完全腹腔鏡下胃切除術 エキスパートに学ぶ体腔内再建法[DVD付]
一針入魂! 達人が伝授する再建手技の極意
もっと見る
高度な技術を要する胃切除後の体腔内再建。当代一流のエキスパートが行う腹腔鏡下の再建法を詳細に解説する。切離のポイント、アンビル挿入のコツ、ステイプラー操作の注意点など、豊富な経験に裏付けされた安全に手術を完遂するためのテクニックを惜しみなく伝授。実際の手術映像を収めたDVD付。レベルアップを目指す内視鏡外科医必読・必見の1冊。
編集 | 永井 英司 |
---|---|
発行 | 2015年07月判型:B5頁:216 |
ISBN | 978-4-260-02103-6 |
定価 | 13,200円 (本体12,000円+税) |
更新情報
-
更新情報はありません。
お気に入り商品に追加すると、この商品の更新情報や関連情報などをマイページでお知らせいたします。
- 序文
- 目次
- 書評
序文
開く
序
胃癌に対する腹腔鏡下手術が1991年Kitanoらによって世界で初めて報告されてから四半世紀が過ぎました.以来,整容性にすぐれ,痛みが軽く,早期の社会復帰が可能であるなどのメリットに加え,保険診療の後ろ盾を得て腹腔鏡下胃切除術は広く受け入れられてきました.早期癌に対しては多くの施設で取り組まれ,そのすそ野は広がっています.また多くの先達の努力により,その適応は進行胃癌にまで広がりつつあります.
胃癌に対する手術では切除のみならず,再建が患者の予後を大きく左右しますが,1881年に初めてBillrothが胃切除術に成功して以来,再建法はいくつか開発され,ブラッシュアップが重ねられほぼ一定の形となっています.腹腔鏡下胃切除術の普及が進む一方,従来の再建法を採用することの安心感は捨てがたく,切除は腹腔鏡下で,再建は小開腹下に,開腹手術で使い慣れた器具を用いて手慣れた方法で行われていることが多いのが実情です.しかしながら実は慣れてしまえば,患者体型に左右されることなくほぼ一定の手技で完遂可能なのが体腔内再建なのです.
そんな時に,完全体腔内再建のセミナー講師の機会を得ることができました.そのセミナーの反響は非常に大きく,参加した方々の多くの意見は,大筋の手技は頭の中に入っているものの細かな点が不明で,体腔内再建に向けての第一歩が踏み出せないというものでした.そういった先生方には背中を押すちょっとしたきっかけが必要であり,そのきっかけがその時のセミナーだったのです.他にも同じように思っている若手の先生方はきっと多く,そんな先生方に何かできないかと考えていた,まさにその時に医学書院の雑誌「臨床外科」の連載のお話を頂きました.そこで同セミナー講師陣の笠間和典先生(四谷メディカルキューブ),稲嶺 進先生(大浜第一病院),木下敬弘先生(国立がん研究センター東病院)と共に何度もメールディスカッションを重ね,当時行われていた再建法をなるべく多く収集し,それぞれを得意とされている先生方に微に入り細を穿ち手技を語りつくしていただくことになりました.その手技は「臨床外科」誌に“必見!完全体腔内再建の極意”として2013年から2015年まで26回にわたり連載されました.
今回,これまでの連載をもとに,さらに達人の先生方の奥義のすべてをつまびらかにしていただくことを目的に,手術映像を加えてこの書籍を上梓する運びとなりました.今後体腔内再建を志す先生方のみならず,ご自身の手技に一抹の不安を感じている先生方やこれまで比較的安定した結果を残してこられた先生方にとっても,細かな点を改善・改良するためにお役立ていただける一冊となっています.
本書上梓にあたりご多忙の中,校正とビデオ編集に多大なるご尽力をいただいたすべての執筆者の先生方に感謝申し上げます.
最後に,この時勢に即した企画を書籍として上梓することに熱く携わってこられた医学書院 林 裕氏のご尽力に敬意を表します.
