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医療者のための結核の知識 第2版

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半世紀ぶりの結核予防法改正に伴い、かつて「国民病」とされた結核への対策は、予防に主眼を置いた従来の学校検診主導型から、高齢者・都市部住民を主な対象とする「早期発見・早期治療」型へとシフトチェンジした。依然本邦最大の感染症として医療現場でのリアルな危機であり続ける結核に対峙し、医療者がみずからを護るための1冊。
四元 秀毅 / 山岸 文雄
発行 2005年11月判型:B5頁:192
ISBN 978-4-260-00052-9
定価 3,300円 (本体3,000円+税)
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I 結核の現状
 世界の結核,日本の結核
 日本の結核-結核人口の高齢化
 結核の分子疫学
II 結核はどんな病気か
 結核の起こり方-感染と発病
 結核症の病理所見
 結核菌の特徴
 結核はどんなときに起こりやすいか
 結核の臨床像
III 結核の検査のすすめ方
 どんなときに結核を疑い,どのように検査をすすめるか
 肺結核の画像所見
 結核菌の検査
 その他の検査
IV 結核の治療
 治療を始める前の手続き
 治療を始めるにあたって-結核医療の基準に関連した一般的事項
 化学療法の一般的事項
 化学療法の実際
 治療を成功させるために(DOTS)
 入退院基準
 クリティカルパス
VI 結核の広がりをどのように抑えるか
A.患者の早期発見と院内感染対策
 結核患者をどのようにして発見するか
 結核の院内感染とその防止策
 結核患者が発生したときの処置
 職員の健康管理
 院内感染対策委員会の役割
 定期外健康診断
B.結核の発病をどのように抑えるか
 BCG接種
 予防的治療(化学予防)
 結核発病のリスクファクター
C.結核予防法の改正とその背景
 結核予防法の改訂に至った経緯
 結核予防法と政・省令
 結核予防の総合的な推進を図るための基本的な指針
 (厚生労働省告示)
VI さまざまな結核-症例呈示
付1:エイズと結核
付2:非結核性抗酸菌症
参考文献
巻末資料
 1. 結核患者の発生届
 2. 結核患者の入退院の届出表
 3. 結核医療費公費負担・医療費助成申請書記入記載例
索引

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再興する結核への実践的な手引書
書評者: 森 亨 (財団法人結核予防会結核研究所・所長)
 1999年7月,その3年前に始まった結核の逆転上昇傾向が最高に達して「結核緊急事態宣言」が当時の厚生省から出された。結核が「再興感染症」として各方面で注意が喚起され,対応が議論された。そうした中で刊行されたのが,本書第一版であった。その後,国でもこうした新たな事態に関して結核対策の包括的な見直しが進められ,結核予防法の大幅な改訂が行われた。本書もこれに対応して版が改められ,新しい対策やその考え方が取り入れられ,紙面が文字通り一新されている。

 著者は東日本を代表する2大結核診療施設(国立病院機構)のパリパリの現役として,臨床,研究そして対策のあらゆる分野で活躍するリーダーである。本書の内容も「医療者のための」というキャッチフレーズにふさわしく,非常に実践的,現場即応的なもので,研修医や看護師にも噛んで含めるような心遣いが随所に見られる。たまにしか結核患者を診療する機会のない医師が参考書として開いても十分役に立つはずである。実地経験豊富な両著者の面目躍如というべきであろう。また所々に興味深い挿話や臨床を取り巻く公衆衛生上の話題がカコミでちりばめられていて,結核診療の奥の深さ,社会性を教えてくれる。きれいな挿絵や図表はそれらをぱらぱら見ているだけでも飽きない。

 さて,日本で発生する結核患者は3万人(2004年),結核で死亡するのがその8%にあたる2300人,しかも発見後1年以内に死亡する者は発生患者の5%であり,この数字は年々悪化している。それらの多くの患者が何らかの問題で医療の管理下にありながら結核を発病し,不良な予後をたどっているのである。診断の機会からすると,日本の医師(仮に内科系医師を10万人として)の3人に1人しか結核患者にぶつからないことになる。しかし患者を早期に発見し,救うためには,おそらくこの10倍以上の患者について結核を疑う必要があるはずであり,それならば,日本の医師が結核を意識すべき(「結核はまだある!」と)機会や必要性ははるかに大きい。

 本書は,そうした日常の,第一線の診療機関,福祉施設の医師や関連職種に広く読まれ,参考にされるべき貴重な手引きである。

新検査法も記載した結核対策の第一歩
書評者: 下方 薫 (名大大学院教授・呼吸器内科学)
 結核は今なおきわめて重要な疾患である。世界規模でみて結核の罹患者,発病者,死亡者は膨大な数となっている。日本は先進国と自負しているが,こと結核に関しては他の先進国と比べて罹患率の高さは有数であり,一層の低下に努めなければならない。

 現在,結核菌を排菌している活動性結核患者の多くは高齢者であり,その周囲には結核菌に感染したことがない多くの若い人たちが存在する。集団感染の起こりやすい環境といえよう。しかしながら国民はおろか,医療従事者においても結核は過去の疾患と考えがちである。結核病棟は言うに及ばず,結核病床さえ具備していない教育病院が多い現状では,研修医や若い医師が結核患者にふれる機会はきわめて乏しいと言わざるを得ない。

 今回上梓された『医療者のための結核の知識 第2版』は初版から約5年経過し,最近の進歩を取り入れて改訂されたものである。結核に関する基礎,疫学,臨床の各領域がバランスよく配置されている。2005年4月に結核予防法の大改正があったが,その概要を紹介する意味でも時機を得た書である。今後ツベルクリン反応に取って代わるとも考えられている新しい検査法であるQuanti FERON―TB第2世代,結核対策戦略としてのDOTS,入・退院基準に関する新しい考え方などについても記載されており,最新の情報も豊富である。また,さまざまな結核の症例呈示も読者にとって役立つに違いない。特筆されることは,見開きのページの多くで図表が豊富に使用されていることである。視覚に訴えるこうした体裁は物事を理解するうえで重要なことである。こうした点を積極的に取り入れられた四元,山岸両氏の労に敬意を表するものである。

 多くの医療者の手元にあってコンパクトで明快な本書が活用されることを願ってやまない。

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