腎機能に応じた投与戦略
重篤な副作用の防ぎかた
腎機能評価と薬の特徴から読み解く、上手な薬の使いかた
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重篤な副作用を回避するために医師、薬剤師が知っておきたいキーワード、考え方、計算式を、症例をあげながら具体的に解説。NSAIDs、β遮断薬、スタチン、抗菌薬など、処方頻度の高い薬のリスクと注意ポイントについて、実践的な情報を記載した。腎機能を正しく評価するための「10の鉄則」と、圧倒的な情報量の「腎機能別薬剤投与量一覧表」を収載! 上手な薬の使いかたを導く。
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- 目次
- 書評
序文
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序
「薬物療法をよりよくしたい」。簡単そうで非常にむつかしい命題です。薬物は肝代謝型薬物と腎排泄型薬物の2種類に分類されますが,前者の肝クリアランスの個人差は大きく,代謝酵素の遺伝子多型もあり,薬物投与設計に難渋します。しかし後者の腎排泄型薬物は,患者の腎機能と尿中活性体排泄率を正確に把握すれば,多くの場合,有効かつ安全な投与設計が可能です。このような投与設計技術を知っておけば,いわゆる医原病ともいうべき中毒性副作用や薬剤性腎障害を未然に防ぐことができます。ただしハイリスク薬であればわずかな腎機能の把握ミスによって重篤な副作用が起こりえます。カルボプラチン,TS-1,ダビガトランなどのハイリスク薬は患者の腎機能を正確に判断して薬物投与に臨む必要があります。
腎機能の評価がむつかしいと思われている1つの原因は,一般的に検査箋に記載されている体表面積補正eGFR(mL/min/1.73m2,CKDの重症度分類に用いる),薬物投与設計に用いる体表面積未補正eGFR(mL/min),今でも多くの病院検査室で測定されている体表面積補正CCr(mL/min/1.73m2)など,複数の指標があることです。感染症領域ではいまだに体表面積未補正CCr(mL/min)が使用されています。さらに血清クレアチニン測定法は海外の多くでJaffe法が用いられており,正確に測定される日本の酵素法と異なること,そしてシスタチンCまで出てくると,専門家でない限り混乱してしまうのはやむを得ないことかもしれません。
本書では,「検査箋に一般的に書かれており,皆さんが一番よく見かけるeGFR(mL/min/1.73m2)は基本的に薬物投与設計には用いない」「処方箋に書かれているCCrはJaffe法によるものと考えられるため,基本的にはわが国の酵素法によるCCrではなくGFRで対処すべき」というスタンスをとっています。
本書の第1章は,防げるはずだった中毒性副作用がなぜ起こったのか,そしてどのような対策をすれば有害反応を未然に防止できるのかについてのコツと理論から成り立っています。第2章は腎機能の正確な把握方法を理論的に解説しました。第3章は診療科別に腎機能に留意して投与しなければならない薬物について解説しました。診療科別に薬の基礎的なことも記載しましたが,それぞれの薬物を専門的に使用している先生にとってはレベルの低い内容で不適切な解説もあるかもしれませんが,腎機能低下時に注意すべき薬物については知っておいていただきたいことについて解説しました。第4章は腎機能の把握に関する簡便なまとめになっています。第5章は腎機能別の薬物至適用量を網羅したものですので,実臨床の場で活用していただければ幸いです。
筆者はこれまで薬剤師や看護師に向けて,腎臓病患者の薬物適正使用に関する書籍を数多く書いてきましたが,本書は初めて読者対象として医師を強く意識して書き上げました。できるだけどこから読んでも理解できるように心がけたため,一部くどいと感じる箇所もありますがご容赦ください。また,薬物に関する基本的な用語は薬学部で教育を受けた薬剤師は得意ですが,医師の中にはあまり馴染みのない方もいらっしゃるかもしれません。これらは「気になるワード」として簡潔に解説しましたので,ぜひご参照ください。
本書を執筆するにあたり,日本人向けeGFR推算式を作成した大阪大学大学院医学系研究科保健学専攻・堀尾勝先生(准教授)に貴重なご助言をいただきましたことを感謝しております。また,熊本大学医学部附属病院・腎臓内科の向山政志教授はいつも勉強会に誘っていただいていることから,本書では筆者の不得手な症例解説を中心に査読をお願いしました。ご多忙中にもかかわらず,すべての文章について目を通し,的確なコメントをお寄せいただいたことに感謝申し上げます。本書をきっかけに腎機能を考慮した薬物療法の理解が進み,ひいてはわが国の医療の質向上に寄与することができれば,筆者としてこれに勝る喜びはありません。
2016年10月吉日
熊本大学薬学部教授・臨床薬理学
平田純生