2015年5月
永井英司
胃癌に対する腹腔鏡下手術が1991年Kitanoらによって世界で初めて報告されてから四半世紀が過ぎました.以来,整容性にすぐれ,痛みが軽く,早期の社会復帰が可能であるなどのメリットに加え,保険診療の後ろ盾を得て腹腔鏡下胃切除術は広く受け入れられてきました.早期癌に対しては多くの施設で取り組まれ,そのすそ野は広がっています.また多くの先達の努力により,その適応は進行胃癌にまで広がりつつあります.
胃癌に対する手術では切除のみならず,再建が患者の予後を大きく左右しますが,1881年に初めてBillrothが胃切除術に成功して以来,再建法はいくつか開発され,ブラッシュアップが重ねられほぼ一定の形となっています.腹腔鏡下胃切除術の普及が進む一方,従来の再建法を採用することの安心感は捨てがたく,切除は腹腔鏡下で,再建は小開腹下に,開腹手術で使い慣れた器具を用いて手慣れた方法で行われていることが多いのが実情です.しかしながら実は慣れてしまえば,患者体型に左右されることなくほぼ一定の手技で完遂可能なのが体腔内再建なのです.
そんな時に,完全体腔内再建のセミナー講師の機会を得ることができました.そのセミナーの反響は非常に大きく,参加した方々の多くの意見は,大筋の手技は頭の中に入っているものの細かな点が不明で,体腔内再建に向けての第一歩が踏み出せないというものでした.そういった先生方には背中を押すちょっとしたきっかけが必要であり,そのきっかけがその時のセミナーだったのです.他にも同じように思っている若手の先生方はきっと多く,そんな先生方に何かできないかと考えていた,まさにその時に医学書院の雑誌「臨床外科」の連載のお話を頂きました.そこで同セミナー講師陣の笠間和典先生(四谷メディカルキューブ),稲嶺 進先生(大浜第一病院),木下敬弘先生(国立がん研究センター東病院)と共に何度もメールディスカッションを重ね,当時行われていた再建法をなるべく多く収集し,それぞれを得意とされている先生方に微に入り細を穿ち手技を語りつくしていただくことになりました.その手技は「臨床外科」誌に“必見!完全体腔内再建の極意”として2013年から2015年まで26回にわたり連載されました.
今回,これまでの連載をもとに,さらに達人の先生方の奥義のすべてをつまびらかにしていただくことを目的に,手術映像を加えてこの書籍を上梓する運びとなりました.今後体腔内再建を志す先生方のみならず,ご自身の手技に一抹の不安を感じている先生方やこれまで比較的安定した結果を残してこられた先生方にとっても,細かな点を改善・改良するためにお役立ていただける一冊となっています.
本書上梓にあたりご多忙の中,校正とビデオ編集に多大なるご尽力をいただいたすべての執筆者の先生方に感謝申し上げます.
最後に,この時勢に即した企画を書籍として上梓することに熱く携わってこられた医学書院 林 裕氏のご尽力に敬意を表します.
2015年5月
永井英司
目次
開く
総論
1 胃切除後再建術式の変遷
1 Billroth Ⅰ法の登場
2 Billroth Ⅱ法の登場
3 B-Ⅱ法の改良と定着
4 Roux-en-Y吻合の登場
5 器械吻合器の登場
2 胃切除後再建術に必要な手縫い吻合,縫合法-アートな世界
1 腹腔鏡のほうが安全で早くて楽!?
