健康支援と社会保障制度[4]
看護関係法令 第44版

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●看護基礎教育で学ぶべき各領域の法令について解説、学習のポイントを記述しています。 ●看護の中心となる法令から周辺法令まで、系統立てて解説しており、法令間の関係も理解しながら学習を進めることができます。 ●本書は、毎年改訂し、この1年に制定・改正された最新の法令を加えたほか、災害と看護に関する法令も充実しました。 ●制定・改正法令のおもなものは、「保健師助産師看護師法」の省令、「子ども手当法」「介護保険法」などのほか、障害関係の法律改正も加えました。 ●附録として「保健師助産師看護師法」の全文をはじめ、必要な関係諸法令・条文を掲載しています。
シリーズ 系統看護学講座
発行 2012年02月判型:B5頁:368
ISBN 978-4-260-01447-2
定価 2,530円 (本体2,300円+税)
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はしがき

 東日本大震災で被災された方々に心からお見舞申し上げるとともに,一日も早い生活再建をお祈りいたします。また,救援,復旧にあたられました看護職はじめ関係者に心から敬意を表します。

看護の向上のための法律改正を受けて
 看護とは,人間の自然治癒力を引き出し,生きる希望と力を与え,生涯にわたり尊厳をもって輝く人生を送れるよう支援することである。保健師助産師看護師法第5条では,傷病者若しくはじょく婦に対する療養上の世話又は診療の補助という行為の外見を書いているが,それは看護師にしかできないことを書いているのであり,看護の定義を書いているわけではない。保健師助産師看護師法では看護とはなにかを定義していない。同法は行為規制法だからである。この法律だけで看護が決まるのではない。看護学を積み,多くの法を理解して,国民が求める看護がわかる。
 2010年に,保健師助産師看護師法の基本である教育に関し,戦後初ともいえる大改正が施行された。看護教育の柱の一番目に大学が位置づけられたこと,保健師・助産師教育を1年に延長したこと,そして免許取得後の臨床研修に努めるようにしたことが内容である。これらにより看護の質はさらに向上するであろう。
 看護はじめ医療は,経済的面では最大で55兆円近くの産業規模であり,健康保険の対象となる国民医療費ベースだけでも37兆円にもなるわが国最大の産業である。医療で働く250万人の中でも最大の集団である150万看護職の活躍が,医療の質を決め,国民に評価されることになる。
 看護職が質の高い看護を提供するには,まず社会人として豊かな人生を送り,職業人として任務を十分に果たさなければならない。そのためには高い教養をもち,深い専門的知識と優れた技術技能を身につけるとともに,わが国の保健医療福祉に関する諸制度の概要とそれを規定する諸法令を理解しなければならない。社会において看護が大きな位置を占め,保健師・助産師・看護師がどういう役割を受け持っているかを正しく認識する必要がある。看護はじめ医療という仕事は,人間の生命に直接関係するだけに,医療に携わる人々の資格や業務内容が法律で厳格に規定されている。看護に携わる者が,国民の健康をまもり,与えられた職責を正しく遂行するためには,看護関係法令への理解が必要である。
 本書は,看護に携わる者にとって最も重要な法である保健師助産師看護師法から説き,順次周辺に広げ,医事や衛生,社会保障などの関係法令を重点的に解説したものである
 学習にあたっては,これら法令を単に知識として学ぶだけではなく,なぜこのような内容になっているのか,看護との関係はどうなのかについて,他の科目で学んだこと,あるいは日常生活や実習での経験,さらに書籍・テレビ・新聞・インターネットなどからの情報とも関連づけて理解するように希望する。なお,附録に,保健師助産師看護師法および関係政省令と保健医療関係法のうち看護業務に密接に関係する部分の条文を掲載しているので勉学の参考にされたい。
 法律というと,日常生活とはかけ離れたもの,難解なものという印象があり,敬遠されがちであるが,実際には,法律は私たちの日常生活そのものであり,知らず知らずのうちに,法からまもられ,法をまもっているのである。法とは,基本的にはだれもがまもることができる,ごく当たり前のこと,自然な内容であり,そうむずかしいことではない。読者の研鑽に期待したい。

