標準生理学 第9版
日本語オリジナルの生理学教科書として、唯一無二と高く評価される定番の一冊。
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その圧倒的な情報量で、定番の教科書として長く愛用されてきた『標準生理学』の最新版。ともすると、その学習範囲の広さに生理学の闇夜に迷いそうになるところを、明快な解説と、これにあたれば何でも載っているはずという広く深い記述で、灯火のごとく正しい道へと導いてくれる。日本語オリジナルとして書かれた生理学の教科書として唯一無二との高い評価は、手に取ればおのずと了解されるだろう。
● | 『標準医学シリーズ 医学書院eテキスト版』は「基礎セット」「臨床セット」「基礎+臨床セット」のいずれかをお選びいただくセット商品です。 |
● | 各セットは、該当する領域のタイトルをセットにしたもので、すべての標準シリーズがセットになっているわけではございません。 |
更新情報
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正誤表を追加しました。
2021.12.17
- 序文
- 目次
- 書評
- 正誤表
序文
開く
第9版 序
1985年,標準生理学の初版が刊行されて,早くも三十数年が経過した.当時医学系の学生であった者は,現在各界で指導的な役割を果たしていると思われる.教科書の評価は必ずしも容易ではないが,良い教科書は,まずは読み継がれ,教科書の精神,本書の場合は「理解する学問」が学生に浸透し,そして読者が繰り返し手にすることで測られよう.その点,本書は常にベストセラーを誇ってきた.ただし,後者の2つは,確認するのが難しい.
標準生理学は,初版の序でも述べられているように,「生理学的なものの見方,考え方」の習得に主眼を置いている.昨今,情報量は指数関数的に増加し,情報量が2倍になるのに1980年代は日単位であったが,2015年は分単位であるという.2014年に上梓された前版(第8版)からすでに5年を経過し,生理学の分野には以前にも増して分子生物学の知識が大量に入り込んでいるが,標準生理学は最新の知識を網羅的に記述するのではなく,知識,情報を適確に取捨選択し,その意義,重要性を判断して,「生理学的思考」の一助となる体系を構築してきた.医学生物学知識は今後益々増加するが,思考の方法論なくして,それらの知識を活用することは難しいと考えるからである.
第9版の編集方針は従前とあまり変わらないが,いくつかの改訂を行った.本書は,機能別に分けて章立てしているが,それでも複数の機能に共通したテーマが認められる.例えば,体液の酸塩基平衡である.これには,ガス交換,呼吸機能,腎臓機能などが関与し,従来は各機能を扱う章でそれぞれ記載されていた.今回,これを1つの章としてまとめた.このように章立てを変更したため,旧版では16編80章であったのが,第9版では16編74章と章数が減った.その結果,執筆者数は多少減少したが,総頁数は若干増加した.
いわゆる団塊の世代が大学などの医学教育界から大量に去って行ったことに伴い,前版以来執筆者の大幅な若返りが図られた.今回19名の新しい執筆者を迎え,斬新な筆法と論理とで,本書に新しい息吹を吹き込んで頂いている.
標準生理学では従前より各編の冒頭に,「本編を学ぶ意義」として編の全体像を提示しているが,今回これを箇条書きに改め,読みやすくした.木だけでなく,森もみて欲しいとの編集者の意図である.
第9版では,本間研一が監修を務め,大森治紀,大橋俊夫の総編集のもと,河合康明,黒澤美枝子,鯉淵典之,伊佐正が編集にあたった.編集にあたっては,本書の精神を貫くために,著者の先生方にはかなりの無理をお願いした.その成果は,随所にみられると自負している.終わりにあたり,本書の刊行に尽力された医学書院の編集部,制作部の皆様に心から御礼を申し上げる.
2019年2月 春風吹く日に
編集者一同
1985年,標準生理学の初版が刊行されて,早くも三十数年が経過した.当時医学系の学生であった者は,現在各界で指導的な役割を果たしていると思われる.教科書の評価は必ずしも容易ではないが,良い教科書は,まずは読み継がれ,教科書の精神,本書の場合は「理解する学問」が学生に浸透し,そして読者が繰り返し手にすることで測られよう.その点,本書は常にベストセラーを誇ってきた.ただし,後者の2つは,確認するのが難しい.
標準生理学は,初版の序でも述べられているように,「生理学的なものの見方,考え方」の習得に主眼を置いている.昨今,情報量は指数関数的に増加し,情報量が2倍になるのに1980年代は日単位であったが,2015年は分単位であるという.2014年に上梓された前版(第8版)からすでに5年を経過し,生理学の分野には以前にも増して分子生物学の知識が大量に入り込んでいるが,標準生理学は最新の知識を網羅的に記述するのではなく,知識,情報を適確に取捨選択し,その意義,重要性を判断して,「生理学的思考」の一助となる体系を構築してきた.医学生物学知識は今後益々増加するが,思考の方法論なくして,それらの知識を活用することは難しいと考えるからである.
