老年看護 病態・疾患論 第5版
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- 高齢者の生理的特徴、高齢者に特徴的な症候(老年症候群)と病態生理、高齢者の観察・面接・総合機能評価の方法、高齢者に多い疾患など、高齢者の医療実践に欠かせないエッセンスをまとめたテキストです。
- 看護のための老年医学・高齢者医療の概説書として、最適の1冊です。本講座の『老年看護学』との併用で効果を発揮します。「超高齢社会」時代のなかで、高齢者の身体的特徴をふまえたケア実践ができる看護師が育ちます。
- 高齢者は多くの症候や疾患を併存します。臓器ごとに課題に対応する一般的な医療モデルに基づいて看護を行うべきではありません。個々の症状や疾患をみるのではなく、状態を総合的にとらえて看護を行う必要があります。
- 第5版では、老年症候群、フレイル、サルコペニア、ポリファーマシーへの対応と高齢者の安全な薬物療法、包括的リハビリテーションなど、高齢者を総合的にとらえ、ケアするための知識がさらに強化されました。
- 「系統看護学講座/系看」は株式会社医学書院の登録商標です。
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- 序文
- 目次
序文
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はしがき
本書の目的
臓器別看護で学んだことをすべて臨床で実践すれば高齢者看護ができるか? といった問いに対し,「できない」と答え,その理由を説明すること,老年者の全人的なとらえ方および臓器別看護とは異なる看護の方針を示すことが本書の主要な目的である。
成人看護学では,ほとんどの患者は単一の臓器の疾患を患い,その臓器の治癒に向けたケアを行えば,回復し,社会復帰できる。しかし,複数の疾患をあわせもつことが多い高齢者(とくに75歳以上は平均5つ以上の疾患をもつ)の場合は,臓器別看護のエキスパートが積み木細工のようにケアプランを立てても,統一性に欠けたいくつものケアプランが並立し,それらがハーモニーを奏でず,さまざまなケアを同時に行う労力の割には,患者のQOLに貢献しないことが多い。
これらはすでに,この本の生みの親である前日本老年医学会理事長の佐々木英忠先生が,初版(1999年1月発行)のはしがきに書かれている。
本書の経緯
本書は第2版まで佐々木先生の単著であった。第3版から,急速な認知症患者の増加に対応し,高齢者の多様な症候を記述したいという佐々木先生のお考えにより,東北大学の荒井啓行教授と当時杏林大学教授だった鳥羽が加わり,認知症と認知症に伴う行動・心理症状や,老年症候群について大きく加筆した。第4版からは東京大学の秋下雅弘教授が加わり,高齢者の疾患および薬物療法について,最新の知見を盛り込んでわかりやすく解説していただいた。
今改訂の要点
今改訂は,わが国において世界に前例がないほどの社会の高齢化が進み,高齢者医療・看護の重要性がますます高くなっているなかで行った。その要点は次のとおりである。
現在,高齢者への多投薬がさまざまな問題を引きおこすことが明らかになっており,ポリファーマシーとして社会に認知され,診療報酬上において減薬を促すようなしくみがつくられている。それを受けて,第5章では秋下先生に新たにポリファーマシーの問題を記述していただき,それを踏まえた高齢者の安全な薬物療法についてまとめていただいた。
また,国は医療と介護の一体化,および「科学的介護」を重要課題として取り上げている。そこで今回,東邦大学の海老原覚先生に加わっていただき,第6章で高齢者のリハビリテーションの最新の知見と,そこにおける看護師の役割をまとめていただいた。
フレイルについては,全身に及ぼす影響が大きいことから口腔機能の虚弱である「オーラルフレイル」が注目されている。そこで,高齢者の口腔ケア,老年歯科の第一人者である国立長寿医療研究センター歯科口腔先進医療開発センターの角保徳センター長に加わっていただき,先進的な知識をご執筆いただいた。
このほか第2章ではフレイルやサルコペニアなどの老年医学の最近の成果を盛り込み,第3章では看護アセスメントに役だつ老年医学のエッセンスや,高齢者総合評価の活用方法などを盛り込んだ。その他の部分もできる限り見直しを行ったつもりである。
臓器別の急性期医療では見落とされがちな症状,チーム医療における看護の重要性に関して,さらに充実した内容にできたと確信している。病気と関連するにもかかわらず,軽視されがちな生活機能との関連を,しっかりと正面からみる医療がなくては,超高齢社会の医療ケアに対する国民の不安は解消しない。これが,本書の根底に貫かれている信念である。
