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大阪日赤ラパロ教室
イラストで学ぶ腹腔鏡下胃切除[DVD付]

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長年にわたり磨き上げた腹腔鏡下胃切除術のすべてを惜しみなく伝授する手術アトラス。要点を正確に捉えたイラストにより,高度な手技を直観的に理解できる。付属DVDには,ノーカットの手術ビデオ(幽門側胃切除術,胃全摘術)を含む14本(計4時間超)を収載。紙面で解説されている手技を実際の映像で確認することができる。技術向上を目指す外科医必読・必見の手術書。
監修 金谷 誠一郎
編集 赤川 進 / 三浦 晋
発行 2018年06月判型:A4頁:120
ISBN 978-4-260-03167-7
定価 11,000円 (本体10,000円+税)

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  • 序文
  • 目次
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はじめに

 先日,今回が初執刀という若手の腹腔鏡下幽門側胃切除に助手として参加した.もちろん今までに胆摘や結腸切除など多数の腹腔鏡手術の執刀経験があり,また,われわれの行う腹腔鏡下胃切除のカメラマンや助手の経験も豊富な若者である.肝臓の吊り上げに始まり,大網の切離,No.4sb郭清と進み,No.6郭清あたりから剥離層の確認や超音波切開装置を持つ右手の動きが怪しくなり,どうにか十二指腸を切離したものの,膵上縁郭清の途中あたりで手術開始から3時間,もう我慢ができずに手術を取り上げてしまった.いくら腹腔鏡手術で低侵襲とはいっても,長時間の手術になってしまっては患者さんに申し訳ない.初めての手術で,今までいかに自分が術者の目線で手術を見ていなかったのかを反省していたようである.そんな彼も1年後にはD2郭清の幽門側胃切除をこなし,2年も経てば胃全摘を施行し,技術認定に合格するレベルに成長するはずである.今までそんな外科医を何人も見てきた.
 本書はそんな若手外科医のために企画された.胃癌に対する腹腔鏡下胃切除を開始して約20年,機器の開発も含めさまざまな工夫を行ってきた結果,現在ではきわめて安全な腹腔鏡下胃切除を患者さんに提供できるようになった.腹腔鏡の拡大視によって解剖の理解も進み,質の高いリンパ節郭清が可能となって,徐々にではあるが良好な長期成績も蓄積されてきた.そんな大阪赤十字病院で日常診療として行われている各術式を,外科のメンバーが分担執筆してくれた.見開きの半分にイラストを配置し,簡単に手術のコンセプトや要点が把握できるように工夫されている.腹腔鏡下胃切除をマスターしようとする若手外科医に活用され,安全な腹腔鏡下胃切除普及の一助となることを願っている.

 2018年5月
 大阪赤十字病院消化器外科(第一消化器外科部長・外科統括部長)
 金谷 誠一郎

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序論 胃癌に対するリンパ節郭清の考え方

第I章 術前のセッティング
 1.術式選択
 2.体位・配置・機械セッティング
 3.トロッカー配置
 4.肝挙上

第II章 幽門側胃切除術─郭清
 1.No.4sbリンパ節郭清
 2.No.6リンパ節郭清~十二指腸切離
 3.大網切除
 4.膵上縁の郭清:D2郭清
 5.膵上縁の郭清:D1+郭清
 6.No.1リンパ節郭清

第III章 幽門側胃切除術─再建
 1.幽門側胃切除後の再建―総論
 2.Billroth-I法(デルタ吻合)
 3.Billroth-II法
 4.Roux-en-Y法

第IV章 胃全摘術─郭清
 1.No.4saリンパ節郭清:D1+郭清
 2.No.1・No.2リンパ節郭清:D1+郭清
 3.脾門部の郭清:D2+No.10郭清(脾摘)

第V章 胃全摘術─再建
 1.胃全摘後の再建―総論
 2.FEEA法
 3.Overlap法

第VI章 下部食道・噴門側胃切除術
 1.下部食道・噴門側胃切除術
 2.下縦隔郭清
 3.下部食道・噴門側胃切除後の再建

第VII章 その他の手術
 1.腹腔鏡下胃局所切除術
 2.胃空腸バイパス術

あとがき
索引

コラム
 手術手技向上の大切さ
 ラパロができれば,開腹手術もできる?
 金谷先生との出会い
 美意識
 学会発表の勧め
 手術に対する熱意
 若者には刺激を与えろ─金谷流教育法?
 広い視野をもとう