第9版の編集方針は従前とあまり変わらないが,いくつかの改訂を行った.本書は,機能別に分けて章立てしているが,それでも複数の機能に共通したテーマが認められる.例えば,体液の酸塩基平衡である.これには,ガス交換,呼吸機能,腎臓機能などが関与し,従来は各機能を扱う章でそれぞれ記載されていた.今回,これを1つの章としてまとめた.このように章立てを変更したため,旧版では16編80章であったのが,第9版では16編74章と章数が減った.その結果,執筆者数は多少減少したが,総頁数は若干増加した.
いわゆる団塊の世代が大学などの医学教育界から大量に去って行ったことに伴い,前版以来執筆者の大幅な若返りが図られた.今回19名の新しい執筆者を迎え,斬新な筆法と論理とで,本書に新しい息吹を吹き込んで頂いている.
標準生理学では従前より各編の冒頭に,「本編を学ぶ意義」として編の全体像を提示しているが,今回これを箇条書きに改め,読みやすくした.木だけでなく,森もみて欲しいとの編集者の意図である.
第9版では,本間研一が監修を務め,大森治紀,大橋俊夫の総編集のもと,河合康明,黒澤美枝子,鯉淵典之,伊佐正が編集にあたった.編集にあたっては,本書の精神を貫くために,著者の先生方にはかなりの無理をお願いした.その成果は,随所にみられると自負している.終わりにあたり,本書の刊行に尽力された医学書院の編集部,制作部の皆様に心から御礼を申し上げる.
2019年2月 春風吹く日に
編集者一同
目次
開く
序章
第1編 細胞の一般生理
本編を学ぶ意義
本編の構成マップ
第1章 生体の一般生理学
第2編 神経と筋
本編を学ぶ意義
本編の構成マップ
第2章 膜興奮性とイオンチャネル
第3章 筋肉とその収縮
第4章 興奮の伝達
第3編 神経系の形態と機能/概説
本編を学ぶ意義
本編の構成マップ
第5章 神経細胞学/総論
第6章 神経回路機能/総論
第4編 感覚機能
本編を学ぶ意義
本編の構成マップ
第7章 感覚機能総論
第8章 体性感覚
第9章 聴覚
第10章 平衡感覚
第11章 視覚
第12章 味覚と嗅覚
第5編 運動機能
本編を学ぶ意義
本編の構成マップ
第13章 筋と運動ニューロン
第14章 脊髄
第15章 脳幹
第16章 大脳皮質運動野と大脳基底核
第17章 小脳
第18章 発声と構音
第6編 自律機能と本能行動
本編を学ぶ意義
本編の構成マップ
第19章 自律神経系
第20章 本能的欲求に基づく動機づけ行動
第7編 高次神経機能
本編を学ぶ意義
本編の構成マップ
第21章 大脳皮質の機能局在
第22章 統合機能
第8編 体液
本編を学ぶ意義
本編の構成マップ
第23章 水分子の特性と浸透圧
第24章 ヒトにおける体液の調節―統合機能の重要性
第25章 酸・塩基平衡の基本概念
第9編 血液
本編を学ぶ意義
本編の構成マップ
第26章 血液
第27章 血液細胞の産生
第28章 赤血球
第29章 鉄の代謝
第30章 白血球
第31章 免疫反応と炎症
第32章 止血血栓形成機構とその制御機構
第33章 血液型
第10編 循環
本編を学ぶ意義
本編の構成マップ
第34章 循環系の基本的性質
第35章 血液循環
第36章 心臓の働き
第37章 循環系の調節
第38章 局所循環
第11編 呼吸
本編を学ぶ意義
本編の構成マップ
第39章 呼吸生理学の基礎
第40章 肺の換気
第41章 肺循環とガス交換
第42章 血液ガスの運搬
第43章 呼吸の調節
第44章 呼吸の適応と病態
第12編 腎機能と排尿
本編を学ぶ意義
本編の構成マップ
第45章 腎生理学の基礎
第46章 腎循環と糸球体濾過
第47章 尿細管の機能
第48章 下部尿路機能とその調節
第49章 体液とその成分の調節
第50章 腎における酸塩基輸送と調節
第13編 消化と吸収
本編を学ぶ意義
本編の構成マップ
第51章 消化と吸収の一般原理
第52章 食物の摂取と輸送
第53章 胃
第54章 肝・胆および膵外分泌系
第55章 小腸
第56章 大腸の機能と排便
第57章 栄養素などの消化と吸収
第14編 環境と生体
本編を学ぶ意義
本編の構成マップ
第58章 エネルギー代謝
第59章 体温とその調節
第60章 概日リズム
第61章 運動と体力
第62章 環境因子と発達,成長,加齢
