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内科レジデントの鉄則 第3版

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臨床現場で最も大事なこと――蓄えた知識を最大限に生かし、緊急性・重要性を判断したうえで、いかに適切な行動をとれるかということ。本書は、まさにここに主眼を置いて構成。よく遭遇する教育的な症例をベースに、絶対知っておきたい知識を整理するとともに、どのようにワークアップし、動くべきかということが一貫して強調されている。今回の改訂では、基本から少しアドバンスな内容、最新の知見も記載。参考文献もさらに充実。
聖路加国際病院内科チーフレジデント
発行 2018年04月判型:B5頁:344
ISBN 978-4-260-03461-6
定価 4,180円 (本体3,800円+税)
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第3版の序

 いまや医学生と研修医にとって必読書となった『内科レジデントの鉄則』は,2004-2005年度の内科チーフレジデントが立ち上げた「内科コアカンファレンス」から生まれました.2005年に内科研修医として聖路加国際病院に入職した私は執筆者の先生方から直接教えていただいた世代であり,初版,第2版の編集を務められた岡田定先生から第3版の編集の大任を拝した際は,大変光栄であるとともに身の引き締まる思いでした.

 『内科レジデントの鉄則』は単なる教科書ではありません.医学生や研修医にとって,稀な疾患を知り鑑別を広げることは確かに大事なことかもしれません.臨床推論能力を高めることも大事でしょう.ですが,臨床現場で最も大事なことは,蓄えた知識を最大限に活かし,緊急性・重要性を判断したうえで,いかに適切な行動をとれるかということなのです.『内科レジデントの鉄則』はまさにそこに主眼を置いて構成されています.現場でよく遭遇する症例をベースに,絶対に知っておきたい知識を簡潔に整理するとともに,どのようにワークアップし,どのように動くべきかということが一貫して強調されているのです.

 今回,第3版の執筆にあたったのは2016年度の内科チーフレジデントを務めた孫楽先生,羽田佑先生,池田行彦先生です.みな優秀な臨床医であるとともに,実に素晴らしい教育者でもあります.6年ぶりの改訂に際し,まずは医学生や研修医のニーズに本書は本当に合致しているかを調査することから始めました.当院の見学に来た医学生や当院の初期研修医,専門研修医に対して独自にアンケート調査を行い,彼らが本書のどこに満足しているのか,あるいはどのような改善を望んでいるのかを徹底的に洗い出しました.その結果,基本的な部分はできるだけわかりやすく簡潔に記載するとともに,少しアドバンストな内容についても記載するなどメリハリを効かせた構成を意識しています.そして今版ではとりわけ参考文献に力を注ぎました.できる限り新しい知見を紹介するとともに,具体的に何が重要か,文献についての解説を記載しています.そうすることで自分自身のブラッシュアップのみならず,後輩への教育にも役立つことが期待されるからです.

 改訂の企画立案から1年強にわたり,幾度となく執筆者と議論を重ね,このたび無事,第3版の完成に漕ぎ着けました.多忙を極める日々でしたが,一切の妥協をせず,先輩方から引き継いだ本書をよりよいものにしようとする執筆者の熱意と真摯な姿勢に心打たれました.彼ら3人を心から誇りに思います.

 最後になりましたが,このような良書が生み出されるのは教え好き,教えられ好きが集まり脈々と屋根瓦式教育が引き継がれる聖路加国際病院という豊かな土壌があるからにほかなりません.すべての病院関係者の方々に感謝申し上げます.また,いつも私たちを導いてくださる岡田定先生,そして丁寧な校正を行っていただきました医学書院の方々に深謝申し上げます.

