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新人看護師の成長を支援するOJT

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新人看護師の指導・支援にかかわるすべての指導者(実地指導者、プリセプター、メンター、エルダー…etc)必読。新人の成長のキモとなるOJT(On-the-Job Training)のポイントが詰まった1冊。成人学習の理論をもとに、指導者の「役割」、おさえておきたい「基礎知識」、新人の目線から描く指導にまつわる「場面」、具体的なOJTの実践をまとめた「実行プラン」で、指導の幅が広がる。
西田 朋子
発行 2016年04月判型:A5頁:184
ISBN 978-4-260-02525-6
定価 2,640円 (本体2,400円+税)

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はじめに

 本書は,新人看護師の指導や支援にたずさわるすべての指導者に手に取っていただきたい本です。
 近年,医療現場はますます多忙になっています。新人看護師が自立して看護実践できるようになることは重要であるため,多忙な中であっても,さまざまな教育の機会が提供されます。集合研修もその1つですが,集合研修は時間も機会も限られていますので,集合研修に頼るだけでは新人看護師を育てていくには限界があります。そこで,重要になるのが,現場で展開されるOJT(On-the-Job Training)です。本書では,このOJTを進めるうえで参考になる考え方や実行プランを紹介しています。
 多くの指導者は,新人看護師に少しでも早く一人前になってほしいと願う一方,多忙な環境の中で指導者自身も看護実践をしながら,新人看護師の成長を促す難しさを少なからず感じています。そのため,新人看護師を育てることの大切さを頭では理解していても,実際にどのように指導や支援をしたらよいのか悩んだり,新人看護師が思うように育たないことに焦りを感じる傾向にあります。また,自分の行ってきた指導をじっくり振り返る機会をもてずに,自身の指導に対する意味づけができず,指導は大変だというネガティブなイメージがつきまとってしまうことも少なくありません。
 しかし,人を育てることは,それを通して指導者も看護師として,人として今よりも成長していくことができる,またとない機会です。そこで,周囲のちからを借りながら,この機会を指導者としてうまく活用してほしいと考えています。
 本書の特徴は,理論の紹介だけ,OJTのコツという実践の提示だけというように,どちらか一方だけにかたよった内容にするのではなく,両方をできるだけバランスよく配置していることです。また,ポジティブに指導者の役割にのぞめるようなメッセージも記しています。
 特に他書にはない切り口は,筆者がこれまでにさまざまな場面で出会った新人看護師のリアルな姿や語りを紹介し,その現象を紐解きながら,指導や支援につなげていくための考えの基盤を解説し,OJTの実行プランを紹介していることです(主に第2部)。教える側に立つと,どうしても教える側の論理だけで教え方や支援の仕方を考えてしまいがちですが,学びの中心は学習者,つまりここでは新人看護師です。そのため,新人看護師の姿をもとに指導や支援のあり方を考えているところが本書の最大の特徴です。
 また,単にOJTの実行プランを紹介するだけではなく,基盤となる考えや理論を紹介しています(第1部)。これは,指導という経験を意味づけたり,指導の幅を広げていくための指導力の基礎がつくられることを期待しているからです。
 本書は,イントロダクション,第1部(基礎編),第2部(実践編)から構成されていますが,はじめからすべて網羅的に読む必要はありません。第2部のOJTのコツだけ読んで実践してみてもよいですし,むしろどうしてこういうコツがでてくるのだろう?とそれぞれの根拠になる考えを読んでいただいてもかまいません。また,事例を読んでみるだけでも,今いる現場を理解する手立てになるかもしれません。読者の方が,読みやすいところをきっかけにして,読み進めていただけるとよいと思います。
 新人看護師の指導や支援は難しい,と思うかもしれませんが,そのときに頼るツールの1つとして本書を活用していただけると嬉しく思います。そして,読者の皆さんが,新人指導をすることで人を育てることへの関心をもち,指導者という役割を通して,看護職としてさらに成長されることを願っています。

