標準生理学 第6版

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生理学の基本概念や生理学的考え方が懇切丁寧に書かれた,わかりやすく,臨床に行っても大いに役立つ1冊。改訂にあたり全面的に最新知見を取り入れるとともに,現代生理学を学ぶ医学生の理解を更に深めるために,新たに『生理学で考える臨床問題―生理学的思考方法を涵養するために』と題した別冊付録を添付。
シリーズ 標準医学
監修 本郷 利憲 / 廣重 力 / 豊田 順一
編集 小澤 瀞司 / 福田 康一郎 / 本間 研一 / 大森 治紀 / 大橋 俊夫
発行 2005年01月判型:B5頁:1176
ISBN 978-4-260-10137-0
定価 13,200円 (本体12,000円+税)
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  • 目次
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序章
第1章 細胞の一般生理
第2章 神経と筋の生理学
 1.膜興奮性とイオンチャネル
 2.筋肉とその収縮
 3.興奮の伝達
第3章 神経系の機能/概説
 1.総論
 2.大脳皮質と機能局在
第4章 感覚機能
 1.総論
 2.体性感覚
 3.聴覚
 4.平衡感覚
 5.視覚
 6.味覚と嗅覚
第5章 運動機能
 1.筋と運動ニューロン
 2.脊髄
 3.脳幹
 4.大脳皮質と大脳基底核
 5.小脳
 6.発音と構音
第6章 自律機能と本能行動
 1.自律神経系
 2.視床下部と辺縁系
第7章 総合機能
第8章 血液
第9章 循環
 1.循環系の基本的性質
 2.心臓の働き
 3.血液循環
 4.循環系の調節
第10章 呼吸
第11章 消化と吸収
 1.消化液の分泌
 2.消化管の運動
 3.消化管の吸収
 4.消化管ホルモン
 5.消化管における免疫防御
第12章 体液調節と尿の生成、排泄
 1.体液調節
 2.尿の生成、排泄
第13章 環境と生体
 1.エネルギー代謝
 2.体温とその調節
 3.概日リズムの生理学
 4.運動・体力の生理学
第14章 内分泌
第15章 生殖
本書で用いた略語・記号一覧

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学生から臨床医まで使える優れた教科書
書評者: 本間 生夫 (昭和大教授・生理学)
 『標準生理学』の改訂版が出版された。1,100ページに及ぶ大作である。日本の生理学の教科書としてはもっとも厚く,各章ともそれぞれの分野での日本の第一人者が執筆されている。その厚さゆえ,まったく知識のない学生が生理学の教科書として最初に手にするには少し戸惑うかもしれない。しかし,内容はただ単に解説の文章が並んでいるのではなく,随所に勉強しやすくするための工夫がみられる。

 本書の初版からの特徴でもあるが,それぞれの章のはじめに「本章を学ぶ意義」が書かれており,まず章の全体像を捉えることができる。特に本書のように内容が豊富な教科書では,詳しく読む前にアウトラインを把握することができ,理解を早めるためにたいへん有効である。そして章の最後に「学習のためのチェックポイント」が書かれている。この方式は現在,各大学で取り入れられているコアカリキュラムの方式にのっとっており,各章の行動目標が達成されたかどうか,自分自身でチェックすることができる。このチェックポイントにかかれている設問にすべて答えられればこの章を完全にマスターできたといえるであろう。それだけ充実している。編集者が教育方法にかなり精通していることがうかがえる。

 本文中にはadvanced studyの項がもうけられており,その分野における最先端の学問がかかれている。そのため本書は学部学生だけでなく,大学院生にも十分使える教科書にもなっている。基礎的なことを理解できた学生に,さらに突っ込んで勉強したい,と思わせる内容である。この本を読んだ大学院生に感想を聞いたところ,1)最新の知見を踏まえ,各項目が非常にわかりやすく整理されている,2)論文を読んでいてわかりにくい部分や学部学生時代に学んだことを辞書代わりに調べるのに最適である,という意見が返ってきた。往々にして,何度読んでも理解できない,という教科書が作られやすいが,丹念に解説が加えられている。

 序文で編集者がこの教科書は臨床で直面する病態生理の理解にも役立つ,と述べているように,病態生理に関しても詳しく記述されている。したがって生理機能の理解ばかりでなく,疾患の理解にも役立つ。付録としてついている「生理学で考える臨床問題」は生理学の教科書としては新しい試みである。

 本書は生理学の基礎を学ぶ学生,臨床医学を勉強している高学年の学生,さらには現在すでに医師になっている方にも一冊持っていると役に立つ生理学の教科書である。

コアカリキュラム,CBTを念頭においた付録も充実させ欧米の教科書にも比肩する良書
書評者: 板東 武彦 (新潟大理事,副学長,医歯学系教授・統合生理学)
 本書は20年間で5版を重ねた名著であり,まさに標準的な生理学教科書としての地位を確保してきた。欧米の教科書にすぐれたものが多いなかで,わざわざ日本で教科書を作ることに意味があるのかと思う反面,やはり自分の国で作られた優れた教科書があるということは誇らしいことである。

 1人の著者が書いた教科書は全体の統一性に優れるが,やはり得意分野とそれ以外で内容に差が出てしまう。本書は分担執筆であり,各々の分野で,一流の著者が分担することにより,広い範囲で濃い中味を持つことができた。一方で,分担執筆の本の統一性を保つことは非常にむずかしい。著者の努力もさることながら,編集者の優秀さと努力を高く評価したい。

 読みやすさは編集者の腕の振るいどころであるが,本書はその点でも成功している。分担執筆の常として分量が多くなると,読む側にとっては,負担が大きくなる。本書では,専門的な内容はadvanced studiesとして分け,多くの図を入れることにより読みやすさを確保している。また章のおわりに「学習のためのチェックポイント」を置いている点,別冊付録の臨床問題を参照させている点など,欧米の優れた教科書と同様の工夫がなされていることも評価したい。

 本書は詳しすぎると言われることがあるが,このことは編集者もよく承知しており,序になぜそうなのかを説明している。生理学は医学の中では珍しく,「考える」ことを基本とする学問である。そうは言っても,物理学とは異なり,医学や生物学では,考える材料がどうしても必要である。記述が簡単すぎて,考えようがない教科書もたくさんあり,丸暗記にはよいかもしれないが,それでは知識が身につかない。この程度の分量はやむを得ないと思われる。多少,読むのに時間がかかるかもしれないが,この方が記憶に残るという点で,コストパフォーマンスはよい。

 内科は「ベッドを持った生理学」といわれるように,生理学の知識が身についていると,臨床での勉学に有利である。先に述べたように,読みやすくする工夫が随所に施されているので,分量の割には読みやすい。多分,重大な欠点は,値段であろう。最近カラー印刷もコストが安くなり,数千円の教科書が珍しくない。もう少し価格を下げられないかと思う。学生が買いやすいというのも大切な要素であろう。

 本書の新しい特色は,別冊付録としての臨床問題集である。欧米の教科書では珍しくないが,日本のコアカリキュラム,CBTを念頭においた問題であり,学習に便利であろう。問題の質にはばらつきがあるが,この種の問題を作ることはきわめてむずかしい。その中で,比較的良問をそろえ,本文との参照にも工夫がみられる。

 全体として,本書は新しい進歩も取り入れ,日本の標準的な生理学教科書としての地位を今後も維持していくことが確実な良書である。

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