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皮膚科医直伝 皮膚のトラブル解決法

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『総合診療誌JIM』で好評を得た「皮膚科医直伝シリーズ」待望の単行本化。一般医に向けて、現場で活躍する皮膚科開業医が教科書では学べない実践的な皮膚トラブルの治療法を豊富な臨床写真とともに伝授。取り上げる皮膚疾患・皮膚トラブルごとに、すぐに使える「患者向け説明コラム」が付いて患者とのコミュニケーションも万全に。臨床に役立つ「デジカメ・テクニック」も収録。
シリーズ 総合診療ブックス
中村 健一
発行 2007年11月判型:A5頁:208
ISBN 978-4-260-00506-7
定価 4,400円 (本体4,000円+税)
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推薦のことば(宮地良樹)/序文(中村健一)

推薦のことば
 もう20年ほど前になるであろうか,当時私は皮膚科の講師になりたての頃で,生活のために京都の民間病院で週に1回皮膚科の夜診のアルバイトをしていた.その頃毎週,私の夜診を見学に来ていろいろ質問する熱心な研修医がいた.それが本書の著者,中村健一先生である.研修医には見えない風貌だったのでよく聞くと,一橋大学を出て石油会社に就職したがつまらないので医学部に再入学し,今研修の1年目だという.実際,彼はシャイなように見えて実に臨床に熱心で,「今の研修よりも皮膚科外来見学のほうがおもしろい」と言うので,ある晩「皮膚科に転向したらどうか」と言ってみると,待ってましたとばかりに「皮膚科医になりたいんです」という返答だった.私も,皮膚科へ入局する前に,1年間内科研修をしていたので,自分の経験と重ね合わせていたのかもしれない.しかし諸事情から関東へ行きたいが,臨床を学べるところを紹介してほしいというのでその場で北里大学皮膚科の医局長に電話をし,入局をお願いした.

 その後,風の便りに「開業した」とも聞いていたが,数年前に,ある学会でひょっこり再会した.今臨床医のためのデジカメ活用マニュアルをまとめている,というので,ある出版社の編集者を紹介したところ,みごとな好著を出版された(中村健一:臨床医のためのデジカメ活用マニュアル.中山書店,2003).2冊目の著書が,この『皮膚科医直伝 皮膚のトラブル解決法』である.

 私はプライマリ・ケア医/総合診療医向けの月刊誌『JIM』(医学書院発行)に寄稿することはあっても購読していないので連載を知らなかったが,ゲラを拝読して,実に彼らしいと思った.内容は,実地医家ならではの皮膚科診療のコツと落とし穴がちりばめられており,臨床に直結して役立つ内容ばかりである.さらに,デジカメの技量も駆使して,実に臨床写真が豊富である.多少書きぶりに品がないのは私に似てしまったのかもしれないが,役にも立たない総説論文よりはるかに実用的である.臨床への熱意があるからこそ診療の盲点に気づくわけで,それも臨床的力量の証左である.またそれを臨床医に平易に伝えようとする姿勢にも敬服する.私も100冊以上の書物を上梓してきたが,ここまで実地医家と同じ目線で編集することは大学人には難しい.

 一読しながら,20年前の夜診の光景を鮮やかに思い起こした.あの時彼はこういう実践的な皮膚科医になりたいと当初から考えていたのではあるまいか.20年を経て,その念願を成就し,自らの生きざまの集大成を伝えたくて,本書をまとめたのではないかと思われてきた.その意味でも,まさに「目からウロコ」の,とっておきの皮膚科診療直伝である.皮膚科診療にあたるすべての医師にぜひ一読をお勧めしたい.
 2007年10月 京都にて
 京都大学教授・皮膚科学 宮地良樹

序文
 本書は,医学書院発行のプライマリ・ケア医/総合診療医向けの月刊誌『JIM』2004年8月(14巻8号)から2006年3月(16巻3号)にかけて連載された記事を加筆・修正しまとめたものである.

 それにしても,『うーん,人生どうなるかわからない』.30年ほど前,法学部を卒業して就職活動をした.希望した会社は何と「Y證券」と「H銀行」だった.ウソではない.これらの一流企業からは内定されず,過酷な運命を嘆いた(注:その後これら2つの企業には廃業という,さらに過酷な運命が待っていた).放心状態で別の会社に就職した.しかし単調な毎日に絶望し,医師になろうと決心した時は26歳になっていた.

