神経発達症群

もっと見る

好評既刊の 『DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル』『DSM-5 ガイドブック』『DSM-5 ケースファイル』『DSM-5 診断トレーニングブック』 より「神経発達症群」の記述を抜粋してまとめた1冊。ASD、ADHDなど、DSM-5における発達障害関連疾患の診断基準とその解説、診断基準を使いこなすための指針、症例集、演習問題を収載。DSMの発達障害診断を深く学びたい方に好適の書。
※「DSM-5」は American Psychiatric Publishing により米国で商標登録されています。
シリーズ DSM-5 セレクションズ
原著 American Psychiatric Association
監訳 髙橋 三郎
発行 2016年09月判型:A5頁:240
ISBN 978-4-260-02845-5
定価 2,970円 (本体2,700円+税)

お近くの取り扱い書店を探す

  • 更新情報はありません。
    お気に入り商品に追加すると、この商品の更新情報や関連情報などをマイページでお知らせいたします。

  • 序文
  • 目次

開く

DSM-5セレクションズへの序はじめに

DSM-5セレクションズへの序
 DSM-5セレクションズへようこそ.このシリーズの目的は,読者の方々にDSM-5の各カテゴリーに関連した重要な診断的問題点について学習していただくことである.DSM-5セレクションズとしての最初のものは,「睡眠-覚醒障害群」「抑うつ障害群」「統合失調症スペクトラム障害および他の精神病性障害群」「食行動障害および摂食障害群」「神経発達症群」および「不安症群」である.このシリーズの各巻には各カテゴリーに含まれている各々の疾患に関係のある診断基準が含まれている.基準は直接“Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders, Fifth Edition”(邦訳 『DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル』 )から採られており,臨床実践にとって,今日得られる最も総合的で,現行における,決定的な資料である.さらに,このシリーズの各巻には,“DSM-5 Guidebook-The Essential Companion to the Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders, Fifth Edition”(邦訳 『DSM-5 ガイドブック-診断基準を使いこなすための指針』 ),“DSM-5 Clinical Cases”(邦訳 『DSM-5 ケースファイル』 ),“DSM-5 Self-Exam Questions-Test Questions for the Diagnostic Criteria”(邦訳 『DSM-5 診断トレーニングブック-診断基準を使いこなすための演習問題500』 )からの抜粋も加えられている.その結果,シリーズの各巻は,DSM-5疾患の各々のカテゴリーへの特色ある導入,およびDSM-5疾患について自己の知識をテストする機会を提供している.
 『DSM-5 ガイドブック』 は臨床家や研究者にDSM-5疾患へと道案内する地図として役立つ.この本は,精神保健の専門家に改訂された診断基準をどのように使用するかを教えることによりDSM-5の内容を解説し,また,臨床的使用のための実践的内容を提供している.この本は,DSM-IV-TRからDSM-5への変更という,基準の臨床的適用にとって最も意味のある影響を与えたことに焦点を合わせることで,DSM-5診断カテゴリーの新鮮な展望を提供している.
 『DSM-5 ケースファイル』 はある1つのカテゴリーに含まれている疾患の診断基準の実例を示す,さまざまな患者症例を示すものである.『DSM-5 ケースファイル』は,教員,学生,臨床家にとって,DSM-5を生きたものに変える.この本は,症状,重症度,併存症,発症年齢と進展,各疾患にまたがるディメンション,さらに性別や文化的背景を含んで読者が診断概念の理解を深めることに役立つ.
 『DSM-5 診断トレーニングブック』 に収められた演習問題は,DSM-5への概念的変更,診断に関する特定の変更,および診断基準について,読者の知識をテストするよう執筆されている.各問題には短い解答があり,各々の正答の根拠を説明しており,診断分類,一組の基準,診断,コード,重症度,文化,年齢,性別についての重要な情報を含んでいる.これらの問題はさまざまな試験の準備に役立つ.
 このDSM-5セレクションズは抜粋をしたDSM-5や他の本の代わりになるよう意図したものではない.むしろ,このシリーズは,読者に特定の疾患カテゴリーに直接関連するよう選択された鍵となる資料を与えるものである.ある特定の疾患またはその疾患群のカテゴリーについて,読者が,より広い情報が必要だと感じた場合,American Psychiatric Publishing(APP)の出版物または臨床マニュアルを参照してほしい.APPの全出版物リストは www.appi.org で見ることができる.