「薬物療法をよりよくしたい」。簡単そうで非常にむつかしい命題です。薬物は肝代謝型薬物と腎排泄型薬物の2種類に分類されますが,前者の肝クリアランスの個人差は大きく,代謝酵素の遺伝子多型もあり,薬物投与設計に難渋します。しかし後者の腎排泄型薬物は,患者の腎機能と尿中活性体排泄率を正確に把握すれば,多くの場合,有効かつ安全な投与設計が可能です。このような投与設計技術を知っておけば,いわゆる医原病ともいうべき中毒性副作用や薬剤性腎障害を未然に防ぐことができます。ただしハイリスク薬であればわずかな腎機能の把握ミスによって重篤な副作用が起こりえます。カルボプラチン,TS-1,ダビガトランなどのハイリスク薬は患者の腎機能を正確に判断して薬物投与に臨む必要があります。
腎機能の評価がむつかしいと思われている1つの原因は,一般的に検査箋に記載されている体表面積補正eGFR(mL/min/1.73m2,CKDの重症度分類に用いる),薬物投与設計に用いる体表面積未補正eGFR(mL/min),今でも多くの病院検査室で測定されている体表面積補正CCr(mL/min/1.73m2)など,複数の指標があることです。感染症領域ではいまだに体表面積未補正CCr(mL/min)が使用されています。さらに血清クレアチニン測定法は海外の多くでJaffe法が用いられており,正確に測定される日本の酵素法と異なること,そしてシスタチンCまで出てくると,専門家でない限り混乱してしまうのはやむを得ないことかもしれません。
本書では,「検査箋に一般的に書かれており,皆さんが一番よく見かけるeGFR(mL/min/1.73m2)は基本的に薬物投与設計には用いない」「処方箋に書かれているCCrはJaffe法によるものと考えられるため,基本的にはわが国の酵素法によるCCrではなくGFRで対処すべき」というスタンスをとっています。
本書の第1章は,防げるはずだった中毒性副作用がなぜ起こったのか,そしてどのような対策をすれば有害反応を未然に防止できるのかについてのコツと理論から成り立っています。第2章は腎機能の正確な把握方法を理論的に解説しました。第3章は診療科別に腎機能に留意して投与しなければならない薬物について解説しました。診療科別に薬の基礎的なことも記載しましたが,それぞれの薬物を専門的に使用している先生にとってはレベルの低い内容で不適切な解説もあるかもしれませんが,腎機能低下時に注意すべき薬物については知っておいていただきたいことについて解説しました。第4章は腎機能の把握に関する簡便なまとめになっています。第5章は腎機能別の薬物至適用量を網羅したものですので,実臨床の場で活用していただければ幸いです。
筆者はこれまで薬剤師や看護師に向けて,腎臓病患者の薬物適正使用に関する書籍を数多く書いてきましたが,本書は初めて読者対象として医師を強く意識して書き上げました。できるだけどこから読んでも理解できるように心がけたため,一部くどいと感じる箇所もありますがご容赦ください。また,薬物に関する基本的な用語は薬学部で教育を受けた薬剤師は得意ですが,医師の中にはあまり馴染みのない方もいらっしゃるかもしれません。これらは「気になるワード」として簡潔に解説しましたので,ぜひご参照ください。
本書を執筆するにあたり,日本人向けeGFR推算式を作成した大阪大学大学院医学系研究科保健学専攻・堀尾勝先生(准教授)に貴重なご助言をいただきましたことを感謝しております。また,熊本大学医学部附属病院・腎臓内科の向山政志教授はいつも勉強会に誘っていただいていることから,本書では筆者の不得手な症例解説を中心に査読をお願いしました。ご多忙中にもかかわらず,すべての文章について目を通し,的確なコメントをお寄せいただいたことに感謝申し上げます。本書をきっかけに腎機能を考慮した薬物療法の理解が進み,ひいてはわが国の医療の質向上に寄与することができれば,筆者としてこれに勝る喜びはありません。
2016年10月吉日
熊本大学薬学部教授・臨床薬理学
平田純生
目次
開く
第1章 この副作用,防げますか?
1 腎機能の低下した糖尿病患者で長引く致命的な低血糖→SU薬
2 出血による死亡は発売後半年で23例,この悪夢は肥満患者で繰り返される?
→ダビガトランエテキシラート(プラザキサ® )
3 腎機能正常の高齢者に起きた真夏の意識障害
→バラシクロビル(バルトレックス® )
4 コルヒチン服用の腎障害患者に併用すると生命を脅かす薬
→クラリスロマイシン(クラリス® ,クラリシッド® )
5 外用薬が原因で透析導入を要した急性腎不全
→マキサカルシトール(オキサロール® 軟膏)
6 まじめに服用し続けた患者を透析に追い込んだ薬→NSAIDs
7 腎機能の見積もりミスによる取り返しのつかない薬剤性腎障害→バンコマイシン
第2章 副作用を起こさないために知っておきたい腎機能の話
1 腎機能に応じた投与設計
2 肝腎な話~薬剤の肝代謝・腎排泄について~
3 クレアチニンを徹底的に科学する
4 血清Cr値を基にした推算式の利点と問題点
5 添付文書の腎機能表記の大問題
6 シスタチンCを測定していますか?
7 過大腎クリアランス(ARC)
8 糖尿病患者・ネフローゼ患者の実測CCr,eGFRに及ぼす影響
9 確認問題-この症例の腎機能は?