 2016年2月
 西田朋子

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イントロダクション 前向きに指導にのぞむために
 新人看護師を育てることと指導者として育つこと
   1.いま求められる新人看護師育成
     集合研修とOJT
   2.新人看護師の指導とOJT
     指導する側の課題
     新人指導を自信につなげる
   3.本書が対象とする指導者
   4.本書の構成と立場による読み方
     OJTの指導方法や内容に決まったこたえはない
 前向きに指導にのぞむために
   1.指導・支援に“絶対”はない
     自分の指導・支援の評価者は新人である
     新人が変化することが大切
     新人がいるから指導も支援もできる
   2.指導経験から学ぶ
     指導経験は指導力をつける貴重な材料
     振り返り,意味づけて次に活かす
   3.周りのちからを借りて指導や支援を行う
     指導者が1人で抱え込まず,組織全体で新人を育成する
     他のスタッフの強みを発見して依頼する
   4.叱ることは必要-叱ると怒るは違う
   5.新人がヒヤリ・ハットに遭遇したとき
   6.退職した新人がいても無意味に自分を責めない

第1部 基礎編 OJTを展開するための基礎知識
 I.指導者として期待される姿
   1.役割として期待されていることを知る
     プリセプターシップ
     指導者として担う役割
   2.指導を通して成長する
     教えることは学びなおす機会
     異なる価値観に触れる
     与えられた役割を受け入れ,挑戦してみる
   3.指導をするうえでつけていきたいちから
     新人にあわせた目標の設定
     評価をするちから
     振り返っていくことができるちから
     新人を待つことができるちから
   4.配慮と工夫をして指導場面で言葉を使う
     年上の新人に教えること
     常に相手を大切にした言葉を使う
     意欲を向上させたり,低下させた言葉
   5.定点観測で新人の変化に気づき支援する
     定期的な声かけで新人の状況を把握する
 II.看護におけるOJT
   1.新人看護師が学ぶ機会
   2.OJTでねらいたいこと
     仕事で必要な能力を身につける
   3.OJTの必要性と展開の難しさ
     実践経験から学び成長する
     OJTのメリット
     看護現場でOJTを展開する難しさ
   4.OJTとOff-JTがつながる仕組みをつくる
     連動するための仕組み
     Off-JTで行われた内容や方法を知る
     マニュアルの整備
   5.OJTをよりよく機能させるために
     指導者が育つこと
     事例の蓄積
 III.新人看護師の特徴
   1.さまざまな“新人”看護師
     個別性を活かすための個々に合わせた指導
   2.新人看護師と社会化
     職業社会化
     組織社会化
   3.新人の特徴
     成長発達段階
     学習者としての特徴
     その時々の若者の特徴
 IV.おとなの学習者である新人看護師
   1.成人学習者の特徴と成人学習を理解する意義
     おとなにはおとなの学び方がある
     ペタゴジーとアンドラゴジー
   2.成人学習者の特徴
     ノールズの考える4項目の成人学習者の特徴
   3.成人学習者のすぐれた学習の条件と支援する人の役割
     支援する人の基本的な立場
     すぐれた学習の条件と支援する人の役割

