の属性によって好発する頭痛がある
  C 危険な頭痛
  D 生活改善を要する頭痛
  E 生活支障度の高い頭痛
  F その他の頭痛・顔面痛
  G 頭痛の神経診察のポイント

 第2章 めまい
  A 「めまい」診断の決め手は病歴聴取である
  B 非前庭性めまいを診察,診断する
  C 4つの代表的な良性(非悪性),前庭性(真性)めまい疾患の特徴を理解する
  D その他のめまい疾患(脳血管障害は除く)
  E 脳血管障害に関連するめまい疾患
  F めまい疾患の誘発因子と随伴症状
  G めまいの診察手技

 第3章 しびれ
  A しびれの定義
  B しびれをきたす疾患・病態
  C しびれの部位,性状,経過,誘因などから分かること
  D 上肢のしびれ
  E 下肢のしびれ
  F 四肢のしびれ
  G 顔面のしびれ
  H 顔面と手のしびれ
  I 体幹のしびれ
  J 背中のしびれ
  K 半身のしびれ
  L レベルを有するしびれ
  M 難治性のしびれ
  N その他のしびれ
  O 痒み(かゆみ;itch)

 第4章 パーキンソン病とその周辺
  A パーキンソン病
  B パーキンソン病の運動症状
  C パーキンソン病の非運動症状
  D パーキンソン病のその他の臨床症状
  E パーキンソン病の神経画像検査と心筋シンチグラフィー
  F 遺伝性パーキンソン病
  G パーキンソン病の鑑別診断

 第5章 ふるえの診かた
  A 「ふるえ」とは
  B ふるえを実践的に捉える
  C 意識障害を伴わない急性または反復性のふるえ

 第6章 物忘れ・デメンチア(認知症)
  A デメンチア・痴呆・認知症
  B “attended alone”(1人受診)徴候
  C デメンチアの疫学
  D 物忘れ・デメンチアの診察
  E デメンチアをきたす代表的変性疾患の臨床的特徴と診かた
  F 血管性デメンチア
  G 身体疾患に伴うデメンチア

 第7章 脊髄症状
  A 脊髄の位置と特徴
  B 脊髄ならではの診察のポイント

 第8章 精神症状,高次脳機能障害
  A せん妄とacute confusional state(ACS,急性錯乱状態)
  B 人格変化と前頭葉症候群
  C 無視症候群と半側空間無視
  D カタトニア症候群とカタレプシー
  E 環境依存症候群とそのスペクトラム
  F 人物誤認(フレゴリ症候群)
  G 錯聴
  H 大脳性複視(多重視)
  I いわゆるヒステリーの症候学

 第9章 「心因性」と間違えられやすい疾患
  A 「心因性」という用語について
  B 「心因性」と間違えられやすい疾患(総論)
  C 「心因性」と間違えられそうになった症例

 第10章 「奇妙」な症状

第II編 緊急処置が必要な患者
 第1章 けいれん
  A けいれんと失神の鑑別
  B 真性てんかん性けいれんと心因性非てんかん性けいれん(偽性けいれん)の鑑別
  C てんかんとの鑑別を要するその他の病態
  D 誤診しやすいてんかん病型
  E てんかん重積状態と持続性部分てんかん

 第2章 意識障害
  A 意識と意識障害
  B 一過性意識障害
  C 意識障害と紛らわしい病態
  D 意識障害の原因
  E 意識障害(半昏睡・昏睡)時の診察

 第3章 急性球麻痺
  A 球麻痺をきたす疾患とその特徴
  B 球麻痺と偽性球麻痺の鑑別のポイント
  C 急性の球麻痺の原因と鑑別点

 第4章 急性四肢麻痺

 第5章 脳梗塞
  A どんな時に脳梗塞を疑うか
  B 脳梗塞の分類
  C ラクナ梗塞
  D アテローム性血栓症
  E 心原性脳塞栓症
  F 一過性脳虚血発作(TIA)と一過性神経障害(TND)
  G 血管病
  H 放射線治療による血管障害
  I 若年者の血管(脳梗塞)危険因子

第III編 神経診察のポイントと画像診断のピットフォール
 第1章 神経学的診察の実際
  A 「神経学的診察の実際」へ向かう前に
  B 反射の診かた
  C 運動系の診かた
  D 体性感覚系の診かた
  E 脳神経はこれだけ診ればよい
  F その他の神経診察におけるtips

 第2章 画像診断のピットフォール
  A 撮像部位選択の誤り
  B 画像手段の選択ミス
  C 読みの不足
  D 短絡的判断
  E アーチファクトへの理解不足

索引

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優れた先輩が横で臨床の神髄を指導してくれるようだ
書評者: 安藤 哲朗 (安城更生病院・副院長)
 この本は神経症状をどう診てどう考えるかを,わかりやすく,かつ深く解説している。従来の教科書と全く異なる驚くべき本である。

