老年学 第2版

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PT・OTテキストシリーズの1冊。第2版では,新規に高齢者の耳鼻咽喉科疾患や眼科疾患,東洋医学的アプローチを加えた。「第III部 高齢者に特徴的な症候と疾患」の各章の冒頭に“老化と疾患”という項目を設け,より多角的に疾患・治療を解説したほか,各章末の「理学・作業療法との関連事項」の内容的な充実を図った。
シリーズ 標準理学療法学・作業療法学 専門基礎分野
シリーズ監修 奈良 勲 / 鎌倉 矩子
編集 大内 尉義
発行 2005年04月判型:B5頁:324
ISBN 978-4-260-26632-1
定価 4,620円 (本体4,200円+税)
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  • 目次
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 序説 PT・OTと老年学のかかわり
第I部 加齢と老化
 第1章 老化と老年病の考え方
 第2章 加齢に伴う変化:生理機能(形態学的変化も含めて)
 第3章 加齢に伴う変化:運動機能
 第4章 加齢に伴う変化:精神心理面
第II部 高齢者へのアプローチ
 第5章 高齢者の定義および人口動態
 第6章 高齢者との接し方
 第7章 高齢者の機能評価
 第8章 高齢者の退院支援
第III部 高齢者に特徴的な症候と疾患
 第9章 高齢者に多い症候と老年症候群
 第10章 循環器疾患
 第11章 呼吸器疾患
 第12章 消化器疾患
 第13章 骨・運動器疾患
 第14章 精神神経疾患
 第15章 内分泌代謝疾患
 第16章 血液・免疫疾患
 第17章 腎・泌尿器疾患
 第18章 皮膚,口腔疾患
 第19章 感染症
 第20章 耳鼻咽喉科疾患
 第21章 眼疾患
 第22章 東洋医学とその周辺領域からのアプローチ
第IV部 高齢者をとりまく環境
 第23章 社会学・経済学からみた高齢社会
 第24章 高齢者の医療,看護,介護・福祉,保健
 第25章 高齢者のリハビリテーション

セルフアセスメント
索引

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臨床の声も盛り込んだ「老年学」必携の教科書
書評者: 折茂 肇 (健康科学大学・学長)
 このたび標準理学療法学・作業療法学専門基礎分野『老年学』第2版(編集=東京大学大学院教授大内尉義)が刊行された。

 わが国では人口の高齢化が急速に進み,65歳以上の高齢人口が20%に達し,世界一の長寿国となった。このような高齢社会の到来により,わが国の社会のあり方を根本的に見直す必要に迫られている。医療の分野においては,日常の臨床の現場で接する患者さんが著しく高齢化しているため,医療に関わるすべての人が高齢者の特徴をよく理解し,高齢者のQOLを第一義的に考えた高齢者医療を行うことが社会的なニーズとして求められている。しかしながら現状では,その意義と必要性とが正しく理解されているとは言いがたい状況である。高齢者医療の基本的な考え方は「高齢者は若中年者をそのまま延長したものではい」というものであり,これは「小児は大人のミニチュア版ではない」という小児科学の基本的な考え方と相通ずるものである。しかしながらこのような「自明」と思われる考え方がなぜか理解されていないのが現状である。

 高齢者の医療に関わる人にとってまず必要なことは,加齢の概念及び高齢者の特性につき基本的な事項をよく理解することである。高齢者の特性をよく理解しなければ,高齢者の正しい医療はできないということを肝に銘じるべきである。加齢及び高齢者の特性につき医学のみならず社会学,心理学,生物学等,学際的な見地から総合的に研究する学問が老年学である。本書には老年学の多岐にわたる分野について,実にきめ細かく簡潔に,かつ解りやすく解説してある。

 初版では老化に伴う身体機能,運動機能,心理の変化,高齢者に多い疾患の病態,治療の考え方,高齢者の総合的機能評価法,高齢者の介護,福祉の問題に関する解説がなされており,読者から大変な評価を得て,2001年に第1刷が刊行されて以来,2004年には第5刷が刊行されるほどの人気を博した。第2版では初版発行後,各方面から寄せられた意見を参考として目次の見直しが行われている。初版にはなかった高齢者の耳鼻咽喉科疾患や眼科疾患,さらには東洋医学に関する記載も加えられている。特記すべきは各章末に「(理学・作業)療法士の視点から」という小項目が設けられ,実際に臨床の現場で働いている方々からの生の声が加えられていることである。高齢者医療には理学療法士,作業療法士を加えたチーム医療が必須である。本書はこれらの人々に対して「老年学」を基本知識として身につけるための必携の教科書として誠にふさわしいもので,できるだけ多くの人に用いられるよう推薦する次第である。

