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下肢運動器疾患の診かた・考えかた
関節機能解剖学的リハビリテーション・アプローチ

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理学療法士・作業療法士が治療を行ううえで、関節機能解剖学および生理学の知識は必須である。本書は、2011年に発刊し好評を博した上肢版と同様、下肢(腰椎/股/膝/足)の代表的疾患により生じる症状を関節機能解剖学的観点および生理学的観点から捉え、各々の臨床症状に応じた疼痛の解釈のしかた、そして可動域改善を得るためのアプローチ方法など、適切な治療を行うためのポイントをわかりやすく解説している。
編集 中図 健
発行 2016年05月判型:B5頁:248
ISBN 978-4-260-02419-8
定価 5,060円 (本体4,600円+税)

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 前著 『上肢運動器疾患の診かた・考えかた—関節機能解剖学的リハビリテーション・アプローチ』 が,セラピストの世界で広く受け入れられ,活用されていることに心より感謝しています。そして引き続き,下肢版を世に送り出せることに,重圧を感じるとともに充実した気持ちでいっぱいです。しかし今回の編集・執筆にあたり,私が法人を立ちあげ,通所介護(なかずリハビリテーションセンター)を開始した時期と執筆時期が重なったことで,想像もつかないほどの多忙に見舞われ,発刊が当初の予定より大幅に遅れてしまいました。執筆をお願いした先生方・発刊を心待ちにしてくださっている先生方には大変ご迷惑をおかけしました。この場を借りて心よりお詫び申し上げます。
 現在,私は介護保険下での治療に携わっており,設立した法人には「療法士が治療の場を創り,療法士が治療理論を創造していく」という意味を込めて「一般社団法人 療創会」と名付けました。大学病院・急性期病院を経て治療現場は変わりましたが,リハビリテーション治療における考えかたは今も変わりはありません。最も重要な治療は急性期にあります。急性期治療が適切に行われた症例は,その後の機能回復・ADL・職業復帰,どれをとっても最短で獲得が可能と言えます。なぜなら,重篤な可動域制限が生じる前に機能訓練が可能だからです。多くのセラピストは,拘縮による可動域制限に悩まされ,その治療に多くの時間を費やしています。つまり,急性期治療が適切に行われなかったということなのです。残念なことに,その状態で亜急性期,慢性期へ移行してしまう例が数多く存在します。そういった症例を治療するために,外来治療を積極的に行う医療機関や介護保険を用いて治療を行う施設も重要な役割を担っています。現在,セラピストは増加する一方であり,職域の拡大・確保は必須と言えます。そのためセラピストは,それぞれの現場において,治療結果を出すことが求められています。セラピスト一人一人が自分は何ができるのか? ということを念頭に置いて治療に臨まなければ,われわれに未来は無いと断言できます。本書がそのリハビリテーション治療の未来を開拓する一翼を担える存在となってくれれば,編者としてこれ以上の喜びはありません。
 最後に目まぐるしく過ぎていく日々において,いつも私を支えてくれている家族・両親・兄弟・スタッフ,そして慌ただしく運営している施設をご利用いただいているご利用者様に心より感謝申し上げます。

 2016年4月
 中図 健

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I.腰椎
 A.基本構造
  1.脊柱の骨格
  2.腰椎・骨盤を構成する骨格
  3.腰椎・骨盤帯の基本構造
  4.腰椎・骨盤帯を構成する筋群
  5.腰椎・骨盤帯のバイオメカニクス
  6.腰椎に生じる変性変化
  7.馬尾神経
 B.おさえておくべき疾患
  1.腰椎椎間板ヘルニア
  2.腰部脊柱管狭窄症
  3.胸腰椎圧迫骨折(高齢者を中心に)
  4.腰椎分離症(成長期を中心に)
  5.梨状筋症候群
  6.骨盤骨折
 C.臨床症状の診かた・考えかた
  1.初診による臨床症状の捉えかた
  2.椎間関節・仙腸関節・筋筋膜性腰痛の診かた
  3.腰椎が股関節に与える影響(hip-spine syndrome)
 D.治療方法とそのポイント
  1.腰椎・骨盤の可動性改善に対するアプローチ
  2.骨盤底筋群に対するアプローチ
  3.腰椎由来のアライメント不良に対するアプローチ
 E.ケーススタディ
  1.梨状筋症候群により殿部痛が疑われた症例
  2.脊柱管狭窄症により腰痛症状が出現した症例

