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今日の皮膚疾患治療指針 第4版

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皮膚科専門医による、皮膚科専門医のための、“治療の教科書”決定版。定評ある『今日の治療指針』シリーズの皮膚疾患版として、400余疾患の治療法と処方例・患者説明のポイント、鑑別診断53徴候、検査法21、治療法42、写真点数987を収載。何度も読み返したくなる、現在の皮膚科学の英知の結集。乳幼児から高齢者まで、全世代の全身の皮膚症状を網羅しているため、一般内科医にも推奨したい。
シリーズ 今日の治療指針
編集 塩原 哲夫 / 宮地 良樹 / 渡辺 晋一 / 佐藤 伸一
発行 2012年03月判型:A5頁:1056
ISBN 978-4-260-01323-9
定価 17,600円 (本体16,000円+税)
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第4版 序

 “診断は難しいが,治療はどれでも一緒”というのが,以前の皮膚科に対するイメージであった。実際,筆者が研修医だった頃の教授の外来では,処方される外用薬は3種類だけで,“ひょっとして教授はそれ以外の外用薬の名前をご存じないのでは”などと噂されたものであった。もちろん,それは冗談で,それを真に受けた筆者が後で恥をかいたのは言うまでもない。それはともかく,それ程,以前の皮膚科学においては診断学が絶対であり,治療学は軽視されていたのである。以前は,どこの大学のカンファレンスでも,ディスカッションの大半は診断に費やされ,治療となると途端にあっさりと片付いてしまうのが常であった。それが一変し,治療学が重視されるようになったのは,ひとつには患者の意識が大きく変化し,医師により多くを要求するようになった時代の反映とも言える。以前は診断してもらえば有り難がっていた人々も,病院に来れば治るのが当然と思うようになったのである。それとともにステロイド外用薬の開発競争が一段落し,それ以外の治療法の選択肢が飛躍的に拡大したことも,その一因であろう。皮膚科はまさに“治療の時代”に突入したのである。この“治療の時代”に相応しい教科書が,今ほど望まれたことはなかったであろう。

 『今日の皮膚疾患治療指針』の初版が世に出たのは今をさる22年前,1990年のことである。その初版,第2版の編集には,池田重雄先生,今村貞夫先生,大城戸宗男先生,荒田次郎先生ら当時の皮膚科学の重鎮があたられた。お名前を耳にするだけで背筋が伸びるような大先輩の諸先生が編集された本書の編集者が一新されたのが第3版からである。編集者は斎田俊明先生,筆者,宮地良樹先生,渡辺晋一先生と一挙に若返った。第4版は,斎田俊明先生が佐藤伸一先生に替わられたのみである。筆者は日頃から,なぜ日本の医学書には何度も改訂を繰り返しながらよいものを作っていこうとする姿勢に乏しいのだろうと思っていたが,本書は例外的に改版を繰り返してきたと言える。初版からの基本概念は守りつつ,版を重ねるごとにその時代の医療の進歩に合わせた改訂を繰り返してきた。初版から脈々と受け継がれてきたその基本概念は,一言で言えば“皮膚科専門医による皮膚科専門医のための治療の教科書”である。皮膚科の教科書は数あれど,治療に特化しつつ,病態,診断まで網羅したものは本書をおいて他にない。
 世に出回っている皮膚科の教科書の多くは,学生,研修医など専門医になるまでの人々を対象としているため,病態,診断,治療など総花的な内容にならざるを得ない。しかもそのほとんどが分担執筆ということもあって,勢いどれを見ても大同小異ということになる。しかも相変わらず教科書では旧来の皮膚科の考えに基づき診断が重視されるため,いくら読んでも“治療の時代”に相応しい治療法は学べないということになる。その点,本書は“皮膚科専門医のための教科書”と謳ってはいても,皮膚科専門医だけでなく他科の医師が皮膚疾患の治療をする際にも参考になるように工夫されている。つまり,本書では皮膚科に余りなじみのない医師でも,症状から診断をつけることができるように,「プライマリケアのための鑑別診断のポイント」という1章が用意されており,これで臨床診断に近づけるのである。しかも,今回の改訂では鮮明なカラーによる皮疹の写真が満載されているため,皮疹を見ながら鑑別診断できるようになっている。そのうえで,各論の病態,診断の項を読めば,さらに診断に確信をもてるようになるはずである。
 治療に特化した多くの医学書の共通した欠点は,なぜこの治療を選ぶのかが明確でないという点であり,それでは実際の臨床に使えるような真の治療法のマスターにはつながらない。本書はその治療をなぜ選択するのかが理解できるように病態,診断の解説がされているため,その後に続く治療法が無理なく頭に入るのである。この点こそが,特筆すべき本書の特徴と言ってよいかもしれない。

 “治療の時代”を象徴するように,皮膚科では今多くのガイドラインが策定され,治療法の選択も,かつてのようにエビデンスに基づかない個人の経験だけに基づいた名人芸的な要素は退化しつつある。現代に生きる医師にとってはガイドラインに基づいた治療を行うのが基本であり,それを無視した治療はあり得なくなっている。その点で,本書はごく最近策定されたものまで,ほとんど全てと言ってよいほどガイドラインを網羅しており,本書を見るだけでガイドラインの簡易版を携えている安心感をもつことができる。しかし,ガイドラインに準拠しただけの紋切り型の記述を避けるために,本書には各執筆者独自の「処方例」の記載を強くお願いしてある。なかにはここまで“手の内”を見せてよいのかと,不安を漏らされた執筆者もおられたと聞く。やはりその道の達人には,達人ならではの“手の内”を見せていただくことで初めて本書の目的が果たせると考えている。
 それほど,本書には各執筆者の“手の内”が惜しげもなく披露されている。我々編集者は読みながら,その“手の内”を引き出すのに成功したことに喝采を覚えたほどである。正直に告白すれば,このような感覚は第3版にも増して強く思うところである。その点で,第4版は改訂版というより,全く新しい本に生まれ変わったと言っても言い過ぎではあるまい。“最近の動向”を合わせて読んでいただくことで,最新の皮膚科学はここまで進歩したことを知り,改めて驚くのは我々のみではあるまい。
 本書の出版にあたって,医学書院には厚く御礼を申し上げたい。
 
