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運動器臨床解剖アトラス


監訳:中村 耕三
スペイン語版著者:M. Llusá /À. Merí /D. Ruano 
英語版訳者:Miguel Cabanela /Sergio A. Mendoza /Joaquin Sanchez-Sotelo 

  • 判型 A4
  • 頁 424
  • 発行 2013年01月
  • 定価 19,440円 (本体18,000円+税8%)
  • ISBN978-4-260-01199-0
リアリティの高い解剖写真を豊富に用いた、“臨床”のための運動器アトラス
整形外科医をはじめとした運動器に関わるすべての医療関係者を対象とした、臨床からの視点を重要視した解剖アトラス書。全面カラーのリアリティにこだわった美しく、判りやすい解剖写真。さらに筋骨格の解剖写真と対応するX線写真やMRI画像を並置することで、多様な角度から解剖部位を見ることが可能。また、解剖写真だけにとどまらず、詳細な解説文を施すことで理解が深まる構成となっている。
序 文
日本語版の序(中村耕三)/(Miguel E. Cabanela)

日本語版の序
 本書の原題は“Surgical Atlas of the Musculoskeletal System”である.その特徴は豊富なカラー写真とその詳細な解説文にある....
日本語版の序(中村耕三)/(Miguel E. Cabanela)

日本語版の序
 本書の原題は“Surgical Atlas of the Musculoskeletal System”である.その特徴は豊富なカラー写真とその詳細な解説文にある.特に強調しておきたいのは,臨床の視点に重きが置かれている点である.
 これまで解剖に関する書籍の多くは,身体の精密な線画,あるいはデフォルメされた模式図で示されてきた.それらに十分意義があることについて異論はないが,リアリティについては犠牲にならざるを得なかったことは,その表現法からみてやむを得ないことである.本書は人体の運動器を,基本的な解剖面のほか,さまざまな視点,角度から,その構造を詳細なカラー写真で示すことによって,人体解剖のリアリティを追求したものである.少数のホルマリン固定後の写真の例外を除き,標本の筋肉がフレッシュな色調で,実際の手術時にみるものに近い.血管や関節腔については色素を注入することで,理解を助けるように工夫されており,X線写真やMRIも効果的に使用されている.
 解剖書は一般に図が中心で,いわば眺めることに主眼が置かれ,解説は単なる補足的なものが多い.しかし,本書は解説文に多くのスペースを割いている.実際,図を眺めるだけではどうしても表層的理解になりがちであるが,詳しい解説を読むことでその中に構造を理解する鍵を見出すことができ,理解は確実に深まる.
 本書はさらに,たとえば手の固有筋や靱帯の構造など臨床で必要な内容が詳細に記載されている.単なる解剖書ではなく運動器の臨床のための解説書として書かれている.
 翻訳するにあたって,解剖に関する用語はできるだけ解剖学や整形外科学の書籍などを参考にした.しかし,これらの書籍などが参考にならなかったり,学術的用語でない英単語が使用されていた場合は原文の意味ができるだけ表せるよう努めた.
 運動器をとりまく環境は大きく変わってきている.理由の一つは平均寿命の延長である.運動器を80年,90年と長く使用する人が多くなり,50歳代以降,運動器の機能障害が顕在化するようになってきた.また,自動車をはじめとする交通手段の変化,ITによる通信手段の変化などがあり,生活のなかでの運動器の使用不足が危惧されている.他方,子どもや中高年の一部では,競技スポーツなど過剰な,あるいは無理な使用法による運動器障害の発生が心配されている.
 このように医療機関だけでなくスポーツの指導者,あるいは介護者など,運動器の知識が必要な領域が増えている.本書は,医師,看護師,理学療法士,作業療法士,医学生などの医療関係者,そしてスポーツなど人の身体にかかわる指導者に広く利用してもらいたい.実際の解剖に触れる機会の少ない方々にもお薦めしたい.
 新しい時代の運動器アトラスとして運動器の健康に貢献できれば幸いである.