 そして医学部を卒業し,京都のある病院で研修をしていたら,週1回京都大学からおもろい皮膚科の先生が非常勤として来ていることを知った.患者から絶大な人気があり,いつも満員の外来であった.ふとしたきっかけでその先生の外来を見学させてもらい,私は皮膚科のとりこになった.そのおもろい先生が何と今の京都大学教授宮地良樹先生だったのである.「皮膚科をやりたいのです」という,どこの誰だかわからないこの私のために,宮地先生は躊躇することなく皮膚科学教室への推薦状を書いてくれた.

 人生は時として劇的だ.倒産・廃業したY證券やH銀行にそのまま就職していたら,本書は存在していなかった.「捨てる神」と「拾う神」,一瞬の出会いが人生を決定する.本書との出会いで,皮膚科が変化に富んだ大変魅力的な学問であり臨床現場であることがわかっていただければありがたい.一般医として総合的に診療している医師のみならず,何科を専攻しようか迷っている医学生・研修医にもぜひお勧めしたい.「おぉ,こいつはおもしろい,皮膚科を勉強してみようかな」と感じていただければ望外の喜びである.
 2007年10月
 中村健一

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総論 ワンランク上の皮膚疾患の診かた
I 迷った時・困った時の虎の巻
 汗疱とは?
 開業医の悩み,蕁麻疹
 アトピー性皮膚炎恐怖症
 「このほくろは癌なのでしょうか」と聞かれたら?
 遭遇頻度ナンバーワン,脂漏性皮膚炎
 ジベルばら色粃糠疹
 尋常性疣贅「先生! 子どもの足にウオノメがたくさんできています」
 夏の皮膚病はややこしい
 ウイルス性皮膚疾患,ジアノッティ症候群を知っていますか?
 足白癬(水虫)診察の落とし穴
 水虫には水虫の薬は禁物!?
 爪の異常=爪白癬ではありません
 単純ヘルペスの罠にご用心!
 帯状疱疹後神経痛を防止せよ!
 それでも疥癬は生き続ける
 痒疹の罠
 「癖」による皮膚炎?
 なぜ治らない?おむつ皮膚炎
II 知っておきたい最新・便利な治療法
 尋常性座瘡(ニキビ)治療最前線
 いまだに消毒とガーゼ,お風呂禁止ですか?
 忙しい医師と患者のための褥瘡治療簡単マニュアル133
 頭の毛がない!
 靴源病
III 薬のトラブルあれこれ
 こんな薬に要注意!
 薬疹,危機一髪!
 ステロイド酒さ
IV おわりに
 言葉の罠と落とし穴
特別付録 現場で使えるデジカメテクニック
索引

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皮膚科医でないあなたに,そして皮膚科医のあなたにも
書評者: 池田 正行 (国立秩父学園・内科医)
◆漂流の末,出会った灯台

 医学書の書評は,普通,その分野に通暁した専門家に依頼が来る。しかし,皮膚科研修の既往も予定もない私に書評の依頼が来たのはなぜだろうか。

 日本皮膚科学会によれば,2007年11月現在,皮膚科専門医数は5439名。これは,医師数全体27万人の2%にあたる。しかし,私を含めた残り98%の医師も,様々な事情でしばしば皮膚科診療をせざるを得ない。

 かく言う私は,半年前までは日本のFDAのDirector Medical Reviewerとしての役所仕事を4年間,その前は,地域の施設で重症心身障害者や精神障害者の診療を10年間,今は五十の手習いで知的障害,発達障害診療研修中の身である。だから,皮膚科はご勘弁願いたいと言いたいところだが,そうは問屋が卸さない。どこもかしこも医師不足の世の中である。当然,いつでもどこでも,専門医に相談できる状況にはない。かといって,神経内科専門医の免状を盾に取り,皮膚科はできませんとは,気弱な私は言い切れない。

 かくして,見よう見まねさえできない環境で,白癬,脂漏性皮膚炎,自傷,おむつ皮膚炎,疥癬,帯状疱疹・単純ヘルペス,といった診断名を大胆にも下して治療しなければならない立場に追い込まれる。そんな時の私は夜の海でさまよう小舟だった。そして,長い長い漂流の末,出会った灯台が本書である。

◆日常診療で遭遇する問題へのこだわり

 プロフェッショナリズムの大切な要素の一つに,自分の専門分野以外の人々に対する説明責任がある。しかし,残念ながら,このような説明責任を果たした書物は,極めて希にしかお目にかかれない。なぜなら,多くの専門家達は,しばしば蛸壺の中だけで仕事をするがゆえに,蛸壺の外の世界にいる人々が,どんな悩みを抱えているかを意識しなくなってしまうからだ。その結果,専門領域の人間生物学的知識を網羅した教科書ばかりができあがってしまう。それに対して,本書は,まさに一流のプロが,自分の説明責任を見事に果たした結果である。

