国際頭痛分類
第2版 新訂増補日本語版

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国際頭痛学会による頭痛の分類のグローバルスタンダード。頭痛学会誌上に掲載された日本語訳に、その後新しく改訂された部分(薬物乱用頭痛、慢性片頭痛)と補逸を加え、訳語も見直して更に充実させた最新完全版。明確な診断基準と日常臨床に有用なコメントによって、一般臨床医から神経専門家まで誰でも等しく頭痛を診断できる。
日本頭痛学会・国際頭痛分類普及委員会
発行 2007年04月判型:B5頁:208
ISBN 978-4-260-00406-0
定価 5,500円 (本体5,000円+税)
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第2版の序文

執筆者/Jes Olesen(委員長 頭痛分類委員会 国際頭痛学会(IHS))



 疾病分類や診断基準は,しばしば医学界によって懐疑的にみられることがあり,広く普及されないこともある。にもかかわらず国際頭痛分類の初版が受け入れられたことには多少の驚きがあった。事実,分類が発表されるとすぐに科学的な目的で広く世界で受け入れられた。かくしてトリプタン製剤に関する研究の大勢はこの分類によって診断された患者を対象に行われた。分類についての基本的な考え方は,徐々にではあるが確実に臨床の現場でも変わっていった。一次性頭痛の分類に必要なかった多くの問診は,もはやなされなくなった。一方で頭痛が身体活動によって悪化するという項目が含まれている診断基準は,日常臨床で少しずつ使われるようになってきた。頭痛分類は20カ国語以上で翻訳され,世界中の多くの医師に用いられるようになった。

 国際頭痛分類の初版が発表された時,エビデンスに基づくというより専門家の経験をもとにした意見を尊重して作成された部分が多かったために,第2版の国際頭痛分類は5年以内に改訂することを考えていた。しかし,第2版がここに公表されるまでに15年が費やされてしまった。それには多くのそれなりの理由がある。あまり分類に対する批判がなかったことが改訂の必要性を遅らせたこともある。異なった頭痛の臨床像をより的確に表現しようとする疾病に対する研究は,当時はまだあまりなく,すべてをエビデンスをもとにして分類を作成するにはまだ十分なものがなかった。国際頭痛分類の英語版とこれが20カ国語以上で翻訳され広く普及するには当初考えていた以上の時間がかかってしまった。

 しかし,少しずつではあるが改訂に対する意見が寄せられ,また第2版の作業を始めるにあたって疫学的および疾病記述学的な知識が集積されてきた。

 著者は初版の時と同様,この第2版においても委員会の委員の指名によって委員長の任を仰せつかった。初版の委員会はすばらしい仕事を成し遂げたが,第2版では次の世代の頭痛研究者にも十分に活躍してもらうために委員の大部分を入れ替えるべきであると考えていた。結果的に,第2版でも委員であったのは,Giuseppe Nappi,James W Lanceと私だけであった。われわれは改訂の作業を行うにあたって,初版との連続性を維持することに心がけた。新しい委員を指名するにあたっては,第一に個人的な資格に注意を払った。地理的な代表であることと,初版に対して意見や批判などの見解を持ち合わせている方を委員に加えることを考慮した。このような原則で委員を変えたことによって,会の進行が首尾よく運んだことに満足している。各委員はみな,熱心に臨み,率直で建設的な議論がなされた。初版の頭痛分類委員会で費やされた膨大な作業にかんがみて,今回の委員会でも頭痛分類の各局面について自由な議論がなされた。細部まで正確さが要求される作業と多くの議論のために,第2版の作成にあたっては誰もが考えたより多くの時間が費やされた。個々の診断基準の中では一字一句たりともないがしろにせずに注意を払い,今回の頭痛分類の発刊にあたって莫大な労力とさまざまな意見を注ぎ込んできた。作業にはすべての委員の考えが取り入れられたわけではなかったが,そのいずれもが無視できない影響を与えてくれた。

 この頭痛分類が医学のさまざまな分野で,広く世界に受け入れられることは重要なことである。頭痛という分野はまだ歴史が浅く,これから発展していく領域ではあるが,これは頭痛という疾患に対する多くの偏見があるためでもある。したがって,一般社会で頭痛を取り上げる場合から研究者が頭痛を扱うレベルまで,この国際頭痛分類第2版を広く使うことが非常に重要なことになる。どのような頭痛に関連する論文でも,この分類や診断基準に準拠する必要がある。われわれの意図することは,頭痛研究の枠を縛ることではなく,頭痛研究者に科学的にこの第2版の国際頭痛分類を使っていただくことにある。研究を賦活するために,付録には多くの分類できないが必要な疾患を加えた。さらにわずかではあるが代替診断基準も提示した。

