言語聴覚士のための基礎知識
耳鼻咽喉科学 第2版

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言語聴覚士を目指す学生が、限られた授業時間内で、必要な知識を、効率よく獲得することを主眼に置いた教科書。第2版は、内容のよりいっそうの充実を図ったとともに、言語聴覚士が取り組む耳鼻咽喉科領域の障害・訓練の実際を、現場の言語聴覚士が紹介した。耳鼻咽喉科学の基礎学習のみならず、将来の臨床現場に興味を持てる内容になっている。
シリーズ 言語聴覚士のための基礎知識
編集 鳥山 稔 / 田内 光
発行 2007年03月判型:B5頁:292
ISBN 978-4-260-00444-2
定価 4,180円 (本体3,800円+税)
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第2版 序にかえて
執筆者/鳥山 稔・田内 光

 本書は2002年3月に初版が出版され,以後5年が経過した.その間に言語聴覚士の国家試験合格者は毎年1,000名を超え,昨年度までに11,298名に達し急速に増加してきている.しかし高齢化社会の誕生によりリハビリテーションを必要とする人々はさらに多くなり,より多くの優秀な言語聴覚士が必要とされている.また医療の現場においても新しい知見が示されてきており,言語聴覚士にも更なる知識が要求されるようになってきている.身体障害者福祉法には新たに嚥下障害が加えられ,ますます言語聴覚士のニーズは高まってきた.本書はそのような言語聴覚士を目指す学生に,耳鼻咽喉科学の基礎的な知識をより確実に,かつわかりやすく吸収してもらえるよう,ここに改訂を行うことになった.
 初版に引き続き鳥山に加え,この改訂版では田内が編集にかかわった.
 この第2版では新しく2つの項目を追加している.1つは「言語聴覚士の対応」としてそれぞれ専門分野の言語聴覚士の先生方に執筆をお願いした.それぞれの先生には自らの経験をもとに言語聴覚士として知っておかなくてはいけない点を示していただいた.これにより言語聴覚士と耳鼻咽喉科学とのかかわりを知ってもらえればと考えている.もう1つは動画の採用である.これはインターネットに接続する必要があるが,耳鼻咽喉科学の知識を視覚的によりわかりやすくするのに役立つものと考えている.ぜひインターネットに接続し参考としていただきたい.
 言語聴覚士が専門とする音声・言語・嚥下・聴覚の分野は耳鼻咽喉科学と深いかかわりをもっている.しかし,臨床現場にて耳鼻咽喉科医と協力してリハビリテーションにかかわっている言語聴覚士はまだ非常に少ないのが現状である.これはこの分野に興味を示す耳鼻咽喉科医が少ないことにもよるが,耳鼻咽喉科学に興味を示す言語聴覚士が少ないことにもよると考えられる.本書を通して言語聴覚士を目指す学生に最小限の耳鼻咽喉科学の知識を吸収してもらうと同時に,より耳鼻咽喉科学に興味を示してもらえることに役立つように願うものである.

 2007年 3月

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胎児発生から平衡聴覚器発生のしくみ

第1章 耳科学
 A.音と音声の基礎
 B.聴覚前庭系の解剖と生理
 C.耳科学的検査
 D.外耳・中耳・内耳・聴覚路・顔面神経・前庭・平衡系の疾患と症候,診断,治療
 E.聴覚障害
第2章 鼻科学
 A.鼻・副鼻腔の構造と機能
 B.鼻科学的検査
 C.鼻・副鼻腔の疾患と症候,診断,治療
第3章 口腔・咽頭科学
 A.口腔・咽頭の構造と機能
 B.口腔・咽頭の検査
 C.口腔・咽頭の疾患と症候,診断,治療
 D.構音障害
第4章 喉頭科学
 A.呼吸発声発語系の構造
 B.喉頭科学的検査
 C.喉頭の疾患と症候,診断,治療
 D.音声障害
第5章 気管・食道科学
 A.気管・気管支・食道の構造と機能
 B.気管・気管支・食道の検査
 C.気管・気管支の疾患
 D.食道疾患
 E.気管切開
 F.摂食・嚥下障害
第6章 言語聴覚士に関する法律とその運用
 A.医事法規の構成のあらまし
 B.言語聴覚士法の意義及び骨子
 C.言語聴覚士の業務運用の実際
 
関連法規
 言語聴覚士法(抜粋)
 言語聴覚士法施行規則(抜粋)
 
付録:ウェブサイト限定 動画コンテンツ

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言語聴覚士と耳鼻咽喉科医の橋渡しの役割も果たす
書評者: 鈴木 康司 (国立障害者リハビリテーションセンター病院)

 ヒトは互いのコミュニーケーション手段として音声言語を用いるのであるが,その入力は聴覚器官を,出力は発声・構音器官を介して行う。これらはいずれも耳鼻咽喉科領域の器官であり,また言語・聴覚・嚥下のリハビリテーションに携わる言語聴覚士にはこの分野の知識が不可欠である。しかしながら言語聴覚士に向けた耳鼻咽喉科の教科書は本書を除けば皆無であり,養成校の学生などはしばしば医学生向けの教科書を使用しているのが現状である。

 本書は2002年に初版が出版され,5年目の今年,第2版の運びとなった。現在言語聴覚士の国家試験合格者数は12,000人を超え,要求される知識も増加していることを考えると5年で改訂というのは決して早過ぎはしないが,この分野を得意としている耳鼻咽喉科医が決して多くはないので,この改訂は忙しく大変な作業であったろうと思われる。編集されたお二方の先生には感謝するばかりである。

 さて内容に関しては,言語聴覚士に必要な知識のミニマムエッセンスと序文にはあるが,耳鼻咽喉科全般にわたり過不足なくコンパクトにまとめられており,図版,特に写真が多用されており,読者の速やかな理解の助けになる。一部内容に重複が見られるが,分担執筆であることを考えれば許容できる範囲であり,それぞれに矛盾する記載もなく仕上がっている。関連法規やその運用などの記載もあり,実務上役立つであろう。個人的には平衡聴覚器の発生と分化について興味深く拝見した。

 また以前より海外の教科書では多く採用され,最近本邦でも増えてきたインターネットを用いた資料の配信が本書でも使われている。本書では眼振所見・声帯運動・嚥下造影検査の動画が主体であるが,この試みも読者の理解に十分役立つ。

 本書で気になった点を挙げるとすると,本書の263―265ページの「立体模型を作ってみよう」である。これは同ページを厚紙などにコピーし,昔の雑誌の付録のように組み立てると鼻腔および咽・喉頭の模式図的な模型ができあがる企画である。われわれプラモデル世代でこれらの構造に詳しい者でも完成にたどり着くには苦労した。途中に図なり完成図なりを用意したほうがよいであろう。

 とは言え,言語聴覚士として勤務されている方の専門領域以外の研修書として,また養成校の学生の教科書あるいは国家試験対策の参考書として,本書はコンパクトにまとめられた十分な内容を保っており,言語聴覚士と耳鼻咽喉科医との橋渡しとしての役割を果たす有用な図書と推薦する次第である。

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