 著者は“General Neurology”という言葉を使っている。希少な神経難病は神経内科専門医に紹介すればよい。しかし頭痛,めまい,しびれなどは,救急外来や病棟で極めて多い訴えなので,内科医や総合診療医あるいは全ての医師が基本的な対応を身に付ける必要がある。そのために最も有効な方法は,教え上手で優秀な先輩と一緒に診療して指導を受けることである。そのような恵まれた環境にない若手医師にとって,この本は素晴らしい福音である。優れた臨床医である著者の知恵と経験と情熱が随所に散りばめられている。時間のある人は通読してもいい。忙しく時間のないときは診療で疑問に思ったことを目次や索引から該当項目を調べてもいい。きっとそこに福武敏夫先生の適切なアドバイスを見出すことだろう。

 この本は神経診療の初学者・非専門家だけでなく,神経内科専門医にも役立つ。私自身も,この本を読んで長年の疑問が解決できたことが多数あった。初版から大幅に症例数が増えており,記載もさらにわかりやすくなっている。

 全ての医師,研修医,医学生にお薦めする。
診断に関心のある全ての医師に薦めたい
書評者: 岩田 健太郎 (神戸大附属病院感染症内科)
 本書の著者である福武敏夫先生は亀田総合病院神経内科部長であり,前職でお世話になった。私が長く診ていた患者の(私が見逃していた)若年性アルツハイマー病を診断していただいたことが今も忘れられない。

 本書の初版が出たのが2014年。通常,医学書の改訂には5年程度かかることが多い。本書のような診断に関する本は特に情報のターンオーバーが(治療の進歩に比べて)緩やかなので,たった3年で改訂されるというのは稀有な話といえよう。そのことが本書のニーズの高さを物語っている。

 本書は神経診断の指南書であるが,膨大な回路図や画像,身体診察の何とか徴候が羅列されているわけではない。そのような細切れの情報が疾患という全体性を表現できないと著者が考えているからであろう。著者は本書の中で何度か「論理的思考」「帰納法と演繹法のせめぎあい」という言葉を使っている。現象たる疾患全体を丸のままで理解するには患者の全体像を把握する理路が必要だからであろう。部分情報の収集が全体像を作るとは限らないからで,パズルのピースをかき集めてもピースの山盛りができるだけなのだ。ロジカルな思考だけがピースを像たる全体にする。

 本書の博覧強記的な「メモ」は読み物としても面白い。「不思議の国のアリス症候群」の発見者Todd氏がTodd麻痺のToddとは別人だと知るのはちょっとした知的快感だ。膨大な症例も勉強になる。筆者が一つ一つの症例をいかに大事にしているかの証左であり,自身の症例報告もふんだんに引用されている。症例報告は大事なのだ。

 本書を読むべき読者は神経内科医のみならず,全ての診断に関心のある医師であろう。診断能力の高い医師は,例外なく神経に強い。先日も神戸大の若手神経内科医がL.ティアニーに果敢に挑戦し,そして返り討ちにあっていた(対麻痺で発症した血管内リンパ腫の患者だった!)。オーセンティックな神経内科学の学習は診断能力の向上に欠かせない。本書を強くお薦めする理由がそこにある。
初学者から専門医まで神経内科医が座右に置くべき書
書評者: 神田 隆 (山口大教授・神経内科学)
 この書評は京都で開催中の世界神経学会のロビーで書いています。世界中から専門家が集まる国際学会の中にいますと,臨床神経学のバックグラウンドにある神経科学,遺伝学,分子生物学が目覚ましい進歩を遂げていること,疾患の概念,考え方や治療へのアプローチが刻々と変わっていることが身を持って実感できます。

 評者は9年前に研修医・医学生に向けての教科書を単著で上梓しました。5年前に大幅に内容を改訂して第2版を出版,今,第3版の準備をしています。なぜって? このすさまじい進歩のせいです,というしかないのですが,このたび,わが敬愛する福武敏夫先生が『神経症状の診かた・考えかた』の第2版を出されました。初版は福武先生の考え方がストレートに伝わってくる私の愛読書で,とても臨床のよくできる同僚が(失礼)隣にいてくれる気分で読ませていただいていましたが,わずか3年余のスピード改訂となりました。神経診察学・症候学は既に完成された体系です。大きな変化が(たぶん)ないこの分野で,どうしてこんな急な改訂が必要か? 答えはこの本の中に書いてあります。福武先生が伝えたい神経学のエッセンスがこの3年間でどんどん増えてきたこと,しっかり伝えるためにはどうしたらいいかという親切心がさらにパワーアップしたこと,別の言葉で言えば,福武先生の臨床が今なお日々進歩していることの証しだろうと思います。

 医学書が売れない時代に初版が4刷を重ねたことも驚異的ですが,この第2版もリピーターを含め多くの神経内科医が座右に置くことになりましょう。誰に最も役立つ本か? 福武先生は初学者を一つのターゲットに置いておられるようで,確かに学生や研修医に有用なサジェスチョンを与える本だと思いますが,ある程度神経学の臨床経験を積んだ専門家こそ,この本の真価が理解できるものと私は思います。

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