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診断力が高まる
解剖×画像所見×身体診察マスターブック

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医学教育で分断して教えられがちな、解剖・画像所見・身体診察を有機的に統合して診断につなげるアプローチを紹介。具体的な疾患をベースに豊富な情報を収載し、システマティックに診断の流れを紹介しており、極めて実践的な作りとなっている。身体の部位ごとにまず基本知識をおさらいし、その上で症例をもとに統合的アプローチを学ぶ、という構成は、医学生・研修医にも好適。他の医療系職種の教科書としても使える。
編集 Sagar Dugani / Jeffrey E. Alfonsi / Anne M. R. Agur / Arthur F. Dalley
監訳 前田 恵理子
発行 2018年09月判型:B5頁:408
ISBN 978-4-260-03627-6
定価 6,380円 (本体5,800円+税)

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    2023.07.07

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監訳者の序(前田恵理子)/謝辞


監訳者の序

 臨床医学の全容というのは,なかなか把握が難しい.内科学がカバーする範囲からは整形外科学や産婦人科学などの重要な領域が漏れるうえに,内科学の全容を初学者がぱっと把握できるような書籍もない.放射線医学は全身の大部分の疾患をカバーするが,画像に写らない解剖や疾患は扱わず,内科診断学や症候学の領域が抜け落ちる.解剖学は,全身を守備範囲としつつも基礎医学の段階では臨床医学との連続性が明らかにならない.しかるに,医学生をはじめとした医療を志す人はこれまで,これから登る山の全体像を示した地図を持たずに,やみくもに学習を始めざるを得なかった.全体像がわからぬまま解剖学,生理学,薬理学,病理学といった重量級の学問に次々と出会うので,基礎医学の勉強というのは苦しいものに感じられてしまう.この困難さは医師に限らず,多くの医療系職種に共通するだろう.
 医学教育が長年抱えてきたこの問題を,北米の著名な解剖学者,臨床医,放射線科医が手を取り合って鮮やかに解決したのが本書(原著タイトル Clinical Anatomy Cases;An Integrated Approach to Physical Examination and Medical Imaging)である.医学書院の担当者との打合せで本書を知ったときには,長年求めていたものに出会ったような衝撃が走った.原著タイトルの通り,解剖学,内科診断学と放射線医学を統合し,初学者向けに簡潔に書かれている.診断学だけでなく,各領域の代表的な疾患も掲載されているため,基礎医学の段階で臨床医学のイメージをもつのに最適である.原著も平易な英語で書かれているが,医学のものの書き方に慣れない初学者が読むのであるから,日本語版が出版されたほうが日本の医学教育のためになるだろうと考えた.あらゆる診療科を横断する内容であり,翻訳体制に悩んだが,CTやMRIの原理が扱われ,画像がふんだんに使われているところを見るに,放射線科医の関与は欠かせない.そこで,解剖学にも臨床医学にも精通した,医局の優秀な後輩たちが翻訳を引き受けてくれることになり,前田は監訳を担当した.訳者・監訳者とも細心の注意を払って翻訳を進めたが,至らぬところがあれば監訳者の瑕疵である.
 こうして,本書を広く日本に紹介できることを嬉しく思う.理想的な使い方としては,医学の勉強を始める前に「医学概論」として本書を一度通読しておき,解剖学を学びながら当該箇所を精読し,臨床医学を学ぶようになったら逆に本書に立ち返って解剖学とのつながりを画像とともに確認するとよいだろう.臨床医となったあとも,解剖学を大分忘れてしまったころに復習として通読するのに最適な書籍である.臨床医の視点をもつと,自分の専門外の領域の記述にも得るものが多いと思われる.放射線科医を志す者には,画像に現れない症候や内科診断学のよい復習になると思われる.内容が平易であるので,他の医療系職種の解剖学の教科書としても十分に使用できる.
 本書が日本の医学生に広まり,一段高い視点から基礎医学に取り組む礎となり,ひいては医療の質の向上につながることを願ってやまない.

