標準法医学 第7版

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医学生・研修医のみならず一般臨床医にも役立つ知識を詰め込んだ、法医学分野の定評あるテキストの改訂第7版。従来 “法医学編”と“医事法編”とに分かれていた部分を統一し、『標準法医学』と改名。また、分量もスリム化を図ることで、より簡潔に分かりやすいものとなった。重要語句や文言を太字で強調したり、冒頭にカラー口絵を挿入するなど、新たな試みも多数。国試出題基準やコアカリと本文との対照表も掲載。
シリーズ 標準医学
監修 石津 日出雄 / 高津 光洋
編集 池田 典昭 / 鈴木 廣一
発行 2013年01月判型:B5頁:344
ISBN 978-4-260-01592-9
定価 6,050円 (本体5,500円+税)
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第7版 序

 本書の第6版が発行されてから6年以上が経過した.この間初版以来の基本方針を変えることなく改訂を重ねてきた本書は,初版で対象とした「これからの日本の医療を担う医学生・研修医および一般臨床医」のみならず,多方面の法医学関係者にとって有益な教科書として大きな役割を果たしてきた.しかし近年は,医学教育の中で法医学の授業時間が減少し,卒業後に臨床研修が必修化したことで,医学生・研修医が持つべき法医学教科書の内容は質・量ともに変化した.そこで医学生・研修医のみならず一般臨床医のニーズにも応えるべく,改訂第7版を出版することとした.
 今回の改訂では前版まで編集者として本書の発展に多大な貢献をされた石津日出雄先生,高津光洋先生に引き続き監修者として御指導いただき,前版の編集協力者であった池田典昭と新たに大阪医科大学教授 鈴木廣一が加わり編集を行った.また,執筆陣も大幅な入れ替わりとなり,石津先生,高津先生を含め14名の先生方が後進に道を譲られた.深甚なる謝意を表したい.
前版からの変更点は以下の通りである.
(1)「法医学編」と別立てで「医事法編」として分かれていた部分を「医療事故と医療倫理」とした.そのため書名から“医事法”を除き,『標準法医学』とした.
(2)目次の分け方を授業の進行や重要度を考慮して大幅に変更し,全て通しの章立てとした.各章の名称も「内因性急死」等一部を変更し,わかりやすくした.
(3)カラー写真は必要なものにとどめ,冒頭にまとめて口絵として挿入した.
(4)国家試験出題基準およびコアカリキュラムと本文との対照表を巻末に掲載した.
(5)重要語句や文言を太字化し,学習時の参考となるようにした.
(6)新執筆陣として,岩瀬博太郎,近藤稔和,羽竹勝彦,宮石 智,木下博之,清水惠子,美作宗太郎,岩楯公晴,赤根 敦(執筆順)の各教授に加わっていただき,それぞれの専門分野について詳述していただいた.
 以上のような大幅な変更を施した本書が,医学生・研修医だけでなく臨床医諸氏の座右の書として大いに役立つことを願っている.
 最後に執筆者の先生方および企画・編集に多大の御尽力をいただいた医学書院編集部の皆様に心から感謝申し上げる.