2 手縫い吻合の基本
3 手縫い吻合の実際
4 Back to the suture
3 リニアステイプラーとサーキュラーステイプラーの特徴・使い方
1 ステイプラーの基礎知識
2 リニアステイプラー
3 サーキュラーステイプラー
4 間膜閉鎖
1 手技の実際
2 手技の利点と欠点
各論 胃全摘術後再建
1 リニアステイプラーを用いた再建 Overlap法
1 手技の実際
2 手技の利点
2 リニアステイプラーを用いた再建 Overlap法-高位での吻合
1 手技の実際(1):高位での経裂孔的overlap法による食道空腸再建
2 手技の実際(2):胸腔鏡併用高位縦隔内overlap法による食道空腸再建
3 手技の利点と欠点
3 リニアステイプラーを用いた再建 Overlap法-Inverted-T
1 手技の実際
2 手技のポイントと特徴
4 リニアステイプラーを用いた再建 Functional法
1 Functional法での基本原則
2 手技の実際
3 手技の成績
4 手技の利点と欠点
5 サーキュラーステイプラーを用いた再建 経口的アンビル挿入法
1 手技の実際
2 手技の利点
6 サーキュラーステイプラーを用いた再建 引き上げ法
1 セッティング-手術体位と皮膚切開の位置
2 手技の実際
7 サーキュラーステイプラーを用いた再建 手縫い巾着縫合法
1 手技の実際
2 手技の利点と欠点
8 サーキュラーステイプラーを用いた再建 手縫いまつり縫い法
1 手技の実際
2 手技のポイントと特徴
9 サーキュラーステイプラーを用いた再建 EST法
1 新EST法の特徴
2 手技の実際
3 手技のポイントと特徴
10 完全手縫い法
1 手技の実際
2 手技の利点と欠点
各論 幽門側胃切除術後再建
1 Billroth Ⅰ法-デルタ吻合
1 手技の実際
2 手技のポイントと特徴
2 Billroth Ⅰ法-体腔内手縫い
1 手技の実際
2 手技の利点と欠点
3 Billroth Ⅰ法-新三角吻合
1 手技の実際
2 手技のポイント
4 Billroth Ⅱ法
1 手技の実際
2 手技の利点と欠点
3 手技のポイントと注意点
5 Roux-en-Y法-リニア+手縫い
1 手技の実際
2 手技の利点と欠点
6 Roux-en-Y法-リニア再建(β再建)
1 手技の実際
2 手技の利点と欠点
7 Roux-en-Y法-リニア再建(順蠕動)
1 手技の実際
2 手技のポイントと特徴
8 Roux-en-Y法-リニア再建(逆蠕動)
1 手技の実際
2 手技の利点と欠点
各論 噴門側胃切除術後再建
1 手縫い食道胃吻合-ナイフレス自動縫合器による固定先行法
1 手技の実際
2 手技の利点と欠点
2 ダブルトラクト法,空腸間置法
1 手技の実際(1):ダブルトラクト再建
2 手技の実際(2):空腸間置再建
3 手技のポイントと特徴
3 観音開き法
1 術前準備
2 手技の実際
3 手技の利点と欠点
4 細径胃管を用いた再建法
1 手技の実際
2 手技のポイントと特徴
索引
1 胃切除後再建術式の変遷
1 Billroth Ⅰ法の登場
2 Billroth Ⅱ法の登場
3 B-Ⅱ法の改良と定着
4 Roux-en-Y吻合の登場
5 器械吻合器の登場
2 胃切除後再建術に必要な手縫い吻合,縫合法-アートな世界
1 腹腔鏡のほうが安全で早くて楽!?
2 手縫い吻合の基本
3 手縫い吻合の実際
4 Back to the suture
3 リニアステイプラーとサーキュラーステイプラーの特徴・使い方
1 ステイプラーの基礎知識
2 リニアステイプラー
3 サーキュラーステイプラー
4 間膜閉鎖
1 手技の実際
2 手技の利点と欠点
各論 胃全摘術後再建
1 リニアステイプラーを用いた再建 Overlap法
1 手技の実際
2 手技の利点
2 リニアステイプラーを用いた再建 Overlap法-高位での吻合
1 手技の実際(1):高位での経裂孔的overlap法による食道空腸再建
2 手技の実際(2):胸腔鏡併用高位縦隔内overlap法による食道空腸再建
3 手技の利点と欠点
3 リニアステイプラーを用いた再建 Overlap法-Inverted-T