第2部 実践編 新人看護師の姿から紐解くOJTのコツ
 1 新人と関係を築く
   新人の理解を深める
   指導者の気持ち
     プリセプターも不安を抱えている
   新人教育にプリセプターシップがもたらすこと
     指導体制の1つとしてのプリセプターシップ
     プリセプターが支援する期間
     関係を築くことが指導を効果的にする
   OJTの実行につなげるために
     新人のことを早い時期に知る
     指導者として自分のことも新人に知ってもらう
     コミュニケーションが苦手でも自分から話をする機会をつくってみる
 2 職場に居場所をつくる
   新人の理解を深める
   居場所を得ることと職場適応
     居場所を得ること
     役割を通して社会とつながる
   OJTの実行につなげるために
     実際にいてよい場所を伝える
     新人でも担うことができる役割を明確にする
     指導者である自分にとっても居心地がよい職場か
 3 看護職としての基本姿勢と態度をはぐくむ
   新人の理解を深める
   指導者の気持ち
   臨床実践能力の構造と基礎教育での学習状況
     臨床実践能力の構造
     基本姿勢と態度に関する基礎教育での学習状況
   OJTの実行につなげるために
     個人の価値観や信念が影響する姿勢と態度
     モデルを示してじっくりはぐくむ
 4 シャドウイングを効果的に運用して新人の実践につなげる
   新人の理解を深める
   シャドウイングを効果的に活用する
     シャドウイングとはそもそも何か
     看護現場で,シャドウイングをうまく機能させるために
   OJTの実行につなげるために
 5 目標を立て,目標に行きつく方法を一緒に考える
   新人の理解を深める
   成長のために意味ある目標にして活用する
     目標は何のためにあるのか
     目標に行きつくための方法を具体化する
   OJTの実行につなげるために
     目標と方法は新人の現状によって再設定する
     目標や達成までの方法を自分のものとして考えられるようにする
     指導者が新人の目標を理解する
 6 “わかる”と“できる”の違いをふまえて教える
   新人の理解を深める
   “わかる”と“できる”の特徴を知り,かかわる
     “わかる”の特徴とかかわり
     “できる”の特徴とかかわり
     “わかる”と“できる”の違い
     できていれば,わからなくてもよいのか
   OJTの実行につなげるために
     できるようになるための環境づくり
     根拠や理由を尋ねることを躊躇しない
 7 日々の実践の評価を通して新人の力を伸ばす
   指導者の気持ち
   新人の理解を深める
   評価の意義と種類を理解して,日々の活動と結びつける
     教育のプロセスにおける評価の種類と意義を知る
     診断的評価,形成的評価,総括的評価
   OJTの実行につなげるために
     新人のこれまでの経験を知り,教える活動に活かす
     よいところもフィードバックする
     結果のみに固執しない
 8 自己評価と他者評価を効果的に活用する
   新人の理解を深める
   自己評価と他者評価をうまく活用して,新人を育てる
     より幅広い視点で自己評価できるように他者評価を活用する
     他者評価と自己評価がズレる理由
   OJTの実行につなげるために
     自己評価のメリット・デメリットを知る
     自己評価と他者評価がズレても,恐れず伝え対話する
     フィードバックの5つの原則
 9 新人が先を見通すちからをつける
   新人の理解を深める
   一人前であることと先を予測するちから
     一人前の条件
     先を予測するちからとその必要性
   OJTの実行につなげるために
     限られた時間内で物事を行うちからをつける
     臨床判断力をつけるためのかかわり
 10 新人の主体性をはぐくむ
   新人の理解を深める
   社会人に必要な主体性を育てる
     社会人基礎力を知る
     チームで仕事をするうえで必要となる主体性
   OJTの実行につなげるために
     対話を活用して,主体性をひきだす
     しっかり任せて,しっかり見守る試行錯誤と成功体験の必要性
 11 思うようにできるようにならない新人にかかわる
   先輩の気持ち
     指導したことが吸収されず疲弊する先輩
     対人関係における難しさもある
   新人が抱える“学びづらさ”と教える側の“教えづらさ”
     他者の気持ちや空気を読みとることが苦手で心理的距離が広がる
     教える努力が報われず指導者が疲弊する
   OJTの実行につなげるために
     他職種のちからも使い適任者が対処する
     基礎教育のときの情報を得る
     実践のどこが問題かを視覚的に確認する
     今の施設が新人にとって最適な職場か,ともに考える
 12 動機づけを使って新人を育てる
   新人の理解を深める
   動機づけを理解する
     動機づけの種類
     内発的動機づけだけで行動する難しさ
     外発的動機づけの3つの重要な効果
   OJTの実行につなげるために
     内発的動機づけにつながる外発的動機づけ
     “こうなりたい”と新人が考える先輩の存在
     “できそうという感覚”の必要性

索引

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新人看護師指導に役立つ知識がコンパクトにまとめられた待望の1冊 (雑誌『看護管理』より)
書評者: 福家 幸子 (虎の門病院 看護部次長[教育担当])
◆見よう見まねで教育を担う不安

 看護基礎教育課程で「教育学」を学んでくる人は少ない。カリキュラムに教育学が含まれていたとしても,基礎的な理論を座学で学んでくる程度と思われる。教育実践まで経験して看護師となった人はほとんどいないだろう。

 しかし,卒業後,看護師として就職し,数年経てば,多くの人が「実地指導者」「プリセプター」「メンター」などの肩書で後輩育成の役割を担うようになる。ここで初めて,教育学の知識を何も持ち合わせていないことに気づいたり,とりあえず見よう見まねで指導を始めたりすることになる。

 私も初めてプリセプターを任命された時に「どうしよう」と思ったことを,かなり年月の経った今でもよく覚えている。そもそも何をすればよいのか,当時乏しかった参考資料の行間にまで目を凝らし,何かヒントが隠れていないか必死に読み取ろうとしたことを記憶している。それほど教育や指導について何も分かっていなかったし,自信もなかった。