この信念は,佐々木先生の初版から行間にあふれていたが,今回の改訂において,さらに継承・発展させたつもりである。
本書が老年看護をこれから学ぼうとする看護学生や,卒後しばらく経過して新しい知識を吸収したいという看護師のお役に立つことができれば幸いである。
2017年12月
著者代表 鳥羽研二
本書の目的
臓器別看護で学んだことをすべて臨床で実践すれば高齢者看護ができるか? といった問いに対し,「できない」と答え,その理由を説明すること,老年者の全人的なとらえ方および臓器別看護とは異なる看護の方針を示すことが本書の主要な目的である。
成人看護学では,ほとんどの患者は単一の臓器の疾患を患い,その臓器の治癒に向けたケアを行えば,回復し,社会復帰できる。しかし,複数の疾患をあわせもつことが多い高齢者(とくに75歳以上は平均5つ以上の疾患をもつ)の場合は,臓器別看護のエキスパートが積み木細工のようにケアプランを立てても,統一性に欠けたいくつものケアプランが並立し,それらがハーモニーを奏でず,さまざまなケアを同時に行う労力の割には,患者のQOLに貢献しないことが多い。
これらはすでに,この本の生みの親である前日本老年医学会理事長の佐々木英忠先生が,初版(1999年1月発行)のはしがきに書かれている。
本書の経緯
本書は第2版まで佐々木先生の単著であった。第3版から,急速な認知症患者の増加に対応し,高齢者の多様な症候を記述したいという佐々木先生のお考えにより,東北大学の荒井啓行教授と当時杏林大学教授だった鳥羽が加わり,認知症と認知症に伴う行動・心理症状や,老年症候群について大きく加筆した。第4版からは東京大学の秋下雅弘教授が加わり,高齢者の疾患および薬物療法について,最新の知見を盛り込んでわかりやすく解説していただいた。
今改訂の要点
今改訂は,わが国において世界に前例がないほどの社会の高齢化が進み,高齢者医療・看護の重要性がますます高くなっているなかで行った。その要点は次のとおりである。
現在,高齢者への多投薬がさまざまな問題を引きおこすことが明らかになっており,ポリファーマシーとして社会に認知され,診療報酬上において減薬を促すようなしくみがつくられている。それを受けて,第5章では秋下先生に新たにポリファーマシーの問題を記述していただき,それを踏まえた高齢者の安全な薬物療法についてまとめていただいた。
また,国は医療と介護の一体化,および「科学的介護」を重要課題として取り上げている。そこで今回,東邦大学の海老原覚先生に加わっていただき,第6章で高齢者のリハビリテーションの最新の知見と,そこにおける看護師の役割をまとめていただいた。
フレイルについては,全身に及ぼす影響が大きいことから口腔機能の虚弱である「オーラルフレイル」が注目されている。そこで,高齢者の口腔ケア,老年歯科の第一人者である国立長寿医療研究センター歯科口腔先進医療開発センターの角保徳センター長に加わっていただき,先進的な知識をご執筆いただいた。
このほか第2章ではフレイルやサルコペニアなどの老年医学の最近の成果を盛り込み,第3章では看護アセスメントに役だつ老年医学のエッセンスや,高齢者総合評価の活用方法などを盛り込んだ。その他の部分もできる限り見直しを行ったつもりである。
臓器別の急性期医療では見落とされがちな症状,チーム医療における看護の重要性に関して,さらに充実した内容にできたと確信している。病気と関連するにもかかわらず,軽視されがちな生活機能との関連を,しっかりと正面からみる医療がなくては,超高齢社会の医療ケアに対する国民の不安は解消しない。これが,本書の根底に貫かれている信念である。
この信念は,佐々木先生の初版から行間にあふれていたが,今回の改訂において,さらに継承・発展させたつもりである。
本書が老年看護をこれから学ぼうとする看護学生や,卒後しばらく経過して新しい知識を吸収したいという看護師のお役に立つことができれば幸いである。
2017年12月
著者代表 鳥羽研二
目次
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序章 「超高齢社会」における老年看護への期待 (鳥羽研二)
A 高齢者の定義
B 「超高齢社会」の到来
C 高齢者医療の課題と重要性
D 老年看護への期待
第1章 高齢者の生理的特徴 (佐々木英忠・鳥羽研二)
A 「老化」とは
B 老化と寿命
C 認知・知覚機能の老化
D 呼吸・循環機能の老化
E 消化・吸収・代謝機能の老化
F 排泄機能の老化
G 免疫機能の老化
H 運動機能の老化
I 性機能の老化
第2章 老年症候群 (鳥羽研二)
A 老年症候群の特徴