 2012年12月
 中村耕三



 本書のオリジナル版である,LlusáとMeríとRuanoによる“Manual y Atlas Fotográfico de Anatomia del Aparato Locomotor”はEditorial Médica Panamericanaからスペイン語で出版されました.同僚と私はこの本を英語に翻訳することに価値があるかどうかを評価するようにと求められました.吟味してみたところ,内容は簡潔ではありながらも価値があって新しく,そして,これが重要な点ですが,写真画像が豊富で非常にすぐれていることがわかりました.そこで私は,American Academy of Orthopaedic Surgeons(AAOS)の出版委員会に,米国の市場のために英語に翻訳することを推薦しました.

 多くの関係者の熱心な取り組みによって,この英語版Surgical Atlas of the Musculoskeletal Systemを皆さんに提供できるようになったことを大変嬉しく思っています.整形外科にかかわるすべての人々(外科医,レジデント,医学生)が筋骨格系の解剖について検討をするときに,本書が非常に価値のある資料となることに気づかれることと思います.この驚くほど多面的な写真画像が,さまざまな解剖学的部位を勉強したり精査したりする際に役立つことでしょう.また,本書は整形外科の日常診療においても,簡便な資料として用いられることでしょう.

 多くの人に本書の翻訳と出版に貢献していただきました.そのすべての人の名前をここで挙げることはできませんが,スペイン語版の最初の吟味に加わってくれたOklahoma Hand Surgery CenterのDr. Carlos Garcia-Moralに感謝の言葉を述べたいと思います.また,Dr. Joaquin Sanchez-Sotelo(Mayo Clinic)とDr. Sergio Mendoza(University of Iowa)には,本書の翻訳をしていただきました.彼らがすでに多くの業務を抱えているなか,この仕事をしてくれたことをありがたく思っています.また,文章の最終検討をしてくれたDr. Philip Blazar,Dr. John Anderson,そして同僚に御礼の言葉を申し述べます.最後に,AAOSの出版部と国際部のスタッフに対し,このプロジェクトへの貢献に深甚な感謝を申し上げます.

 Miguel E. Cabanela, MD
 Chairman
 International Committee
 AAOS
書 評
  • 理学療法士や作業療法士こそ手にとるべき解剖学書
    書評者:吉尾 雅春(千里リハビリテーション病院副院長)

     この解剖学書は実に素晴らしい。

     評者なりに解剖学書に特に求めていることは,(1)写真や図が見やすいこと,(2)写真や図の掲載に終わらず解説が豊富なこと,(3)理学療法士や作業療法士にこそ必要な情報が含まれていること,などである。

     まず,本書は写真が豊富で,しかもホルマリンで固定した...
    理学療法士や作業療法士こそ手にとるべき解剖学書
    書評者:吉尾 雅春(千里リハビリテーション病院副院長)

     この解剖学書は実に素晴らしい。

     評者なりに解剖学書に特に求めていることは,(1)写真や図が見やすいこと,(2)写真や図の掲載に終わらず解説が豊富なこと,(3)理学療法士や作業療法士にこそ必要な情報が含まれていること,などである。

     まず,本書は写真が豊富で,しかもホルマリンで固定したものだけでなく,フレッシュでリアリティに富んだものが多く,読者の目を引き付けてくれる。また,部位によっては染色も施し,X線写真も併載され,理解を深めさせてくれている。運動器に関わる臨床家にとって確認したい部位の「見る方向性や角度」に応えてくれる掲載も多く,“臨床解剖アトラス”にふさわしい構成になっている。

     解説も豊富で,単に解剖学的な説明に留まらず,臨床的な視点を含みながら解説を加えている。写真を多く掲載して,その部位を知らしめることももちろんあって良いが,やはり解剖学者が見たことをきちんと文字で読者に伝えることは大切である。写真を見るだけでは理解を得にくいことも多い。

     理学療法士である評者が最も重視しているのが理学療法士や作業療法士こそが知っておかなければならない情報が含まれている解剖書であるか否かである。本書をどのように読み取っていくかはもちろん読者に委ねられるが,記載そのものは評者が知る限り,同類の解剖書の中では最も優れた書であると言って良い。