少子高齢人口減少社会で看護の役割は増大
 いま,わが国では,利用者の視点を中心にして,ノーマライゼーションとリハビリテーションの理念のもとに,医療など社会保障の施策が展開されている。2010年は出産が107万人となり,合計特殊出生率も1.39を維持しているが,これは一時的な現象であり,厚生労働省の国立社会保障・人口問題研究所人口推計でも,基調は年間出生数が106万人以下にまで下がり,合計特殊出生率は1.26で推移するなど少子化が進むことが予測されるのがわが国の現実である。
 相対的に高齢化も進展し,65歳以上の高齢者は3,000万人で,高齢化率は全人口の24%に,75歳以上の後期高齢者は11%にまで達し,女性の平均余命86.39歳とともに世界最高水準であるだけでなく,最近は年間死亡数が120万人と増加して,わが国は少子高齢化とともに人口減少社会に突入している。
 このため,国中でわが国の将来を考え,国会や厚生労働省社会保障審議会などにおいて,社会保障から社会のあり方まで幅広く議論し,新しいわが国の姿を模索している。
 医療の分野では,医療制度改革が推進中で,給付と負担の適正化により安定的な医療保険制度の構築を目ざし,医療提供体制については,利用者の視点を中心においた改革が進んでおり,利用者主役と医療安全が基本である。
 福祉の分野では,少子高齢化時代の介護を社会全体で支えるために介護保険が施行され,関係者の尽力によって順調に進んでいる。ただし介護人材の確保が課題である。さらに利用者主役を進めるために,障害を持つ方々へのサービスが障害の種別をこえて提供されようとするなど,社会福祉の基礎構造改革を進めている。基本的には社会を根本から見すえて,子育て支援を充実し,働き方を見直し,男女共同参画のために,国をあげて体制整備の最中である。

看護は文化
 このような動きのなかで,社会保障制度をまもり,だれもが普遍的にサービスを受けられる現行制度を安定的に維持していくことに,いささかの揺るぎもない。医療でも,利用者主役,地域主義,地方分権については最優先の課題と
して取り組まれているところである。利用者が施設や在宅の区別なく,本人の個性に応じた多様なサービスを受けるために,関連施策と連携をとり,医療は総合的に推進されなければならない。医療安全や地域連携で看護職に国民が期待しているいまはチャンスである。
 医療をはじめ,わが国の社会保障は,基本的にだれもが最高水準のサービスを受けられるという,諸外国に比べて遜色のない制度であり,内容,人員・設備水準も向上してきている。
 これからは利用者本位のサービスを展開し,そのために自己評価,利用者評価および第三者評価をふまえ,とくにサービス向上の中核は安全であることを認識して利用者に接しなければならない。国中で安全やリスクマネジメントが大きく叫ばれ,将来の様相はかわっていくであろう。日常の勤務の中で,仕事を効率化し,楽にすることは利用者のためでもある。評価の導入で,努力が報われ,利用者満足度の高いシステムができる。社会の変革と制度の改革は飛躍の機会である。
 看護は文化である。看護を見れば一国の文化水準がわかる。いままさに国民が看護への期待を高め,その役割が増大している。期待が高いから不満も大きいのである。現在おこっている改革の流れは看護職のための機会拡大でもある。いままでできなかったことができるようになるかもしれない。

改訂にあたって
 看護を中心とする関係法令の中でも資格関係と医療改革関連法について,読者の利便を考え,最新の動きも入れて大きく充実した。また附録の掲載条文も必要な法令と部分を見直した。2011年1月の前版発行以来,現在までに,看護の質を向上させるための保健師助産師看護師法および関係法律・政令,保健師・助産師のカリキュラム・国家試験出題内容などの改正,医療改革や保健衛生関係法改正の施行状況,介護保険法の改正をふまえて,内容を充実した。さらに,東日本大震災での看護職の活動を受けて,災害に関する法律も充実し,社会保険法,福祉法についても大きく内容・構成をかえていっそう充実した。これからも新たな視点で引きつづき内容の改善に努めていくので,読者の御鞭撻をお願いするものである。
 なお,法令の内容は2011年11月1日現在をもとにし,2012年4月施行内容で記している。
 2011年11月
 森山幹夫