1 手技の実際
2 手技のポイントと特徴
4 リニアステイプラーを用いた再建 Functional法
1 Functional法での基本原則
2 手技の実際
3 手技の成績
4 手技の利点と欠点
5 サーキュラーステイプラーを用いた再建 経口的アンビル挿入法
1 手技の実際
2 手技の利点
6 サーキュラーステイプラーを用いた再建 引き上げ法
1 セッティング-手術体位と皮膚切開の位置
2 手技の実際
7 サーキュラーステイプラーを用いた再建 手縫い巾着縫合法
1 手技の実際
2 手技の利点と欠点
8 サーキュラーステイプラーを用いた再建 手縫いまつり縫い法
1 手技の実際
2 手技のポイントと特徴
9 サーキュラーステイプラーを用いた再建 EST法
1 新EST法の特徴
2 手技の実際
3 手技のポイントと特徴
10 完全手縫い法
1 手技の実際
2 手技の利点と欠点
各論 幽門側胃切除術後再建
1 Billroth Ⅰ法-デルタ吻合
1 手技の実際
2 手技のポイントと特徴
2 Billroth Ⅰ法-体腔内手縫い
1 手技の実際
2 手技の利点と欠点
3 Billroth Ⅰ法-新三角吻合
1 手技の実際
2 手技のポイント
4 Billroth Ⅱ法
1 手技の実際
2 手技の利点と欠点
3 手技のポイントと注意点
5 Roux-en-Y法-リニア+手縫い
1 手技の実際
2 手技の利点と欠点
6 Roux-en-Y法-リニア再建(β再建)
1 手技の実際
2 手技の利点と欠点
7 Roux-en-Y法-リニア再建(順蠕動)
1 手技の実際
2 手技のポイントと特徴
8 Roux-en-Y法-リニア再建(逆蠕動)
1 手技の実際
2 手技の利点と欠点
各論 噴門側胃切除術後再建
1 手縫い食道胃吻合-ナイフレス自動縫合器による固定先行法
1 手技の実際
2 手技の利点と欠点
2 ダブルトラクト法,空腸間置法
1 手技の実際(1):ダブルトラクト再建
2 手技の実際(2):空腸間置再建
3 手技のポイントと特徴
3 観音開き法
1 術前準備
2 手技の実際
3 手技の利点と欠点
4 細径胃管を用いた再建法
1 手技の実際
2 手技のポイントと特徴
索引
書評
開く
代表的な体腔内再建法のポイントを解説
書評者: 二宮 基樹 (広島市立広島市民病院外科部長/副院長)
胃癌手術は郭清と再建から成る。郭清が不十分であれば長期予後を悪くするし,再建法が誤っていれば短期予後を悪くし時に致死的ともなり得る。
胃癌手術の最初の成功者がBillrothとされているのも,再建に成功し患者が術後状態から回復し経口摂取ができるようになり,日常生活に復帰し得たからである。
胃癌に対する腹腔鏡下胃切除術は,当初技術的にリンパ節郭清が難点とされていた。しかし,先達の粘り強い努力と工夫により,その技術水準はかつての開腹手術を凌ぐ水準にまで至った。
現在,残された課題は再建である。そして,急速に完全腹腔鏡下胃切除術の波が押し寄せてきた近年,それに対応した再建法が開発され工夫されてきた。
本書は,本邦のリーダー的外科医が執筆しており,これまで報告されてきた代表的な体腔内再建法を取り上げている。
各再建法は1.手技の実際,2.手技の利点・欠点あるいはポイント,3.エキスパートからのアドバイスという3項目から成っている。各再建法の開発者が要点と盲点をわかりやすく紹介しているが,説明の文章は手術室での会話のように,簡潔かつ極めて実践的で臨場感に富んでいる。
各手技の肝となる重要なポイントでは,多くの鮮明な写真や美しい図による解説があり理解を容易にしていることも特徴の一つである。
さらに,理解を深く確実なものにするためにDVDも添付されており,手技の実際を映像で学ぶことができる。
本書を一読すれば,本邦の現時点における完全腹腔鏡下胃切除術に伴う体腔内再建法を把握することができ,読者にとってより魅力的と思われる手技を個々に選択することができる。
本書の格式をさらに高くしているのは総論である。BillrothのI,II法からRoux-en-Y吻合等の吻合法に加えて,リニアおよびサーキュラーステイプラーの歴史的変遷を興味深い多くの資料を図示しながら解説してあり,外科医の基礎知識として極めて有用である。