II.股関節
 A.基本構造
  1.股関節の骨格
  2.股関節の基本構造
  3.股関節を構成する筋群
  4.股関節のバイオメカニクス
  5.股関節に生じる変性変化
 B.おさえておくべき疾患
  1.股関節唇損傷
  2.大腿骨頚部骨折
  3.変形性股関節症
 C.臨床症状の診かた・考えかた
  1.疼痛・可動域制限の解釈
  2.股関節が腰椎に与える影響(hip-spine syndrome)
 D.治療方法とそのポイント
  1.股関節の可動域制限に対するアプローチ
  2.股関節由来のアライメント不良に対するアプローチ
 E.ケーススタディ
  1.変形性股関節症に対する人工股関節全置換術後に内転制限による
   荷重困難が問題となった症例
  2.大腿骨転子部骨折に対する骨接合術後の股関節内側部痛および
   外転筋力低下による荷重困難が問題となった症例

III.膝関節
 A.基本構造
  1.膝関節を構成する骨格
  2.膝関節の基本構造
  3.膝関節を構成する筋群
  4.膝関節のバイオメカニクス
  5.膝関節に生じる変性変化
 B.おさえておくべき疾患
  1.大腿骨骨幹部骨折
  2.膝蓋骨骨折
  3.変形性膝関節症
  4.鵞足炎
  5.腸脛靱帯炎
  6.半月板損傷
 C.臨床症状の診かた・考えかた
  1.可動域制限の責任組織と病態の推察方法
  2.荷重ができない原因の推察方法
 D.治療方法とそのポイント
  1.損傷および炎症組織への対応方法
  2.浮腫への対処方法
  3.筋攣縮,癒着,短縮組織への対処方法
  4.extension lagへの対処方法
 E.ケーススタディ
  1.骨化性筋炎を起こした大腿骨骨幹部骨折後の症例
  2.膝蓋骨骨折に対してtension band wiring法での骨接合術を施行した症例

IV.足関節
 A.基本構造
  1.足関節を構成する骨格
  2.足関節・足部の基本構造
  3.足関節を構成する筋群
  4.足関節のバイオメカニクス
 B.おさえておくべき疾患
  1.脛骨骨幹部骨折
  2.足関節果部骨折
  3.踵骨骨折
  4.有痛性足部疾患
  5.足根管症候群
  6.距骨骨折
 C.臨床症状の診かた・考えかた
  1.背屈可動域制限の責任組織と病態の推察方法
  2.荷重時痛の責任組織と病態の推察方法
 D.治療方法とそのポイント
  1.浮腫への対処方法
  2.有痛性足部疾患に対する足底挿板療法の考えかた
 E.ケーススタディ
  1.有痛性踵パッドとシンスプリントを合併した症例
  2.足関節後方部痛を呈した競泳選手-病態把握におけるエコーの有用性

索引

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臨床で試してみたい手技が盛り込まれたリハビリの未来につながる実践書
書評者: 山本 伸一 (山梨リハビリテーション病院リハビリテーション部副部長)
 一般社団法人療創会なかずリハビリテーションセンターの代表理事であり,関節機能障害研究会の代表世話役である作業療法士・中図健先生から一本の電話をいただいた。直接お話しするのは初めてであったが,書評の執筆をお願いしたいとの旨であった。先生のお人柄がうかがえる非常に謙虚なお申し出で,二つ返事で了承した。書籍は,『下肢運動器疾患の診かた・考えかた——関節機能解剖学的リハビリテーション・アプローチ』。評者自身も作業療法士であるが,上肢・手のみのアプローチではやはりままならない。そう思っていたからこそ,作業療法士の編集による「下肢機能」についての本に興味が湧いた。

 まず目に付いたのは,『大切なのは,患者さんと向き合う心。必要なのは,「機能解剖学」と「生理学」ベースの治療技術』という帯の文言。その通りである。久しぶりにワクワクした。一体,中身はどうなのだろうと。