 その後,看護分野以外の文献にも目を向けることを覚え,コーチングや企業内教育などビジネス書を参考にするようになった。またプリセプター経験も契機となって,教育に関心を持つようになり,大学院で看護教育学を改めて学ぶ道を選択した。こうして各方面で私が少しずつ学んで継ぎ合わせてきたツギハギの知識が,本書にはコンパクトに収載され,新人看護師指導に役立つ部分が分かりやすく解説されている。新人指導者にとっては待望の1冊と言えるだろう。

◆新人の成長過程を楽しむために

 本書の特徴は,まずとても優しく平易な語り口で,新米の指導者に教育学の基礎知識やコツを伝授している点にある。知識や経験が浅い人が読んでもすっと内容に入っていけるよう配慮されている。

 また,要所で背景となる理論が分かりやすく噛み砕いた形で散りばめられている。教育学の専門書を手にとっても,目の前の実践と結び付けて考えるのはなかなか難しいものであるが,本書は教育経験のない臨床看護師の目線に立って,理論や知識を実践と結び付けやすくなるように丁寧に解説されている。

 このような語り口の背景には,著者が,新人看護師と指導者側双方の思いを今まで受け止めてきて,それぞれの事情を分かった上で,新人を理解して関わってほしいと願っていることが感じられる。臨床の指導者からすると,未熟な新人看護師を抱えながらも,本業は患者に看護を提供することである。よって,同僚でもある新人看護師が期待通りに成長してくれない場合,焦りを感じたり負担に感じたりしやすい。

 本書では指導者側のこのような実情にも十分配慮され,「こうするべき」と押しつけるのではなく,現実的で実践可能と思える内容が書かれている。第2部の実践編では,各章末に「『理解』と『支援』にもとづくOJT実行プラン」というチェックリストが設けられ,よりよい新人指導をしていく上で指導者がとるべき望ましい行動が一覧にまとめられている。各章を読んで指導者に求められる役割を理解し,このリストに上がっている行動を心掛ければ,新人をよりうまく自立まで導くことができるだろう。

 新人看護師の指導にあたる人には,ぜひこの本を手に取っていただき,新人の成長支援過程を楽しんでいただきたい。

(『看護管理』2016年11月号掲載)
「教えること」が楽しみになる,指導に広がりを持たせてくれる1冊 (雑誌『看護管理』より)
書評者: 熊谷 雅美 (済生会横浜市東部病院 副院長兼看護部長)
◆指導経験のある者にとっても,意味づけが起こる本

 「教えることは学ぶこと」である。新人看護師の成長を支援する役割を担うことは,支援をする者が成長する機会であり,看護管理者はそのことを期待して,指導する役割を任せる。初めて新人看護師の指導に向き合うことによって,これまでの手立てでは対応できない状況に出合うことになる。この経験が教える者にとって「一皮むける経験」となり,成長を促すことになる。

 「教えること」は,学習者である新人看護師から始まることが大切である。とは言っても,「教えること」にまつわる悩みや迷いは果てしない。ともすれば,教える機会が,教える者にとっての成長の機会ではなく,苦痛の経験になってしまうこともある。

 そこで本書は,学習者である臨床現場の新人看護師の姿をもとに,指導や支援のあり方を考え,成長を支援するOJTについて,基盤となる考えや理論そして具体的な実行プランを紹介している。初めての指導者にとってだけではなく,指導経験のある者にとっても,自身の経験を振り返り,「そういうことか!」と意味づけが起こり,指導の手立てに広がりを持たせてくれる。

◆指導の道筋を段階的に整理する

 新人看護師にとって臨床現場は,仕事をする場であり,同時に看護を学ぶ場でもある。本書は,新人看護職員研修は職場学習であるという前提で,研修の目的,研修の対象,研修の方法について,的確なエビデンスをもとに書かれている。初めて指導を担当する者が迷わぬように,指導について考えていく道筋を整理し,段階的に順序を追って提示している。

(1)新人看護師の学び方は成人学習
 新人看護師を成人学習者と捉え,学ぶ動機,そして経験から学ぶことの重要性を説明している。

(2)職場に新人の居場所をつくる
 新人看護師の職場適応を組織社会化で考察している。初めに新人看護師を理解するために,じっくり話す時間をつくること,実際にいてよい場所を伝えること,新人でも担うことができる役割を明確にすることが大切であると,組織文化のありように具体的な示唆を与えている。