10 第2章のまとめ
第3章 診療科別 危ない薬,意外と使える薬
1 精神科編
[1]スルピリド(ドグマチール® )
[2]デュロキセチン塩酸塩(サインバルタ® )
[3]パリペリドン徐放錠(インヴェガ® ),
パリペリドンパルミチン酸エステル持効性懸濁注射液
(ゼプリオン® 水懸筋注シリンジ)
[4]炭酸リチウム(リーマス® )
2 神経内科編
[1]リザトリプタン安息香酸塩(マクサルト® )
[2]アマンタジン塩酸塩製剤(シンメトレル® )
[3]チアプリド塩酸塩(グラマリール® )
[4]ガバペンチン(ガバペン® ),ガバペンチン エナカルビル(レグナイト® )
[5]レベチラセタム(イーケプラ® )
[6]プラミペキソール(ビ・シフロール® ,ミラペックス® )
[7]メマンチン(メマリー® )
3 整形外科・ペインクリニック・リウマチ科編
[1]NSAIDs:ロルノキシカム(ロルカム® ),セレコキシブ(セレコックス® )
[2]NSAIDs:スリンダク(クリノリル® ),エトドラク(ハイペン® )
[3]アセトアミノフェン(カロナール® 錠,アセリオ® 静注液,アルピニー® 坐剤)
[4]エルデカルシトール(エディロール® ),アルファカルシドール(アルファロール® )
[5]ビスホスホネート薬:アレンドロン酸ナトリウム(フォサマック® 錠,ボナロン® 錠,
テイロック® 注射液),リセドロン酸ナトリウム(アクトネル® 錠,ベネット® 錠),
エチドロン酸二ナトリウム(ダイドロネル® 錠),ミノドロン酸水和物(ボノテオ® 錠),
イバンドロン酸ナトリウム水和物(ボンビバ® 静注,ボンビバ® 錠)
[6]デノスマブ(プラリア® 皮下注,ランマーク® 皮下注)
[7]トラマドール塩酸塩/アセトアミノフェン配合錠(トラムセット® )・
トラマドール塩酸塩(トラマール® )
[8]モルヒネ
[9]プレガバリン(リリカ® )
[10]デュロキセチン塩酸塩(サインバルタ® )
[11]ミダゾラム(ドルミカム® )
[12]D-ペニシラミン(メタルカプターゼ® ),金製剤,ブシラミン(リマチル® ),
抗TNF-α製剤,NSAIDs,インターフェロン,メトトレキサート(リウマトレックス® )
4 循環器内科編
[1]シベンゾリンコハク酸塩(シベノール® )
[2]ジソピラミドリン酸塩(リスモダン® )
[3]ピルシカイニド塩酸塩(サンリズム® )
[4]β遮断薬
[5]ジゴキシン(ジゴシン® )
[6]ワルファリン(ワーファリン® )
[7]ダビガトランエテキシラート(プラザキサ® ) その1
[8]ダビガトランエテキシラート(プラザキサ® ) その2
[9]Xa阻害薬:アピキサバン(エリキュース® ),リバーロキサバン(イグザレルト® ),
エドキサバントシル酸塩水和物(リクシアナ® )
[10]スピロノラクトン(アルダクトン® A),エプレレノン(セララ® )
[11]塩化カリウム(ワックスマトリックス錠:スローケー® )
5 代謝内科編
[1]アロプリノール(ザイロリック® ,アロシトール® )
[2]ベンズブロマロン(ユリノーム® )
[3]ベザフィブラート(ベザトール® SR錠),フェノフィブラート(トライコア® ,リピディル® )
[4]スタチン薬
6 糖尿病内科編
[1]インスリン
[2]メトホルミン塩酸塩(メトグルコ® )
[3]SU薬とナテグリニド
[4]エキセナチド(バイエッタ® 皮下注),持続性エキセナチド(ビデュリオン® 皮下注)
[5]SGLT2阻害薬
7 消化器内科編
[1]ファモチジン(ガスター® )
[2]ラフチジン(プロテカジン® )
8 感染症科編
[1]ニューキノロン(フルオロキノロン)系抗菌薬
[2]アミノグリコシド系抗菌薬
[3]コリスチンメタンスルホン酸ナトリウム(オルドレブ® 点滴静注用)
[4]ST合剤(スルファメトキサゾール+トリメトプリム:バクタ® 配合錠)
[5]エタンブトール,ピラジナミド,ストレプトマイシン,レボフロキサシン
[6]フルコナゾール(ジフルカン® ),ホスフルコナゾール(プロジフ® )
[7]アシクロビル(ゾビラックス® ),バラシクロビル(バルトレックス® ),
ファムシクロビル(ファムビル® )
[8]アシクロビル(ゾビラックス® ),バラシクロビル(バルトレックス® ),
ファムシクロビル(ファムビル® ),ガンシクロビル(デノシン® ),
バルガンシクロビル(バリキサ® ),ホスカルネット(ホスカビル® ),
インジナビル(クリキシバン® ),テノホビル(テノゼット® ,ビリアード® )など
[9]インフルエンザ治療薬
[10]バンコマイシン
9 眼科編
[1]アセタゾラミド(ダイアモックス® 錠)
10 泌尿器科編
[1]ジスチグミン臭化物(ウブレチド® )
[2]NSAIDs
[3]タダラフィル(ザルティア® 錠)
[4]カリウム吸着陽イオン交換樹脂製剤
[5]シナカルセト(レグパラ® )
[6]活性型ビタミンD
11 皮膚科編
[1]バラシクロビル(バルトレックス® ),アシクロビル(ゾビラックス® )
[2]マキサカルシトール(オキサロール® 軟膏)
12 腫瘍内科編
[1]メトトレキサート(メソトレキセート® )
[2]カルボプラチン
[3]シスプラチン(ランダ® )
13 その他
[1]ビタミンA
[2]強力ネオミノファーゲンシー® と芍薬甘草湯
第4章 腎機能を正しく評価する「10の鉄則」
鉄則1
鉄則2
鉄則3
鉄則4
鉄則5
鉄則6
鉄則7
鉄則8
鉄則9
鉄則10
附則1
附則2
第5章 腎機能別薬剤投与量一覧表
事項索引
薬剤索引
1 腎機能の低下した糖尿病患者で長引く致命的な低血糖→SU薬
2 出血による死亡は発売後半年で23例,この悪夢は肥満患者で繰り返される?