 Robert E. Hales, M.D.
 Editor-in-Chief


はじめに
 神経発達症群の診断分類に含まれる疾患は,小児期または青年期に現れ,学校から一般社会までの状況にわたって正常な対人関係に重要な行動に悪い影響を与える.神経発達症群のいくつか,例えば知的能力障害は複数の領域に影響を及ぼすが,他の疾患,例えば限局性学習症や運動症では,その影響はより限定的である.これら疾患のいくつかの簡単な要約を示す.
 知的能力障害(知的発達症)は神経発達症の1つであって同じ年齢や性別および同じ言語と社会文化的背景をもつ仲間と比較して,知的能力および適応機能の両面での欠陥によって特徴づけられる.
 DSM-5のコミュニケーション症群という疾患分類は,1つの社会に共有されている言語的,非言語的,および他の図形的象徴システムを,受ける,送る,処理する,把握する子どもの能力に影響をもつ一連の障害である.社会的(語用論的)コミュニケーション症はDSM-5の新しいカテゴリーで,言語の語用論的側面に基本的困難をもつ子どもたちのことである.
 自閉スペクトラム症は,DSM-IV-TRで分けられていた以下の疾患が今回,1つの疾患にまとめられた:すなわち,自閉性障害,アスペルガー障害,小児期崩壊性障害,および特定不能の広汎性発達障害(非定型自閉症を含む)である.自閉症は,本来,まれなものであると思われていたが,米国における有病率は現在88人に1人と見積もられている.
 注意欠如・多動症は,発達的に不適切な持続性の問題,つまり不注意および/または過剰な運動性不穏および/または衝動性が機能するうえでの妨げとなっていることによって特徴づけられる.子どもの6~7%が注意欠如・多動症の基準を満たす症状をもっていると見積もられ,成人の約5%もこの疾患に罹っているかもしれない.
 限局性学習症は読むこと,書くこと,または算数/数学的推論に持続的困難のあることが必要であり,発達期に現れ学業成績,職業機能,または日常生活に有意の負の影響を及ぼす.常同運動症は無目的に起こる反復性行動で,それらが意味のある苦痛と障害を伴うということで特徴づけられた病態である.チック障害にはいくつかの診断カテゴリーがある:トゥレット症の診断は1%未満と見積もられるが,慢性チック疾患群についての診断はより多い.
 神経発達症群のカテゴリーのいくつかについての短い記述からわかるように,これらの疾患の正確な診断には,系統的で完全な評価および,しばしば,信頼性と妥当性のある診断用具を用いることが必要である.このセレクションズでは,これら診断カテゴリーの各々について,DSM-5に書かれている詳細が用いられている.このシリーズでは,また,適切な診断の決定のための指針となり,サービスの提供者の知識をテストする資料も示すこととし,さらに,これら一連の疾患の主な特徴に光を当てるような症例要約を示すこととする.

DSM-IV-TRからDSM-5への変更の要点
 DSM-IVの診断基準と本文に加えられた変更は,DSM-5の分類にあげられた順にしたがって概説される.これは完全な指針ではなく,本文および用語の小変更はここに書かれていない.また,DSM-5第I部にはDSM-5の章の構成に加えられた変更,多軸評定,および,ディメンション方式の評定(第III部の)の紹介の記述があることも注意すべきである.

用語
 一般の医学的疾患という用語はDSM-5では,すべての疾患にわたって関連する箇所で他の医学的疾患に置き換えられている.

知的能力障害(知的発達症)
 知的能力障害(知的発達症)の診断基準では,認知的能力(IQ)と適応機能の両方の評価が必要であることが強調される.重症度はIQ得点よりも適応機能によって決定される.精神遅滞という用語がDSM-IVで使用された.しかし,知的能力障害という用語がこの20年の間に医学,教育学および他の専門家の間で,さらに一般大衆やその擁護団体によっても,一般的に使用されるに至っている.さらに,米国の連邦制定法(公法111-256,ローザ法)では,精神遅滞という用語を知的能力障害に改訂した.名称の変更にもかかわらず,発達期に始まる認知能力の欠陥とそれに付随する診断基準は,1つの精神疾患を構成すると考えられている.知的発達症という用語は,WHOの分類方式を反映して,かっこ内に記されており,国際疾患分類(ICD:第11改正,ICD-11は2017年以降に発刊される予定)では,障害を使用しており,すべての能力障害は,機能,障害,健康の国際分類(ICF)に基づいている.ICD-11は数年間は採用されない予定なので,知的能力障害が今日好ましい用語として選ばれ,かっこ内に将来へのつなぎ用語として付記された.

