乳癌MRI診断アトラス

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乳房温存手術が早期乳癌への標準的治療として定着した今日,画像診断は良悪性の鑑別のみならず腫瘍の広がりを診るうえでも重要である。聖路加国際病院ではいち早くMRIおよび三次元MRIを施行し手術に活用している。本書は代表的乳腺疾患39症例のMRI画像をマンモグラフィ,エコー,そして病理所見とともに収載した画期的アトラスである。
編集 中村 清吾
発行 2004年02月判型:B5頁:144
ISBN 978-4-260-12468-3
定価 10,450円 (本体9,500円+税)
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  • 目次
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1 MRIの基礎
2 MRIの各種撮像法と三次元表示手法
3 乳腺MRIの診断基準
4 乳腺疾患の症例
5 乳房温存療法における三次元MRIの意義
6 非浸潤性乳癌の診断における三次元MRIの有用性
7 術前化学療法の効果判定
8 乳腺MRIの将来展望
索引
 和文索引
 欧文索引

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乳癌のMRI診断が系統的に学べる初めてのテキスト
書評者: 岡崎 正敏 (日本乳癌画像研究会代表世話人/福岡大教授・放射線医学)
◆著しい進歩を遂げている乳癌の診断・治療

 近年,乳癌は本邦女性癌発生率の第1位となった。乳癌に対する国民の関心も高まり,乳癌の診断,治療法も著しい進歩を遂げている。

 なかでも,日進月歩のコンピューターシステムを導入したMRI画像による乳腺疾患の診断および治療の技術革新は著しいものがある。しかしながら,現在まで系統だったMRI診断のテキストは皆無に等しかった。

 本書は乳癌のMRI診断のテキストのパイオニアといえる書物であるが,非常に内容の充実したmammologistにとって極めて有用な本といえる。

◆日常の臨床活動そのものを表現

 本書の特徴は編者中村清吾先生と,乳癌診療の最前線でチームを組んでいらっしゃるその仲間の方々の乳癌の診断から治療に至る日常の臨床活動そのものが表現されたアトラスと考える。本書の特徴を以下箇条書きに列挙させてもらうこととする。

(1)MRIの理論は分かりにくい部分が多い。本書ではMRIの基礎から撮像法および画像診断法までがわかりやすく短くまとめて述べてある。

(2)編者が乳癌学会久野賞を受賞された「三次元MRIガイド下乳房温存手術―仰臥位マッピング法の開発」をさらに発展させた三次元画像による乳癌の拡がり診断の現状と今後の展望までを述べてある。

(3)マンモグラフィー,超音波像,MRI像,病理像と対比した乳腺疾患の症例呈示に80ページもさき,各々の画像対比を行い,現行各種画像診断法の利点のみならず限界までを述べている。さらに解説,ポイントの項には読者必読のワンポイントレッスンが記述されている。

(4)編者は,より乳癌に対する非侵襲診断・治療法の確立をめざし,三次元MRI画像による拡がり診断をライフワークとして乳癌診療に従事されている新進気鋭の医師である。編者らが1990年度当初から導入した三次元MRIによる,これらの診断および治療法の改良,変遷をもとに他モダリティと比較した最新の臨床成績が述べられている。乳癌診療従事者にとって最も参考になる成績といえよう。

(5)現行のMRI診断の限界にも言及し今後の努力目標についても最終項に記載されている。

 最後に本書はMRI診断を中心に最先端乳癌診断および治療の現状と今後の課題について述べた現在進行形のテキストであることを,評者は痛感させられた。

「MRIで何がわかり,何がわからないのか」がわかる本
書評者: 芳賀 駿介 (東京女子医科大学教授・第二病院検査科)
 わが国の乳腺疾患におけるMRIの先駆者であり,第一人者である中村清吾先生編集の『乳癌MRI診断アトラス』を読ませていただいた。まず,最初にMRIの原理が正常な乳房組織と正常から逸脱したときにみられる組織を用いて平易に説明されており,乳腺疾患専門のMRIアトラスとしての興味をそそられる。そうした乳房におけるMRIの基礎知識を理解させた後,多種多様な疾患を用いて乳癌診断の代表的なモダリティである超音波,乳腺X線画像,そして最終診断である病理組織像と対比することで,MRI画像が何を表現しているか具体的にわかりやすく説明している。繰り返し読んでいると,病理組織像からMRI画像が頭に浮かぶようになり,これまでモノクロでしかもメカニックなものと思っていたMRI画像を色付けされた写実的なものとして捕らえていることに驚かされる稀有な学術書である。

 さらに,三次元MRIについて,これまで体表にありながら知る術の少なかった乳癌の進展範囲に対する診断にもっとも有用なモダリティとして解説がなされ,術前化学療法などに対する乳癌治療のさらなる広がりも実感させられる。読み終わって,もっとも心に残ったことは,MRIで何がわかり,また何がわからないのかという点を臨床医の立場から真摯に取り組んでいる中村清吾先生および聖路加国際病院を中心とした執筆者の姿勢である。本書はMRIのさらなる発展を期待させる内容となっている。

 MRIを乳腺診療における1つのモダリティとして確立した編者によるこの本は,すでに乳癌の診断,治療に携わっているものだけではなく,これから学ぼうとしている若い医師にとっても欠かすことのできない1冊である。

MRIによる乳癌診断の未来を開く一冊
書評者: 田島 知郎 (東海大教授・外科学)
 すでに10年前に三次元MRIによる乳癌広がり診断の有用性について報告した中村清吾先生が,10年の苦労を実らせて,第一人者としてグループの力を結集して完成させた本書には,MRI画像がマンモグラフィ,エコー,さらに病理所見とともに収載されている。嬉しいことに,乳癌では組織型に応じた特徴が解説され,これまでに画像の特徴があまり知られていない扁平上皮癌,炎症性乳癌,妊娠期乳癌,豊乳術後乳癌,悪性リンパ腫なども含まれている。また放射線の害を考えないですむMRIということで,若い女性の良性疾患も網羅されており,幅広い利用が目論まれるMRI教本であると同時に,乳癌学徒が待ち望んでいたプロ向け教本にもなっている。

◆きめ細かな乳房温存療法実現への大きな一歩

 本書にはまず基礎的事項の解説がしっかりあって,その上で核心は,MRIの特長としての優れた乳管内進展の描出能,任意の角度から可能な透過的観察,容易な体積計算を駆使した乳房温存手術への適用にある。触知する腫瘤を中心に切除し局所再発防止のために照射を追加するというまだまだ未完成で大雑把な欧米流から脱して,乳房温存療法を,部分的照射や非照射法なども含めて工夫し,乳腺の解剖,乳癌の病態に則った緻密な治療法として格上げさせる方向で,本書は大きな役割を担うはずで,この安全性を検証するためにも,MRIを駆使したきめ細かい臨床研究をわが国で蓄積することが大きな課題である。なお本書では,指標として病理学的断端陽性率で判断しているが,そう遠くない将来に局所再発率という指標でも検証できるようになろう。

 MRIの解像度は毎年向上し,画像処理のコントラスト強調などで,微小病変の見落としは一層減ると予想される。また装置としても,低磁場で安価な検診用,MRIガイド下生検用,手術ナビゲーション用などが急速に普及しており,目が離せないのがMRIで,今回上梓された本書はこうした将来性の原点にもなっているといえよう。なお本書へというよりも,MRI一般への注文として,多岐にわたるMRI撮像法を素人が一目で把握できるような表示法の案出を願っている。

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