     解説の中で評者が最も注目しているのは「関節筋」についてである。本書で「関節筋」という表現はないが「膝関節筋」として中間広筋の深層の線維束を解説している。関節包に緊張を与える筋で,運動学的にはとても重要なシステムである。肩関節については「棘下筋や小円筋の一部が関節包に停止して関節包を引き締める役割を担っている」と解説している。脳卒中などによってこれらの筋が麻痺すれば,関節包は陰圧の関節の中に吸い込まれてしまうかもしれない,そして炎症や損傷を引き起こすかもしれない,と読解することが理学療法士や作業療法士には求められているのである。神経障害を有する患者を対象に運動を主としてかかわる専門職者にとって不可欠な情報であり,教員もそのことを理解して講義をしなければならない,きわめて重要な解説部分である。

     わずか数行ではあるが,そのヒントがきちんと記載されている。ここに本書の価値を見た。
  • 徹底的にリアリティーにこだわった出色の出来の運動器アトラス
    書評者:松田 秀一(京都大学大学院医学研究科教授・整形外科学)

     医師,医学生にとって,解剖学の本はもちろんなくてはならないものだが,特に整形外科医にとっては,解剖アトラスは必携のものである。今までさまざまなアトラスを手にしてきたが,この『運動器臨床解剖アトラス』は出色の出来と言ってよい。名著である指標の一つとして多言語に訳されることがあると思うが,本書はまずス...
    徹底的にリアリティーにこだわった出色の出来の運動器アトラス
    書評者:松田 秀一(京都大学大学院医学研究科教授・整形外科学)

     医師,医学生にとって,解剖学の本はもちろんなくてはならないものだが,特に整形外科医にとっては,解剖アトラスは必携のものである。今までさまざまなアトラスを手にしてきたが,この『運動器臨床解剖アトラス』は出色の出来と言ってよい。名著である指標の一つとして多言語に訳されることがあると思うが,本書はまずスペイン語版で出版され,その後,アメリカ整形外科学会がその素晴らしさに目を付け英語版を発行,さらに今回日本語版が発行されるに至っている。手にとってご覧になったらわかると思うが,かなりの力作である。解剖の用語は,必ずしも対応する日本語があるわけではなく,監訳を担当された中村耕三先生および訳者の先生方には大変なご苦労があったと思う。まずこのご努力に深く敬意を表したい。

     本書の特徴としてまず挙げられるのが,運動器に特化したアトラスということである。すなわち胸腹部の臓器についての詳しい記載は省いてあり,その意味では医学生より整形外科医向けの本である。内容は,概論,上肢帯と上肢,頭部と体幹,下肢帯と下肢の4つの章に分かれており,それぞれの章で表面解剖,骨学,関節学,筋学,神経学,血管学の小項目に分けて非常に多くの画像を用いて解説されている。解剖学のアトラスは通常はあまり詳しい解説は記されていないことが多いが,本書は実に詳しく解説が加えられており,解剖を理解するためには大変役に立つものと思われる。

     また本書は,イラストが少なく徹底的にリアリティーにこだわっているところにも大きな特徴がある。骨学はほとんどが実際の骨を用いて筋付着部を記してあり,X線画像との対比があり非常にわかりやすい。関節学は神経,血管を取り除いた関節標本が提示され,時に横断面や矢状面の標本とMRI,CTを対比してあり,これも有用な情報を提示してくれている。筋学の写真がまた美しい。筋肉というものは写真に撮ってしまうとなかなかその境界などがわかりにくいのだが,本書は実にわかりやすく写真が撮ってある。イラスト主体の本であると,神経や血管に色が入れてあり大変わかりやすいのだが,実際の手術の時は,もちろんそれほどわかりやすいものではなく,慣れていない手術部位であると戸惑うことも多い。

     研修医には,手術の前に,展開する部位の解剖を本書でおさらいすることを是非お薦めしたい。欲張りかもしれないが,本書を作成したグループが手術アプローチの本を作成してくれたら本当にわかりやすいと思う。続編に期待するところである。
  • 運動器の構造や関節動態への理解が深められる名著
    書評者:吉川 秀樹(阪大大学院教授・器官制御外科学(整形外科学)/阪大病院長)

