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肝胆膵高難度外科手術 第2版

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日本肝胆膵外科学会の認定する「高度技能専門医」取得を目指す医師、高度技能指導医、および修練施設に向けた学会編集のオフィシャルテキストブック。肝胆膵外科に携わる外科医は、本書を参考に普遍的視点から見た安全性・確実性を伴った手術手技を習得し、修練施設において指導医の元で充分な修練をして専門医取得を目指していただきたい。患者の信頼に足る技量を持つ肝胆膵外科医の誕生を切に願って。
編集 日本肝胆膵外科学会高度技能専門医制度委員会
発行 2016年11月判型:B5頁:368
ISBN 978-4-260-02792-2
定価 11,000円 (本体10,000円+税)
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第2版 序(宮崎 勝)

 日本肝胆膵高度技能専門医制度が2011年に始まって,今年で早6年目を迎えます。この間,この厳しい専門医試験を合格して高度技能専門医を取得された方は,現在185名に上ります。初年度2011年の申請者(受験者)は16名でしたが,ここ2年間は各74名となっており,合格率は初年度75%であったものが昨年度は56%と厳しい合格率となってきています。これまで294名が申請して平均合格率は63%であり,もちろん外科専門医合格率81.3%,消化器外科専門医合格率75.6%を考慮すると,この日本肝胆膵外科学会の高度技能専門医の取得がいかに難関であり,取得したものにとって価値あるものであるかがお分かりになることでしょう。
 本学会の高度技能専門医受験者は,日本外科学会専門医および日本消化器外科専門医を取得しているものでないと受験資格が与えられていないことより,現状の合格者数より概算すると日本外科専門医を取得した外科医のうちのわずか4.9%の外科医がこの肝胆膵外科高度技能専門医を取得できるということになります。
 現在,学会認定されている修練施設はその高難度肝胆膵外科手術症例数によってA施設とB施設に区分されておりますが,それぞれ111施設と107施設の合計218施設が全国にあります。その修練施設には当然指導医がおり現在642名の指導医が存在しています。これら修練施設は常に学会によりその手術実績を監査されており,症例数が十分であってもその内容において問題がないかを常に評価されている仕組みとなっており,問題がある施設には学会からの指導が行われたり,時に認定施設の取り消しがなされるという厳しいものです。このような学会の本制度における透明性の高さおよび質保障の高さは,手術を受けられる患者さんに高い信頼度を与えているはずです。またご存知のように,この日本肝胆膵外科学会高度技能専門医は他の外科系専門医とは異なり外科手術手技のレベルを厳しく評価し認定しているものであり,患者さんがこの資格をもった肝胆膵外科医に安心して肝胆膵外科手術を委ねていくことができるという信頼を本学会が保障しているものであります。
 是非肝胆膵外科に携わる外科医は本書を参考に,しっかりとした普遍的視点から見た安全性・確実性を伴った手術手技を勉強し,指導施設において指導医の元で十分に修練し,高度技能専門医取得を目指して欲しいものです。そしてその結果,本邦において外科医としての十分な知識および高い見識と共に,十分な技量を持ち合わせた多くの肝胆膵外科医が誕生してくれることを切に願うものであります。肝胆膵疾患に悩んでいる多くの患者さんのために,本書の意義を十分にくんでしっかりとした修練を行っていってくれることを期待して,新たに改訂した肝胆膵高難度外科手術書である本書をここに送り出したいと思います。

 2016年9月
 日本肝胆膵外科学会 名誉理事長
 宮崎 勝

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I 肝胆膵の外科解剖
 [1]肝臓
     従来の肝解剖
     肝の外科解剖
  FOCUS グリソン鞘とレネック被膜
 [2]胆管
     胆管の合流形態の把握
     胆管,肝動脈,門脈の立体的な位置関係
 [3]膵臓
     膵の解剖における癒合筋膜
     膵の動脈
     膵の静脈
     膵頭神経叢
  FOCUS Treitz靱帯

