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ステップアップ内視鏡外科手術[DVD付]

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内視鏡外科手術のステップアップをめざす外科医向けの技術解説書。各種手術の手順を3つのSTEPに分けて解説するとともに、STEP毎の手術映像を付録のDVDで紹介。手技の確立した定型的な手術から、種々の単孔式手術や腹腔鏡補助下ドナー肝切除術など難易度の高い術式まで網羅。内視鏡下手術を安全・確実に行うために必要な技術を、読んで見て習得できる。 ●動画配信中!付録DVDより一部をご紹介します(YouTube、音声はありません) 大腸手術:腹腔鏡補助下低位前方切除術 STEP 2 外側からの授動~直腸の授動 肝胆膵脾手術:腹腔鏡下肝外側区域切除術 STEP 1~3 立ち読みでは本書の当該ページとあわせて各動画をご覧になれます。
監修 若林 剛
編集 佐々木 章
発行 2012年04月判型:B5頁:260
ISBN 978-4-260-01542-4
定価 15,400円 (本体14,000円+税)

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(若林 剛)/刊行にあたって(佐々木 章)


 内視鏡外科手術がわが国で初めて施行されてから24年が経過しようとしている.腹腔鏡下胆嚢摘出術は普及し,良性胆嚢疾患に対する標準術式として広く認められている.しかし,大腸手術はどうであろうか? 当教室では7割を超える大腸手術を内視鏡外科手術で行っている.ただ,全国的には4割にも満たないとされ,まだまだ広く普及した標準術式とはいえないだろう.胃,食道も同様である.多くの一般病院では,腹腔鏡下胆嚢摘出術から一歩進んだ内視鏡外科手術に進むには,若干のハードルがあるように見受けられる.
 手術は定型化すれば,どんな術式も安全に普及するはずである.そこで本書では,専門研修医から外科あるいは消化器外科専門医が「ステップアップした内視鏡外科手術」を行えるよう,内視鏡外科手術一般に関する事項を「総論」として,さらに個々の術式に関わる内容は「各論」としてまとめてみた.食道,胃,大腸,肝胆膵,乳腺,甲状腺,小児外科,各領域の内視鏡外科手術を多数手がけている岩手医科大学外科学講座の教室員が総力をあげて執筆した.また,実際の手術映像をDVDにSTEPごとに編集し,定型化された各術式をわかりやすく解説した.一方,手術室看護師(介助看護師,外回り看護師),臨床工学士(clinical engineer)などメディカルスタッフに対して,手術に際し伝えるべきことを簡潔にまとめたので,手術室スタッフが学ぶべき術式の手順書としても利用できるはずである.
 手術は進化し,手術手技は向上する.腹腔鏡下胆嚢摘出術が開始された頃は画像も悪く手術器具も充実しておらず,炎症の強い症例などは手術に難渋したことを記憶している.大腸手術は比較的早い時期に定型化されたが,郭清を伴う胃手術や腹臥位の食道切除,そして腹腔鏡下肝切除などは遅れて定型化された.単孔式手術も安全に導入され,甲状腺や乳腺,そして小児外科領域でも内視鏡外科手術は定型化された.定型化に至る過程では,いくつかの創意と工夫がなされ,以前には想像できなかった術式が開発された.内視鏡外科手術はさらに新しい術式が開発され,今後ますます発展するであろう.
 開腹の手術成績が向上し,癌の治療成績も徐々に向上してきている.このような状況下では,癌に対する内視鏡外科手術の質がおおいに問われることになる.内視鏡外科手術と開腹手術を比較して,手術時間,出血量,合併症発生率などの手術短期成績の優劣を検討する必要があろう.また,癌に対する手術では郭清リンパ節個数や長期成績を比較する必要がある.理論的には拡大視効果による精緻な手術操作が可能なはずだが,内視鏡外科手術に特有な動作制限から,ともすると開腹手術より手術操作が稚拙になる危険がある.この動作制限は,術者が経験により克服すべきものであり,内視鏡外科手術の修練が求められる.
 患者の満足は外科医の満足であり,患者満足度の高い内視鏡外科手術を患者に提供できるように外科医は修練すべきである.外科医は多少の動作制限をものともせず,少し手術時間が長くなっても,患者の満足のために質の高い内視鏡外科手術を行う心意気を持っているはずである.そんな心意気を持った外科医がステップアップを目指し,定型化された内視鏡外科手術を習得するために本書を活用いただきたい.教室で行われている内視鏡外科標準術式が広く安全に普及し,患者満足度の向上に少しでも役立つことを願っている.

