飲んで大丈夫?やめて大丈夫?
妊娠・授乳と薬の知識

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妊娠・授乳中は薬の使用に不安を抱えることの多い時期。本書では、健診中に妊産婦からよく尋ねられる薬やサプリメントへの疑問を、Q&A形式でわかりやすく解説。各論では疾患別に対応がまとめられているほか、薬名索引からの検索も可能となっている。また、章末には薬に関するコラムも充実、プラスアルファの知識が学べる。
編著 村島 温子 / 山内 愛
発行 2010年12月判型:A5頁:176
ISBN 978-4-260-01162-4
定価 2,200円 (本体2,000円+税)
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はじめに(村島 温子)/本書の使い方(山内 愛)

はじめに
 独立行政法人国立成育医療研究センターはハイリスク妊娠を多く扱う施設で,さらに厚生労働省事業の「妊娠と薬情報センター」も担当していますので「妊娠・授乳中の薬の使用」は重要なテーマです。
 日頃の仕事で感じるのは,妊娠中の薬の使用=児の先天異常,というイメージが強いことです。これは一般人ばかりでなく医療従事者にとっても同様でしょう。薬は本来「毒にも薬にもなる」ものであり,そのメリットとデメリットを天秤にかけて使用するべきもので,妊娠中はなおさらです。しかし,妊娠していると知らずに薬を飲んでしまった場合や慢性疾患を持ったまま妊娠するために薬が必要な事例もあります。このような場合には可能な限りの情報を収集したうえで,しっかりとしたカウンセリングをすることが必要です。
 私は母性内科という特殊な内科で産科医と一緒に妊婦さんを診ています。そのため,助産師さんと一緒に仕事をする機会が多いのですが,そこで感じていることは助産師さんが勉強熱心で優秀ということです。ただし,助産の仕事だけをやっているといわゆる「患者さん」にかかわることが少ない,すなわち薬へのかかわりも少ないのではないでしょうか。
 助産師さんたちは妊婦さんに最も近い存在です。そんな助産師さん方に「妊娠中,授乳中の薬の使用」について理解し,日常業務に役立てていただこうと当院の医師,助産師,薬剤師のパワーを結集して取り組んでできあがったのが本書です。分担執筆者はそれぞれ臨床の経験も豊富で,実感のこもった内容になったと自負しています。
 本書が皆様に活用され,薬で悩みをもつ妊婦さん,褥婦さんの助けになれば幸いです。
 2010年11月
 村島 温子


本書の使い方
 医療の進歩や高齢出産の増加により,さまざまな合併症を抱え,内服しながら妊娠・出産・育児をする女性は増えています。そのため,助産師・看護師の保健指導やケアも複雑化しています。皆さんのなかには,「薬を飲んでいるから奇形をもった子どもが産まれる・生まれた」「薬を飲んだから妊娠,出産,母乳をあきらめる」という話を聞いたり,相談を受けたりした人もあるのではないでしょうか。もしも,そのような話を聞いたときは,適切なアドバイスや,しっかりカウンセリングをする必要があると思います。
 本書は医学書院発行の『助産雑誌』に1年間にわたって掲載された連載をベースにしており,総論と各論(1)~(12)で構成されています。
 総論では妊娠・授乳と薬についての基本的な知識の確認ができるようになっています。
 各論は,皆さんが妊婦・褥婦とかかわるなかでよく遭遇する疾患について,事例をあげてQ&A形式で,助産師・看護師としてどのように対応すればよいか紹介しています。また,項目ごとに薬剤師のワンポイントアドバイスを載せ,より深い知識を得ることができるようになっています。連載時にはなかった項目も追加し,より皆さんが活用しやすいように構成しました。また,妊産褥婦だけでなく,私たちにも活用できる内容も多く,看護職にかかわる多くの方々にご利用いただけることを願っております。

 2010年11月
 山内 愛

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総論 妊娠・授乳と薬
 基本事項をおさえよう!
 安全性の評価・臨床への応用
 授乳中の薬の使用に関する基本的な考え方
 相談機関を知っておこう!

