臨床薬理学

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  • 薬理学や、成人看護学をはじめとした専門科目で学んだ知識を振り返りながら、臨床につながる実用的な薬物治療の基本について学ぶテキストです。
  • 第1章では、薬物治療に関する基本用語、間違えやすい医薬品、薬物治療の流れ、薬物治療における看護師の役割、インシデント例など、臨床に出る前に必ず押さえておきたい薬物治療の基礎知識をまとめました。
  • 第2、3章では、主要な症状・疾患ごとに薬物治療の実際を学びます。各症状・疾患の病態・原因・症状の解説のあと、病態に応じた薬物治療の方針と目的、よく処方される重要薬について、具体的な処方例を取り上げながら解説します。さらに、より安全で効果的な薬物治療のために看護師が知っておくべき項目として、服薬指導のポイント、薬物の投与前・投与中・投与後で確認・留意すべき事項、副作用とその徴候などについて、まとめてあります。
  • 第4章では、特定行為研修制度を参考に、薬物治療に関する看護について事例をもとに取り上げます。看護が必要となる病態、重要薬の作用機序、看護師が薬物の投与を行ったり投与量の調整を行ったりする際の具体的な留意点、重篤な副作用について、より実践的に学べる内容となっています。
  • 「系統看護学講座/系看」は株式会社医学書院の登録商標です。

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はしがき

 看護職にとって「与薬」が重要な責務の一つであることは論を俟〈ま〉たない。しかし,看護師のヒヤリハット事象の最多数が「誤薬」であることもまた事実である。この事態に看護職はもちろんのこと,施設の安全管理者も手をこまねいているわけではなく,さまざまな医療安全対策を講じている。
 一方で,教育での取り組みはどうであろうか。看護基礎教育において「与薬」は主に基礎看護学(基礎看護技術)で取り扱われるが,そこで教授されるのは主として「与薬方法」,つまり「どのような手順と方法で薬剤を投与するか」であり,「与薬内容」,すなわち「どのような薬剤を投与するか」ということについては,薬理学や成人看護学などの各領域での学習に期待されているのが実情であろう。これらに昨今の医薬品の多様さと薬物治療の複雑さが相まって,「与薬」教育の難しさは増すばかりである。
 ところで看護教員としてこのような物言いは不謹慎かもしれないが,現状の看護教育での「薬理学」と,臨床現場との乖離〈かいり〉,誤解を恐れずに言えば,「薬理学」が日常の看護実践に役立ちにくいことを常々感じていた。ここで言いたいことは現在の「薬理学」教育の否定ではなく,製品化された薬剤を扱う臨床現場で通用する知識と技術の不足,つまり基礎と臨床を繋〈つな〉ぐ別科目,「看護臨床薬理学」の不在である。
 折しも5年にわたる論議の末,2015(平成27)年より特定行為研修制度がスタートし,特定行為には薬剤投与に関するものも含まれることとなった。特定行為は研修を受けた看護師が手順書に従って実施するものであるが,医師の個別・具体的指示があれば研修を受けていない看護師が実施する状況も十分にありうる。本書の発行はこの特定行為にまつわる論議に触発されたことは事実であるが,その通底には上記のような,看護教育における「臨床薬理学」不在の認識があった。このような背景のもとで作成した企画趣旨に対して,多くの医学,薬理学の専門家があやふやな概念の具現化に手を貸してくださったことで,本書は日の目を見ることができた。
 以上のような経緯から,本書では各章に先立つ序章を設け,「臨床薬理学と看護師」と題して薬物治療における看護師の役割とその拡大について,編者の立場から改めて述べた。また,全章にわたってよりプラクティカルな視点を意識し,臨床看護実践に役立つよう,以下のように構成した。
 第1章では,「薬物治療の基礎」として医薬品の取り扱いの基礎と薬物治療の全般について,第2章では看護職が遭遇する機会の多い「対症療法薬の臨床薬理学」を,第3章では「主要疾患の臨床薬理学」として代表的な20疾患を取り上げて解説している。そして第4章では,「特定の行為に関する臨床薬理学」として,看護師の役割の拡大に伴う与薬行為のあり方を具体的に展開するため,特定行為に選定されている薬剤関連項目を例に解説を試みている。特に第4章の執筆者は,特定行為研修のテキストとの違いに苦慮されたようであるが,常に「すべての看護師が身につけておくべき薬剤の知識と技術」ならびに「看護基礎教育から始める臨床薬理学」を念頭に,「看護師の“与薬”行為に関して一歩先を行く看護学成書でありたい」との思いを伝えて執筆に挑んでいただき,繰り返し追記や調整をお願いした。
 結果として本書は,基礎教育はもとより,卒後・継続教育にも役立つものとなったと密〈ひそ〉かに自負している。そして編者のさらなる願いは,看護学生から新人看護師,そしてベテラン看護師の域に達しても,本書が常に臨床看護師の側にあって繙〈ひもと〉いてもらえる図書となることである。「与薬」に関する看護職の役割の拡大によって,今以上の安全・安心な医療はもちろんのこと,患者の生活や思いに沿った「与薬」,さらには患者主体の服薬行動の育成も目指していきたい。
 編集過程では,看護師の与薬行為を意識するという困難な執筆作業を引き受けてくださった各領域の第一人者の方々の存在が極めて大きかった。編者を代表してここに謝意を表する次第である。
 2016年11月
 編者を代表して 井上智子

