How to Use クリニカル・エビデンス
小児科外来で遭遇する事例をもとにEBMをひもとく
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EBP:evidence based Pediatricsの講習会のテキストとしてマクマスター大学などで用いられる形式の解説書。小児科外来で遭遇する題材によってEBMをひもといていくことができる。
著 | 浦島 充佳 |
---|---|
発行 | 2004年07月判型:A5頁:256 |
ISBN | 978-4-260-12724-0 |
定価 | 3,080円 (本体2,800円+税) |
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- 目次
- 書評
目次
開く
I. 基礎編
II. 実践編
A. 治療
B. 予防
C. 予後
D. 病因
E. 診断
F. エビデンスの統合
G. エビデンス・コミュニケーション
あとがき
論文索引
索引
II. 実践編
A. 治療
B. 予防
C. 予後
D. 病因
E. 診断
F. エビデンスの統合
G. エビデンス・コミュニケーション
あとがき
論文索引
索引
書評
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臨床家必読! 臨場感豊かな記述でエビデンスの有効利用・活用を促す
書評者: 藤原 一枝 (藤原QOL研究所・脳神経外科医)
◆医療は統計学的な証拠をもとに操られるアート
読み応えを感じる。医療が経験則ではなく,統計学的な証拠をもとに操られるアート(技術)と認識される時代,待望の1冊とも言える。それに準拠する,そして日々更新されるべき医療行為の種本の作り方・使い方である。先輩の経験や,教科書や雑誌に求めていたエビデンスが,インターネットで容易に収集される時代背景を踏まえ,読者が未知の問題を解こうとした場合の,文献の収集の仕方,PubMedなどデータベースの引き方まで懇切丁寧である。
取り上げられた事例は非常に日常的で,「母乳の乳児肺炎予防効果」「熱性痙攣の予後」「先天奇形のリスク」「癌の遺伝的要素」「BCGの結核予防効果」などなど24項目。それを,表現力に長けた著者は,生身の心を持った医師をそれぞれ主人公に仕立てた一話読み切りの形式で,臨場感豊かに解いてみせるのである。当然,情報の質が問われるわけで,基礎編・実践編で巧みに吟味点が表示され,ディベートやデータ解析につながる。
主には2001年までの文献を駆使したクリニカル・エビデンスそのものが役立つが,医者の直観や主観や性向や姿勢が医療行為の最終決定に及ぼす機微をついた記述に,引き込まれることであろう。
◆「正しく解釈し,問題を深く掘り下げて考えられる資質」
著者は,エビデンスの有効利用・活用を促し,「正しく解釈し,問題を深く掘り下げて考えられる資質」を期待する。その視点では,乳児期の神経芽細胞腫の早期発見早期治療をめざして,1985年から本格的に日本ではじまった6か月時のマススクリーニングの根拠と功罪をめぐる話題は示唆に富み,極めて熱い。
神経芽細胞腫の有無や予後不良例を問題にした時代から,「乳児期の神経芽細胞腫には自然退縮現象があり,予後良好であるので,発見の意義は少なく,かたや幼児期以降に発症する予後不良進行癌の発見には寄与していない」というエビデンスが集積された。スクリーニング陽性患者に,無用の治療を強い,QOLを悪化せしめたという反省がある。きめ細かい観察と同時に,最終判定にランダム化二重盲検臨床試験が説得力があることが示される。そして,著書に記載はないが,ついに2003年10月に,日本ではこのスクリーニングは中止されたのだ。
小児脳神経外科を専門とする評者には,「葉酸投与で,二分脊椎が予防できるか」という設問に,「40―80%予防できる」というエビデンスが示され,「統計学的に90%の神経管欠損は葉酸欠乏による」という確率の表示に興味があった。葉酸投与で予防できなかった症例が現実にあり,予防策は単純でないと思う故である。
最後に,「エビデンスをよく勉強して成人病を予防するのは内科医ではなく,小児科医なのではないか。生活習慣は小児期に形づくられるもので,成人になってからそう簡単に変えられるものではないから」という著者の姿勢には,おおいに共感した。科を問わず,臨床家必読の書である。
書評者: 藤原 一枝 (藤原QOL研究所・脳神経外科医)
◆医療は統計学的な証拠をもとに操られるアート
読み応えを感じる。医療が経験則ではなく,統計学的な証拠をもとに操られるアート(技術)と認識される時代,待望の1冊とも言える。それに準拠する,そして日々更新されるべき医療行為の種本の作り方・使い方である。先輩の経験や,教科書や雑誌に求めていたエビデンスが,インターネットで容易に収集される時代背景を踏まえ,読者が未知の問題を解こうとした場合の,文献の収集の仕方,PubMedなどデータベースの引き方まで懇切丁寧である。
取り上げられた事例は非常に日常的で,「母乳の乳児肺炎予防効果」「熱性痙攣の予後」「先天奇形のリスク」「癌の遺伝的要素」「BCGの結核予防効果」などなど24項目。それを,表現力に長けた著者は,生身の心を持った医師をそれぞれ主人公に仕立てた一話読み切りの形式で,臨場感豊かに解いてみせるのである。当然,情報の質が問われるわけで,基礎編・実践編で巧みに吟味点が表示され,ディベートやデータ解析につながる。
主には2001年までの文献を駆使したクリニカル・エビデンスそのものが役立つが,医者の直観や主観や性向や姿勢が医療行為の最終決定に及ぼす機微をついた記述に,引き込まれることであろう。
◆「正しく解釈し,問題を深く掘り下げて考えられる資質」
著者は,エビデンスの有効利用・活用を促し,「正しく解釈し,問題を深く掘り下げて考えられる資質」を期待する。その視点では,乳児期の神経芽細胞腫の早期発見早期治療をめざして,1985年から本格的に日本ではじまった6か月時のマススクリーニングの根拠と功罪をめぐる話題は示唆に富み,極めて熱い。
神経芽細胞腫の有無や予後不良例を問題にした時代から,「乳児期の神経芽細胞腫には自然退縮現象があり,予後良好であるので,発見の意義は少なく,かたや幼児期以降に発症する予後不良進行癌の発見には寄与していない」というエビデンスが集積された。スクリーニング陽性患者に,無用の治療を強い,QOLを悪化せしめたという反省がある。きめ細かい観察と同時に,最終判定にランダム化二重盲検臨床試験が説得力があることが示される。そして,著書に記載はないが,ついに2003年10月に,日本ではこのスクリーニングは中止されたのだ。
小児脳神経外科を専門とする評者には,「葉酸投与で,二分脊椎が予防できるか」という設問に,「40―80%予防できる」というエビデンスが示され,「統計学的に90%の神経管欠損は葉酸欠乏による」という確率の表示に興味があった。葉酸投与で予防できなかった症例が現実にあり,予防策は単純でないと思う故である。
最後に,「エビデンスをよく勉強して成人病を予防するのは内科医ではなく,小児科医なのではないか。生活習慣は小児期に形づくられるもので,成人になってからそう簡単に変えられるものではないから」という著者の姿勢には,おおいに共感した。科を問わず,臨床家必読の書である。
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