(3)OJT,目標共有・シャドウイング・多面的評価の実施
 実際の現場で自分がどのように振る舞っていくのかは,現場でこそ学べる。先輩看護師と共に実践の場に参加し,先輩と対話することが重要な学習になる。

 先輩は実際に見せ,ポイントを説明し,新人の次の行動につながるフィードバックを行う。できていなかったところは,もう一度正しい方法を実際に見せるというシャドウイングの実践が重要だ。

 評価とは次につながる課題を明確にするためのフィードバックであり,評価の意義と種類を理解して,評価という活動をうまく使っていくことが必要である。また一方向からの評価ではなく,多面的な意見による評価が新人の成長につながる。

 本書は,筆者の臨床での教育経験を紐解き,その意味を理論や研究結果をもとに客観性を持たせて説明している。読者の指導経験を,本書が経験学習へと巻き込んでくれる。使われている事例は,筆者の臨床現場での実体験であり,「あるある現実」として,読み手を引き付けていく。何より,新人看護師,指導者を愛おしみ,全ての看護師が臨床経験を大切にして育ってほしい,「教える」ことを通して育ってほしいという筆者の熱い思いを感じる1冊である。

(『看護管理』2016年9月号掲載)
「いまの新人看護師」をリアルに理解し成長を支援するための新人指導書
書評者: 渋谷 美香 (公益社団法人日本看護協会教育研究部・部長)
 新人指導は難しい。指導者に向いていないと思い込む時期もある。でも指導は楽しいと思う。

 指導者役割は敬遠されがちである。しかし新人看護職員の卒後臨床研修が2010年4月から努力義務化となり,新人指導をぜひやってみたい,翌年も続けてチャレンジしたいと志願する人が増えたという現場の声を聞くまでになっている。

 新卒看護師の離職率においては2010年度以降顕著に減少し,2011年度以降は7.5%を維持している(日本看護協会「病院における看護職員需給状況調査」より)。これは,法改正に伴う努力義務化により,教育研修体制の整備に取り組む病院が増えたと同時に,新人指導者を対象とした学習支援がさらに充実したことも背景にあるだろう。特に書籍においては,指導方法,指導内容,指導者としての心構え,時期別の新人への関わりなど,多くの側面からみた新人指導書があり,片端から読まれた読者も多いであろう

 しかし,知識や教育技法,指導者役割の認識だけでは埋められない壁がある。「自身が新人だった頃の気持ちを考える」は,新人指導における基本的な態度の筆頭に語られる。しかし新人看護職員と自身の年齢の差が10年,20年と広がるにつれ,世代や文化の変移により,物事を捉える価値観や認識だけでなく,用いる言葉さえも異なり,新人看護師が何を考え,何を意図しているのか理解が追いつかないことはないだろうか。

 「新しい職場に行くと,最初やっぱアウェイな感じがするじゃないですか。(中略)先輩が気軽に声を掛けてくれたときに,『あ!ここはホームだったんだ!』って思い出すんだよね~(中略)でも,先輩から『それは違うじゃない!』って言われたら,どんどんアウェイ化していくの」(p.94)

 本書のベースとなるのは,雑誌『看護管理』に連載された「新人看護師教育がうまくいくOJTのコツ:『理解』と『支援』から始める!」である。連載時からそこに掲載された新人看護師の姿や語りを読み,他書にみられないリアルな描写から,「アウェイって」と絶句しながらも,なぜか新人看護師への親近感も芽生え,素直に「いまの新人看護師」に寄り添いたくなる感情を覚えたことを思い出す。

 本書は,著者がさまざまな場面において第三者的立場で,一歩踏み込んだ新人看護師の語りからその言動の背景にある気持ちや考えに迫り,新人看護師のリアルな姿や語りを紹介し,その現象を紐解く。さらに,それを指導や支援につなげる基盤となる考えとOJTにおける実行プランを紹介するオリジナリティ溢れる新人指導書である。

 「育てるのではなくて,成長支援だと思うんですよ」と,決して対象者目線を崩さず,相手を尊重し丁寧に接することを実践し,臨床から博士論文まで新人看護師に着目した研究を重ねた筆者だからこそ,具体的かつ現実的な実行プランが提示されたのだと実感する。

 ほがらかな笑顔の筆者に似合うピンクと白を基調とした装丁さえも,優しく抱かれているように安心できる知的な良書である。

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