また,近年進化の著しい手縫い吻合,縫合法の基本と実際も理論的実践的に詳述してある。体腔内再建を安全に行うためには手縫い縫合の技術習得は必須であり,今後その重要性はますます高まっていくものと思われる。基礎知識の理解が習熟度を上げるのに効果的と思われる。
本書は,体腔内再建法を学びたい,あるいは理解したい外科医にお薦めしたい良書である。
安全な手技の普及を促進する上質な手術指南書
書評者: 谷川 允彦 (谷川記念病院院長・理事長)
最新の腹腔鏡下胃癌手術の中でハイライトと言える“体腔内再建法”をテーマにした本書は,医学書院の雑誌『臨床外科』の連載を土台にして永井英司先生が企画編集されたものですが,わが国におけるこの分野の達人と評価の高い先生方がそれぞれ得意とする領域で,その技量を付属するビデオも通して,わかりやすく,また,画像的にも美しく表現されています。外科学の中で,日進月歩の医用工学に最も影響され,進化しているのが内視鏡外科学と思われますが,それぞれの達人により無血の術野で展開される新器材を利用したエキスパート手技が,これも画期的進化の只中の鮮明な映像で美しく表現されています。
1991年に始まった腹腔鏡下胃癌手術の過去25年間の普及は目覚しいもので,年間の手術症例数は3~4年前まで回帰関数的な増加を示してきました。わが国において,11万~12万人の年間胃癌罹患患者に対して(http://ganjoho.jp/public/index.html),National Clinical Database(NCD)や厚生労働省データベースによると2011年から直近の2014年にかけて1年間に51,000~55,000人に胃癌切除再建術式が行われており,そのうちの約30%の症例に腹腔鏡手術が行われるようになってきています。その実施率が腹腔鏡下大腸癌手術の場合よりも低いことについては,エビデンスが乏しいことから最新の胃癌治療ガイドライン(2014年)においても限られた範囲の推奨であることが大きく影響していると思われますが,進行胃癌を対象にした第III相比較臨床試験が現在,複数進行していることから考えて,腹腔鏡手術が近い将来にはさらに重要な地位を占めるようになると予想されます。
腹腔鏡下胃癌手術は手技的に領域リンパ節郭清法と再建法とに大別されますが,前者が標準化された感のあるなかで,腹腔鏡補助下手技を含まない,より進化した完全腹腔鏡下再建法に焦点を当てた本書は,手技の安全な普及に向けてその発刊の意義は極めて大きいと思われます。今後のこの分野の発展に大きく貢献する上質な手術指南書として,敬意を持って推薦する次第です。
再建手技の極意を知ることができる貴重な手引き書
書評者: 黒川 良望 (四谷メディカルキューブ理事長/院長)
◆完全腹腔鏡下胃切除術の体腔内再建法を詳解した胃外科医必携のバイブル
1991年に世界に先駆けてわが国で開発された胃がんに対する腹腔鏡下手術は,低侵襲手術術式として定着し,今まさに発展期を迎えている。腹腔鏡下胃切除術は,デバイスの進歩と手技の定型化により,若手外科医にも広く施行されるようになってきているが,複雑な再建方法や層を意識したリンパ節郭清など,他の腹腔鏡下手術と比べると決してやさしい手術ではない。胃切除は腹腔鏡下に行い,再建は小開腹下に開腹手術と同様の手技で行っている医師も依然として多いのが実情である。
この本は,この領域のエキスパート達によって共同執筆された,「完全腹腔鏡下胃切除術」,その中でも「体腔内再建法」に焦点を絞った単行書である。
◆エキスパート達の再建手技の極意をまとめた貴重な手引き書
この本を手にする者は,腹腔鏡下胃切除術に対してある程度の経験があり,より安全で確実な再建方法を模索している,一定レベル以上の外科医が大半であろう。胃切除後の再建方法は切除範囲により異なり,完全手縫い法,リニアステイプラーを用いた再建法,サーキュラーステイプラーを用いた吻合法など多くの種類があるが,この本には根治性と術後QOLの向上を目指し,無駄を省き細部にこだわり抜いたエキスパート達の再建手技の極意が余すところなくまとめられており,実際の手術の際に直ちに役立つ,貴重な手引き書となっている。