2018年8月 本郷にて 前田恵理子




 医学教育は進化を続けている.しかし,今日においても多くの教科はそれ単独で教えられており,医学生は医学に出てくる膨大な概念を統合するのに気が遠くなるほど面倒な作業をしなければならない.数年前にわれわれは,「解剖」「身体診察」「医用画像」という,医学の学習の鍵となる3項目が,異なる学年でばらばらに教えられており,医学生が1冊でこの3つの概念を統合できるような教材がないことに気がついた.そこでわれわれは,ばらばらに教えられるこの3つの概念を1つの教材に統合するために,“Clinical Anatomy Cases”を執筆することを考えついた.
 “Clinical Anatomy Cases”は,7つの解剖領域を解説するのに多くの図を用いている.Chapter 1「臨床での統合的アプローチ」で,われわれの目指す統合的アプローチを解説し,身体診察,医用画像の基礎やよく使われる統計の概念について解説した.これに続いて7つの部位ごとに統合的アプローチに基づいた解説を行い,頻度が高い疾患や症候に触れられるようにした.必要に応じて,簡単な鑑別診断をリストアップしたり,有効性が高いClinical Pearlを紹介したりもした.
 その結果,本書は従来の医学教育で生じるギャップを埋めるものとなっている.この統合的アプローチは,医学生,研修医,また看護師,理学療法士,作業療法士,歯科医師やphysician assistantを目指す皆さんにもとても魅力的な教材であると,われわれは自信をもってお薦めする.医学生や研修医にとって魅力的なだけでなく,彼らを教育する教員にとっても有益な教材となり,授業やカリキュラムの組み立てに役立てていただけるものと信じている.さらに,本書で取り上げられている項目は,同じWolters Kluwerから発行されている“Clnically Oriented Anatomy”や“Essential Clinical Anatomy”といった書籍をも補完するものである.本書が,医学教育のほかの領域でも,さまざまな領域を統合するような教材が生まれるきっかけとなることを期待している.


謝辞

 われわれが解剖学,身体診察と医用画像を統合するアイディアを得たのは数年前のことだったが,北米の多くの傑出した人物の導きや助言なしには,この“Clinical Anatomy Cases”を実際に出版することはできなかった.本書を執筆するにあたり,また執筆者を紹介してもらうにあたり,Joseph Loscalzo先生(Brigham and Women’s Hospitalの医学部長,院長),Joel T. Katz先生(同内科研修プログラムディレクター),Maria Yialamas先生(同内科研修プログラム副ディレクター),Vivian Gonzalez Mitchell先生(同内科研修プログラム副ディレクター),Stephen Ledbetter先生(Brigham and Women’s Faulkner Hospital放射線科部長)には,時宜を得た,寛大な助言をいただき,非常に感謝している.Heather McDonald-Blumer先生(Mount Sinai病院/大学関連病院およびトロント大学リウマチ科),Vincent Chien先生(St. Michael病院およびトロント大学総合内科)にも,このプロジェクトを支援し,協力してくれる教員を紹介していただいた.本書を執筆してくれたすべての著者(Brigham and Women’s Hospitalやトロント大学や北米のその他の大学の研修医,フェローや教員)にも,臨床やそれ以外のスケジュールで忙しいなか,このプロジェクトに参加し,われわれのアイディアを形にしてくださったことにとても感謝している.
 最終的に,本書がアイディアに終わらず形になったのは,Wolters KluwerのCrystal TaylorさんとGreg Nichollさんの素晴らしいリーダーシップと辛抱のおかげである.辛抱強く待ち,協力し,助言をし,われわれを導いてくれたGregには感謝の言葉しかない.そして図表の作成を手伝ってくれたJonathan Dimesさんと,肝となる校正を担ってくれたKelly Horvathさんにも感謝している.