 2012年3月
 岩手医科大学外科学講座
 若林 剛


刊行にあたって
 1998年4月24日に盛岡で開催した第1回岩手内視鏡外科研究会では,故大上正裕先生には「内視鏡下外科手術・Today and Tomorrow」,若林 剛先生には「肝・脾臓疾患への腹腔鏡下手術」という演題でご講演をいただいた.当時まだ臨床応用されていなかった大上先生の内視鏡下甲状腺切除術についての1枚のスライドに,私は非常に感銘を受けた.そして,その後の情報交換会で大上先生と若林先生が腹腔鏡下胆嚢摘出術におけるトロッカー径の細径化について激論となった.その中で,「2mmと3mmトロッカーの差を理解していない外科医は,内視鏡外科手術はやめなさい」と両先生から言われたことを今でも鮮明に覚えている.この歴史的事実が,私が内視鏡外科手術に携わる契機になった.当時から先見の明を持っておられた両先生には感謝の気持ちでいっぱいである.内視鏡外科手術の適応は拡大し,また,教科書で習っていた微細な解剖が内視鏡の拡大視により確認できるようになり,精度の高い内視鏡外科手術が多くの領域で標準手術となった.現在は,さらなる低侵襲性と整容性を重視した単孔式腹腔鏡下手術,NOTES(経管腔的内視鏡手術)が注目を集めている.
 当教室は,臓器ごとに診療グループが分かれているが,各臓器で内視鏡外科手術を積極的に取り入れている教育機関である.本書においては,岩手医科大学外科学講座で内視鏡外科手術を実際に担当されている先生方に,綺麗でわかりやすい写真を中心に,実践手技のコツと注意点について簡潔な文章で執筆いただいた.加えて,本書で解説されている手術を収録したDVDを付けたので,復習に繰り返し使用することを強く勧めたい.綺麗なビデオを見ることは,有名な成書で勉強することよりもはるかに得られる情報が多いと常日頃考えているからである.そして,初学者はもちろんのこと,日本内視鏡外科学会の技術認定医や日本消化器外科学会の専門医を目指している外科医に役立つことを期待している.
 最後に,このような企画に賛同をいただいた医学書院書籍編集部1課の林 裕氏に感謝の意を表したい.

 2012年3月
 岩手医科大学外科学講座
 佐々木 章

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付録DVDについて

総論
  1 内視鏡外科手術の基本手技
  2 ルームセットアップの基本
  3 トロッカー挿入の基本
  4 術野展開の基本
  5 消化管吻合の基本
  6 止血法の基本
  7 リンパ節郭清の基本
  8 内視鏡外科手術器具の基本的な使い方と注意点
  9 エネルギーデバイスの種類と基本的な使い方
  10 手術の標準化と教育
  11 3D-CT画像構築を用いた術前シミュレーション
  12 内視鏡外科手術に特有な合併症

各論
 食道手術
  1 腹臥位胸腔鏡下食道切除術
  2 腹腔鏡下食道良性腫瘍摘出術
  3 単孔式腹腔鏡下Heller-Dor手術
  4 単孔式腹腔鏡下Nissen手術
 胃手術
  1 腹腔鏡補助下幽門側胃切除術
  2 腹腔鏡補助下胃全摘術
  3 腹腔鏡下胃切除術(再建術)
  4 単孔式腹腔鏡下胃局所切除術
  5 腹腔鏡下スリーブ状胃切除術
 大腸手術
  1 腹腔鏡補助下結腸切除術
  2 腹腔鏡補助下低位前方切除術
  3 腹腔鏡補助下大腸全摘術
  4 腹腔鏡下直腸固定術
 肝胆膵脾手術
  1 腹腔鏡下肝部分切除術
  2 腹腔鏡下肝外側区域切除術
  3 腹腔鏡下肝葉切除術
  4 腹腔鏡補助下肝切除術
  5 腹腔鏡補助下ドナー肝切除術
  6 単孔式腹腔鏡下胆嚢摘出術
  7 腹腔鏡下脾動静脈温存尾側膵切除術
  8 単孔式腹腔鏡下脾臓摘出術
 内分泌外科手術
  1 内視鏡下甲状腺切除術
  2 内視鏡補助下乳房部分切除術
  3 単孔式腹腔鏡下副腎摘出術
 小児外科手術
  1 単孔式腹腔鏡下鼠径ヘルニア修復術
  2 単孔式腹腔鏡補助下虫垂切除術
  3 単孔式腹腔鏡下噴門形成術

索引

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書評
書評者: 北島 政樹 (国際医療福祉大学学長/前 日本内視鏡外科学会理事長)
 ある日,突然『ステップアップ内視鏡外科手術』(監修:若林剛,編集:佐々木章)が医学書院から送られてきた。

 本書を手にしてまず考えたことは1991年慶應義塾大学医学部外科学教室で現在,隆盛を誇る内視鏡外科手術が産声を上げたことである。いみじくも佐々木准教授の“刊行にあたって”の中で私と初期からともに内視鏡外科を手掛けた故大上正裕君と若林剛君(現岩手医科大学教授)が岩手の地で開催された第1回岩手内視鏡外科研究会(1998年)で講演し,情報交換会で二人がトロッカーのサイズで激論を交わしたと記載されている。

 この激論に至ったのは外科学教室の内視鏡下手術,移植医療および外科腫瘍学が三本柱であり,特に内視鏡下手術に関しては,医・工・産学連携によりロボット手術を含めて推進してきた種々のエビデンスや思い入れがあったことによると思われた。