 本書の秘密は,日常診療で遭遇する問題へのこだわりにある。本書は「最新医学の成果」の類とは無縁である代わりに,今まで皮膚科医以外が,そしておそらく多くの皮膚科医も長年悩んでいたであろう,普遍的な問題の解決方法が満載されている。

◆良質なコンサルテーションのお手本集

 灯台守は,灯台から発する信号が,適切な形で船に届いているか,常に気を配っていなければならない。本書の読者は非専門医を想定しているが,私は皮膚科専門医も本書を熟読すべきだと考える。なぜなら,本書は,良質なコンサルテーションを行うためのお手本になるからだ。余計なお世話と言うなかれ。神経内科医である私が,本書に描かれている著者の姿勢から,診療科の如何に関わらず,コンサルタントはかくあるべしとの教えを学んだぐらいなのだから。
不安を興味に変えてくれる一冊 皮膚疾患を診るためのコツが満載
書評者: 伊藤 澄信 (国立病院機構)
 自分が医学生のころ,脂漏性皮膚炎を患っていたことがある。左頬部にできた,時々悪化する皮疹が皮膚科のテキストをみてもわからずにいたことを思い出す。通常の教科書は疾患の頻度に応じて記述の順番や量が配慮されていないために,初学者が診断にたどり着くのは容易ではない。この本があれば悩まずに済んだのに,と思う。

 通常の皮膚科の教科書は疾患の頻度を無視して記載してあるから,目の前の患者さんがどの疾患なのかを判断することは容易ではない。プライマリ・ケアに必須なのは頻度の高い疾患の診療と見落とすと致命傷になる疾患の初期対応である。この本のすばらしさは,遭遇する頻度の高い皮膚疾患とその対応策が述べられていることにある。とくに稀でも落とし穴が隠れている場所と対応策を重点的に書いてある本なんてそうざらにあるものではない。

 「皮膚科診療は立会勝負である」と著者はいう。皮膚の異常は誰にでも見えるし,良くなったのか悪くなったのかわかるからごまかしがきかない。そのため上手に保険(診断がはずれてもトラブルにならないようにするための患者さんへの説明)を掛けないととんでもないことになってしまう。本書には,著者の痛い経験からできた対処法や説明が随所に散りばめられている。失敗に基づいた説明は説得力が違う。それに加えてきれいな写真の数々。通常のアトラスであれば典型例が1つ例示されているだけであるが,この本では疾患のバリエーションをきれいな写真で提示している。皮膚疾患を理解するのに最適な方法だろう。

 この本には汗疱,蕁麻疹,アトピー性皮膚炎,しみ・ほくろ,脂漏性皮膚炎,ジベルばら色粃糠疹,尋常性疣贅,とびひ,毛虫皮膚炎,ジアノッティ症候群,足白癬,単純ヘルペス,疥癬,痒疹,癖による皮膚炎,おむつ皮膚炎,尋常性挫創,褥瘡,靴源病,薬疹,ステロイド酒さについて記載されており,これだけ知っていれば皮膚科の診療もできそうな気さえする。もちろんスタンダードな教科書ではないので皮膚科の総論や基礎的な事項は書いてない。教科書には書かれていない,実際の臨床をやっている人だけが知っている診療のコツが満載されているのだ。この本一冊で皮膚科診療ができるわけではないし,皮膚科のトレーニングの代わりになるとは言い難い。しかし,通院中の患者さんに皮膚疾患が出てきた時の不安を,興味に変えてくれる一冊であることは間違いない。

 全体を読み終わってから冒頭の総論を読み直すと,著者の思いが伝わってくる。皮膚科は結果が患者さんにもわかるので患者さんとのコミュニケーションが大事だということである。コミュニケーションをサポートするために,各疾患ごとに記載されている患者さん向けの説明文書「For Patients」は秀逸である。「For Patients」は患者さんへの説明というより,むしろ一般医が知っておくべきエッセンスの凝縮である。

 当別付録として「現場で使えるデジカメテクニック」がついている。これだけきれいな臨床写真を撮るコツまで披露してしまう著者の気前の良さは,「言葉の罠と落とし穴」に記載されている失敗談からもわかるように,ストレートな診療理念を持つゆえだと思う。

 この本が内科診療所に出回ってしまったら,皮膚科診療所にいく患者さんが減ってしまうのではないかと心配してしまうほどの出来のよさ。まさに目からウロコの皮膚科診療極意書である。

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