 2012年11月
 編者識

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 口絵

序論 法医学の現在と未来
  A 法医学とは
  B 研究分野
  C 対象
  D 現状と未来
第1章 検案と解剖
  A 死因究明
  B 死体検案
  C 解剖
  D 法医画像診断
第2章 死体現象
  A 死の定義
  B 生から死へ
  C 早期死体現象
  D 晩期死体現象
  E 永久死体
  F 死体の損壊
  G 死後経過時間の推定
  H 生活反応
第3章 突然死(内因性急死)
 一般的事項
 原因疾患と特徴
  A 心臓突然死
  B 大血管疾患
  C 中枢神経系疾患
  D 呼吸器疾患
  E 消化器疾患
  F 妊娠・分娩と突然死
  G その他の疾患
第4章 損傷
 総論
  A 一般的事項
  B 創傷と死因
  C 損傷の自他為の別
 各論
  A 鈍器(鈍体)損傷
  B 鋭器損傷
  C 銃器損傷
  D 頭部損傷
 交通事故損傷
  A 自動車事故の現状
  B 法医学的意義
  C 自動車事故死の検査
  D 自動車事故損傷
  E 鉄道事故損傷
  F 航空機事故損傷
第5章 窒息
 総論
  A 呼吸と窒息の概念と定義
  B 分類
  C 病態生理
  D 経過と症状
  E 窒息死体の解剖所見
  F 窒息死の診断
 各論
  A 頸部圧迫による窒息
  B 溺死
  C 鼻口部閉塞による窒息
  D 気道内異物による窒息
  E 胸腹部圧迫による窒息
  F 酸素欠乏による窒息
第6章 異常環境下の死
  A 低温による障害
  B 高温による障害
  C 電気異常による障害
  D 酸,アルカリによる障害
  E 放射線による障害
  F 気圧異常による障害
  G 飢餓死
第7章 中毒
 総論
  A 法医学における中毒
  B 毒物
  C 薬毒物の分類
  D 中毒の発生条件
  E 中毒死の現状
  F 中毒の診断
  G 試料の採取と保管
  H 薬毒物検査
 各論
  A 農薬
  B 医薬品
  C 乱用(濫用)薬物
  D ガスおよび揮発性物質
  E 自然毒
  F その他
  G エタノール(アルコール)
第8章 虐待
  A 虐待とは
  B 児童虐待
  C 高齢者虐待
  D DV
第9章 性と周産期
 性に関する法医学
 周産期に関する法医学
  A 妊娠・出産に関する法医学的問題
  B 新生児,乳幼児に関する法医学的問題
第10章 個人識別と物体検査
 硬組織個人識別
  A 性別判定
  B 年齢推定
  C 身長の推定
  D 特定個人との異同識別(身元確認)
  E 人獣鑑別(種属鑑別)
 DNA型検査
  A 遺伝標識
  B DNA型の検査項目
  C DNA型検査の問題点
 物体検査
  A 検査対象と検査項目
  B 血痕
  C 精液斑
  D 唾液斑
  E 毛髪
  F 爪
  G 尿斑
  H 指紋
第11章 医療事故と医療倫理
 医療事故
  A 現状
  B 原因・背景
  C 医療安全対策
  D 医療事故紛争処理の仕組み
  E 医師の法的責任
  F 医療事故裁判
 医療倫理
  A 西洋医学における医の倫理の流れ
  B 義務論と功利主義
  C 医療倫理の4原理
  D 安楽死,尊厳死をめぐる問題
  E 生殖補助医療をめぐる問題
  F 着床前診断・出生前診断
  G クローン技術,ES細胞,iPS細胞
  H 医学研究の倫理
  I 宗教的輸血拒否
  J 脳死と臓器移植

 資料・参考法規集
 付録・医師国家試験出題基準対照表
 付録・医学教育モデル・コア・カリキュラム対照表
 和文索引
 欧文索引

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卒前に必要な基礎知識とともに新しい技術や知識も網羅
書評者: 山崎 健太郎 (山形大教授・法医学)
 1980年に初版が発行されてから30年余りたち,第7版の執筆者は初版執筆者の弟子に相当する世代の先生方に交代した。法医学の分野でもDNAを用いた個人識別,薬毒物の精密機器分析,死後画像の導入など新たな技法や傷病概念が導入されている。また一方で,創傷の診かたや死後経過時間推定法などの基本は初版以前から大きくは変化していない。本教科書は他の法医学の教科書に比較して改訂の間隔が短いため,新しい技術や知識をいち早く取り上げると同時に,昔からある基本的な知識についても一通り網羅されている。さらに,医療事故や医療倫理など,筆者が学生時代には講義であまり学ばなかった内容に関してもページを割いている。前版(第6版)に比較して装丁も変わり,項目立てや文字などもわかりやすくなっている。

 本書は本来学部学生の教科書としてまとめられたものであるが,法医学の知識が本当に必要となるのは医師免許を取得して実際に診療を始めた後である。監察医制度のある一部の地域を除き,死体検案を実施するのは一般臨床医であり,残念ながら死体検案医対象の実務的な教科書は少ないのが現状である。加えて事件捜査にかかわる警察官や検察官も法医学の参考書を求めている。すなわち法医学の教科書の読者は,医学生のみならず一般臨床医や事件捜査関係者にまで及ぶ。

 そこで,読者をこれらの職種まで広げて本書を読んでみると,死亡日時推定や個人識別(年齢・性別の推定方法など)をはじめとした,死体検案の場面で悩む事項に関しては,本書は本文中に数字など具体的なデータを使用して解説されてあり参考になる。一方でスリム化を図った影響かもしれないが,前版で書かれていた死亡診断書(死体検案書)の作成方法,創傷治癒,損傷の写真などは削除あるいは簡単な記述のみにとどめてある。また,死後画像などについても実際の図を加えもう少し詳しく記載したほうが実践的であるように思う。もっとも法医学は他の分野と重複する内容が多く,より深い理解のために他の法医学のテキストを拾い読みしたり,他分野の成書を参考にする必要がしばしばあり,一冊ですべて満足させるのは困難であるのが現状であろう。

 医学知識は日々増加しているので,膨大化した知識を修得するのには根本理論の上に知識を有機的に結び付ける必要がある。そうでないと暗記中心で,現状に応用できないシロかクロかのマニュアル的知識しか頭に残らない恐れがある。

 本書は,医師国家試験出題基準や医学教育モデルコアカリキュラム対照表が巻末に収められているなど,卒前の学部学生の教科書として利用しやすい内容が盛り込まれていると思う。

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