 これらの内視鏡外科に関する推移を若林剛教授は自らよく理解しており,どうしたら教室員が一丸となって岩手医科大学が内視鏡外科における日本の先導者になれるかを熟慮した結果,誕生した一冊と理解した訳である。本書を読んでいるうちに益々,本書のすばらしさを実感することが出来た。

 まず若林教授のリーダーシップでそれぞれの手技に明確に岩手医科大学外科の内視鏡下手術の理念が浸透していることである。次に内視鏡下手術の将来像,すなわちチーム医療を見越すかのようにメディカルスタッフにも心配りをされており,外科医のみならず多くの専門職の必読・必見の書になるだろうとチーム医療を推進する私にとって喜びさえ感じた。

 本書の最大の特色は一外科学教室がすべての内視鏡下手術の技術を網羅し,長年培ってきた知識と理念を集大成したことである。過去に素晴らしい内視鏡外科手術書を拝見したことはあるが,個々の施設における技であり,本書の如く,教室内で技に対する多くの議論が積み重ねてこられたと思われるが終始一貫して横断的に纏められた成書は初めての経験である。

 さらに興味深いことは現在の若手外科医が何を望んでいるかを見透かす如く,技術の向上をめざし,成書の内容とマッチングした動画をDVDで解説している点である。

 今後は単なる教科書としてではなく,読者の視野に強く訴える本書の形が主流をなしてくるのではないかと期待している。

 今回,若林剛教授,佐々木章准教授の見事なリーダーシップでチームを構成し,若手外科医のみならず,内視鏡下手術に関係するメディカルスタッフの視点からも素晴らしい成書を出版したことに敬意を表すと同時に,今後も継続して岩手医科大学から,本邦のみならず欧米に対しても発信することを大いに期待する次第である。まさしく本書は私が第100回日本外科学会で発信した福沢諭吉先生の“未来を見据えよ,いまのための今でなく未来のための今(Act now for the future)”の真髄を示している。
世界をリードする外科医たちの総力が結集された一冊
書評者: 北野 正剛 (大分大学長/教授・外科学)
 このたび,岩手医科大学の若林剛教授の監修の下,佐々木章准教授が編集を行った『ステップアップ内視鏡外科手術』と題する手術書が医学書院から刊行された。消化器外科領域を中心に内視鏡外科手術を幅広く,数多く手掛けてきた同大学外科学講座の,世界をリードする腕利きの外科医たちの総力結集の著書といえる。

 1990年,腹腔鏡下胆嚢摘出術がわが国にもたらされた。低侵襲治療としての内視鏡外科手術の夜明けであった。以来,この20年余りの間に,内視鏡外科手術は「低侵襲性手術」としてのカテゴリーを確立しながら急速に普及し,その適応は,良性疾患はもちろん早期がんから進行がんへと拡大されてきた。さらに,内視鏡外科手術の対象は胆嚢,大腸,胃にとどまらず,肝・膵・脾,乳腺・内分泌,高度肥満などへ広がり,単孔式腹腔鏡下手術やNOTES(経管腔的内視鏡手術),内視鏡手術支援ロボットも登場してきた。この目覚ましい手術革命は,「体に優しい」手術が,国民の福祉に貢献し,社会が求めているためにほかならない。

 内視鏡外科手術は,従来の開腹手術と異なり,モニター下の空間における鉗子操作となるため,術者には特殊なトレーニングが必要とされる。また,新しい内視鏡外科手術機器や器具も次々に開発され,その特性や適切な使用法を熟知することが求められている。日本内視鏡外科学会は北島政樹前理事長の下,2004年に内視鏡外科の安全な普及と指導者の養成を目的に,技術認定制度を発足させている。その習得をめざして多くの外科医たちが日々研さんに励んでいるが,そのハードルは決して低いものではなく,手技のトレーニングや教育の重要性があらためてクローズアップされてきている。

 このような時代の背景の中,今回,岩手医科大学外科学講座が上梓した本書は,まさに時宜を得た企画である。「総論」では,内視鏡外科一般に関するルームセットアップから術野展開法,止血法,消化管吻合法,さらには数多く開発されているエネルギーデバイスについてまで,基本的な手技や知識を解説している。また「各論」においては,食道,胃,大腸,肝胆膵脾,内分泌外科,小児外科の分野ごとに,鮮明な写真とわかりやすいイラストを用いて,その実践手技のコツを簡潔に解説している。各論で扱われる手術は,腹臥位胸腔鏡下食道切除や単孔式腹腔鏡下手術を含めて27術式にも及ぶ。本書の最大の特色は,解説されている手術手技を実際の動画としてDVDに収め本書の巻末に付されている点だと思われる。生の映像は,どんな素晴らしい成書で勉強するよりもはるかに情報が多いからである。

 このような多くの特色を持つ本書は,初学者はもちろん,日本消化器外科学会の専門医や日本内視鏡外科学会の技術認定取得医をめざしている多くの外科医にとって大いに役立つことであろう。日本内視鏡外科学会の運営に携わる者の一人として,本書を通じて,一人でも多くの外科医が,安全で質の高い基本手技をさらに習得し,わが国全体の内視鏡外科手術の発展に寄与することを期待したい。

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