 2012年3月
 編集者を代表して 塩原哲夫

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1 プライマリケアのための鑑別診断のポイント
2 皮膚科の主な検査法
 A 感染症の検査法
 B 免疫学的検査法
 C 皮膚病理学的検査
 D 腫瘍関連検査
 E その他の検査
3 皮膚科の主な治療法
 A 外用療法
 B 全身療法
 C 理学療法
 D 皮膚外科
4 湿疹・皮膚炎,痒疹,そう痒症,紅皮症
 A 湿疹・皮膚炎群
 B 痒疹群
 C 皮膚そう痒症
 D 紅皮症
5 蕁麻疹
6 紅斑症
7 紫斑病
8 角化症
9 炎症性角化症
10 水疱症
11 無菌性膿疱症とその関連疾患
12 膠原病とその類縁疾患
13 脈管性皮膚疾患
14 代謝異常症
15 真皮の疾患
16 先天性結合組織疾患
17 非感染性肉芽腫症,脂肪織炎
18 薬疹
19 物理・化学的皮膚障害
20 色素異常症
21 母斑,母斑症
22 上皮性皮膚腫瘍
 A 良性腫瘍
 B 悪性腫瘍
23 神経系皮膚腫瘍
 A 良性腫瘍
 B 悪性腫瘍
24 間葉系皮膚腫瘍
 A 良性腫瘍
 B 悪性腫瘍
25 リンパ・造血組織系皮膚腫瘍
 A 良性腫瘍
 B 悪性腫瘍
26 ウイルス・リケッチア性皮膚疾患
27 細菌性皮膚疾患
28 真菌・原虫皮膚疾患
29 性感染症
30 動物性皮膚疾患
31 付属器疾患
32 粘膜疾患
33 内臓病変と皮膚病変
34 皮膚疾患の遺伝相談
35 皮膚心身症

和文索引
欧文索引

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手にする者に喜びを与える皮膚科医の座右の書
書評者: 橋本 公二 (愛媛大学)
 従来,皮膚科診療においては,診断と治療を比べると,診断に多くの比重が置かれていた。これは,ある意味では当然で,正確な診断ができなければ正しい治療ができないことは自明である。また,皮膚の病変が視診,触診などの理学的診断で精微な診断が可能であることなども,大きな要因であったと考えられる。しかし,皮膚科専門医制度が整備され,皮膚科医の診断能力が向上し,また,治療薬,治療法の急速な進展に伴い,皮膚科においても治療が大きくクローズアップされるようになってきた。その理由の一つとして,基礎研究の進展が治療薬の開発に結び付くようになったことが挙げられるであろう。その象徴的存在が,乾癬治療における生物学的製剤の登場ともいえる。このような「診断」から「治療」の時代への移り変わりへの期待を担って出版されたのが,本書『今日の皮膚疾患治療指針』である。

 本書は,「プライマリケアのための鑑別診断のポイント」「皮膚科の主な検査法」「皮膚科の主な治療法」の3章の総論に加え,「湿疹・皮膚炎,痒疹,そう痒症,紅皮症」から始まる32章の各論から構成されている。まず,「プライマリケアのための鑑別診断のポイント」で気付くのは,鑑別診断表が極めて簡潔で,また,各論の参照ページが記載されているため,非常に使いやすいことである。さらに,多くの鮮明な臨床写真を使用し,プライマリケア医あるいは皮膚科研修医にも適したものとなっている。「皮膚科の主な治療法」では,多くの項目で患者説明のポイントが加えられており,皮膚科専門医にとっても有用なヒントとなろう。各論では,その治療をなぜ選択するのかという視点から病態と診断の解説がなされており,治療法が理解しやすくなるように工夫されている。さらに,皮膚科領域では,多くの疾患でガイドラインが策定され,治療法もガイドラインに基づいたものが求められている。ガイドラインそのものの解説はしばしば無味乾燥になりがちであるが,本書では図譜などを用いてガイドラインのポイントを簡潔に解説しており,極めて理解しやすいものとなっている。また,ほとんどすべてのガイドラインを網羅しており,本書を手元に置くことでガイドラインの簡易版を備えている安心感を持てると言っても過言ではなかろう。

 最後に個人的な意見ではあるが,本書はその大きさ,厚さが適度であり,手になじみやすい。また,写真の鮮明さ,図表のレイアウトの巧みさなど,視覚的にも極めて心地よい。このような特徴から,本書は,その内容の充実度と相まって,手にする者に喜びを与えてくれる仕上がりとなっている。本書が,多くの皮膚科医に,座右の書として愛されることを望んでやまない次第である。

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本書の記述の正確性につきましては最善の努力を払っておりますが、この度弊社の責任におきまして、下記のような誤りがございました。お詫び申し上げますとともに訂正させていただきます。

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