コミュニケーション症群
 DSM-5のコミュニケーション症群には言語症(DSM-IVの表出性言語障害と受容-表出混合性言語障害を合わせたもの),語音症(音韻障害に対する新しい名称),および小児期発症流暢症(吃音)が含まれる.さらに社会的(語用論的)コミュニケーション症という言語的および非言語的コミュニケーションの社会的使用における持続的困難という新しい疾患も含まれている.社会的コミュニケーションの欠陥は自閉スペクトラム症(ASD)の1つの構成要素であるので,社会的(語用論的)コミュニケーション症は制限された反復的な行動,関心,活動の存在下では,診断することができないことに注意するのが重要である.DSM-IVの特定不能の広汎性発達障害の診断を持つ患者の中の幾人かは,症状が社会的(語用論的)コミュニケーション症のDSM-5基準を満たすかもしれない.

自閉スペクトラム症
 自閉スペクトラム症はDSM-5での新しい名称であり,以前の別個の疾患4つは実際には,2つの中核的な領域における症状の重症度の異なったレベルにある1つの病態であるという科学的合意を反映している.自閉スペクトラム症は現在,以前のDSM-IVの自閉性障害,アスペルガー障害,小児期崩壊性障害,特定不能の広汎性発達障害(非定型自閉症を含む)のすべてを包括している.自閉スペクトラム症には次のような特徴がある
 1)社会的コミュニケーションと社会的対人関係の欠陥
 2)制限された,反復性の行動,関心,および活動(RRBs)
 2つの要素は自閉スペクトラム症の診断に必要であり,RRBsが存在しない場合は社会的(語用論的)コミュニケーション症と診断される.

注意欠如・多動症
 注意欠如・多動症の診断基準はDSM-IVのそれと類似している.DSM-IVと同一の18症状が使用され,それらは,引き続き2つの症状領域に分けられ(不注意と多動性/衝動性),1つの領域には少なくとも6つの症状がその診断に必要である.しかし,DSM-5ではいくつかの変更がなされた.
1)生涯を通して適用されることを促進するよう,その基準には例が追加された
2)各状況における「いくつかの」症状についてはすべての状況にわたって必要であることが強調された
3)発症の基準が「障害を起こした症状は7歳以前に存在していた」から「不注意または多動性/衝動性の症状のいくつかが12歳になる前から存在していた」に変更された
4)下位分類は従来の下位分類を直接区分して示すような表現型の特定用語に置き換えられた
5)自閉スペクトラム症の併存診断が許容された
6)症状の閾値は,成人用では,臨床的に意味のある注意欠如・多動症のはっきりした証拠を反映して,不注意についても多動性/衝動性についても,若年者には6つである代わりに5つの症状が注意欠如・多動症に必要であると変更された
 最後に,注意欠如・多動症は,脳の発達が注意欠如・多動症と相関しており,「通常,幼児期,小児期,または青年期に初めて診断される障害」のすべての診断を含むDSM-IVの章をDSM-5では廃止する決定を反映するよう,神経発達症群の章のなかに位置づけられている.

限局性学習症
 限局性学習症は,DSM-IVの読字障害,算数障害,書字表出障害,特定不能の学習障害の診断を合わせたものである.読字,書字表出,算数の領域における学習上の欠陥はともに起こるのが一般的であるので,各領域における欠陥の型についての特定用語のコードが含まれている.読字の欠陥の特定の型は国際的には失読症,算数の欠陥の特定の型は失算症と,さまざまに記述されている.

運動症群
 以下の各運動症がDSM-5の神経発達症群の章に含まれている:発達性協調運動症,常同運動症,トゥレット症,持続性(慢性)運動または音声チック症,暫定的チック症,他の特定されるチック症,および特定不能のチック症である.チックの基準はこの章のこれらの疾患を通して標準化された.常同運動症はより明確に身体に集中した反復性の行動障害から鑑別されたが,後者はDSM-5の「強迫症および関連症群」の章で説明されている.