 目次の大項目は,「第Ⅰ章 腰椎」「第Ⅱ章 股関節」「第Ⅲ章 膝関節」「第Ⅳ章 足関節」と分類されている。それぞれの章の構成は共通して,「A.基本構造」「B.おさえておくべき疾患」「C.臨床症状の診かた・考えかた」「D.治療方法とそのポイント」「E.ケーススタディ」となっており,基本から応用の臨床までを網羅している。それぞれの関節構造や神経のメカニズム,バイオメカニクスなどがわかりやすく解説されている。「おさえておくべき疾患」は,腰椎椎間板ヘルニア,腰部脊柱管狭窄症,胸腰椎圧迫骨折,大腿骨頸部骨折,変形性股関節症,変形性膝関節症,半月板損傷,さらには足部の疾患に至るまで多数挙げられており,その特性・特徴がよく捉えられていて理解しやすい。さらにありがたいのは,「臨床症状の診かた・考えかた」そして「治療方法とそのポイント」である。具体的な関節可動域訓練から日常生活指導,浮腫の解釈からリンパ還流の促進,筋攣縮・癒着・短縮組織への対処方法など,ふんだんに写真を多用し説明がなされている。臨床で試してみたい実技ばかりである。「ケーススタディ」では,例えば,III章の「骨化性筋炎を起こした大腿骨骨幹部骨折後の症例」(p.166)のように合併症の問題が生じた場合のいわゆる「現場で起きていること」に対して,Thinking Point(臨床推論)が展開されており,リハビリテーションをより具体的に進めるにあたり留意すべき事項がわかりやすく説明されている。

 「序」において,中図先生は「(略)セラピストは,それぞれの現場において,治療結果を出すことが求められています。セラピスト一人一人が自分は何ができるのか?ということを念頭に置いて治療に臨まなければ,われわれに未来は無いと断言できます」と述べている。——私たちだからわかること。私たちだからできること。ともに未来を創りましょう。
自身の治療方法を見直すきっかけを与えるオリジナリティ溢れる臨床経験の提示
書評者: 福井 勉 (文京学院大教授・理学療法学)
 本書は『上肢運動器疾患の診かた・考えかた——関節機能解剖学的リハビリテーション・アプローチ』(医学書院,2011)の姉妹書として,下肢関節疾患の診かた・考えかたをまとめている。腰椎,股関節,膝関節,足関節の4章構成となっており,各章は,「基本構造」「おさえておくべき疾患」「臨床症状の診かた・考えかた」「治療方法とそのポイント」「ケーススタディ」と5つの項目から成っている。この構成も上肢版と同様の構成である。

 「基本構造」は骨格,基本構造,筋,バイオメカニクスという内容で,章によっては変性変化についても記載されており,臨床的評価を念頭に置いた学習ができるようになっている。

 「おさえておくべき疾患」では3~6種の代表的な疾患がコンパクトに集約されている。また「ケーススタディ」には“Thinking Point”とされる執筆者自身の診かたの骨子が描かれている。

 このようにいろいろな工夫がなされている中,本書の最大の特徴はタイトルにもあるように何といっても,「診かた・考えかた」にあると思われる。読者はこの項目にぜひ注目していただき,執筆者がそれぞれ工夫を凝らした評価と治療について熟読していただきたい。治療テクニックの詳細に関しては,執筆者のオリジナリティが問われる部分でもある。今までにはない自らの臨床経験の開示には執筆者の勇気も必要であったと思われる。読者諸氏はこの部分を自分の治療に取り入れる価値を考えながら,しっかりと吟味していただきたい。さらに治療方法の確立された分野ではないので,本書を読み進めながら自身の治療方法への開発へと広げていただけるとよいかと思う。

 優れた臨床家は自らの思考回路を有し,そしてその深みを得るためにおのおの努力をしているはずである。本書の執筆者の思考過程を知ることができるのは,読者自身のクリニカルリーズニングのプロセスに刺激を与えるはずである。

 この『診かた・考えかた』を深く学び,日々の臨床に役立てていただくことを祈っている。

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