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序章 臨床薬理学と看護師 (井上智子)

第1章 薬物治療の基礎 (川上純一・堀雄史)
 A 医薬品の取り扱い
  1 医薬品の基礎知識
  2 医薬品の体内動態と薬物相互作用
  3 医薬品の処方と調剤
  4 医薬品の適正使用と情報の活用
 B 薬物治療の実際
  1 患者と薬物治療
  2 薬物治療の評価
  3 安全管理
 C チーム医療と薬物治療
  1 医療機関におけるチーム医療
  2 地域におけるチーム医療

第2章 対症療法薬の臨床薬理学 (大谷典生・井上泉・角勇樹・木村元紀)
 A 解熱・鎮痛薬
  1 疼痛とは
  2 解熱鎮痛薬の種類
  3 薬物療法の基本
  4 薬物療法における看護師の役割
 B 制吐薬
  1 悪心・嘔吐の病態と分類
  2 薬物療法の基本
  3 薬物療法における看護師の役割
 C 便秘治療薬
  1 便秘の病態と分類
  2 薬物療法の基本
  3 薬物療法における看護師の役割
 D 下痢治療薬
  1 下痢の病態と分類
  2 薬物療法の基本
  3 薬物療法における看護師の役割
 E 鎮咳・去痰薬
  1 咳・喀痰の病態と分類
  2 薬物療法の基本
  3 薬物療法における看護師の役割
 F 鎮静薬
  1 鎮静薬を必要とする病態
  2 薬物療法の基本
  3 薬物療法における看護師の役割
 G 睡眠薬
  1 睡眠障害の病態と症状
  2 薬物療法の基本
  3 薬物療法における看護師の役割

第3章 主要疾患の臨床薬理学 (笹野哲郎・小山高敏・角勇樹・前北隆雄・朝比奈靖浩・
 菅野義彦・土居健太郎・窪田哲朗・赤座実穂・織田健司・原恵子)
 *疾患ごとに 1 病態と症状 2 薬物療法の基本 3 薬物療法における看護師の役割 の項が並びます。

 A 高血圧症
 B 急性冠症候群
 C 心不全
 D 不整脈
 E 抗血小板・抗凝固療法
 F 気管支喘息
 G 慢性閉塞性肺疾患(COPD)
 H 胃・十二指腸潰瘍
 I 胃食道逆流症
 J 慢性肝炎
 K 慢性腎臓病(CKD)
 L 透析患者における薬剤管理
 M 糖尿病
 N 脂質異常症
 O 骨粗鬆症
 P 関節リウマチ
 Q パーキンソン病
 R 認知症(アルツハイマー病)
 S うつ病・うつ状態
 T てんかん

第4章 特定の行為に関する臨床薬理学 (宮内克己・宮崎哲朗・高須清・前北隆雄・
 土居健太郎・太田克也・宮島美穂・原恵子・小池竜司・窪田哲朗・中根実・橋本学・大谷典生)

 A 循環動態にかかわる持続点滴中の薬剤の投与と調整
  1 循環動態にかかわる持続点滴が必要な病態
  2 持続点滴中のカテコールアミンの投与量の調整
  3 持続点滴中の降圧薬の投与量の調整
  4 持続点滴中の利尿薬の投与量の調整
  5 持続点滴中の糖質・電解質輸液の投与量の調整
 B 栄養及び水分管理にかかわる薬剤の投与と調整
  1 脱水症状に対する輸液による補正
  2 持続点滴中の高カロリー輸液の投与量の調整
 C インスリンの投与量の調整
 D 精神及び神経症状にかかわる薬剤の投与と調整
  1 精神および神経症状にかかわる薬物
  2 抗精神病薬の臨時投与
  3 抗不安薬の臨時投与
  4 抗けいれん薬の臨時投与
 E 感染徴候がある者に対する薬物の臨時投与
 F 副腎皮質ステロイド薬による治療
  1 副腎皮質ステロイド薬の基礎知識
  2 抗がん薬が血管外に漏出したときの副腎皮質ステロイド薬の局所注射
   および投与量の調整
 G 術後ならびに呼吸管理にかかわる薬物の投与と調整
  1 硬膜外カテーテルによる鎮痛薬の投与と投与量の調整
  2 人工呼吸管理中の患者に対する鎮静薬投与量の調整

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