→ダビガトランエテキシラート(プラザキサ® )
3 腎機能正常の高齢者に起きた真夏の意識障害
→バラシクロビル(バルトレックス® )
4 コルヒチン服用の腎障害患者に併用すると生命を脅かす薬
→クラリスロマイシン(クラリス® ,クラリシッド® )
5 外用薬が原因で透析導入を要した急性腎不全
→マキサカルシトール(オキサロール® 軟膏)
6 まじめに服用し続けた患者を透析に追い込んだ薬→NSAIDs
7 腎機能の見積もりミスによる取り返しのつかない薬剤性腎障害→バンコマイシン
第2章 副作用を起こさないために知っておきたい腎機能の話
1 腎機能に応じた投与設計
2 肝腎な話~薬剤の肝代謝・腎排泄について~
3 クレアチニンを徹底的に科学する
4 血清Cr値を基にした推算式の利点と問題点
5 添付文書の腎機能表記の大問題
6 シスタチンCを測定していますか?
7 過大腎クリアランス(ARC)
8 糖尿病患者・ネフローゼ患者の実測CCr,eGFRに及ぼす影響
9 確認問題-この症例の腎機能は?
10 第2章のまとめ
第3章 診療科別 危ない薬,意外と使える薬
1 精神科編
[1]スルピリド(ドグマチール® )
[2]デュロキセチン塩酸塩(サインバルタ® )
[3]パリペリドン徐放錠(インヴェガ® ),
パリペリドンパルミチン酸エステル持効性懸濁注射液
(ゼプリオン® 水懸筋注シリンジ)
[4]炭酸リチウム(リーマス® )
2 神経内科編
[1]リザトリプタン安息香酸塩(マクサルト® )
[2]アマンタジン塩酸塩製剤(シンメトレル® )
[3]チアプリド塩酸塩(グラマリール® )
[4]ガバペンチン(ガバペン® ),ガバペンチン エナカルビル(レグナイト® )
[5]レベチラセタム(イーケプラ® )
[6]プラミペキソール(ビ・シフロール® ,ミラペックス® )
[7]メマンチン(メマリー® )
3 整形外科・ペインクリニック・リウマチ科編
[1]NSAIDs:ロルノキシカム(ロルカム® ),セレコキシブ(セレコックス® )
[2]NSAIDs:スリンダク(クリノリル® ),エトドラク(ハイペン® )
[3]アセトアミノフェン(カロナール® 錠,アセリオ® 静注液,アルピニー® 坐剤)
[4]エルデカルシトール(エディロール® ),アルファカルシドール(アルファロール® )
[5]ビスホスホネート薬:アレンドロン酸ナトリウム(フォサマック® 錠,ボナロン® 錠,
テイロック® 注射液),リセドロン酸ナトリウム(アクトネル® 錠,ベネット® 錠),
エチドロン酸二ナトリウム(ダイドロネル® 錠),ミノドロン酸水和物(ボノテオ® 錠),
イバンドロン酸ナトリウム水和物(ボンビバ® 静注,ボンビバ® 錠)
[6]デノスマブ(プラリア® 皮下注,ランマーク® 皮下注)
[7]トラマドール塩酸塩/アセトアミノフェン配合錠(トラムセット® )・
トラマドール塩酸塩(トラマール® )
[8]モルヒネ
[9]プレガバリン(リリカ® )
[10]デュロキセチン塩酸塩(サインバルタ® )
[11]ミダゾラム(ドルミカム® )
[12]D-ペニシラミン(メタルカプターゼ® ),金製剤,ブシラミン(リマチル® ),
抗TNF-α製剤,NSAIDs,インターフェロン,メトトレキサート(リウマトレックス® )
4 循環器内科編
[1]シベンゾリンコハク酸塩(シベノール® )
[2]ジソピラミドリン酸塩(リスモダン® )
[3]ピルシカイニド塩酸塩(サンリズム® )
[4]β遮断薬
[5]ジゴキシン(ジゴシン® )
[6]ワルファリン(ワーファリン® )
[7]ダビガトランエテキシラート(プラザキサ® ) その1
[8]ダビガトランエテキシラート(プラザキサ® ) その2
[9]Xa阻害薬:アピキサバン(エリキュース® ),リバーロキサバン(イグザレルト® ),
エドキサバントシル酸塩水和物(リクシアナ® )
[10]スピロノラクトン(アルダクトン® A),エプレレノン(セララ® )
[11]塩化カリウム(ワックスマトリックス錠:スローケー® )
5 代謝内科編
[1]アロプリノール(ザイロリック® ,アロシトール® )
[2]ベンズブロマロン(ユリノーム® )
[3]ベザフィブラート(ベザトール® SR錠),フェノフィブラート(トライコア® ,リピディル® )
[4]スタチン薬
6 糖尿病内科編
[1]インスリン
[2]メトホルミン塩酸塩(メトグルコ® )
[3]SU薬とナテグリニド
[4]エキセナチド(バイエッタ® 皮下注),持続性エキセナチド(ビデュリオン® 皮下注)
[5]SGLT2阻害薬
7 消化器内科編
[1]ファモチジン(ガスター® )
[2]ラフチジン(プロテカジン® )
8 感染症科編
[1]ニューキノロン(フルオロキノロン)系抗菌薬
