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医薬品副作用対応ポケットガイド

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医薬品によって引き起こされる副作用について、重篤度や発生頻度、症状、対応・処置などの情報をまとめた実地書。厚生労働省でまとめられた「重篤副作用疾患別対応マニュアル」で紹介されている75の症例をさらに拡充させ、112症例を紹介する。
越前 宏俊
発行 2015年02月判型:B6変頁:288
ISBN 978-4-260-01985-9
定価 3,850円 (本体3,500円+税)

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 医師は薬物療法の是非と内容選択に責任をもつ立場にあるため,選択した医薬品を実際に処方する前には添付文書などで期待される効果と考慮すべき有害反応(副作用)の情報を確認することが求められている.しかし,多くの場合,効果発現の事前確率は副作用のそれよりもはるかに大きいため,医師の主たる関心は効果の発現に偏るだろう.添付文書の副作用項目に記載された多数の低頻度の(重大なものもあるにせよ)副作用を知悉することは困難である.さらに,治療中の患者は種々の有害反応を生じるが,それらはすべてが治療薬の副作用ではなく治療対象疾患の病態悪化や合併症の発症によることも多い.したがって,薬物の有害反応を疑う場合の真贋鑑定は相当に困難なものである.
 そのような場合の解決法として,薬物と副作用の因果関係における思考過程を逆転して考えることを提案したい.つまり,有害事象との因果関係の評価を求められている処方薬の添付文書に記載された副作用発現確率のみを判断の根拠として評価するのではなく(多くの場合,その副作用確率は低いか与えられていないだろう),問題とされる副作用症状を生じる可能性のある薬物とそれらの事前確率を網羅的に逆引きしたデータを活用するのである.もし,該当する副作用症状の原因となる可能性のある薬物のなかに実際に処方されている薬物が含まれており,かつ他の候補薬よりも事前確率が高ければ,薬物と副作用の因果関係の蓋然性は大きくなるだろう.
 本書の企画意図は,まさにここにある.本書は,薬物治療を評価する任に当たる医療人(医師,薬剤師,看護師など)が目前の患者で観察している有害反応を疑う症状や検査値異常からスタートして原因薬物を逆引き的に鑑定するために作成された.内容的には筆者が「今日の治療指針」(医学書院)の付録として執筆したものを骨子として拡張,充実させ,さらには各薬物の該当副作用の頻度を添付文書,諸外国の成書,データベースなどの調査に基づいて記載した.
 本書は膨大なデータを含んでいる.内容には最大限の努力を払い校正したが,初版であり万が一の誤りがないともいいきれない.どうか,お気づきの点はご一報いただければ幸いである.本書が,薬物治療をモニターするすべての医療人に役立つことを祈念して世に送り出す.

 平成27年1月
 越前 宏俊

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総論

1 アレルギー機序または偽アレルギー機序
 1 アナフィラキシー,アナフィラキシー様症状
 2 喉頭浮腫
 3 血管性浮腫(血管神経性浮腫,Quincke浮腫)
 4 血清病(様)症候群
 5 薬物誘発性血管炎
 6 薬剤性過敏症症候群,過敏症症候群
 7 Stevens-Johnson症候群(皮膚粘膜眼症候群),中毒性表皮壊死症
 8 薬物誘発性全身性エリテマトーデス(SLE)様症候群
 9 薬剤熱
 10 偽アレルギー反応
 11 光線過敏症,光線過敏性皮膚炎
 12 急性汎発性発疹性膿疱症
 13 薬剤による接触皮膚炎

2 内分泌・代謝
 1 高血糖
 2 低血糖
 3 甲状腺中毒症(甲状腺機能亢進症)
 4 甲状腺機能低下症
 5 薬剤誘発性視床下部・下垂体・副腎皮質障害
 6 薬剤誘発性体重増加
 7 脂質異常症
 8 男性性機能障害
 9 卵巣過剰刺激症候群

3 腎機能・電解質
 1 腎前性腎不全(腎血流減少による)
 2 急性尿細管壊死
 3 腫瘍崩壊症候群
 4 急性間質性腎炎
 5 (癌患者の)出血性膀胱炎
 6 腎結石
 7 急性尿閉
 8 慢性腎臓病
 9 抗利尿ホルモン(ADH)不適合分泌症候群
 10 (薬物誘発性)尿崩症
 11 乳酸アシドーシス
 12 尿細管(性)アシドーシス
 13 高カリウム血症
 14 低カリウム血症
 15 高カルシウム血症
 16 低カルシウム血症
 17 高マグネシウム血症
 18 低マグネシウム血症
 19 ネフローゼ症候群
 20 偽アルドステロン症