より質の高い高齢者医療の実現をめざして
書評者: 高柳 涼一 (九大大学院教授・老年医学)
 本書は理学療法学・作業療法を学ぶ方々に必要な基本的医学知識(専門基礎分野)を習得することを目的として編集されたテキストシリーズの1つで,老年学についてまとめたものである。初版が2001年6月に刊行され,この度,約4年を経て第2版が刊行された。

 この4年間にわが国の高齢者人口は増加の一途をたどり,2004年10月1日時点で65歳以上の高齢者人口は19.5%,90歳以上の人口は101万6000人とはじめて100万人の大台を超えた。また,わが国の高齢社会対策のゴールドプランとして登場した介護保険制度も5年が経過し,見直し作業が行われた。その結果,要介護に陥らないように,いかに予防するかということを意識した改正が行われた。このような状況を背景に,「高齢者医療は若中年医療をそのまま延長したものではない」という老年医学の基本コンセプトのもと,高齢者医療はどのように実践したらよいのかという疑問に対する答えが要求されている。初版もこのような疑問に応えるべく,編集,刊行されたが,第2版ではさらにその要請に応えるべく充実したものとなっている。

 老年病は,臓器別の疾患はもちろんであるが多臓器を患った複合疾患としての特徴,さらには,高齢者を取り巻く社会環境がその治療効果に大きな影響を与える特徴がある。本書は,老年医学,高齢者の医療や介護,福祉に長い経験と深い知識をもった執筆陣によってまとめられており,さらに理学療法士・作業療法士をめざす学生向けの教科書としての工夫が成されている。B5判/約300頁よりなり,「第1部 加齢と老化」,「第2部 高齢者へのアプローチ」,「第3部 高齢者に特徴的な症候と疾患」,「第4部 高齢者をとりまく環境」の4パートから構成されている。「第2部 高齢者へのアプローチ」では高齢者との接し方,高齢者の機能評価,高齢者の退院支援について述べており,高齢者医療の実践における注意点や重要な事項が簡潔にまとめられ,そのエッセンスを手短に得るのに重宝する。「第3部 高齢者に特徴的な症候と疾患」は全体の約半分を占めており,重要なパートであるが,ポイントを理解しやすいように最初に「○○領域の老化と疾患」という小項目を加え,老化がどのように疾患に結びつくかを総論的にふれている。また,各疾患の記述の最後に「理学・作業療法との関連事項」という項目を設け,理学・作業療法が果たすポイントについて簡潔に述べ,続いて「療法士の視点から」という小項目を設け,地域で活躍する現職の理学療法士の生きたコメントを追加するなど,理学・作業療法の現場と老年病の各疾患を結びつける工夫がなされている。老化の表現型として顕著なものが感覚器の老化であり,高齢者のQOLを大きく低下させる要因の1つである。この点を踏まえ,第2版では「耳鼻咽喉科疾患」と「眼疾患」が新しい章として追加された。さらに「東洋医学的アプローチ」も新しく追加され,ここでは高齢者が陥りやすいサプリメントや民間医療法について合理的,現実的な対処が述べられている。高齢者を診ている医師のみならず,コメディカルの方々にも必読に値する。

 最後に,本書の編集者の大内尉義氏の序の一文,「老年学では高齢者をとりまく環境への十分な配慮が重要である。より質の高い高齢者医療の実現には,理学療法士・作業療法士の協力が不可欠である」を紹介する。本書は質の高い高齢者医療の実現に寄与する理学療法士・作業療法士の育成に適した教科書であると言える。

医療・介護現場で役立つ老年学のバイブル
書評者: 荻原 俊男 (阪大病院長/阪大大学院教授・老年・腎臓内科学)
 先進国の中で未曾有の超高齢化社会の到来を控えたわが国において,高齢者の社会を支えているのは税金を納めている納税者だけでなく,実際に高齢者の医療,福祉を支えている家族であり,メディカル・コメディカルスタッフである。老年医学と聞くと,一般医学の高齢者版に過ぎないという誤った認識が多く見受けられるが,本書を通読すると,高齢者の疾病だけでなく,人格から生活スタイルに至るまでの理解が深まり,医療や介護の現場で直ちに役立つ「ポイント」が自ずから身につくような工夫が随所になされている。本書は,国家試験に受かるための「知識」を詰め込むだけでなく,老年学の基本である「全人的に診る」素養を涵養し,その生き様に敬意を払う姿勢を身につけるためにも絶好の読み物でもある。各疾病に関する記述も,各分野の専門家が高齢者に特異的な病態や若年者との違い,見落としがちな症状や兆候などを,詳細に解説している。したがって,授業や実習でバイブルとして携帯し,辞書のような活用も可能であろう。