各論 妊産婦さんの不安と疑問に答えよう
1.かぜ(感冒)症候群・胃痛・頭痛-解熱・鎮痛薬と抗菌薬
 ケース1 かぜ(感冒)症候群
 ケース2 胃痛,消化器症状
 ケース3 頭痛薬・鎮痛薬
 妊娠していても服用できる薬はある
2.消化器症状(便秘,下痢)
 ケース1 便秘
 ケース2 嘔吐と下痢
 よくある症状だからこそ,その人に合った指導を
3.糖尿病
 糖尿病治療薬と妊娠の関係
 ケース1 2型糖尿病-経口薬からインスリンへの変更
 ケース2 1型糖尿病-インスリンの継続
 ケース3 食事がとれない場合の対応
 ケース4 妊娠糖尿病-インスリン依存への不安
 ケース5 糖尿病-出産後の対応
 安心して妊娠期を過ごせるようなかかわりを
4.高血圧
 ケース1 慢性高血圧だが降圧薬の胎児への影響が心配
 ケース2 その降圧薬は禁忌?
 ケース3 降圧薬の母乳への影響が心配
 どんな不安を感じているかまずは聞くことからはじめよう
5.アレルギー・皮膚科疾患
 ケース1 花粉症
 ケース2 妊娠性痒疹
 ケース3 アトピー性皮膚炎
 薬の上手な利用でストレスのない妊娠生活を
6.呼吸器疾患
 ケース1 喘息:治療薬の中断
 ケース2 喘息:治療薬の母乳への影響
 ケース3 発熱を伴う呼吸器疾患
 子どもへの影響を懸念する母親の気持ちに寄り添うケアを
7.甲状腺疾患
 ケース1 妊娠中の服用に対する不安
 ケース2 ヨードの過剰曝露防止
 ケース3 授乳中の服用管理
 服用に不安を与えないためにも正しい知識を踏まえてかかわろう
8.膠原病
 ケース1 全身性エリテマトーデス治療薬
 ケース2 ステロイド薬と授乳との関係
 ケース3 関節リウマチ治療薬
 原疾患のコントロールと妊娠の両立を支援する
9.てんかん
 ケース1 抗てんかん薬服用中の妊娠
 ケース2 自己判断での服薬中止
 ケース3 抗てんかん薬の母乳移行
 思春期・妊娠前からのかかわりで意識づけを
10.精神疾患
 ケース1 向精神薬の胎児への影響
 ケース2 うつ病の症状コントロールと胎児・新生児への影響
 ケース3 産後うつ病治療の母乳への影響
 よき理解者,よき相談相手になろう
11.サプリメント
 ケース1 栄養補助としてのサプリメント
 ケース2 美容目的でのサプリメント
 ケース3 対症療法としてのサプリメント
 現代の食生活とサプリメントは切り離せない
12.ワクチン
 ケース1 妊娠中のワクチン接種-麻疹ワクチン
 ケース2 インフルエンザワクチン
 トピックス:新型インフルエンザ
 ケース3 産後のワクチン接種
 妊娠・産褥期に関係するワクチンについて知ろう

おわりに
索引

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妊娠中によくある症状や疾患別の対応を解説
書評者: 山根 美和 (柴田産婦人科医院・看護部)
 有益投与とは「治療上の有益性が危険性を上回るときのみ投与する」という意味である。薬は有益な作用を期待して使用するが,どんなに有益であっても,副作用や危険性が高い薬剤は使用する際十分に注意しなければならない。妊娠・授乳中ならなおさらである。

 「妊娠とわかる前に薬を飲んでしまったのですが大丈夫ですか?」「授乳中ですが薬を飲んでも大丈夫ですか?」産婦人科に勤めていれば,かなりよく聞かれる質問である。質問を受けて,内服した(これから内服する)という薬を添付文書で調べると,“有益投与”という内容の説明がほとんどで,決して「妊娠・授乳中も安心して内服できる」などという文は出てこない。そこで患者さんへは有益投与であることを伝えるのだが,対応の仕方によっては,不安を大きくしてしまう。

 この本はそんな妊娠・授乳中の薬の使用・解釈・説明について,国立成育医療研究センター母性内科・村島温子氏と同看護部・山内愛氏を編者に,わかりやすくまとめられている。2008年4月から1年間『助産雑誌』に連載された時から私はぜひ別冊にまとめてほしいと思っており,待望の書籍化である。

 妊娠期の安易な薬剤投与は避けるべきだが,母体の体調不良は胎児にとってもよくない環境であり,必要であるにもかかわらず投与しないで不利益を被ることがある。本書では,「先天奇形の自然発生率を薬剤投与により有意に上昇させるかどうか」という考えをベースに総論と各論が展開される。総論では薬剤使用の基本事項であるAll or Noneの時期,安全性への評価・臨床への応用,授乳中の使用に関する基本的な考え方と基本事項の確認ができる。各論では,妊娠中によくある症状や疾患別に事例をあげてQ&A形式で書かれており,患者さんにどのように対応すればよいかが紹介されている。

 また,本書の特色は随所にケアのポイントが紹介されている点である。薬への不安は子どもへの影響を懸念する母親の気持ちの表れであり,その気持ちを無視してケアはできないこと。妊娠中・授乳中に,より健康的で不安なく過ごしていけるような,気持ちに寄り添ったケアが大切であること。薬の副作用も大切だが,母親の心配する気持ちがどこから来るものなのか,薬に対する不安感などを理解して仕事を続けていかなければと改めて感じられる1冊である。

 本書は,産婦人科に勤務する人には必読の本だ。この本をきっかけに薬についての知識を増やし,新たな情報を収集し日常の勤務に役立ててほしい。そして何よりも,薬で悩んでいる人には相談機関がある!ということをぜひ伝えてほしい。

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