第15編 内分泌
本編を学ぶ意義
本編の構成マップ
第63章 内分泌総論
第64章 視床下部と下垂体のホルモン
第65章 副腎の機能と分泌調節
第66章 ゴナドトロピンと性腺ホルモン
第67章 甲状腺刺激ホルモンと甲状腺ホルモン
第68章 カルシウム代謝の内分泌制御
第69章 消化管ホルモンの機能と分泌制御
第70章 糖代謝の内分泌制御
第16編 生殖
本編を学ぶ意義
本編の構成マップ
第71章 生殖腺の性分化・発達
第72章 男性の生殖機能
第73章 女性の生殖機能
第74章 妊娠と分娩
付録
1 生理学で考える臨床問題
2 医師国家試験出題基準対照表
3 医学教育モデル・コア・カリキュラム対照表
和文索引
欧文索引
第1編 細胞の一般生理
本編を学ぶ意義
本編の構成マップ
第1章 生体の一般生理学
第2編 神経と筋
本編を学ぶ意義
本編の構成マップ
第2章 膜興奮性とイオンチャネル
第3章 筋肉とその収縮
第4章 興奮の伝達
第3編 神経系の形態と機能/概説
本編を学ぶ意義
本編の構成マップ
第5章 神経細胞学/総論
第6章 神経回路機能/総論
第4編 感覚機能
本編を学ぶ意義
本編の構成マップ
第7章 感覚機能総論
第8章 体性感覚
第9章 聴覚
第10章 平衡感覚
第11章 視覚
第12章 味覚と嗅覚
第5編 運動機能
本編を学ぶ意義
本編の構成マップ
第13章 筋と運動ニューロン
第14章 脊髄
第15章 脳幹
第16章 大脳皮質運動野と大脳基底核
第17章 小脳
第18章 発声と構音
第6編 自律機能と本能行動
本編を学ぶ意義
本編の構成マップ
第19章 自律神経系
第20章 本能的欲求に基づく動機づけ行動
第7編 高次神経機能
本編を学ぶ意義
本編の構成マップ
第21章 大脳皮質の機能局在
第22章 統合機能
第8編 体液
本編を学ぶ意義
本編の構成マップ
第23章 水分子の特性と浸透圧
第24章 ヒトにおける体液の調節―統合機能の重要性
第25章 酸・塩基平衡の基本概念
第9編 血液
本編を学ぶ意義
本編の構成マップ
第26章 血液
第27章 血液細胞の産生
第28章 赤血球
第29章 鉄の代謝
第30章 白血球
第31章 免疫反応と炎症
第32章 止血血栓形成機構とその制御機構
第33章 血液型
第10編 循環
本編を学ぶ意義
本編の構成マップ
第34章 循環系の基本的性質
第35章 血液循環
第36章 心臓の働き
第37章 循環系の調節
第38章 局所循環
第11編 呼吸
本編を学ぶ意義
本編の構成マップ
第39章 呼吸生理学の基礎
第40章 肺の換気
第41章 肺循環とガス交換
第42章 血液ガスの運搬
第43章 呼吸の調節
第44章 呼吸の適応と病態
第12編 腎機能と排尿
本編を学ぶ意義
本編の構成マップ
第45章 腎生理学の基礎
第46章 腎循環と糸球体濾過
第47章 尿細管の機能
第48章 下部尿路機能とその調節
第49章 体液とその成分の調節
第50章 腎における酸塩基輸送と調節
第13編 消化と吸収
本編を学ぶ意義
本編の構成マップ
第51章 消化と吸収の一般原理
第52章 食物の摂取と輸送
第53章 胃
第54章 肝・胆および膵外分泌系
第55章 小腸
第56章 大腸の機能と排便
第57章 栄養素などの消化と吸収
第14編 環境と生体
本編を学ぶ意義
本編の構成マップ
第58章 エネルギー代謝
第59章 体温とその調節
第60章 概日リズム
第61章 運動と体力
第62章 環境因子と発達,成長,加齢
第15編 内分泌
本編を学ぶ意義
本編の構成マップ
第63章 内分泌総論
第64章 視床下部と下垂体のホルモン
第65章 副腎の機能と分泌調節
第66章 ゴナドトロピンと性腺ホルモン
第67章 甲状腺刺激ホルモンと甲状腺ホルモン
第68章 カルシウム代謝の内分泌制御
第69章 消化管ホルモンの機能と分泌制御
第70章 糖代謝の内分泌制御
第16編 生殖
本編を学ぶ意義
本編の構成マップ
第71章 生殖腺の性分化・発達
第72章 男性の生殖機能
第73章 女性の生殖機能
第74章 妊娠と分娩
付録
1 生理学で考える臨床問題
2 医師国家試験出題基準対照表
3 医学教育モデル・コア・カリキュラム対照表
和文索引
欧文索引
書評
開く
信頼と伝統の安定感