 この国際頭痛分類第2版が世界中の頭痛を扱うさまざまな社会の領域で受け入れられ,初版の時より多くの国で翻訳されるよう切望する。頭痛の分類や診断について世界で広く教育する場では基本的な文献となり,それによって患者管理の利益につながることを願う。国際頭痛学会は世界規模で頭痛に対する診断,治療,ケアの向上に取り組んでいる。また,学会は頭痛に悩む人々の汚名を取り除き,この疾患が神経生化学的基盤をもつ病態から生じ,患者とその周囲や社会において多くの負担を強いることがあることを認識してもらおうと社会に向けて活動している。この活動を成功させるためにも,患者に加え研究者や臨床医が同じ診断体系を使い,この体系ができるだけ正確に使われることがどうしても必要である。ここに至るまでは国際頭痛分類の初版以来長い道のりであった。第2版が,広く世界で頭痛患者の分類,診断,治療における統一をさらに促進することを希望する。

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 初版の序文
 第2版の序文
 分類の緒言
 この分類の使い方
 国際頭痛分類第2版とWHO ICD-10NAコード
第1部:一次性頭痛
 1. 片頭痛
 2. 緊張型頭痛
 3. 群発頭痛およびその他の三叉神経・自律神経性頭痛
 4. その他の一次性頭痛
第2部:二次性頭痛
 緒言
 5. 頭頸部外傷による頭痛
 6. 頭頸部血管障害による頭痛
 7. 非血管性頭蓋内疾患による頭痛
 8. 物質またはその離脱による頭痛
 9. 感染症による頭痛
 10. ホメオスターシスの障害による頭痛
 11. 頭蓋骨,頸,眼,耳,鼻,副鼻腔,歯,口あるいはその他の
   顔面・頭蓋の構成組織の障害に起因する頭痛あるいは顔面痛
 12. 精神疾患による頭痛
第3部:頭部神経痛,中枢性・一次性顔面痛およびその他の頭痛
 13. 頭部神経痛および中枢性顔面痛
 14. その他の頭痛,頭部神経痛,中枢性あるいは原発性顔面痛
付録
用語の定義
国際頭痛分類第2版第1回改訂版(ICHD-II R1)における「8.2 薬物乱用頭痛」診断基準の
 改正点--日本語版国際頭痛分類第2版との相違点
慢性片頭痛と薬物乱用頭痛の付録診断基準の追加について
索引

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頭痛診断のもっとも確実な道 あらゆる臨床医必携の書
書評者: 寺山 靖夫 (岩手医科大学教授・神経内科)
 第11回国際頭痛学会(International Headache Society: IHS, Rome, Italy, 2003)における国際頭痛分類第2版(ICHD―II)の発表を受け,日本頭痛学会(坂井文彦理事長)では新国際分類普及委員会(間中信也委員長)を中心として日本語化に取り組んできた。本書は15年ぶりに改訂されたこのICHD―IIの系統的,合理的な分類の翻訳版であると同時に詳細な解説を加えた188頁の大著である。初期の翻訳版は日本頭痛学会誌(31巻1号,2004年)と日本頭痛学会ホームページ上に掲載され,会員からはさまざまな批評と意見が寄せられた。これらの批評と意見をもとに加筆訂正が加えられ,Blackwell社との版権交渉も完了し「国際頭痛分類第2版 新訂増補日本語版」としてこの度,医学書院から刊行されるに至った。

 原著のICHD―IIに見られた参考文献の誤りと引用形式の不統一に修正が加えられ,初期の翻訳版に見られた訳語と表現の不均一性が修正され,非常に理解しやすいものとなっており,きわめて完成度の高い日本語版である。

 本書では,ICHD―IIによる,一次性頭痛(第1部),二次性頭痛(第2部),および頭部神経痛・顔面痛・その他(第3部)の分類に先立ち,世界保健機関(WHO)の国際疾病分類第10版・神経疾患群(ICD―10NA)コード対照表が掲載されていることと,さらに巻末には,ICHD―IIの発表後も数回改訂が加えられた「慢性片頭痛」と「薬物乱用頭痛」に関する解説が掲載されていることが特徴である。新訂増補日本語版という所以がここにある。

 初期翻訳版からわずか3年の間にこれほど完成度の高い日本語版が刊行されたことは驚嘆に値するものであり,翻訳関係者に敬意を表する。

 本書は頭痛発作の分類と診断基準を一冊にまとめ,一般社会で頭痛を取り上げる場合から頭痛の研究者が扱うレベルまで,あらゆる頭痛に詳細な診断基準を提示している。頭痛に関する新しいエビデンスや知見,初版に対する批判や意見を取り入れ厳密な改訂が行われた本書は,頭痛患者の診療にあたっては不可欠なものであることは間違いない。サイズもコンパクトなB5判であり,頭痛専門医に限らずあらゆる臨床医の必携の書として推奨したい。

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