II 基本手技
 [1]肝門部脈管処理
   A 肝門部グリソン鞘一括処理
     基本的外科解剖とterminology
     手術手順
   B 個別処理
     肝門部個別処理による肝葉切除
     Pringle法
     胆嚢摘出
     肝動脈剥離,テーピングおよび切離
     門脈剥離,テーピングおよび切離
     胆管
 [2]肝切除における血行動態およびハンギング法・肝授動
     肝切除における血行動態
     肝臓ハンギング法(hanging maneuver)
     肝授動
 [3]肝切離(ペアン法,CUSA®
     肝実質破砕の基本手技
     ペアン法
     CUSA® による実質破砕法
  FOCUS 肝機能評価
 [4]肝静脈の処理・下大静脈切除再建
     肝静脈の処理
     下大静脈の合併切除・再建
 [5]膵切離
     トンネリング
     膵の切離と止血
     膵体尾部切除術における膵切離
     門脈直上以外での膵切離
 [6]門脈切除再建
     術前の準備
     門脈切断
     端々吻合
     グラフト再建
     脾静脈・分枝の取扱い
     吻合の終了,術後管理
 [7]膵消化管吻合
   A 膵胃吻合
     内ステント留置を伴う膵管胃粘膜吻合術
     膵切離
     膵胃吻合時の患者体位
     胃粘膜ポケットの作成
     残膵腹側の膵実質胃漿膜筋層縫合
     膵管胃粘膜吻合
     膵背側の膵実質胃漿膜筋層吻合
     ドレーン留置・管理
   B 膵腸吻合
    B1 no stent法
     no stent法
     no stent法の実際
    B2 stent法
     手技の実際
     エビデンス
 [8]胆道再建
     胆管の切離
     小腸の作成
     吻合
     胆汁外瘻チューブ
     挙上空腸の固定
  コラム 肝胆膵外科高度技能専門医にまつわること

III 基本手術
 [1]右肝切除
   A 前方アプローチ
     前方アプローチとは
     皮膚切開と開腹法
     肝円索~肝鎌状間膜剥離
     流入脈管の処理
     血流コントロール法
     肝実質離断
     肝静脈損傷時の対応
     右肝静脈の処理
     間膜処理から標本摘出
     標本摘出後に
   B 右開胸開腹アプローチ
     右開胸開腹アプローチの適応
     右開胸開腹アプローチの実際
     術中超音波
     肝授動
     肝門処理
     右肝授動と右肝静脈の切離
     肝実質離断
     止血,胆汁リークテスト,洗浄
     閉胸閉腹
 [2]左肝切除
     皮膚切開・開腹
     肝門操作
     肝授動
     肝マーキング
     肝離断
     肝静脈切離
     止血・閉創
 [3]肝区域切除(前区域・後区域・内側区域・中央二区域)
     肝区域切除術
     前区域切除術
     後区域切除術
     内側区域切除
     中央二区域切除
 [4]尾状葉切除
     尾状葉切除の手順
 [5]胆道再建を伴う肝切除・尾状葉切除
   A 左肝切除(左三区域を含む)
     適応
     手術手技
   B 右肝切除(右三区域を含む)
     適応
     術前門脈塞栓術
     胆道再建を伴う右肝切除+尾状葉切除
     胆道再建を伴う右三区域切除+尾状葉切除
  FOCUS 肝胆道癌(胆道癌,原発性肝癌,転移性肝癌)の手術適応
 [6]膵頭十二指腸切除術
     膵頭十二指腸切除術の適応と切除範囲
     膵頭十二指腸切除術
 [7]膵体尾部切除術(腹腔動脈合併切除を含む)
     膵体尾部切除術の適応と切除範囲
     手術の実際
  FOCUS 膵癌の手術適応
 [8]胆嚢癌に対する肝切除・胆管切除再建
     適応
     肝S4a+S5切除
  FOCUS HPDの手術適応
 [9]生体肝移植
   A ドナー左肝切除
     腹腔鏡補助下左肝切除
   B ドナー右肝切除
     開腹
     右副腎の剥離
     短肝静脈と右下大静脈靱帯の剥離
     右下大静脈靱帯の剥離
     肝十二指腸靱帯・肝門部の剥離
     肝実質切離
     肝門板の切離
     グラフトの摘出
   C 生体部分肝移植手術レシピエントの手術手技
     手術手技の実際
 [10]膵臓移植
     脳死(心停止)膵臓移植
  FOCUS 生体膵臓移植