Abbeduto L, Ozonoff S, Thurman AJ, et al.: “Neurodevelopmental Disorders,” in The American Psychiatric Publishing Textbook of Psychiatry, 6th Edition. Edited by Hales RE, Yudofsky SC, Roberts LW. Washington, DC, American Psychiatric Publishing, 2014, pp. 229-272より許可を得て改変転載

開く

DSM-5セレクションズへの序
はじめに

第1章 DSM-5診断基準とその解説
『DSM-5精神疾患の診断・統計マニュアル』より
 知的能力障害群
   知的能力障害(知的発達症/知的発達障害)
   全般的発達遅延
   特定不能の知的能力障害(特定不能の知的発達症/特定不能の知的発達障害)
 コミュニケーション症群/コミュニケーション障害群
   言語症/言語障害
   語音症/語音障害
   小児期発症流暢症(吃音)/小児期発症流暢障害(吃音)
   社会的(語用論的)コミュニケーション症/社会的(語用論的)コミュニケーション障害
   特定不能のコミュニケーション症/特定不能のコミュニケーション障害
 自閉スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害
   自閉スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害
 注意欠如・多動症/注意欠如・多動性障害
   注意欠如・多動症/注意欠如・多動性障害
   他の特定される注意欠如・多動症/他の特定される注意欠如・多動性障害
   特定不能の注意欠如・多動症/特定不能の注意欠如・多動性障害
 限局性学習症/限局性学習障害
   限局性学習症/限局性学習障害
 運動症群/運動障害群
   発達性協調運動症/発達性協調運動障害
   常同運動症/常同運動障害
   チック症群/チック障害群
   他の特定されるチック症/他の特定されるチック障害
   特定不能のチック症/特定不能のチック障害
 他の神経発達症群/他の神経発達障害群
   他の特定される神経発達症/他の特定される神経発達障害
   特定不能の神経発達症/特定不能の神経発達障害

第2章 診断基準を使いこなすための指針
『DSM-5ガイドブック-診断基準を使いこなすための指針』より
 知的能力障害群
   知的能力障害(知的発達症/知的発達障害)
   全般的発達遅延
   特定不能の知的能力障害(特定不能の知的発達症/特定不能の知的発達障害)
 コミュニケーション症群/コミュニケーション障害群
   言語症/言語障害
   語音症/語音障害
   小児期発症流暢症(吃音)/小児期発症流暢障害(吃音)
   社会的(語用論的)コミュニケーション症/社会的(語用論的)コミュニケーション障害
   特定不能のコミュニケーション症/特定不能のコミュニケーション障害
 自閉スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害
   自閉スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害
 注意欠如・多動症/注意欠如・多動性障害
   注意欠如・多動症/注意欠如・多動性障害
   他の特定される注意欠如・多動症/他の特定される注意欠如・多動性障害,
    特定不能の注意欠如・多動症/特定不能の注意欠如・多動性障害
 限局性学習症/限局性学習障害
   限局性学習症/限局性学習障害
 運動症群/運動障害群
   発達性協調運動症/発達性協調運動障害
   常同運動症/常同運動障害
   チック症群/チック障害群
   トゥレット症/トゥレット障害
   持続性(慢性)運動または音声チック症/持続性(慢性)運動または音声チック障害
   暫定的チック症/暫定的チック障害
   他の特定されるチック症/他の特定されるチック障害,
    特定不能のチック症/特定不能のチック障害
 他の神経発達症群/他の神経発達障害群
   他の特定される神経発達症/他の特定される神経発達障害,
    特定不能の神経発達症/特定不能の神経発達障害
   Key Points

第3章 症例集
『DSM-5ケースファイル』より
   イントロダクション
   CASE 1 自閉症に関するセカンドオピニオン
   CASE 2 かんしゃく気質
   CASE 3 学習困難
   CASE 4 学校での問題
   CASE 5 落ち着きがなく,注意散漫

第4章 演習問題
『DSM-5診断トレーニングブック-診断基準を使いこなすための演習問題500』より
   問題編
   解答編

索引

  • 更新情報はありません。
    お気に入り商品に追加すると、この商品の更新情報や関連情報などをマイページでお知らせいたします。