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理論と感性が融合した手術指導書
書評者: 二宮 基樹 (広島記念病院消化器センター長)
 金谷誠一郎先生が『大阪日赤ラパロ教室 イラストで学ぶ腹腔鏡下胃切除』を上梓された。DVD付きである。

 個人の名で,さらに施設名まで冠して手術書を世に問うことは大変勇気の要ることである。論議,時に批判に耐え得る自信がなくてはならないし,DVD映像では言葉ではない手術の真実がさらされる。“本物”にしかできないことである。

 金谷先生といえば,再建で機能的端端吻合であるデルタ吻合を,また郭清でも左胃動脈を先に切離した後にNo.8a,No.11p郭清を行う内側アプローチを提唱された腹腔鏡下胃切除術の先駆者であり革命児である。わが国の腹腔鏡下胃切除術の進歩に大きく貢献し,またし続けているこの領域のリーダーのお一人である。

 本書には術式ごとに郭清と再建を分けて記載してある。そして,見開きの左ページに文章を,右ページに図を載せ視覚的な理解に重点を置いており大変読みやすいし,知りたい項目を容易にひもとけるようになっている。

 また,術者目線で実際に手術を行うに際しての細かなコツや注意点が豊富なイラストとともに簡潔に記述してある。Pointでは,手術の実際に際して役に立つ解説が添えられている。まるで,金谷先生の声が聞こえてきそうである。

 金谷先生の手術は電気メスを多用し膜構造,層構造を重要視している。そして,「待ちの攻め」とでも表現しようか,膜を1枚ずつ切離しながら徐々に郭清対象の軟部組織が浮かび上がってくるのを待ちながら操作を進めている。結果として,郭清は正確で安全となっている。

 また,主要動脈の直線化や膵の軸回転などの著者のアイデアが随所に散りばめられており大変興味深い。

 また,DVDが付いており実際の映像を繰り返し見ることができる。膜および層構造を意識したリンパ節郭清がどのようなものであるかを理解できると思う。

 さらに,助手の場の展開,保存の実際も学ぶことができる。決して垂直に面を作るという単純なものではない。わずかに横に,あるいは奥に傾けたりして,術者に優しい場が展開されている。結果として,全ての操作を開腹と同じ患者右側から行えている。

 コラムに金谷先生の美しい手術へのこだわりが記されている。私も美しいものが正しいと固く信じている。

 本書を手にした読者は大阪日赤病院で主催するラパロ教室に参加して金谷先生直々に腹腔鏡下胃切除術を学んだ気になること請け合いである。かく言う私もその一人である。

 理論に走り過ぎることもなく,感性で訴えるだけでもない読みやすい手術指導書である。経験を問わず,外科医にお薦めしたい良書である。
手術の美(Art)を堪能できるDVDは必見
書評者: 坂井 義治 (京大教授・消化管外科学)
 金谷誠一郎先生とのつきあいは30年になる。手術に「美(Art)」を求める真摯な姿勢は一貫して変わることがない。その背景には,質の高い手術には誰もが感嘆する「美」があり,「美」を有する手術こそ合併症が少なく,外科医が患者に還元できる最高の医療であるとの信念がある。彼の「美」は科学的,あるいは理論的な「技」に立脚する。解剖学/生理学を理解した上でのデルタ吻合の創始,組織損傷をより少なく効率的な剥離・切離を可能にした器機開発からもうかがえる。

 そして癌の根治性を失うことのない合理的な操作手順と,無駄のない術者および的確な指示に呼応する助手の動き,コンサートマスターであり指揮者でもある金谷手術の美しさは本書に添付されたDVDで堪能できる。惜しむらくは現場の録音音声がないことか。これがあれば彼の人間力もさらに理解してもらえたであろうに。

 ポイントごとの解説とシェーマを見開きで読むことができる企画も金谷流アイデアか? しかし,修練医にはぜひともノーカットDVDを繰り返し見ていただきたい。DVDの中で重要なポイントの静止画を頭に焼き付ける補助となるのがシェーマと解説であろう。

 彼の指導を希望する者は国内だけにとどまらない。なぜこれほどまでに陸続と海外からも外科医が大阪日赤に集まるのか? 指導医にとっても本書が有益である理由がここにある。技術的な指導だけでなく,医療者としての信念,哲学もどう伝えるべきか。本書のコラムとともにノーカットDVDを見ていただければ,指導医が修練医に自分の背中を見せるコツをつかむことができる。私もまだ見習うことができていない。

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