[2]アミノグリコシド系抗菌薬
[3]コリスチンメタンスルホン酸ナトリウム(オルドレブ® 点滴静注用)
[4]ST合剤(スルファメトキサゾール+トリメトプリム:バクタ® 配合錠)
[5]エタンブトール,ピラジナミド,ストレプトマイシン,レボフロキサシン
[6]フルコナゾール(ジフルカン® ),ホスフルコナゾール(プロジフ® )
[7]アシクロビル(ゾビラックス® ),バラシクロビル(バルトレックス® ),
ファムシクロビル(ファムビル® )
[8]アシクロビル(ゾビラックス® ),バラシクロビル(バルトレックス® ),
ファムシクロビル(ファムビル® ),ガンシクロビル(デノシン® ),
バルガンシクロビル(バリキサ® ),ホスカルネット(ホスカビル® ),
インジナビル(クリキシバン® ),テノホビル(テノゼット® ,ビリアード® )など
[9]インフルエンザ治療薬
[10]バンコマイシン
9 眼科編
[1]アセタゾラミド(ダイアモックス® 錠)
10 泌尿器科編
[1]ジスチグミン臭化物(ウブレチド® )
[2]NSAIDs
[3]タダラフィル(ザルティア® 錠)
[4]カリウム吸着陽イオン交換樹脂製剤
[5]シナカルセト(レグパラ® )
[6]活性型ビタミンD
11 皮膚科編
[1]バラシクロビル(バルトレックス® ),アシクロビル(ゾビラックス® )
[2]マキサカルシトール(オキサロール® 軟膏)
12 腫瘍内科編
[1]メトトレキサート(メソトレキセート® )
[2]カルボプラチン
[3]シスプラチン(ランダ® )
13 その他
[1]ビタミンA
[2]強力ネオミノファーゲンシー® と芍薬甘草湯
第4章 腎機能を正しく評価する「10の鉄則」
鉄則1
鉄則2
鉄則3
鉄則4
鉄則5
鉄則6
鉄則7
鉄則8
鉄則9
鉄則10
附則1
附則2
第5章 腎機能別薬剤投与量一覧表
事項索引
薬剤索引
書評
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薬剤血中濃度の上昇による副作用を未然に防ぐための貴重な解説書
書評者: 山縣 邦弘 (筑波大教授・腎臓内科学)
2016年2月に日本医療開発機構 腎疾患実用化研究事業「慢性腎臓病の進行を促進する薬剤等による腎障害の早期診断法と治療法の開発(研究代表者:成田一衛)」の薬剤性腎障害の診療ガイドライン作成委員会(委員長:山縣邦弘)のもとで「薬剤性腎障害診療ガイドライン2016」が発刊された。その中では,薬剤性腎障害(DKI : Drug induced kidney disease)を「薬剤の投与により,新たに発症した腎障害,あるいは既存の腎障害のさらなる悪化を認める場合」と定義した。DKIの分類としては発症機序から,(1)中毒性腎障害,(2)アレルギー機序による急性間質性腎炎(過敏性腎障害),(3)薬剤による電解質異常,腎血流量減少などを介した間接毒性,(4)薬剤による結晶形成,結石形成による尿路閉塞性腎障害としている1)。
薬剤の多くが腎排泄性であり,腎臓はより高濃度の薬剤に曝露されやすいため,上記DKIの分類の中でも中毒性腎障害をきたす危険性が高い。このような中で本書は腎機能に応じた適切な投与法を指南し,薬剤血中濃度の上昇による全身性の副作用を未然に防ぐための貴重な解説書である。
第1~3章では,診療科別のさまざまな薬剤について,DKIはもとより使用に当たっての一般的注意事項やコラムを記載している。本書を日常診療に役立てることで,多くの臨床医はもとより,薬剤師,看護師などの多くのコメディカルが薬剤投与中のモニターをより安全に行うことも可能となる。
わが国には1300万人以上の腎障害を持ったCKD患者がおり,その中でも長期間の高血圧,糖尿病,脂質異常症や加齢などにより,自覚症状を欠いたまま緩除に腎機能低下をきたしてCKDとなる患者が多く存在する(一般人口の高齢化に伴いこのようなCKD患者数は年々増加している)。特に高齢者の場合,筋肉量減少に伴い,血清クレアチニン値だけでは腎機能の正確な評価が困難であり,これらの患者の腎機能を正しく把握・評価し,適切な投与量での薬物治療を行うことが肝要である。本書の読者は第4章の「10の鉄則」にのっとって正しく腎機能を評価し,さらに第5章の「腎機能別薬剤投与量一覧表」を用いることで,使用する各薬剤に対し適切な投与量を設定することができるであろう。
本書には腎機能に応じた投与戦略に関する実践的な内容がまとめられており,多くの皆さんにお薦めしたい。
副作用を防ぐために全ての病院・診療所・薬局に常備してほしい
書評者: 安田 宜成 (名大准教授・循環器・腎臓・糖尿病(CKD)先進診療システム学)
