健診データで困ったら
よくある検査異常への対応策

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健診での検査項目がますます多様化している今日、異常値の出た健診結果をもってやってくる患者への対応にとまどう一般医は少なくない。とりわけ、無症状で、検査値(あるいは所見)に軽度の異常がみられた場合、どの程度の間隔で再検するのかは迷うところだ。本書では、外来で一般医が困る健診データ異常のパターンを集め、基本対応とそのエビデンスを示した。
*「ジェネラリストBOOKS」は株式会社医学書院の登録商標です。
シリーズ ジェネラリストBOOKS
編集 伊藤 澄信
発行 2017年04月判型:A5頁:192
ISBN 978-4-260-03054-0
定価 3,960円 (本体3,600円+税)

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編集のことば

 本書は雑誌「JIM」2012年5月号および雑誌「総合診療」2015年8月号の2回にわたって特集された企画「健診データで困ったら」を改訂し書籍化したものである.この2冊の特集号はいずれも「完売」となっており,読者の関心が高かった領域である.書籍化にあたり,執筆者は一部変更されているが,内容は最新のエビデンスに基づいてupdateされている.

 3人に1人が65歳以上,5人に1人が75歳以上となる2025年に向けて,生活習慣病の予防やがんの早期発見・治療を通じた医療費抑制が期待され,生活習慣病の予防や早期発見を目的とした特定健康診査や市町村が実施しているがん検診,労働衛生安全法に基づく定期健康診断の代わりとしての人間ドックなどの健康診断が積極的に実施されている.「健診」は健康づくりの観点から経時的に値を把握することが望ましい検査群,「検診」は疾患自体を確認するための検査群と整理されるが,健診において行われる検査項目の一部は,測定値などにより疾患リスクの確認と疾患自体の確認の両方の性質を持っているので,検査によっては健診か検診かを区別することは難しい.本書内の記載は健診という用語を主に使っている点についてはご容赦いただきたい.

 厚生労働省では「特定健康診査・特定健康診断指導の在り方に関する検討会」,「労働安全衛生法に基づく定期健康診断等のあり方に関する検討会」,「保険者による健診・保健指導等に関する検討会」などが2016年初めから開催され,2018年度の第三期特定健康診査に向けて最終報告書がとりまとめられつつある.特定健診の検査項目について,LDLコレステロールから国際的に用いられているnon-HDLコレステロールに変更される可能性があるなど,健診にも変化の波が押し寄せている.

 がんの体細胞変異に基づく治療薬が一般化し,民間の「遺伝子検査」が低価格で提供され,遺伝子検査についての相談も増えてきた.呼吸機能検査,脳ドック,ピロリ菌,ペプシノゲン検査,腫瘍マーカー,睡眠呼吸検査など異常と判断された「患者」への対応は自分の得意領域以外では自信がもてないことが多い.「健診異常」で困った際に,健診項目に係る最新知識がコンパクトにまとまった本書がジェネラリストの皆様の診療に役立てば望外の幸せである.

 2017年3月
 伊藤澄信

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編集のことば

イントロダクション
 ジェネラリストのための「健診異常」への対応

健診データで困ったら-よくある検査異常への対応策
 【身体測定・生理】
  「BMI(体重)の低下がある」と言われたら
  心電図で「非特異的ST-T変化がある」と言われたら
  「聴力低下がある」と言われたら
  呼吸機能に異常が見つかったら
 【X線・超音波】
  胸部単純X線写真で「胸膜肥厚がある」/「ブラがある」と言われたら
  胸部CTの異常と経過観察の仕方
  「動脈硬化がある」と言われたら
  腹部エコーに異常所見があったら
 【生化学・血液学・血清学・尿】
  血液の検査で異常があったら
   (a:白血球が少ない/b:赤沈が亢進している/c:軽度の貧血がある,と言われた)
  「肝機能が正常でB型肝炎の抗原が陽性」/
   「肝機能が正常でC型肝炎の抗体が陽性」と言われたら
  「ピロリ菌が陽性」と言われたら
  リウマトイド因子(RF)または抗CCP抗体,抗核抗体が陽性だったら
  「血清ペプシノゲン検査が異常」と言われたら
  NT-proBNPが異常値だったら
  腎臓の検査で異常があったら
 【その他】
  「骨量が少ない」と言われたら
  腫瘍マーカーが高かったら
  脳ドック(頭部MRI)で所見を指摘されたら
  睡眠呼吸検査が陽性だったら

索引

ワンポイントレクチャー
 (1)健康診断の至適間隔-健診は毎年必要か?
 (2)臨床検査の標準化と臨床検査値
 (3)健康診断と遺伝子検査-予防医療の時代に向けて
 (4)健康人の「基準範囲」と「臨床判断値」