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訳者一覧
監訳者の序
執筆者一覧
査読者一覧

謝辞
図の出典一覧

Chapter 1 臨床での統合的アプローチ
  統合的な医学アプローチへの導入
  初期評価
  詳細な評価
  身体診察
  臨床検査
  医用画像
  臨床所見の応用
  結論

Chapter 2 胸部
  初期評価
 器官系の概要
  肺
  心臓
  食道
 症例集
  肺炎
  慢性閉塞性肺疾患(COPD)
  膿胸
  肺結核
  気胸
  急性肺塞栓症
  孤発性肺結節
  肺癌
  中皮腫
  無気肺
  サルコイドーシス
  心臓弁膜症
  急性冠症候群
  急性大動脈解離
  うっ血性心不全
  心膜炎と心タンポナーデ
  アカラシアとびまん性食道痙攣
  食道穿孔
  食道癌

Chapter 3 腹部
  初期評価
 器官系の概要
  肝臓
  胆道系
  脾臓
  鼡径ヘルニア
  直腸・肛門
  腎臓
 症例集
  急性膵炎
  胆道系疾患
  肝炎
  肝硬変
  脾腫
  消化性潰瘍
  腸管閉塞
  虫垂炎
  結腸炎
  憩室疾患
  腸間膜虚血症
  腹部大動脈瘤
  膵癌
  大腸癌

Chapter 4 骨盤部
  初期評価
 器官系の概要
  女性の生殖器系
  男性の生殖器系
  泌尿器系
  乳房
 症例集
  異所性妊娠(子宮外妊娠)
  前置胎盤
  胎盤早期剥離
  尿路結石
  膀胱癌
  多発性嚢胞腎
  水腎症
  骨盤内炎症性疾患
  卵巣嚢腫
  多嚢胞性卵巣症候群
  子宮筋腫
  子宮体癌
  卵巣癌
  子宮頸癌

Chapter 5 背部
  初期評価
 器官系の概要
  頸椎・胸椎・腰椎・仙椎
  脊髄・脊髄神経
  筋
  脊髄の循環構造
 症例集
  神経根障害
  椎体骨折に伴う外傷性脊髄損傷
  脊椎硬膜外膿瘍
  脊椎への転移性腫瘍
  骨粗鬆症
  内因性の脊髄障害と横断性脊髄炎
  脊椎の変性疾患と強直性脊椎炎
  頸椎の関節リウマチ

Chapter 6 上肢と下肢
  初期評価
 器官系の概要
  肩
  肘関節・橈尺関節
  手関節・手
  股関節・大腿
  膝
  足関節・足
 症例集
  結晶性炎症性関節炎
  ミオパチー
  変形性関節症
  骨髄炎
  骨粗鬆症
  関節リウマチ
  敗血症性関節炎
  鎖骨骨折
  腱板断裂
  橈骨遠位端骨折
  舟状骨骨折
  大腿骨頭骨折および大腿骨頸部骨折
  転子部および転子下骨折(関節包外股関節骨折)
  半月板損傷
  前十字靱帯断裂
  深部静脈血栓症
  末梢動脈疾患
  足関節の捻挫

Chapter 7 頭頸部
  初期評価
 器官系の概要
  頭蓋・頭皮・髄膜
  大脳
  脳神経・脳幹
  運動系
  感覚系
  協調運動
  脳の動脈・静脈
  耳
  鼻・副鼻腔
  口腔・中咽頭
  喉頭
  頸部
  リンパ節
 症例集
  虚血性脳血管障害
  頭蓋内出血
  多発性硬化症
  脳膿瘍
  髄膜炎
  鼻副鼻腔炎
  咽後膿瘍
  下垂体腺腫
  膠芽腫
  外傷性脳損傷
  頸椎損傷
  顔面骨骨折
  甲状腺結節と悪性腫瘍