 序説にも記されているが,本書は老年医学だけにとどまらず,基礎老化学,老年社会学,老年精神医学,老年歯科医学の分野も網羅されており,「老年学」のタイトルで総括されているのが最大の特徴である。最近では,「アンチ・エイジング」が医療や介護の領域を越えて一大ブームになっているが,健康に老い,寿命を全うしたいというのは,世代を超えた究極の願いである。基本的には,PT,OTをめざす方の教科書としてまとめられているものの,その内容は医学部生,研修医をはじめ,高齢者に関わるすべての方に読んで頂きたい幅広いものとなっている。特に高齢者の機能評価ではBarthel IndexやMMSEなど,老年専門医にも日常診療で使いやすい表記で記載されており,私自身も手の届くところに本書を置き,実際に活用させて頂いている。また,医療関係者には介護のシステムやリハビリの現状を,介護関連の方には高齢者に特異的な疾患の特徴がわかりやすく記述されており,1人の高齢者をチームで支える時の共通のバイブルとして大いに利用が期待される。

 超高齢化社会が円滑に機能するためには,高齢者自身の自立と理解が必須である。高齢者本人のやる気を持続させるためには,内在する心身の状態,とりまく社会的環境を総合的に考え,個別に対応することが重要である。マニュアル通りいかないのが高齢者の特徴でもあり,接する側の技量が最も問われるところとなる。本書をきっかけに,高齢者の心のヒダに潜んだ問題点に気がつけば,教科書で学ぶ数倍の貴重な情報が,本人の口から語られることになる。3Kなどと呼ばれがちな高齢者をとりまく環境を宝の山に変えるためには,読者が老年学のエキスパートとなり,世界一の長寿国を支える担い手としての自負が芽生える一助として本書が活用されることを願ってやまない。

各臓器の老化を解説した幅広い内容の教科書
書評者: 松房 利憲 (長野医療技術専門学校・作業療法学)
 わが国の65歳以上の高齢者人口は,2004年に2488万人となり,総人口に占める割合(高齢化率)は19.5%となった。高齢化率は上昇を続け,2050年には35.7%にも達すると見込まれている。当然のことながら,それとともに理学療法士・作業療法士の対象となる高齢者は増加するであろう。高齢者を対象とする場合,症候や疾患の知識の習得はもちろんのこと,高齢者をとりまく社会的環境をも配慮する必要がある。

 筆者は標準作業療法学・専門分野で「高齢期作業療法学」を編集・執筆させていただいたが,その際大内先生の編集による標準理学療法学・作業療法学・専門基礎分野の『老年学(初版)』を大いに参考にさせていただいた。大内先生の「高齢者は若中年をそのまま延長したものではない」という基本コンセプトにはまったくもって同感である。

 初版では,第I部で老化に伴う身体や心理の変化とそれらが疾病の成立にどのように関与するかという基本的な問題を扱い,第II部で高齢者に多い疾患の病態,治療の考え方を解説,第III部で機能評価法と退院支援,第IV部で高齢者をめぐる社会的問題について解説するという構成になっていた。この構成で結構理解しやすく編集されていると感じていたが,第2版では理学療法士・作業療法士学生の教科書としてさらに理解しやすくするための工夫がなされている。

 序説「PT・OTと老年学のかかわり」が加わり,なぜ「老年学」が必要かが述べられ,総論的な知識を扱ったパートを前半に,各論的な知識を扱ったパートを後半に置き換え講義しやすいように流れが変わっている。また,耳鼻咽喉科疾患や眼疾患を独立させ,東洋医学とその周辺領域からのアプローチも加わり初版に比べてより多角的に高齢者の疾患・治療が解説されている。臓器別の疾患を扱った章では,老化がどのように疾患と結びつくかを「○○領域の老化と疾患」という小項目をたててあり,学生の理解に繋げたいという思いが十分に伝わってくる。さらに「療法士の視点から」という小項目が加わり,理学療法・作業療法の現場での留意点についてふれられている。

 知識の習得は理解して記憶するというプロセスが必要であり,理解のないまま記憶しても,それは臨床では使えない知識となる。また,人間は臓器だけを診ればよいのではなく,その人が生きてきた歴史が現在の対象者の行動と関係していることを理解しておかなければならない。人は環境によって変化する。そして高齢者に対する社会資源や制度も,高齢者の増加にあわせ急激に変化している。家屋・家族的環境だけでなく,社会的環境まで考慮して初めて高齢者に対処できると言えよう。本書は身体を構成する各臓器の老化による変化を解説し,それ故さまざまな疾患に結びつくという流れを示し,収めてある内容も幅広く,学生の理解に大いに役立つと思われる。

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