前版からの改正点
1.法律改正や充実のための改訂
 (1)2010年4月施行の保健師助産師看護師法などの改正に伴う政省令の改正は,看護師養成に大学教育を実態に合わせて明記したこと,保健師と助産師の養成期間を実態に合わせて1年に延長したこと,看護職が卒後臨床研修を受けるように本人や周囲も努めなければならないとしたことであり,その後の状況も含めている。また,2011年1月の保健師・助産師のカリキュラム改正,国家試験出題基準改正等を盛り込んでいる。
 (2)医療法などについて,認定看護師の公告が拡充されたほか,より理解を深めるためにデータや表現を改訂した。
 (3)新型インフルエンザ対策について予防接種対応が明記されたので,それも加えているほか,2009年に発生した新型インフルエンザは一般インフルエンザとして取り扱われることになったことも記している。
 (4)子ども手当や障害者基本法,障害者自立支援法の一部改正,介護保険法改正,介護福祉士が診療の補助の一部を行える改正,労働法,社会基盤の整備について記し,労働基準法や育児・介護休暇法,バリアフリー関係の法律を充実した。
 (5)災害と看護に関して記述を充実した。
 (6)読者の便を考え,細かな点も含め表現を改善した。
2.法改正および今後の予定
 社会保障改革により,看護関係法令の改正が予想される。その内容は,後期高齢者医療制度や障害者自立支援法の抜本見直しという従来からの課題に加え,医療保険や年金など広範囲に及ぶ。ただし,それらは法律事項であり,国会の議決が必要である。現時点では,その詳細な内容や施行時期が確定していないために本改訂には盛り込んでいない。
 なお,2009年の政権交替後に実施された事項および今後予想される保健医療福祉関係の法律改正予定内容は次のとおりである。
[改正ずみ]
 ・子ども手当の支給は,児童手当法の改正により平成23年度までの単年度の法律という形をとって実施されていること
 ・児童扶養手当を父子家庭にも支給すること
 ・障害者自立支援法を緊急的に一部改正したこと
[未改正]
 ・後期高齢者医療制度(長寿医療)の廃止・見直し,その後のすがたは未確定
 ・障害者自立支援法の廃止・抜本見直し,その後のすがたは未確定
 ・年金制度の抜本改正,年金保険業務体制(当面は日本年金機構)のあり方
 ・派遣労働の範囲の見直し
[税と社会保障の一体改革]
 ・以上のほかに多岐にわたる改革を検討中