◆付録DVDに全ての術式が動画として収載
本書は『臨床外科』誌に26回にわたり連載され好評であった「必見!完全体腔内再建の極意」をまとめたものだが,連載時には明確にはイメージできなかった実際の器具や臓器の取り回しが付録DVD動画で確認できるのはありがたい。全ての術式が収載されており,実際の手術直前に当該術式だけを抜き出して閲覧すれば術前のイメージトレーニングとして大いに役立つだろう。
本書を座右に置き,エキスパート達の手技を参考にしながら,いかなる事態にも対処できるように技術を磨き,安全で確実な体腔内再建方法を身につけていただきたいと念願している。
技術向上へ導く優れたコーチ
書評者: 山本 学 (足立共済病院院長/第5回日本内視鏡外科学会大上賞受賞)
ご存知の先生も数多くおられるとは思うが,本書は医学書院から発売されている雑誌『臨床外科』で,2013~2015年にわたって連載された「必見!完全体腔内再建の極意」をまとめたものである。その内容は,完全腹腔鏡下胃切除術における再建術式に焦点を当てたもので,極めて貴重かつ実践的なものである。しかも,本書はただ掲載論文をまとめただけでなく,新たに実際の手術映像を収録したDVDを加え,まさに「完全腹腔鏡下胃切除術」を目指す読者にとってバイブルとなる,唯一無二のテキストである。
本書が出版されるまでの経緯は,編者の永井英司先生が「序」で述べておられるように,腹腔鏡下胃切除術を行っている外科医の技術向上に対する熱意が作り上げた一冊と言ってよい。
タイトルにもある「エキスパートに学ぶ」という言葉は,よく目にするものであるが,手術の上手な外科医が教えるのもうまいとは限らない。本書に名を連ねるエキスパート達は,いずれもセミナーなどで優れた教育法を実践している方ばかりであり,その内容は完璧とも言える。
もちろん,外科に限らず,ある手技を習得しようとするならば,座学のみでは不可能である。しかし,ただ実践あるのみ!と手術をするだけでは,上達への道のりは遠回りであり,何よりも「learning curve」という犠牲者を出すことにもなりかねない。正しい理論に基づいた正しい手技を効率的に学ぶことは,患者の生命を守る医師として,義務とも言える最重要命題である。プロのアスリートが日々の練習を怠らないように,外科医も日々研さんを積まねばならない。また,彼らには優れたコーチが存在するように,外科医もまた良いコーチが必要である。
本書は,必ずしも毎日コーチがいない環境の外科医に対してコーチングを行ってくれるだけでなく,既にコーチがいる者に対しても,もっとうまくなりたい,執筆者の手技が見たい,直接教えてほしい,などのモティベーションを喚起してくれる内容である。
繰り返しになるが,手術はテキストやビデオを見るだけでは上達しない。しかしながら,これら抜きでは間違った手技を身につける恐れさえある。本書を座学と実践両輪の一輪として,全ての腹腔鏡下胃切除術を行う外科医が活用し,安全で治療効果の高い手術を実践していただければ,本書に関わった全ての方の喜びであると信じて疑わない。
書評者: 二宮 基樹 (広島市立広島市民病院外科部長/副院長)
胃癌手術は郭清と再建から成る。郭清が不十分であれば長期予後を悪くするし,再建法が誤っていれば短期予後を悪くし時に致死的ともなり得る。
胃癌手術の最初の成功者がBillrothとされているのも,再建に成功し患者が術後状態から回復し経口摂取ができるようになり,日常生活に復帰し得たからである。
胃癌に対する腹腔鏡下胃切除術は,当初技術的にリンパ節郭清が難点とされていた。しかし,先達の粘り強い努力と工夫により,その技術水準はかつての開腹手術を凌ぐ水準にまで至った。
現在,残された課題は再建である。そして,急速に完全腹腔鏡下胃切除術の波が押し寄せてきた近年,それに対応した再建法が開発され工夫されてきた。
本書は,本邦のリーダー的外科医が執筆しており,これまで報告されてきた代表的な体腔内再建法を取り上げている。