腎臓内科には日々,さまざまな急性腎障害(Acute Kidney Injury:AKI)症例の相談があり,その中でも薬剤性のものが少なくない。薬剤性腎障害は重篤な感染症の治療など,患者の生命を救うためには避けがたい場合もあるが,その多くは少し注意すれば避けることができ,また腎機能をモニタリングしていれば重症化する前に対策を講じることができる。私たち腎臓専門医にとってみれば当たり前のことだが,では腎臓病を専門としない医師や薬剤師が具体的にどうすればよいのか? 本書はその解決となる良書である。
監修の向山政志先生,平田純生先生による類書は多いが,本書では難しくなりがちな薬物動態や腎機能の評価法を興味深く学ぶことができるよう随所に工夫が認められる点が特筆される。まず第1章「この副作用,防げますか?」では,SU薬やダビガトラン,NSAIDsなど,処方機会の多い薬物の副作用を中心に,症例を通じて病態から具体的な対策までわかりやすく学ぶことができる。薬剤性腎障害の分類など,より専門的な情報はコラムにまとめられている。
そして第2章では腎機能の評価法やピットフォール,腎機能に応じた処方設計について,専門的な情報を含め,図表を活用してわかりやすく解説している。日常診療の現場ではeGFRが用いられるが,多くの薬物の添付文書では腎機能について血清Crやクレアチニンクリアランス(Ccr)で記載されており,混乱が生じている。eGFRとCcrは近似する場合が多いが,体表面積補正のあるeGFR(mL/分/1.73m2)と体表面積補正のないCcr(mL/分)の違いをしっかりと理解することが大切である。しかしeGFRもCcrもあくまでも腎機能を推測するものであり,そこまで厳密な処方設計を要する薬は多くはない。実際の処方では,原則として添付文書に則して過量投与を避け,処方後には有効性と安全性について経過を慎重に観察することが重要である。
第3章では,診療科別に特に注意すべき薬物について,大変に詳しい説明がされている。中でも鎮痛薬や骨粗鬆症治療薬,抗不整脈薬,また抗菌薬,抗がん薬は腎障害や過量投与に注意が必要であり,整形外科,循環器科の先生にはぜひともご精読いただきたい。コラムでは重要な臨床研究を魅力的にまとめてあり,腎臓専門医にも勉強になる内容である。そして第4章は「10の鉄則」で特に重要なポイントを復習できる。
第5章「腎機能別薬剤投与量一覧表」は,日本腎臓学会のCKD診療ガイドには含まれていない抗がん薬や新薬を網羅し,GFR区分を60,30,15そして透析とCKD重症度に準じてまとめている。腎機能障害患者で過量投与を避けるために,ぜひとも全ての病院・診療所や薬局に常備いただきたい。
本書を,腎臓病専門医を含む医師・薬剤師に実臨床の場で活用いただくことで,多くの薬剤性AKIや過量投与による副作用を防ぐことができると確信している。
『腎機能低下時の薬の使い方』の集大成といえる書籍
書評者: 大野 能之 (東大附属病院薬剤部)
10年以上前に,本書の監修および執筆者の平田純生先生の講演を初めて聴く機会があり,「これが本当の薬剤師だ」と衝撃を受けた記憶があります。それからは,腎機能低下時の薬の使い方については,平田先生の本で勉強して,理解を深めていきました。脂溶性の高い薬物はなぜそのまま尿中に排泄されないのかを理解できたのも平田先生の本のおかげでした(本書の2章-2でも解説されています)。今では一緒にお仕事をさせてもらえる機会もあり,本書の書評の執筆の機会をいただけたことは感慨深いです。
薬物を投与する際にはその主な消失経路となる肝臓と腎臓の機能を評価することが“かんじん”です。高齢化社会や,腎疾患を有する患者の増加に伴い,まさに本書のタイトルのとおり「腎機能に応じた投与戦略」を立てることが必要不可欠となっています。本書は重篤な副作用を回避するために,医師,薬剤師が知っておきたいキーワード,考え方,計算式などを,症例を挙げながら具体的に解説しています。
第1章では,防げるはずだった中毒性副作用がなぜ起こったのか,そしてどのような対策をすれば有害反応を未然に防止できるかについて,中毒性副作用の具体的な症例を提示した後に,論理的に解説しています。また,第2章では副作用を起こさないために,腎機能に応じた投与設計,患者の腎機能の適切な評価方法,薬剤の腎排泄寄与率の評価などについて,ピットフォールも含めてわかりやすく解説されています。さらに,第3章では診療科別に腎機能に留意して投与しなければならない代表的な薬物について,まず「ポイント」を示し,その内容について詳細に解説しています。その領域の医師であればよく知っている薬剤であっても,腎機能低下時の留意点についてここまで具体的に解説したものはないと思います。また,薬剤師であれば,たとえ専門領域の医師に対してでも,ぜひこういった点でのフォローと情報支援をしてほしいと思う内容です。第4章は腎機能を適切に評価するための「10の鉄則」について簡便にまとめてあり,初心者はまずはここから読み始めて勉強することも有用でしょう。そして,第5章は腎機能別の薬物至適用量を網羅した一覧表であり,実臨床の場で資料としても活用できます。