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健診“異常”に遭遇する悩める医師のためのガイドブック
書評者: 木村 琢磨 (北里大准教授・総合診療医学・地域総合医療学/北里大東病院総合診療・在宅支援センター長)
 評者は「健診や人間ドックで“異常”を指摘された」と受診された方の診療方針について悩むことがあります。早速,伊藤澄信先生ご編集の『健診データで困ったら?』をさまざまな医療機関の外来で使ってみました。

 診療所では「病院に紹介すべきか?」悩むことが多いと思います。ある日,「検診で骨粗鬆症の疑いがあると言われたので整形外科を受診したほうがよいでしょうか?」と高血圧で通院中の方から質問されました。レントゲン設備のある診療所であり,以前にDIP法(第二中手骨)で骨量を測定した際は問題ありませんでした。本書を参照すると,なるほど“検診での判定基準と診断基準は異なる”ことを学びました。そして患者さんに説明することができました。

◆検査結果にまつわるモヤモヤした気持ちが晴れる
 中小病院では「どこまで検査するべきか?」と悩むことが少なくないのではないでしょうか。ある日,「人間ドックでCEAが8.2 ng/mlと高い(基準値5 ng/ml)と言われた」という58歳の男性が来院されました。「無症状の健康な人にどうして腫瘍マーカーを測定するんだ!」などと言う前に目前の方をどうにかせねばなりません。この方は上部消化管内視鏡と腹部エコーで異常はなく便潜血は2回陰性で,がんの家族歴はありません。20年間1日20本の喫煙をしています。本書の「CEAが10 ng/mlまでは喫煙の影響でありうる」という記載を基に本人と相談し,まずは検査介入せずに経過観察の方針となりました(禁煙の話題提供をした上で)。

 大(学)病院では「専門診療科の医師にコンサルトするべきか?」と迷うかもしれません。「会社の健診で心電図に異常があると言われました」という40歳の男性が来院しました。検査結果には“非特異的ST-T変化”との記載があります。本書によると「こうした方の心血管系イベントの発生率が若干高くなるが……」(p.17)とあり,ななんと! そうだったのかと思いつつ読み進めると「リスクファクターの管理に重きをおくことは変わりない。心電図変化にとらわれず,問診や背景情報から方針を決める……」とありました。「ふむふむ」と頷きつつモヤモヤした気持ちは払拭されたのでした。

◆「健診や人間ドックで“異常”と言われた方」の診かたを示す
 以上のように,本書は「健診や人間ドックで“異常”と言われた方」を診る“悩める医師”のためのガイドブックと言えます。項目によっては「フォローアップのタイミング」「患者への説明のポイント」が記載され非常にありがたく,「健診や人間ドックで“異常”と言われた方」の心配を払拭することにも役立つでしょう。唯一望むとすれば,健診や人間ドックという「予防医学的な検査介入」に関するわが国や諸外国(米国予防医学専門委員会のガイドラインなど)におけるエビデンスも提示して頂ければありがたかった。もちろんエビデンスがあるからやる(薦める),ないからやらない(薦めない)という訳ではありませんが,「次の健診や人間ドックを受けるか」という問題へ,受診した方と向き合うための情報となると考えるからです。

 本書を「健診や人間ドックで“異常”と言われた方」を診る全ての“悩める医師”へ強くお薦めいたします。
かかりつけ医が診察室に置いておくべき1冊
書評者: 尾﨑 治夫 (東京都医師会・会長)
 本書の編著者である伊藤澄信先生は,国立病院機構本部総合研究センター長であり,東京都医師会の予防接種委員会のメンバーもお務めいただいていることから,かねてから多方面で東京都医師会の活動にご尽力いただいてきた。

 かかりつけ医,プライマリ・ケア医の臨床現場を熟知しておられるため,本書には,地域の外来医が遭遇する「健診データで困った場合」への対応策が,身体測定・生理,X線・超音波,生化学・血液学・血清学・尿,その他,の各領域ごとに,具体的に実によく書かれている。

 私は循環器内科を専門とする内科医で,医師会活動に多くの時間が割かれてしまう中,今も午前中は診療を行っている。近年,特に予防医療が充実しつつあり,保健事業も盛んになってきていて,多くの患者さんが,人間ドックや健康診断のデータを持参して,「今回,ここがひっかかってしまい心配だ」「この検査の意味するところをわかりやすく教えてほしい」などの質問をされるケースが増えた。心電図や胸部X線写真,動脈硬化の指標,NT-proBNPといった自分の専門領域にかかわることは,比較的よく説明できるが,消化器系や脳,血液,膠原病などの非専門領域では,わかりやすく丁寧な説明ができないこともしばしばある。そのような時に,本書が診察室のデスクの上にあると非常に役立つと思っている。ぜひ,多くのかかりつけ医の先生に,本書を活用していただきたい。

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