各再建法は1.手技の実際,2.手技の利点・欠点あるいはポイント,3.エキスパートからのアドバイスという3項目から成っている。各再建法の開発者が要点と盲点をわかりやすく紹介しているが,説明の文章は手術室での会話のように,簡潔かつ極めて実践的で臨場感に富んでいる。
各手技の肝となる重要なポイントでは,多くの鮮明な写真や美しい図による解説があり理解を容易にしていることも特徴の一つである。
さらに,理解を深く確実なものにするためにDVDも添付されており,手技の実際を映像で学ぶことができる。
本書を一読すれば,本邦の現時点における完全腹腔鏡下胃切除術に伴う体腔内再建法を把握することができ,読者にとってより魅力的と思われる手技を個々に選択することができる。
本書の格式をさらに高くしているのは総論である。BillrothのI,II法からRoux-en-Y吻合等の吻合法に加えて,リニアおよびサーキュラーステイプラーの歴史的変遷を興味深い多くの資料を図示しながら解説してあり,外科医の基礎知識として極めて有用である。
また,近年進化の著しい手縫い吻合,縫合法の基本と実際も理論的実践的に詳述してある。体腔内再建を安全に行うためには手縫い縫合の技術習得は必須であり,今後その重要性はますます高まっていくものと思われる。基礎知識の理解が習熟度を上げるのに効果的と思われる。
本書は,体腔内再建法を学びたい,あるいは理解したい外科医にお薦めしたい良書である。
安全な手技の普及を促進する上質な手術指南書
書評者: 谷川 允彦 (谷川記念病院院長・理事長)
最新の腹腔鏡下胃癌手術の中でハイライトと言える“体腔内再建法”をテーマにした本書は,医学書院の雑誌『臨床外科』の連載を土台にして永井英司先生が企画編集されたものですが,わが国におけるこの分野の達人と評価の高い先生方がそれぞれ得意とする領域で,その技量を付属するビデオも通して,わかりやすく,また,画像的にも美しく表現されています。外科学の中で,日進月歩の医用工学に最も影響され,進化しているのが内視鏡外科学と思われますが,それぞれの達人により無血の術野で展開される新器材を利用したエキスパート手技が,これも画期的進化の只中の鮮明な映像で美しく表現されています。
1991年に始まった腹腔鏡下胃癌手術の過去25年間の普及は目覚しいもので,年間の手術症例数は3~4年前まで回帰関数的な増加を示してきました。わが国において,11万~12万人の年間胃癌罹患患者に対して(http://ganjoho.jp/public/index.html),National Clinical Database(NCD)や厚生労働省データベースによると2011年から直近の2014年にかけて1年間に51,000~55,000人に胃癌切除再建術式が行われており,そのうちの約30%の症例に腹腔鏡手術が行われるようになってきています。その実施率が腹腔鏡下大腸癌手術の場合よりも低いことについては,エビデンスが乏しいことから最新の胃癌治療ガイドライン(2014年)においても限られた範囲の推奨であることが大きく影響していると思われますが,進行胃癌を対象にした第III相比較臨床試験が現在,複数進行していることから考えて,腹腔鏡手術が近い将来にはさらに重要な地位を占めるようになると予想されます。
腹腔鏡下胃癌手術は手技的に領域リンパ節郭清法と再建法とに大別されますが,前者が標準化された感のあるなかで,腹腔鏡補助下手技を含まない,より進化した完全腹腔鏡下再建法に焦点を当てた本書は,手技の安全な普及に向けてその発刊の意義は極めて大きいと思われます。今後のこの分野の発展に大きく貢献する上質な手術指南書として,敬意を持って推薦する次第です。
再建手技の極意を知ることができる貴重な手引き書
書評者: 黒川 良望 (四谷メディカルキューブ理事長/院長)
◆完全腹腔鏡下胃切除術の体腔内再建法を詳解した胃外科医必携のバイブル
1991年に世界に先駆けてわが国で開発された胃がんに対する腹腔鏡下手術は,低侵襲手術術式として定着し,今まさに発展期を迎えている。腹腔鏡下胃切除術は,デバイスの進歩と手技の定型化により,若手外科医にも広く施行されるようになってきているが,複雑な再建方法や層を意識したリンパ節郭清など,他の腹腔鏡下手術と比べると決してやさしい手術ではない。胃切除は腹腔鏡下に行い,再建は小開腹下に開腹手術と同様の手技で行っている医師も依然として多いのが実情である。
