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How to Make クリニカル・エビデンス

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世界の代表的な臨床研究事例を紹介しつつ,臨床研究の方法,クリニカル・エビデンスのつくり方のポイントをわかりやすく伝える,臨床研究の入門書。複雑な臨床事実の中から,ものの本質を発見するに至った偉大な医学研究者たちに学ぶ。好評を博した「週刊医学界新聞」の連載に全面的な加筆・修正を施して単行本化。
浦島 充佳
発行 2004年05月判型:A5頁:208
ISBN 978-4-260-12721-9
定価 2,750円 (本体2,500円+税)
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  • 目次
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I 相関関係から因果関係へ
II 日常診療から臨床研究へ
III 治療から予防へ
IV ベンチからベッドサイドへ
V 現在から未来へ
あとがき

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「臨床研究の本は難しい」,そんなイメージを一変させる一冊
書評者: 小野崎 耕平 (ハーバード大スクール・オブ・パブリック・ヘルス・医療管理学/ジョンソン・エンド・ジョンソン株式会社エチコンジャパン)
 「本書の出版を心待ちにしていた」書評の決まり文句だ。それは賛辞や励ましだけではなく,時には,著者への気遣いや愛情だったりもする。単なる慣例で添えられている場合もあるだろう。一方,いくら心の底からそれを伝えても,三割くらいは割り引いて見られるのが,この手の書評と結婚式のスピーチである。いずれも,事実上「誉める」意外の選択肢は無いからだ。しかし,それを承知の上でも,敢えて最大限の賛辞と推薦の言葉を贈りたい稀有な著作,それが本書『How to Makeクリニカル・エビデンス』だ。

◆本質を突いたメッセージが満載

 「エビデンスを患者さんにどう使うか,というエビデンス・ベイスド・メディスン(EBM)は臨床家として当たり前,これからの日本の医療界に求められるものは,『エビデンスを構築すること』すなわち,クリニカル・エビデンス・メイキング(CEM)ではないでしょうか?」冒頭で著者はこう説く。

 東京慈恵会医科大学の創始者,高木兼寛の「脚気栄養学説」にはじまり,ポリオ・ワクチンの臨床試験,狂牛病,エイズなどのケースに引き込まれるうちに,臨床研究の種類や対象,その方法論,統計学の基本セオリーなどのエッセンスが,いつの間にか腑に落ちてくる。

 「統計学的有意差をもって相関関係があることを提示することと,因果関係があることは異なる」というメッセージが再三登場する。ハッとする読者も多いだろう。このような,本質を突いたメッセージは他にも満載だ。それでいてわかりやすい。そしておもしろい。

 著者の浦島充佳先生は,東京慈恵会医科大学で骨髄移植を含む小児癌医療を中心に活躍,そしてハーバードの内科インストラクターやダナ・ファーバー癌研究所研究員を経て帰国。分子生物学的手法に疫学・生物統計学的手法を融合した新たな領域を開拓してきた。現在は慈恵医大の「臨床研究開発室」で臨床家の研究デザインや解析の支援のほか,人気の「慈恵クリニカル・リサーチコースを主宰するなど,同分野の普及啓蒙でも大活躍である。

 各章の冒頭で提示されるケースとその分析。そしてそこから導かれるメッセージ。各章にふんだんに盛り込まれている,ケースを軸とした構成は,ハーバードの名教授陣が授業で繰り広げる「ケース・メソッド」のアプローチを髣髴とさせる。エキサイティングだ。

◆直ちに本書を手にとるべきだ

 日頃,臨床研究の勉強の必要性を感じながらも日々の診療で忙殺され,なかなか第一歩を踏み出せない,数学や統計が嫌いだが臨床研究の必要に迫られている,学会前に統計ソフトに慌ててデータを流し込みつつエイヤッ!で検定をしている,海外で「通る」ペーパーを書きたい。このような方々は直ちに本書を手に取るべきである。もちろん,看護師,コメディカル,医学生,医療関連企業の方や一般の方々にとってもきわめて有用なのは言うまでもない。

 P値,オッズ比,交絡,バイアス,コホート研究とケース・コントロール研究の相違等々,盛り込まれている内容は豊富だ。秀逸なのは,それぞれについて「要は何なのか?」「それが現実にどういう意味があるのか?」という本質にまで言及している点だ。だから腑に落ちる。

 そして,さらに深く学びたい人のためには,豊富な参考資料がダウンロードできる著者のウェブ・サイトへの案内が要所に掲載されている。勉強したくなる仕掛けが心にくい。

 本のサイズも章立ても見事にコンパクトにまとまっている。鞄に忍ばせておけば,空いた時間に少しずつ読める。これも多忙を極める臨床家にこそ読んで欲しいという著者の,これまた憎いばかりのストラテジーである。(ただし,一度読み出すと今度は中断するのに難渋するだろう!)

◆これからの医療を考える羅針盤を与えてくれる

 「最良と思われる治療を施しても治らない。ではどうしたらよいのか?」「海外の雑誌に投稿しても論文が受理されない。なぜか?」こんな原体験と想いこそが,著者を執筆に駆り立てたのだろう。「証明された治療法が人々に適応されなければ意味がない」「1つのクリニカル・エビデンスが,けた違いに多くの人を幸せにすることができるかもしれない。臨床研究とはそんな魅力を秘めた領域だ」と一貫して説く。原体験と豊富な経験に裏打ちされたメッセージは,重く,そして気迫に満ちている。

 本書が与えてくれるのは,「解説」ではなく「メッセージ」である。そして,類書と圧倒的に異なる点は,実はここにある。もちろん,クリニカル・リサーチに必要な数多くの知識を与えてくれる。しかし単なる実用書では決してない。これからの医療を考える羅針盤を与えてくれる啓蒙書である。

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