平田先生はこれまでにも腎臓病患者の薬物適正使用に関する書籍を多数執筆されており,評者もそれらの書籍でたくさん勉強させていただきましたが,本書はさらに痒いところにも手の届く集大成版と言っても過言ではありません。新たに勉強させていただいた点も多数ありました。本書全般にある「コラム」や「気になるキーワード」もとてもよいタイミングで,本文を補足してくれています。
この一冊で腎機能に応じた投与戦略の基本から実践まで学ぶことができます。本書を通してさらに多くの医師と薬剤師が腎機能の評価と腎機能低下時の薬物療法の理解を深め,よりよい薬物治療を実践していくことを願います。
書評者: 山縣 邦弘 (筑波大教授・腎臓内科学)
2016年2月に日本医療開発機構 腎疾患実用化研究事業「慢性腎臓病の進行を促進する薬剤等による腎障害の早期診断法と治療法の開発(研究代表者:成田一衛)」の薬剤性腎障害の診療ガイドライン作成委員会(委員長:山縣邦弘)のもとで「薬剤性腎障害診療ガイドライン2016」が発刊された。その中では,薬剤性腎障害(DKI : Drug induced kidney disease)を「薬剤の投与により,新たに発症した腎障害,あるいは既存の腎障害のさらなる悪化を認める場合」と定義した。DKIの分類としては発症機序から,(1)中毒性腎障害,(2)アレルギー機序による急性間質性腎炎(過敏性腎障害),(3)薬剤による電解質異常,腎血流量減少などを介した間接毒性,(4)薬剤による結晶形成,結石形成による尿路閉塞性腎障害としている1)。
薬剤の多くが腎排泄性であり,腎臓はより高濃度の薬剤に曝露されやすいため,上記DKIの分類の中でも中毒性腎障害をきたす危険性が高い。このような中で本書は腎機能に応じた適切な投与法を指南し,薬剤血中濃度の上昇による全身性の副作用を未然に防ぐための貴重な解説書である。
第1~3章では,診療科別のさまざまな薬剤について,DKIはもとより使用に当たっての一般的注意事項やコラムを記載している。本書を日常診療に役立てることで,多くの臨床医はもとより,薬剤師,看護師などの多くのコメディカルが薬剤投与中のモニターをより安全に行うことも可能となる。
わが国には1300万人以上の腎障害を持ったCKD患者がおり,その中でも長期間の高血圧,糖尿病,脂質異常症や加齢などにより,自覚症状を欠いたまま緩除に腎機能低下をきたしてCKDとなる患者が多く存在する(一般人口の高齢化に伴いこのようなCKD患者数は年々増加している)。特に高齢者の場合,筋肉量減少に伴い,血清クレアチニン値だけでは腎機能の正確な評価が困難であり,これらの患者の腎機能を正しく把握・評価し,適切な投与量での薬物治療を行うことが肝要である。本書の読者は第4章の「10の鉄則」にのっとって正しく腎機能を評価し,さらに第5章の「腎機能別薬剤投与量一覧表」を用いることで,使用する各薬剤に対し適切な投与量を設定することができるであろう。
本書には腎機能に応じた投与戦略に関する実践的な内容がまとめられており,多くの皆さんにお薦めしたい。
(註) | 1)日本医療開発機構 腎疾患実用化研究事業「慢性腎臓病の進行を促進する薬剤等による腎障害の早期診断法と治療法の開発」編.薬剤性腎障害診療ガイドライン2016;2016 |
副作用を防ぐために全ての病院・診療所・薬局に常備してほしい
書評者: 安田 宜成 (名大准教授・循環器・腎臓・糖尿病(CKD)先進診療システム学)
腎臓内科には日々,さまざまな急性腎障害(Acute Kidney Injury:AKI)症例の相談があり,その中でも薬剤性のものが少なくない。薬剤性腎障害は重篤な感染症の治療など,患者の生命を救うためには避けがたい場合もあるが,その多くは少し注意すれば避けることができ,また腎機能をモニタリングしていれば重症化する前に対策を講じることができる。私たち腎臓専門医にとってみれば当たり前のことだが,では腎臓病を専門としない医師や薬剤師が具体的にどうすればよいのか? 本書はその解決となる良書である。
監修の向山政志先生,平田純生先生による類書は多いが,本書では難しくなりがちな薬物動態や腎機能の評価法を興味深く学ぶことができるよう随所に工夫が認められる点が特筆される。まず第1章「この副作用,防げますか?」では,SU薬やダビガトラン,NSAIDsなど,処方機会の多い薬物の副作用を中心に,症例を通じて病態から具体的な対策までわかりやすく学ぶことができる。薬剤性腎障害の分類など,より専門的な情報はコラムにまとめられている。