4 血液
 1 血小板減少症
 2 顆粒球減少症(好中球減少症),無顆粒球症
 3 薬物誘発性貧血
 4 再生不良性貧血
 5 出血傾向(出血性素因)
 6 静脈血栓塞栓症(深部静脈血栓症,肺血栓塞栓症)
 7 播種性血管内凝固

5 循環器
 1 虚血性心疾患
 2 心不全
 3 不整脈
 4 高血圧
 5 低血圧
 6 弁膜症,心外膜炎
 7 Raynaud現象またはその悪化

6 上気道・呼吸器
 1 喘息・気管支けいれん(アスピリン喘息)
 2 肺線維症,間質性肺炎
 3 急性肺損傷,急性呼吸窮迫(促迫)症候群
 4 急性好酸球性肺炎
 5 肺胞出血
 6 毛細血管漏出症候群による肺水腫
 7 薬物誘発性胸膜炎・胸水

7 消化器
 1 消化性潰瘍
 2 下痢
 3 便秘
 4 麻痺性イレウス
 5 偽膜性大腸炎(抗菌薬関連下痢症)
 6 薬物誘発性肝細胞障害型(肝炎型)肝障害
 7 薬物誘発性胆汁うっ滞型肝障害
 8 薬物誘発性膵炎
 9 悪心・嘔吐,食欲低下

8 眼科領域
 1 角膜混濁・沈着物
 2 白内障
 3 緑内障,眼内圧亢進
 4 視神経炎
 5 色覚異常
 6 眼調節機能障害
 7 網膜出血,眼底出血
 8 網膜・視路障害

9 耳鼻科領域
 1 難聴,耳鳴り,めまい(第8神経障害)

10 筋・骨格
 1 骨粗鬆症
 2 特発性大腿骨頭壊死症
 3 ビスホスホネート関連顎骨壊死
 4 高尿酸血症,痛風発作
 5 ミオパチー
 6 横紋筋融解症

11 神経
 1 けいれん
 2 脳血管障害
 3 錐体外路症状
 4 末梢神経障害(ニューロパチー)
 5 白質脳症
 6 薬物誘発性頭痛
 7 新生児薬物離脱症候群
 8 小児の急性脳症
 9 急性散在性脳脊髄炎
 10 薬物誘発性無菌性髄膜炎

12 精神科領域
 1 薬物誘発性うつ病
 2 セロトニン症候群
 3 薬物誘発性統合失調症様・偏執症様症候
 4 悪性症候群
 5 せん妄
 6 睡眠障害
 7 突発性(的)睡眠
 8 認知障害

13 その他の分類できない副作用(全身性を含む)
 1 (二次的)悪性新生物
 2 催奇形性
 3 悪性高熱(症)
 4 脱毛
 5 多毛
 6 抗癌剤誘発性口内炎
 7 手足症候群

索引

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副作用の膨大な情報がコンパクトにまとめられた,実践重視の一冊!
書評者: 木内 祐二 (昭和大教授・薬理学/薬学教育推進センター長)
 薬物治療は現代医療の基幹をなしていますが,多様なメカニズムを持つ新薬が続々と登場するとともに,また,高齢化に伴う薬物治療の複雑化により,有効性とともに副作用(有害反応)のリスクも明らかに高まっています。こうした薬物治療の最前線で,安全で確実な薬物治療を実践するためには,膨大な医薬品情報の効率的な利用と高度な判断力を要します。従来,副作用が疑われる場合は,個々の薬品の添付文書の記載から副作用を確認するとともに,その治療・対応は治療マニュアルに当たらなければなりませんでした。本書は,目前の患者に副作用が疑われた場合,その症状や検査値から原因薬物を推測し,適切な対応を行うという,著者の言う「逆引きする」実践を重視した書となっています。

 本書では,多彩な副作用を,「アレルギー機序または偽アレルギー機序」「内分泌・代謝」「腎機能・電解質」「血液」「循環器」「上気道・呼吸器」「消化器」「眼科領域」「耳鼻科領域」「筋・骨格」「神経」「精神科領域」「その他の分類できない副作用(全身性を含む)」に分類して章立てし,112にものぼる副作用について解説しています。

 各副作用はそれぞれ2~3ページにコンパクトにまとめられ,また,大変に使いやすく,視覚的にもわかりやすく構成されています。最初に「重症度」「頻度」「症状」が合わせて10行程度に示され,副作用の概要を瞬時に理解できるように工夫されています。

 続いて,副作用を疑う患者を前にしたときの思考と行動パターンに沿って,「検査」「患者背景(リスク因子など)」「対応・処置」「患者説明」「原因となる薬剤など」「副作用の起きるメカニズム」「予防」の項目立てで簡潔に解説されています。最新の情報に基づき,発現頻度などの数値も示され,副作用の膨大な情報に途方に暮れていた医療スタッフにとっては本当にうれしい内容です。