書評者: 小野 富三人 (大阪医大教授・生理学/研究支援センター長/学長補佐)
『標準生理学』は私が本郷で医学生だった頃から使っていた教科書で,あの頃の焦げ茶色でザラザラした革のような手触りを懐かしく思い出す。今は時代も変わり,新雪のような純白でサラサラの表紙の本になっている。見かけは変わったが,その重厚な内容や,医学生や生理学の教育者にとっての位置付けは変わらない。私が生理学の道に進み,現在でも生理学の分野で研究や教育に従事しているキッカケの一つを作ってくれた書物であることは間違いない。
本書冒頭の初版序にある,「生理学は『理解する学問』である」の言葉は生理学の本質をついている。医学知識の増大につれて,ますます膨大な暗記量を強いられる医学生は,生理学に出会った時にも暗記で乗り越えようと考えてしまいがちである。そんな時に本書の丁寧な説明を読み,“腑に落ちる”ことによって暗記をしなくても生体内の現象が理解できるという体験をすることは,学年が進んで臨床科目を学習する際の貴重な道しるべとなるだろう。
とはいえ,本書の厚みを見ると,勤勉な学生であっても気圧されてしまうかもしれない。私はいつも講義の際,学生たちにまず講義で大筋をつかむことを勧めており,そのためにストーリー性を持った講義を心がけている。そうやってまず大筋をつかんだ学生が,本書のような教科書で知識・理解の穴を埋め,記憶の定着を図るのが最も効率がよい勉強法ではないかと考えるからである。興味を持ったテーマや,授業中に疑問を持ったりもっと詳しく知りたいと思ったりした項目を拾い読みしても良い。そういう辞書的な使い方もできるように,目次や索引もよく工夫されている。
本書はもちろん医学生のためだけではなく,教員や臨床医のためにも貴重なレファランスとなる。臨床の教科書で出てくるいろんな情報も,少し深掘りしてそのメカニズムを考える時,基礎医学,特に生理学の知識は欠かすことができない。ずっしりとした信頼感とともに最新の情報も網羅している本書はそのような目的にも最適であろう。
書評者: 小野 富三人 (大阪医大教授・生理学/研究支援センター長/学長補佐)
『標準生理学』は私が本郷で医学生だった頃から使っていた教科書で,あの頃の焦げ茶色でザラザラした革のような手触りを懐かしく思い出す。今は時代も変わり,新雪のような純白でサラサラの表紙の本になっている。見かけは変わったが,その重厚な内容や,医学生や生理学の教育者にとっての位置付けは変わらない。私が生理学の道に進み,現在でも生理学の分野で研究や教育に従事しているキッカケの一つを作ってくれた書物であることは間違いない。
本書冒頭の初版序にある,「生理学は『理解する学問』である」の言葉は生理学の本質をついている。医学知識の増大につれて,ますます膨大な暗記量を強いられる医学生は,生理学に出会った時にも暗記で乗り越えようと考えてしまいがちである。そんな時に本書の丁寧な説明を読み,“腑に落ちる”ことによって暗記をしなくても生体内の現象が理解できるという体験をすることは,学年が進んで臨床科目を学習する際の貴重な道しるべとなるだろう。
とはいえ,本書の厚みを見ると,勤勉な学生であっても気圧されてしまうかもしれない。私はいつも講義の際,学生たちにまず講義で大筋をつかむことを勧めており,そのためにストーリー性を持った講義を心がけている。そうやってまず大筋をつかんだ学生が,本書のような教科書で知識・理解の穴を埋め,記憶の定着を図るのが最も効率がよい勉強法ではないかと考えるからである。興味を持ったテーマや,授業中に疑問を持ったりもっと詳しく知りたいと思ったりした項目を拾い読みしても良い。そういう辞書的な使い方もできるように,目次や索引もよく工夫されている。
本書はもちろん医学生のためだけではなく,教員や臨床医のためにも貴重なレファランスとなる。臨床の教科書で出てくるいろんな情報も,少し深掘りしてそのメカニズムを考える時,基礎医学,特に生理学の知識は欠かすことができない。ずっしりとした信頼感とともに最新の情報も網羅している本書はそのような目的にも最適であろう。
正誤表
開く
本書の記述の正確性につきましては最善の努力を払っておりますが、この度弊社の責任におきまして、下記のような誤りがございました。お詫び申し上げますとともに訂正させていただきます。