 2018年3月
 聖路加国際病院感染症科副医長
 森 信好

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A 当直で呼ばれたら
 1 発熱―解熱薬で様子をみるその前に
 2 ショック―血圧そのものより循環が大事
 3 酸素飽和度低下―バイタルサイン異常でいちばん怖い!
 4 意識障害―失神じゃなければAIUEOTIPS
 5 頻脈・徐脈―安定? それとも不安定?
 6 胸痛―4 killer chest painを見逃すな!
 7 腹痛―急性腹症をまず除外!
 8 血糖異常―低くても高くても注意
 9 嘔気・嘔吐―「NAVSEA」で鑑別を
 10 不眠・せん妄―睡眠薬にも落とし穴が……
 11 病棟で経験するアレルギー―アナフィラキシーと重症薬疹を忘れるな
 12 その他(転倒,点滴・経鼻胃管・胃瘻自己抜去,点滴漏れ)
     ―どんなコールも油断大敵

B 内科緊急入院で呼ばれたら
 13 肺炎―起炎菌を想定した診療を
 14 喘息発作・COPD増悪―wheeze=喘息発作とは限らない
 15 急性心不全―wet or dry? cold or warm?
 16 脳梗塞―発症後4.5時間が勝負
 17 けいれん―あせらずまずはABC確保
 18 急性腎障害(AKI)―AKIに強くなる!
 19 低ナトリウム血症―血漿浸透圧 High or Low?
 20 高カリウム血症―男はだまって再検と心電図
 21 肝機能障害―「肝なのか,胆なのか」
 22 急性膵炎―膵炎の沙汰も水次第
 23 オンコロジック・エマージェンシー―進行がん患者を救おう

C 入院患者の管理で困ったら
 24 輸液―たかが輸液,されど輸液
 25 栄養―計算せずして食わせるべからず
 26 ペインコントロール―痛みは第5のバイタルサイン
 27 慢性腎臓病(CKD)―クレアチニンだけが腎機能じゃない
 28 動脈血液ガス分析の解釈―隠れた病態を導き出そう
 29 ステロイドの使用法―副作用を最小限に
 30 抗菌薬の使い方―抗菌薬は狙いを定めて使用する
 31 抗菌薬の使い方 応用編―抗菌薬が効かない可能性を考える

あとがき
索引

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聖路加国際病院の現場が生んだ中身の濃いマニュアル
書評者: 青木 眞 (感染症コンサルタント)
 最後の静脈ライン確保も腰椎穿刺も20年ほど前になる評者に,現場のマニュアルを俯瞰し書評を書く資格は本来ない。責任編集者の森信好先生から書評を依頼された時のちゅうちょは健全だったと思う。しかし「エッセンスのみ抽出された症例」を白板上で検討する「形而上学的」な生活を繰り返す評者を現場のリアリティに引き戻す機会と捉え,お引き受けした(それにしても全ページを読了するのに約6週間。現場から遠く,そして遅れた者による書評であることをあらかじめお断りしておく)。

 本書は,「A 当直で呼ばれたら」「B 内科緊急入院で呼ばれたら」「C 入院患者の管理で困ったら」の3モジュールで構成されており,それぞれ,病棟,救急当直,入院症例の管理といった状況をおよそ想定していると思われる。しかし各論の項目は「腹痛」「胸痛」など救急室でも病棟でも遭遇する事態であり,あまり厳密な区分は意味がないだろう。

 現場から遠い評者の視点だが,有用と思われる箇所の一部を紹介すると……。

・p7 発熱での追加問診事項:薬剤歴(最近飲み始めた漢方,サプリ,ハーブはあるか),動物接触歴(熱帯魚・ミドリガメなどはどうか。近くに鳩がたくさん来る場所はあるか),渡航歴,性交渉歴(風俗,コンドームの使用,男性か女性か両方か)。