IV 腹腔鏡下肝膵切除
 [1]腹腔鏡下肝切除
     適応と術式
     手術器具の準備
     基本的手術手技
 [2]腹腔鏡下尾側膵切除術
     適応
     体位と器具の配置
     ポート位置
     手術の手順
     手技の実際
  FOCUS 腹腔鏡下膵頭十二指腸手術
  コラム 高度技能専門医申請ビデオ作成のコツとその重要性

V ロボット支援による腹腔鏡下胆膵手術
 [1]ロボット支援による腹腔鏡下胆膵手術
     ロボット支援手術
     腹腔鏡下手術支援ロボット
     手術適応
     手技

付録
 [1]新しい術式を行う際の留意点(倫理的側面も含めて)
     保険収載されていない新たな術式を行う際の留意点
     腹腔鏡下肝・膵切除を行う際に遵守しなければならないこと
     日本肝胆膵外科学会高度技能専門医や日本内視鏡外科学会
      技術認定医取得に向けた研究活動における倫理的配慮
 [2]肝胆膵外科における腹腔鏡下手術:腹腔鏡下手術の特殊性と安全性
     腹腔鏡下肝切除術
     腹腔鏡下膵頭十二指腸切除術
     腹腔鏡下肝切除の保険収載:コンセンサス会議と前向き全例登録制度
     腹腔鏡下手術の特殊性
     腹腔鏡下手術の安全性
 [3]手術記録の書き方
     手術記録の内訳
     スケッチの実際
 [4]ビデオの上手な撮り方
     カメラワーク
     術者・助手の区別
     見せる意識
     まとめ
 [5]NCDからみた肝胆膵高難度手術
     専門医修練施設認定および専門医・指導医の関与の有無と手術成績の比較
     教育施設としての修練施設と今後検討すべきこと
  コラム 高度技能専門医申請ビデオの撮影にあたって


索引

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指導方法についても記載された座右に置くべき必読の書
書評者: 平田 公一 (JR札幌病院顧問)
 評者は,外科専門医取得者の約5%弱の外科医が肝胆膵外科高度技能専門医取得者という現状を,なんとか10%にしていただきたいと願う一人である。他に類を見ない徹底した認定制度-国民に説明責任を果たせる正確で厳しい制度として確立し,その制度の運用においても確かな検証業務が実施されていることが,最も厳しい制度との評判を呼んでいるゆえんであろう。したがって,周りの誰もが「あの先生は,確かに!」と頷く方が取得しているはずである。

 評者もこの制度に若干なりともかかわらせていただいてきた。その経験からこれからの新規申請者,更新予定者にあえて述べたい。これまで,誰もが確かな肝胆膵外科の専門と認める医師であれば,彼らの手術記事を拝見すると,経験者である者としては「さすがである」あるいは「お主,やるな!」と感じる記載が随所にうかがわれるものであった。達成過程上の個別的特性,共通の課題点・困難点への対応,想定外操作対応の記載などにおいて先を見据え焦点を押さえた記載内容となっている。記載文のみならず,適切な図の多用と図内解説を加える姿勢については,それだけで“専門性の高さ”と“人柄の確かさ”をうかがい知ることができる。