     このたび,『運動器臨床解剖アトラス』が翻訳出版された。原著は,スペインの3名の著者によるもので,その内容が米国整形外科学会(AAOS)で高く評価され,米国の翻訳者により,まず英語版“Surgical Atlas of the Musculoskeletal System”として2008年に出版され...
    運動器の構造や関節動態への理解が深められる名著
    書評者:吉川 秀樹(阪大大学院教授・器官制御外科学(整形外科学)/阪大病院長)

     このたび,『運動器臨床解剖アトラス』が翻訳出版された。原著は,スペインの3名の著者によるもので,その内容が米国整形外科学会(AAOS)で高く評価され,米国の翻訳者により,まず英語版“Surgical Atlas of the Musculoskeletal System”として2008年に出版された。本書は,その英語版から,中村耕三先生が中心になって翻訳された待望の日本語版である。

     本書を閲覧して,まず想起したことは,同じ解剖学書で,ドイツの医師クルムスの著書“Anatomische Tabellen”(解剖図譜,ターヘル・アナトミア)が,まずオランダの医師ディクテンによってオランダ語に翻訳され,その後,オランダ語に造詣の深い前野良沢が,杉田玄白,中川淳庵らとともに日本語に翻訳し,『解体新書』が完成した経緯である。時代は異なっても,名著は言語の壁を超えて世界中に普及することが再認識され大変感慨深い。

     本書の第一の特徴は,現代的にビジュアル感覚を重視し,解剖写真,解剖模型,イラストレーションがふんだんに駆使されていることである。リアリティーの高い運動器のカラー写真が多く掲載されており,まるで手術野を見ているがごとく臨場感があり,鮮明で美しい。解剖写真と,単純X線写真やMRIが並置されていることにより,多様な角度から解剖部位を見ることが可能な構成になっている。第二の特徴は,単なる解剖学のカラーアトラスではなく,臨床の視点からの詳細な解説文が併記されていることである。ほかの解剖書にはないユニークな点であり,運動器の構造や関節の動態への理解が深められる。

     健康寿命の延伸が急務である現代,またスポーツの普及により運動器への関心が高まる現代において,本書の出版は,まさに時宜を得たものであり,運動器の健康増進に大きく貢献することと信じる。本書を医学生や整形外科医のみならず,運動器の医療に携わる理学療法士や看護師,さらには,健康スポーツ領域の研究者や指導者など,実際の解剖に触れる機会の少ない方々にも推薦したい。

     最後に,本書が出版されたことに対して,原著者はもちろんのこと,本書を見出し,その価値を認めた米国翻訳者,日本語翻訳者たちの慧眼と,膨大な翻訳作業のご苦労に敬意を表したい。
目 次
I 概論 GENERAL INFORMATION
 Chapter 1 用語,人体の面と軸 Terminology, Planes, and Axes
 Chapter 2 骨学 Osteology
 Chapter 3 関節学 Arthrology
 Chapter 4 筋学 Myology
 Chapter 5 神経学 Neurology
 Chapter 6 血管学 Angiology

II 上肢帯と上肢 SCAPULAR GIRDLE AND UPPER LIMB
 Chapter 7 解剖領域 Anatomic Regions
 Chapter 8 骨学 Osteology
 Chapter 9 関節学 Arthrology
 Chapter 10 筋学 Myology
 Chapter 11 神経学 Neurology
 Chapter 12 血管学 Angiology

III 頭部と体幹 HEAD AND TRUNK
 Chapter 13 局所部位と表面解剖 Topographic Regions and Surface Anatomy
 Chapter 14 骨学 Osteology
 Chapter 15 関節学 Arthrology
 Chapter 16 筋学 Myology
 Chapter 17 神経学 Neurology
 Chapter 18 血管学 Angiology

IV 下肢帯と下肢 PELVIC GIRDLE AND LOWER LIMB
 Chapter 19 局所部位と表面解剖 Topographic Regions and Surface Anatomy
 Chapter 20 骨学 Osteology
 Chapter 21 関節学 Arthrology
 Chapter 22 筋学 Myology
 Chapter 23 神経学 Neurology
 Chapter 24 血管学 Angiology

 索引