・p16 ショックの初期対応:数百mLの輸液で心原性ショックが悪化することは少ないので,診断が確定するまで(中略)最初に輸液負荷を行う。

・p37 意識障害・神経所見を含めた身体診察:意識障害があったとしても神経所見の検討は可能〔例:眼(抜粋:共同偏視,瞳孔不同,人形の目反射など)〕。

・p41 意識障害と失神:病歴聴取で意識障害と失神を区別。失神は必ず心原性を除外。失神の原因と頻度(心原性18%,非心原性48%,原因不明34%)。

・p83 経口血糖降下薬:非常にわかりやすい分類と説明が図解されている。

・p106 せん妄予防:環境整備と治療薬処方例が具体的。

・p118 胃瘻の自己抜去と再挿入:素晴らしい。

・p153 心不全の病態把握法:cold or warmの軸(低灌流)とwet or dryの軸(うっ血)で病態を把握。

・p201 低Na血症:「勝手に治る低Na血症」の説明がよい。

・p263 オピオイドの剤型別換算:投与法と共に有用な表。

・p279 動脈血液ガスでわかるその他の項目:COHb(一酸化炭素)の割合,Lac(乳酸値),mOsm(浸透圧:これは計算で):これが現代の動脈血液ガスの項目か。

 以下は余談と極論である。
 評者が初期研修を受けた80年代の沖縄県立中部病院も,米国の大学病院も,そして90年代の聖路加国際病院も,ひとたび日常の勤務時間が終われば,そこはチーフレジデントを中心とする研修医が全てを仕切る野戦病院と化した。労働基準局がどのように考えるかは浅学非才の評者には見当もつかないが,安楽・快適といったこの世のNormから隔絶され,病院外からの時間の流入が止まる,この準夜,深夜帯の不条理に満ちたマゾヒスティックな空間が優れた医師の醸造装置であった。本書『内科レジデントの鉄則 第3版』も間違いなく,この野戦病院的空間が生み出したと確信している。

 スタッフよりも早く「退社」する研修医の9~17時ライフが一般化され,電子カルテにより診療記録が綿あめのように体積ばかりで中身の薄いものに変質している今日,このような歯ごたえのある“クックブック”の愚直さを体現する本を生み出す空間が依然として存在することに一種の安堵を覚えている。多くの読者を得ることを願っている。
診療でよく出合うケースを疑似体験しながら学べる
書評者: 山中 克郎 (諏訪中央病院総合内科)
 私にとって聖路加国際病院は憧れの病院である。駆け出しの内科医であった頃,聖路加国際病院『内科レジデントマニュアル』を購入し必死になって勉強した。日本最高レベルの愛の心に満ちた医療が行われているという印象をずっと抱いている。

 聖路加国際病院内科チーフレジデントの皆さんが,実践力のあるレジデントを育てるために編集した『内科レジデントの鉄則』は2006年に初版が出版された。6年ぶりとなる今回の改訂では,アドバンスドな内容や根拠となる参考文献をより充実させたという。

 チーフレジデントは医学知識が豊富なだけでは務まらない。人間的な魅力に溢れ,同僚や後輩の面倒見が良い人だけがチーフレジデントとして選ばれる。診療でよく出合うケースを疑似体験しながら,若手医師が間違えそうなポイントについて,きめ細かいアドバイスを受けられる点がこの本の最大の魅力である。

 「当直で呼ばれたら」,「内科緊急入院で呼ばれたら」,「入院患者の管理で困ったら」の3つの章では,救急や入院診療で若手医師が困りそうな症候や疾患にフォーカスが当てられている。

 「鉄則」という形で最初に必要最小限の重要ポイントが明示されているのが良い。さらに鉄則が実臨床でどのように役立つのか,治療はどうするのかについても非常に具体的である。わかりやすい図や表がたくさんあることも読者の理解を助ける。

 「もっと知りたい」というコラムでは知っていると同僚にちょっと自慢したくなる知識がこっそり書かれている。私も10年前から知っているようなふりをして,研修医たちにウンチクを傾けたくなってくる。

 実際の症例からたくさんのことを学ぶという勉強スタイルが私は好きである。有名な教科書を読んでも,実際のケースがイメージできないと記憶にあまり残らない。この本で紹介されている症例は,歴代のチーフレジデントたちが大いに悩んだ経験をもとに構成されているのだろう。