B おもに急性疾患に付随する症候
C おもに慢性疾患に付随する症候
D おもにADL低下に合併する症候
E フレイル
第3章 高齢者の健康状態の把握と総合機能評価 (佐々木英忠・鳥羽研二・秋下雅弘)
A 高齢者のフィジカルアセスメント
B バイタルサイン測定・身体測定
C 栄養評価
D 検査
E 訪問場面での健康状態の把握
F 高齢者総合機能評価
第4章 高齢者の疾患の特徴 (荒井啓行・秋下雅弘・佐々木英忠・鳥羽研二・角 保徳)
A 認知症
B 精神・神経疾患
C 循環器系の疾患
D 呼吸器系の疾患
E 消化器系の疾患
F 内分泌・代謝系の疾患
G 自己免疫疾患
H 血液の疾患
I 腎・泌尿器系の疾患
J 運動器の疾患
K 皮膚の疾患
L 感覚器の疾患
M 歯・口腔の疾患
N 感染症
第5章 高齢者と薬 (秋下雅弘)
A 高齢者の安全な薬物療法
B 高齢者で注意すべきおもな薬物
C 服薬管理能力のアセスメントと服薬支援
第6章 高齢者のリハビリテーション (海老原覚)
A 高齢者におけるリハビリテーションとは
B 内部障害リハビリテーション
C 肢体不自由リハビリテーション
D 廃用性疾患のリハビリテーション
E 非薬物療法としてのリハビリテーション
終章 高齢者の在宅医療とエンドオブライフケア (鳥羽研二)
1 高齢者の在宅医療の特性
2 認知症患者の在宅医療
3 人生の最終段階における入院医療と在宅医療の連携(在宅医療支援)
4 高齢者医療におけるチーム医療の特性
5 在宅療養とエンドオブライフケア
6 高齢者の在宅医療における訪問看護の役割
索引
Column・NOTE
・胃瘻・人工栄養の導入・中止にからむ現場の葛藤
・寝たきりプロセス
・認知症の患者に対する薬物療法の問題点
・エンドポイント
・老いに対する否定的イメージの形成
・多病と合併症・併存症
・高齢者の睡眠衛生の指導
・家庭血圧
・骨粗鬆症Q&A
・もの忘れのある高齢者の耳掃除と生活機能の関係
・むせにご縁なしTM
・誤嚥性肺炎患者の食事開始プロトコル
A 高齢者の定義
B 「超高齢社会」の到来
C 高齢者医療の課題と重要性
D 老年看護への期待
第1章 高齢者の生理的特徴 (佐々木英忠・鳥羽研二)
A 「老化」とは
B 老化と寿命
C 認知・知覚機能の老化
D 呼吸・循環機能の老化
E 消化・吸収・代謝機能の老化
F 排泄機能の老化
G 免疫機能の老化
H 運動機能の老化
I 性機能の老化
第2章 老年症候群 (鳥羽研二)
A 老年症候群の特徴
B おもに急性疾患に付随する症候
C おもに慢性疾患に付随する症候
D おもにADL低下に合併する症候
E フレイル
第3章 高齢者の健康状態の把握と総合機能評価 (佐々木英忠・鳥羽研二・秋下雅弘)
A 高齢者のフィジカルアセスメント
B バイタルサイン測定・身体測定
C 栄養評価
D 検査
E 訪問場面での健康状態の把握
F 高齢者総合機能評価
第4章 高齢者の疾患の特徴 (荒井啓行・秋下雅弘・佐々木英忠・鳥羽研二・角 保徳)
A 認知症
B 精神・神経疾患
C 循環器系の疾患
D 呼吸器系の疾患
E 消化器系の疾患
F 内分泌・代謝系の疾患
G 自己免疫疾患
H 血液の疾患
I 腎・泌尿器系の疾患
J 運動器の疾患
K 皮膚の疾患
L 感覚器の疾患
M 歯・口腔の疾患
N 感染症
第5章 高齢者と薬 (秋下雅弘)
A 高齢者の安全な薬物療法
B 高齢者で注意すべきおもな薬物
C 服薬管理能力のアセスメントと服薬支援
第6章 高齢者のリハビリテーション (海老原覚)
A 高齢者におけるリハビリテーションとは
B 内部障害リハビリテーション
C 肢体不自由リハビリテーション
D 廃用性疾患のリハビリテーション
E 非薬物療法としてのリハビリテーション
終章 高齢者の在宅医療とエンドオブライフケア (鳥羽研二)
1 高齢者の在宅医療の特性
2 認知症患者の在宅医療
3 人生の最終段階における入院医療と在宅医療の連携(在宅医療支援)
4 高齢者医療におけるチーム医療の特性
5 在宅療養とエンドオブライフケア
6 高齢者の在宅医療における訪問看護の役割
索引
Column・NOTE
・胃瘻・人工栄養の導入・中止にからむ現場の葛藤
・寝たきりプロセス
・認知症の患者に対する薬物療法の問題点
・エンドポイント
・老いに対する否定的イメージの形成
・多病と合併症・併存症
・高齢者の睡眠衛生の指導
・家庭血圧
・骨粗鬆症Q&A
・もの忘れのある高齢者の耳掃除と生活機能の関係
・むせにご縁なしTM
・誤嚥性肺炎患者の食事開始プロトコル
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