この本は,この領域のエキスパート達によって共同執筆された,「完全腹腔鏡下胃切除術」,その中でも「体腔内再建法」に焦点を絞った単行書である。
◆エキスパート達の再建手技の極意をまとめた貴重な手引き書
この本を手にする者は,腹腔鏡下胃切除術に対してある程度の経験があり,より安全で確実な再建方法を模索している,一定レベル以上の外科医が大半であろう。胃切除後の再建方法は切除範囲により異なり,完全手縫い法,リニアステイプラーを用いた再建法,サーキュラーステイプラーを用いた吻合法など多くの種類があるが,この本には根治性と術後QOLの向上を目指し,無駄を省き細部にこだわり抜いたエキスパート達の再建手技の極意が余すところなくまとめられており,実際の手術の際に直ちに役立つ,貴重な手引き書となっている。
◆付録DVDに全ての術式が動画として収載
本書は『臨床外科』誌に26回にわたり連載され好評であった「必見!完全体腔内再建の極意」をまとめたものだが,連載時には明確にはイメージできなかった実際の器具や臓器の取り回しが付録DVD動画で確認できるのはありがたい。全ての術式が収載されており,実際の手術直前に当該術式だけを抜き出して閲覧すれば術前のイメージトレーニングとして大いに役立つだろう。
本書を座右に置き,エキスパート達の手技を参考にしながら,いかなる事態にも対処できるように技術を磨き,安全で確実な体腔内再建方法を身につけていただきたいと念願している。
技術向上へ導く優れたコーチ
書評者: 山本 学 (足立共済病院院長/第5回日本内視鏡外科学会大上賞受賞)
ご存知の先生も数多くおられるとは思うが,本書は医学書院から発売されている雑誌『臨床外科』で,2013~2015年にわたって連載された「必見!完全体腔内再建の極意」をまとめたものである。その内容は,完全腹腔鏡下胃切除術における再建術式に焦点を当てたもので,極めて貴重かつ実践的なものである。しかも,本書はただ掲載論文をまとめただけでなく,新たに実際の手術映像を収録したDVDを加え,まさに「完全腹腔鏡下胃切除術」を目指す読者にとってバイブルとなる,唯一無二のテキストである。
本書が出版されるまでの経緯は,編者の永井英司先生が「序」で述べておられるように,腹腔鏡下胃切除術を行っている外科医の技術向上に対する熱意が作り上げた一冊と言ってよい。
タイトルにもある「エキスパートに学ぶ」という言葉は,よく目にするものであるが,手術の上手な外科医が教えるのもうまいとは限らない。本書に名を連ねるエキスパート達は,いずれもセミナーなどで優れた教育法を実践している方ばかりであり,その内容は完璧とも言える。
もちろん,外科に限らず,ある手技を習得しようとするならば,座学のみでは不可能である。しかし,ただ実践あるのみ!と手術をするだけでは,上達への道のりは遠回りであり,何よりも「learning curve」という犠牲者を出すことにもなりかねない。正しい理論に基づいた正しい手技を効率的に学ぶことは,患者の生命を守る医師として,義務とも言える最重要命題である。プロのアスリートが日々の練習を怠らないように,外科医も日々研さんを積まねばならない。また,彼らには優れたコーチが存在するように,外科医もまた良いコーチが必要である。
本書は,必ずしも毎日コーチがいない環境の外科医に対してコーチングを行ってくれるだけでなく,既にコーチがいる者に対しても,もっとうまくなりたい,執筆者の手技が見たい,直接教えてほしい,などのモティベーションを喚起してくれる内容である。
繰り返しになるが,手術はテキストやビデオを見るだけでは上達しない。しかしながら,これら抜きでは間違った手技を身につける恐れさえある。本書を座学と実践両輪の一輪として,全ての腹腔鏡下胃切除術を行う外科医が活用し,安全で治療効果の高い手術を実践していただければ,本書に関わった全ての方の喜びであると信じて疑わない。
更新情報
-
更新情報はありません。
お気に入り商品に追加すると、この商品の更新情報や関連情報などをマイページでお知らせいたします。