 聖路加国際病院で研修していなくとも,研修の内容を知り,そのエッセンスを体得できるのは非常にありがたい。本書の教えを全て記憶する必要なんかない。この本のどこにそれが解説されていたかをおぼろげに覚えてさえいれば,当直や入院患者の対処に困った時,大いに心強いだろう。何度も読み返すことで「怒涛の反復」となり記憶に定着する。

 さらに指導医にとっても,どのような点に注意して研修医を教えればよいのかという教育法を学べるのはとても心強い。伝統ある聖路加国際病院の医学教育が全国の病院に広がり,そこでも大きな花が開くことを願わずにはいられない。
一人前の臨床医になるための「ファストパス」
書評者: 津川 友介 (カリフォルニア大ロサンゼルス校内科アシスタントプロフェッサー)
 時代とともに変わることと変わらないことがある。医学部の授業は今でも知識偏重型で,暗記中心である。一方で,米国の他学部では,教科書を持ち込んでその場で調べながらテストを受ける「オープンノート」型の試験が増えている。今の時代,自分の知識だけを頼りに問題解決することはまれであり,調べながら解決する能力を評価する方が実践的だからである。医療に関しても同じで,多くの医師は,わからないことがあればあやふやな記憶をもとに治療方針を決めるよりも,インターネットで調べてから判断しているだろう。昔は外来の途中にパソコンで調べものをしていたら上級医に怒られていたが,今は患者さんと一緒にその場で調べながら最適解を見つける時代である(私の同僚の米国のプライマリケア医の多くはそうしている)。医学に関する最低限の知識はもちろん必要であるが,高度な知識に関してはポケットの中のスマートフォンに「アウトソース」してもよい時代になりつつある。

 しかしそうはいかないこともある。医師をしていたら,患者さんが急変したり,救急外来でその場で意思決定を下さないといけないこともある。そのような時にはパソコンに向かう時間も,教科書を開く余裕もない。自分の覚えている知識を頼りに判断を下す必要がある。『内科レジデントの鉄則』はそのような知識を教えてくれる一冊である。

 医学部のときはなかなか習わないのだが,医師となって最も重要なスキルセットの一つはこのような時間的猶予がない状況で正しい判断を下すことができるかどうかであると私は考えている。医学部は臓器別に教育を受けることの影響もあるのか,当直をするに当たって,もしくは救急外来をするに当たっての最低限の知識を教えてくれることは珍しい。医師になって初めの一年間で最も重要な知識であるにもかかわらずである。

 私は初期研修医のときにこの本で学び,内科チーフレジデントのときにはコアカンファレンスを通じて次の世代を教育した世代である。私が聖路加国際病院で研修したのは10年以上前のことであり,一緒に研修をした森信好先生が本書の編集をしているのは感慨深いものがある(それだけ私たちが歳を取ったということか……)。私が研修医として聖路加国際病院で働き始めたころ,2年目の研修医たちがコアカンファレンスの資料を分厚いファイルにまとめていて,何かとあるとそれを参考にしていたのを思い出す。その知識を聖路加国際病院の中にとどめておくのではなく,このような形で広く日本中の医学教育に役立ててもらうというのは素晴らしいことだと思う。『内科レジデントの鉄則』は聖路加国際病院で研修しなくても,コアカンファレンスで教えられている内容を経験できる優れた本である。聖路加国際病院の歴代のチーフレジデントの「教え」が詰まった本に,森先生,池田行彦先生,孫楽先生,羽田佑先生によって最新のエビデンスのエッセンスが加えられたこの一冊は,一人前の臨床医になるための「ファストパス」であると言っても過言ではないだろう。

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本書の記述の正確性につきましては最善の努力を払っておりますが、この度弊社の責任におきまして、下記のような誤りがございました。お詫び申し上げますとともに訂正させていただきます。

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