 コピペ技術高度技能(?)を有する手術記載をする申請者がほどなく生じるのではないかとの気配を感じた時期に危機感を覚え,消化器外科専門誌と評される某商業誌において,(1)コピペ技能の応用は研究書類においては科学者にあっては禁止行為として定められていること,(2)必須となる手術記載内容をいかに記載すべきか,を紹介した膨大な特集を組んだことがあった。その特集号を持参し,ある専門医制度のサイトビジット時に合格予定者に見せて「君の手術書の記載と比較し,帰りまでに感ずることを聞かせてほしい」と問うたものであった。いわゆる賢い答えは決まってはいたのだが。ただ,中には訪問を終えしばらく経てから,「先生の訪問以降は,手術記載をこうしています。特集号を座右の書としています」と,個人情報を伏せた肝胆膵高難度手術記録を多数入れた書留を頂けることもあった。もちろん,返信用書留を同封していた。本人の感性の素晴らしさに,うれしさを隠しえなかったものである。この場合は,当該施設の慣例・指導者資質が問われる事例であった。制度発足と相まって日本肝胆膵外科学会から本書の初版が刊行され,2016年9月に改訂されて第2版を今日目にすることができる。お持ちであろうか?

 肝胆膵に限らず,手術が上手になるための条件を読み取れる書である。熟読すると,人間性溢れる精緻な判断力,学習力,誰もが悩む感性の限界の打破を教わることとなる。また,指導者にあっては何をすべきかを具体的に記載指導として,あるいは指導方法についても提示されている。肝胆膵の領域を超えての指導書として,誰もが座右に置くべき必読の書であると申し上げたい。
専門医をめざす医師・指導医・修練施設に必須の書
書評者: 橋爪 誠 (九大大学院教授・先端医療医学)
 本書は,日本肝胆膵外科学会高度技能専門医制度委員会編集によるプロフェッショナル育成のための書です。肝胆膵外科の高度技能専門医をめざす医師はもちろんのこと,指導医や修練施設には必須の書です。本書は,肝胆膵外科領域のわが国を代表するリーダーらによって執筆されており,「安全かつ確実に高難度の肝胆膵外科手術を行い得る外科医を育てること」を目的としています。著者らは,単に世界最高の技術認定制度をつくっただけでなく,専門医をめざす外科医にエビデンスに基づいた世界最新の知識と技術を修得してもらうために本書をつくり,その随所で理解度を高めるための工夫が凝らしてあります。

 まず,手術に臨むに当たり,術者は術前にイメージトレーニングをして,対象臓器の血管支配など,標的部位の立体構築が目に浮かぶくらい周到に準備することが必要です。本書では,「Ⅰ.外科解剖」に多くのページが割かれており,対象臓器の立体的把握を大いに支援してくれます。「Ⅱ.基本手技」においても多くのシェーマを使って手術手技が解説されており,順を追って術野が展開し,目前に出てくる血管や組織の解剖学的名称が詳細に記載してあるので,理解しやすいこと間違いなしです。各テーマの最初にある「重要ポイント」や最後の「Dos & Don'ts」では,世界最高レベルのリーダーならではの,最も注意すべきポイントが端的に記されており,知っておくと便利です。

 また肝胆膵外科における最新の腹腔鏡下外科手術手技やロボット支援による腹腔鏡下手術操作に対する考え方,付録の倫理的側面での留意点は,専門医としてぜひ知っておかねばならないことです。皆さまには術者の心得として最初に読まれることをお薦めします。

 さらに「コラム」には,高度技能専門医申請に関する体験談が掲載されており,実際に審査を受けた先輩の意見はとても参考になります。入局時に,厳しく指導された手術記録の書き方が,自分自身の修練と手術手技のマスターに大いに役立ったことを考えると,自分の手術をビデオ収録し,術後にビデオを見返しながら再度本書でチェックすると,手術の反省ができるとともに,皆さまのさらなる手術技術の向上に必ずや役立つものと思います。

 本書は,自分の腕を磨き,一人でも多くの患者さんによい医療を届けたいと願っている外科医の皆さまにぜひお薦めしたい書です。

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