索引

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統合型医学教育の教材ともなる臨床医学・診療の入門書
書評者: 大友 邦 (国際医療福祉大学学長)
 基礎医学そして臨床医学の急速な進歩にお尻をたたかれる形で,医学教育も進化しつつある。いわゆる領域別・臓器別統合講義と参加型臨床実習の導入がその代表格である。さすがに専門課程の1~2年目に解剖学・組織学・病理学・生化学・生理学・薬理学などの基礎医学を,3年目以降に領域・臓器ごとの疾患について学ぶという古典的なカリキュラムで良しとする考えは過去のものになっている。しかしながら,教える側の教官も,教わる側の学生も,このような時代の変化に対応した教材探しに苦労しているのが現状でもある。

 このような問題認識に基づき「解剖」「身体診察」「医用画像」という医学の学習の鍵となる3項目を統合する教材として企画されたのが本書“Clinical Anatomy Cases”(邦題:『解剖×画像所見×身体診察マスターブック』)である。

 本書は総論「臨床での統合的アプローチ」と6つの領域〔胸部,腹部,骨盤部,背部(脊椎・脊髄),上肢と下肢,頭頸部〕ごとの各論から構成されている。各論では,臓器ごとの解剖と診察手順の概要に引き続き,代表的疾患が提示され,読者が症例ごとに診察・診断のプロセスをシミュレーションしながら,それぞれの疾患の徴候,身体所見,検査所見,定義,原因,鑑別診断を効率的に学ぶことができるように工夫されている。わかりやすいシェーマとともに典型的な画像が豊富に掲載されていることも本書の大きな特徴となっている。

 これまでの医学教育のギャップを埋める画期的な企画である本書は,医学生,研修医だけではなく,医学教育に関わる教官にとって得難い教材になると確信している。また「読みやすい」「わかりやすい」臨床医学の入門書として,看護師,臨床検査技師,診療放射線技師,リハビリテーションスタッフなど医療にかかわるすべての方々にも強く推薦する。

 本書を企画したトロント大Anne M.R. Agur先生と執筆者の方々,そして翻訳を担当した東大前田恵理子先生と同放射線医学教室の若手の皆さんに心からの敬意と謝意を表する。
統合的アプローチを学べる必読の書
書評者: 皿谷 健 (杏林大講師・呼吸内科学)
 本書の書評を前田恵理子先生から依頼された際に,軽い気持ちでお受けしたのだが,初めて手にしたとき,その本の中身の濃さと重量感(408ページ!)がどっしりと伝わってきた。いつも多施設が集まる症例検討会では放射線科医としてキレッキレの読影をされる前田先生らが総力を挙げて翻訳された本である。本書は臨床での統合的アプローチ,胸部,腹部,骨盤部,背部,上肢と下肢,頭頸部の合計7つの章に分かれ,各章では解剖学,診察(身体所見),検査所見,画像所見,検査前確率を予測するスコアリング,特殊検査まで網羅しており他書に類をみない。各章では実際の症例が提示されどのように多角的に評価すべきかを,定義,疫学,原因,鑑別診断の基本事項に加え,症状,身体所見,検査所見まで含めて解説されている。

 例えば強直性脊椎炎の症例では,典型的な靱帯骨棘形成での特殊検査として変形Schober試験(p226)やHLA-B27の測定まで記載され,疾患を丸ごととらえようとする意気込みが感じられる本である。特筆すべきは,Clinical Pearlが随所にちりばめられており,その内容は患者のマネジメント,診断,検査結果の解釈にまで及ぶ。例えば,「大腸内視鏡検査は憩室炎の急性期には穿孔のリスクがあるため禁忌である。炎症性腸疾患や悪性腫瘍を除外するため,6週間が経過したあとに行うべきである」という短文で“ずばっと”迫ってくるものや,心嚢液貯留患者の心タンポナーデ移行のリスク評価における奇脈の重要性,その所見の取り方の記載がある。一方,ユニークな切り口のパールも多々あり,例えば,消化管悪性腫瘍の身体診察において人名に由来する5つの医学的徴候が挙げられている(下記)。

 1.左鎖骨上リンパ節(Virchow node)の触知
 2.左腋窩リンパ節(Irish node)の触知
 3.臍に突出する播種結節(Sister Mary Joseph node)
 4.直腸診で腫瘤を触知する場合,Douglas窩への播種が示唆される(Blumer shelf)
 5.卵巣転移(Krukenberg腫瘍)