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第1章 法の概念
  A 法の概念
  B 法の分類
  C 衛生法
  D 厚生行政のしくみ
第2章 医事法
 I 看護法
  A 保健師助産師看護師法
  B 看護師等の人材確保の促進に関する法律
 II 医師法・医療法
  A 医師法
  B 医療法
 III 医療関係資格法
  A 診療放射線技師法
  B 臨床検査技師等に関する法律
  C 理学療法士及び作業療法士法
  D 視能訓練士法
  E 言語聴覚士法
  F 臨床工学技士法
  G 義肢装具士法
  H 救急救命士法
  I あん摩マツサージ指圧師,はり師,きゆう師等に関する法律
  J 柔道整復師法
  K 歯科医師法
  L 歯科衛生士法
  M 歯科技工士法
  N 本項のまとめ
 IV 保健福祉関係資格法
  A 薬剤師法
  B 栄養士法
  C 調理師法
  D 製菓衛生師法
  E 精神保健福祉士法
  F 社会福祉士及び介護福祉士法
  G 理容師法・美容師法
 V 医療を支える法
  A 独立行政法人国立病院機構法
  B 高度専門医療に関する研究等を行う独立行政法人に関する法律
  C 臓器の移植に関する法律
  D 死体解剖保存法
  E 死産の届出に関する規程
  F 医学及び歯学の教育のための献体に関する法律
 VI 緊急時の医療に関する法
 VII 災害時の医療に関する法
第3章 保健衛生法
 I 共通保健法
  A 地域保健法
  B 健康増進法
 II 分野別保健法
  A 精神保健及び精神障害者福祉に関する法律
  B 母子保健法
  C 母体保護法
  D 学校保健安全法
  E がん対策基本法
  F 肝炎対策基本法
  G 自殺対策基本法
  H ハンセン病問題の解決の促進に関する法律
  I 原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律
  J 歯科口腔保健の推進に関する法律
 III 感染症に関する法
  A 感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律
  B 予防接種法
  C 検疫法
 IV 食品に関する法
  A 食品安全基本法
  B 食品衛生法
第4章 薬務法
 I 医薬品
  A 薬事法
  B 独立行政法人医薬品医療機器総合機構法
  C 特定フィブリノゲン製剤及び特定血液凝固第IX因子製剤による
    C型肝炎感染被害者を救済するための給付金の支給に関する特別措置法
  D 安全な血液製剤の安定供給の確保等に関する法律
 II 毒物等
  A 毒物及び劇物取締法
  B 麻薬及び向精神薬取締法
  C 大麻取締法
  D あへん法
  E 覚せい剤取締法
第5章 環境衛生法
 I 営業
  A 生活衛生関係営業の運営の適正化及び振興に関する法律
  B クリーニング業法
  C 旅館業法
  D 公衆浴場法
  E 興行場法
 II 環境整備
  A 水道法
  B 下水道法
  C 有害物質を含有する家庭用品の規制に関する法律
  D 建築物における衛生的環境の確保に関する法律
  E 狂犬病予防法
  F 墓地,埋葬等に関する法律
第6章 社会保険法
 I 費用保障
  A 健康保険法
  B 国民健康保険法
  C 国家公務員共済組合法・各共済組合法
  D 船員保険法
  E 高齢者の医療の確保に関する法律
  F 介護保険法
 II 年金と手当
  A 国民年金法
  B 厚生年金保険法
  C 各手当法
第7章 福祉法
 I 共通的福祉
  A 社会福祉法
  B 生活保護法
  C 共通的な各福祉法
 II 分野別福祉
  A 児童福祉法
  B 児童虐待の防止等に関する法律
  C 老人福祉法
  D 高齢者虐待の防止,高齢者の養護者に対する支援等に関する法律
  E 障害者基本法
  F 障害者自立支援法
  G 身体障害者福祉法
  H 身体障害者補助犬法
  I 知的障害者福祉法
  J 発達障害者支援法
  K 母子及び寡婦福祉法
第8章 労働法と社会基盤整備
 I 労働法
  A 労働基準法
  B 労働契約法
  C 労働安全衛生法
  D 労働者災害補償保険法
  E 石綿による健康被害の救済に関する法律
  F 雇用保険法
  G 公益通報者保護法
  H 育児休業,介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律
  I 雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律
 II 社会基盤整備等
  A 男女共同参画社会基本法
  B 次世代育成支援対策推進法
  C 少子化社会対策基本法
  D 高齢社会対策基本法
  E 高齢者,障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律
  F 配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律
  G 教育職員免許法
  H 個人情報の保護に関する法律
第9章 環境法
  A 環境保全の基本法
  B 公害の防止法
  C 自然保護法
附録 看護関係法令の抄録
  保健師助産師看護師法
  保健師助産師看護師法施行令
  保健師助産師看護師法施行規則
  保健師助産師看護師学校養成所指定規則
  看護師等の人材確保の促進に関する法律(抄)
  医療法(抄)
  医療法施行令(抄)
  医療法施行規則(抄)
  厚生労働省設置法(抄)
  医師法(抄)
  歯科医師法(抄)
  歯科衛生士法(抄)
  歯科技工士法(抄)
  診療放射線技師法(抄)
  臨床検査技師等に関する法律(抄)
  理学療法士及び作業療法士法(抄)
  視能訓練士法(抄)
  言語聴覚士法(抄)
  臨床工学技士法(抄)
  義肢装具士法(抄)
  救急救命士法(抄)
  あん摩マツサージ指圧師,はり師,きゆう師等に関する法律(抄)
  柔道整復師法(抄)
  薬剤師法(抄)
  健康保険法(抄)
  日本国憲法(抄)
  民法(抄)
  戸籍法(抄)
  刑法(抄)
  心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律(抄)

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本書の記述の正確性につきましては最善の努力を払っておりますが、この度弊社の責任におきまして、下記のような誤りがございました。お詫び申し上げますとともに訂正させていただきます。

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