そして第2章では腎機能の評価法やピットフォール,腎機能に応じた処方設計について,専門的な情報を含め,図表を活用してわかりやすく解説している。日常診療の現場ではeGFRが用いられるが,多くの薬物の添付文書では腎機能について血清Crやクレアチニンクリアランス(Ccr)で記載されており,混乱が生じている。eGFRとCcrは近似する場合が多いが,体表面積補正のあるeGFR(mL/分/1.73m2)と体表面積補正のないCcr(mL/分)の違いをしっかりと理解することが大切である。しかしeGFRもCcrもあくまでも腎機能を推測するものであり,そこまで厳密な処方設計を要する薬は多くはない。実際の処方では,原則として添付文書に則して過量投与を避け,処方後には有効性と安全性について経過を慎重に観察することが重要である。
第3章では,診療科別に特に注意すべき薬物について,大変に詳しい説明がされている。中でも鎮痛薬や骨粗鬆症治療薬,抗不整脈薬,また抗菌薬,抗がん薬は腎障害や過量投与に注意が必要であり,整形外科,循環器科の先生にはぜひともご精読いただきたい。コラムでは重要な臨床研究を魅力的にまとめてあり,腎臓専門医にも勉強になる内容である。そして第4章は「10の鉄則」で特に重要なポイントを復習できる。
第5章「腎機能別薬剤投与量一覧表」は,日本腎臓学会のCKD診療ガイドには含まれていない抗がん薬や新薬を網羅し,GFR区分を60,30,15そして透析とCKD重症度に準じてまとめている。腎機能障害患者で過量投与を避けるために,ぜひとも全ての病院・診療所や薬局に常備いただきたい。
本書を,腎臓病専門医を含む医師・薬剤師に実臨床の場で活用いただくことで,多くの薬剤性AKIや過量投与による副作用を防ぐことができると確信している。
『腎機能低下時の薬の使い方』の集大成といえる書籍
書評者: 大野 能之 (東大附属病院薬剤部)
10年以上前に,本書の監修および執筆者の平田純生先生の講演を初めて聴く機会があり,「これが本当の薬剤師だ」と衝撃を受けた記憶があります。それからは,腎機能低下時の薬の使い方については,平田先生の本で勉強して,理解を深めていきました。脂溶性の高い薬物はなぜそのまま尿中に排泄されないのかを理解できたのも平田先生の本のおかげでした(本書の2章-2でも解説されています)。今では一緒にお仕事をさせてもらえる機会もあり,本書の書評の執筆の機会をいただけたことは感慨深いです。
薬物を投与する際にはその主な消失経路となる肝臓と腎臓の機能を評価することが“かんじん”です。高齢化社会や,腎疾患を有する患者の増加に伴い,まさに本書のタイトルのとおり「腎機能に応じた投与戦略」を立てることが必要不可欠となっています。本書は重篤な副作用を回避するために,医師,薬剤師が知っておきたいキーワード,考え方,計算式などを,症例を挙げながら具体的に解説しています。
第1章では,防げるはずだった中毒性副作用がなぜ起こったのか,そしてどのような対策をすれば有害反応を未然に防止できるかについて,中毒性副作用の具体的な症例を提示した後に,論理的に解説しています。また,第2章では副作用を起こさないために,腎機能に応じた投与設計,患者の腎機能の適切な評価方法,薬剤の腎排泄寄与率の評価などについて,ピットフォールも含めてわかりやすく解説されています。さらに,第3章では診療科別に腎機能に留意して投与しなければならない代表的な薬物について,まず「ポイント」を示し,その内容について詳細に解説しています。その領域の医師であればよく知っている薬剤であっても,腎機能低下時の留意点についてここまで具体的に解説したものはないと思います。また,薬剤師であれば,たとえ専門領域の医師に対してでも,ぜひこういった点でのフォローと情報支援をしてほしいと思う内容です。第4章は腎機能を適切に評価するための「10の鉄則」について簡便にまとめてあり,初心者はまずはここから読み始めて勉強することも有用でしょう。そして,第5章は腎機能別の薬物至適用量を網羅した一覧表であり,実臨床の場で資料としても活用できます。
平田先生はこれまでにも腎臓病患者の薬物適正使用に関する書籍を多数執筆されており,評者もそれらの書籍でたくさん勉強させていただきましたが,本書はさらに痒いところにも手の届く集大成版と言っても過言ではありません。新たに勉強させていただいた点も多数ありました。本書全般にある「コラム」や「気になるキーワード」もとてもよいタイミングで,本文を補足してくれています。
この一冊で腎機能に応じた投与戦略の基本から実践まで学ぶことができます。本書を通してさらに多くの医師と薬剤師が腎機能の評価と腎機能低下時の薬物療法の理解を深め,よりよい薬物治療を実践していくことを願います。
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