 呼吸器が専門の私にとって,診断スコアは初めて目にするものも多かった。例えば急性膵炎のベッドサイドのリスク分類BISAP(p114),アルコール性肝炎の患者における副腎皮質ステロイドによる治療効果の予測(p122),C型肝炎,HIV,慢性アルコール性肝障害のある入院患者の肝硬変の予測に使用するAST to platelet ratio index(APRI)(p125)など,実践的な内容となっている。

 本書はこれから臨床経験を積む学生,研修医,若手医師のみならず,専門医として各科で活躍中のベテラン医師まで,再度多角的に病態をとらえ,患者を効率よく診断し,マネジメントするために有用な必読書となるだろう。
基礎と臨床をつなぐ素晴らしい着眼点の本
書評者: 志水 太郎 (獨協医大主任教授・総合診療医学)
 この本は「ありそうでなかった」画期的な視点の本であり,基礎と臨床をつないでくれる有意義な書籍と思います。4名の編者のうちクリニカルフェローが2名という(カナダおよび米国)チーム編成が,北米大陸の教育層の厚さを物語ります。また,NEJMのClinical Problem SolvingでおなじみのJoseph Loscalzo先生(Harvard/Brighamチーム)も参画して書かれた臨床解剖の本です。原著のサブタイトルはフィジカルと画像のintegrationということで,邦題もその本質を見事に翻訳された「解剖×画像所見×身体診察」となっています。

 本書は,核となるChapter 1,臨床での統合的アプローチ,そしてそれに続くChapter 2からの各論からなります。それぞれの各論の章は基礎医学というよりはむしろより臨床的な事項がメインになった構成であり,そこに画像所見と解剖図譜がバランスよく配置されていて,臨床画像には慣れない低学年の学生でもスムーズな形で画像の読み方について解剖を基礎として学ぶことができる構成と思います。各論の章は,症例を基にしながら,初期評価,器官系の概要,症例集という三段構成になっていて,スムーズに基礎→臨床の学習に入っていくことができます。

 しかし何といってもこの本で秀逸なのはChapter 1でしょう。「統合的な医学アプローチへの導入」という見出しから始まり,ある症例を提示され,医師がどのように考え,何を観察し,どのようなことに気を配るのか,ということが丁寧に書かれています。おそらく医学部低学年者を対象としたようなスタートですが,2ページ目からは身体診察,数ページにわたるバイタルサインの記載へとつながり,所見と解剖学的な表現の記載,さらに症例が進み画像検査の説明とその所見,そして検査の結果の病態生理と結果の科学的解釈(感度・特異度)まで触れています。一つのケースからこのように有機的に学ぶ,という学び方のお手本のような構成になっています。本書評の冒頭で,なかなかこのような書籍はないと述べたのは,特にこのChapter 1のような,「ありそうでなかなかない」内容の展開からです。

 評者は臨床系の大学教員である一方,基礎医学(解剖学)の教壇に立つこともあり,臨床の観点から基礎に触れるということを教員の側から実感する立場の医師です。例えば先日の授業や実習ではまさに,学生の古くからのニーズである基礎と臨床が直結したような勉強がしたいという声を肌で感じました。かくいう自分も,十数年前英国の医学部に留学させていただいた折,臨床医学の実習やミニレクチャーが常に基礎医学の知識に戻って教えられていた教育現場を現地で見て同様の想いを強くした経験があり,その記憶からも,本書を手にしてその悩みに一条の光が差したような気がして,とてもうれしい気がしました。

 訳も自然でとても読みやすいです。特に低学年の学生,そして,医学教育をどのように教えようかと悩む教員の先生方にも大推薦の一冊です。

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本書の記述の正確性につきましては最善の努力を払っておりますが、この度弊社の責任におきまして、下記のような誤りがございました。お詫び申し上げますとともに訂正させていただきます。

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