 本書は薬物治療に関わる医師,看護師,薬剤師などの全ての医療人に必携のポケットガイドと言えるでしょう。副作用に関わる莫大な情報を簡潔に整理し,このような実践的な書を世に出された著者と出版社の努力に心から敬意を示します。
副作用の原因薬物を早期発見,「実力ある薬剤師」になる!
書評者: 平田 純生 (熊本大教授・臨床薬理学/薬学部附属育薬フロンティアセンター長)
 「薬物を処方する時の医師の主たる関心は,効果の発現に偏りがちである」と医師である著者の越前先生自らが本書の「序」に書かれている。そうすると薬剤師が薬剤師たるアイデンティティは医薬品の安全性の確保にあるといっても過言ではない。そのために薬剤師には投与設計・副作用モニタリングを行うと共に医薬品情報を解析し病態を解析するスキルが必要となる。

 とはいえ1,000成分前後の薬物を取り扱う薬剤師がこれらの全てについて精通することはまず不可能であり,添付文書を調べるだけではどれもが副作用の原因薬物ではないかと迷ってしまうであろう。

 本書は112種類にわたる副作用を13項目に分類し,有害反応を疑う症状から原因薬物を逆引きして鑑定できるポケットサイズの本である。試しに私の専門分野である腎機能・電解質のページを開いてみた。腎前性腎不全にはかっこ付きで「腎血流減少による」と書かれている。また,ネフローゼ症候群の症状の蛋白尿にはかっこ付きで「尿の泡立ちが強くなる」と書かれている。添付文書に書かれていない副作用発見のポイントが実にわかりやすく表現されている。そして症状の欄を見ると語句の使い方,副作用の定義が最新のガイドラインにのっとって記されており,膨大なデータベースからコンパクトでわかりやすくまとめられているにもかかわらず記載内容には間違いがない。原因となる薬剤,副作用の起こるメカニズム,患者側のリスク因子,どのように対応・処置するべきか,検査値による判断,副作用の予防法など全てにおいて的確に記載されている。

 副作用が起こった時にどの薬物が原因薬物であるか,各医薬品の添付文書から調べていたら膨大な時間を費やし,不要な情報も入ってきて判断に苦しむに違いない。その症状や頻度から調べることができる本書を白衣のポケットに忍ばせておけば,臨床現場でこれほど威力を発揮するものはないであろう。

 目の前の患者に配慮した有効かつ安全な薬物治療を提供できる「実力ある薬剤師」になっていただくために,病院薬剤師はもちろん,患者のカルテや検査値を見ることのできない開局薬剤師にも,本書をうまく活用し副作用発現の原因薬物を早期発見していただきたい。さらに実務実習や症例検討会などの教育分野やさまざまな場面で本書を活用することによって患者本位の安全な薬物治療をすみやかに実践していただきたいと願う。
医薬品副作用への対策が網羅された,全医療者へお薦めの一冊!
書評者: 渡邉 裕司 (浜松医大教授・臨床薬理学)
 医薬品の副作用に関する著明なメタアナリシスによると,米国では薬物副作用が入院中死因の悪くすると4位,低く見積もっても6位に位置付けられると報告されている。医薬品は確かに多くの患者の治療に貢献するが,薬の副作用で具合が悪くなっている患者は決して少なくないのかもしれない。外科医は未熟な手技により患者を傷つけ,場合によっては命さえ奪ってしまうことをよく自覚している。内科医も,自分の処方する薬が外科医のメスと同様に,時に患者に害をなす,ということを常に意識したい。薬を内服中の患者が,副作用で新たな症状を訴えた場合にも,さらにその症状に対して新たに薬が追加処方される。そんな事態は避けなければならない。

 そのような時に役に立つのが本書だと思う。本書は長年,『今日の治療指針』(医学書院)で「薬物の副作用と相互作用」を担当された越前宏俊先生が執筆された。越前先生は医師であり薬学のエキスパートでもある。本書は,症状からでも投与薬剤からでも副作用の可能性を確認でき,その範囲は厚生労働省作成の「重篤副作用疾患別対応マニュアル」に掲載されている75の副作用を超え112の副作用に及ぶ。各種の副作用について,重症度,頻度,症状がまず記載され,必要な検査,患者背景,求められる対応や処置,患者説明,そして原因となる薬剤の一覧が示され,さらに副作用の起こるメカニズムや予防にいたるまで要領よく解説されている。この一冊で医薬品副作用への対策はほぼ網羅されていると思う。いつも手軽に開けるサイズであり,医師,薬剤師ばかりでなく看護師や医学生,薬学生など薬に関わる全ての方々の必携の書としてお薦めしたい。

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