診断力強化トレーニング2
What's your diagnosis?

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あの「京都GIMカンファレンス」からの挑戦状、第2弾! 順次提示される「病歴」「身体所見」「検査所見」を見て、あなたはどこまで診断に迫れるか!? よくある疾患だがまれな症候、よくある症候だがまれな疾患も続々登場。診断の「手がかり」はどこにある? 「めくらまし」にだまされるな! 臨場感あふれる88症例を追体験し、診断力を鍛えよう。さあ、こんな患者さんがあなたの前に来たら、何を聞き、何をしますか?

診断力強化トレーニング 人気タイトルトップ10

監修 松村 理司
編集 酒見 英太
執筆 京都GIMカンファレンス
発行 2015年08月判型:B5頁:256
ISBN 978-4-260-02169-2
定価 4,180円 (本体3,800円+税)
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 本書は2008年に出版された『診断力強化トレーニング-What's your diagnosis?』の続編であり,いわば第2弾である.月刊誌『総合診療』(2014年以前は『JIM』)に連載されている「What's your diagnosis?」の近年の症例を集め,手を加え,刷新したものである.作品の母体は,前回同様に毎月第1金曜日に開かれている「京都GIMカンファレンス」である.毎回3症例を検討しているので,これまでに掲載できなかった症例のほうが多いくらいだが,それらを今回もBulletとして第1弾より数多く紹介できた.
 記述されたものに必ずしも反映されているとは限らないが,「京都GIMカンファレンス」の診断推論の水準自体は年々向上していると感じられる.関東や九州からの参加者や発表者もそこかしこに迎えるようになり,より広域化したことも大きい.専門医の参加と助言にも大いに助けられている.たとえば放射線診断専門医の下野太郎医師(大阪市立大学医学部)のボランティア発言は,往々にして圧巻であり,総合医と専門医の握手の意味を今更ながらかみしめさせられる.しかし,同カンファレンスの中身の向上は,10年を超えた新医師臨床研修制度の履行と,それに並行した若手の病院総合医の質の底上げにも基づくと信じたい.
 今回私は,監修作業の一環として,Bulletの査読に関わらせてもらった.臨床的内容を盛り付ける「書く」という角度から純粋に判断すると,磨かれた玉が多い反面,いまだ磨かれ始めた石でしかない原稿にもたまに遭遇した.中身は立派でも,盛り付けがまずいものが散見されるという次第である.ひとえに書き手の経験の厚みに左右されるわけだが,書くことの研鑚は,日常臨床を質高く行う技術の一つ,たとえば「上手にしゃべる」こととはまた違った次元の教育課題であると考えざるを得ない.新医師臨床研修制度の履修だけでは,質も見栄えもある臨床論文の執筆は保証されない.若手世代の医師にも商業原稿執筆の機会が広がっている現在ではあるが,書く営為への諸先輩の粘り強い支援が欠かせまい.
 「京都GIMカンファレンス」は,今年2月に200回目開催の節目を迎えることができた.1998年4月の第1回以来,一度も中断していない.「どんな臨床的集いでも,最低2名の参加でもよい.ともかく続けることだ」の初心が継続できたことは嬉しい.毎回100名近い参加者のため,立ち見も出ている同カンファレンスの最近の熱気が,今後も続き,同時にさざ波のように広がってほしい.

 2015年7月
 松村理司

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 執筆者一覧
 序

救急外来
Case 01 下痢それとも便秘?
Case 02 変化に弱い-直腸診でわかったのに…
Case 03 非特異的殿部痛
Case 04 発熱が続く大きな理由
Case 05 アポなし救外
Case 06 ミゼラブルな紅斑
Case 07 Pisaの斜頭
Case 08 2頭目の“シマウマ”?
Case 09 事態は急を要します!
Case 10 軟らかくなると固くなるものなあに?
Case 11 The Green Light, Stop !?

一般外来
Case 12 そもそも丸見え?
Case 13 降参しすぎて頭が痛い
Case 14 ビリッケツにはしないでね!?
Case 15 念ずれば通ず
Case 16 バイタルがよくても…
Case 17 It’s no use crying over spilt-消えた腹水
Case 18 11年後の逮捕
Case 19 やっててよかった…
Case 20 軽いうつ? 関節リウマチ? それとも…?
Case 21 丸く収めたつもりが午後に号泣
Case 22 きりたんぽ鍋
Case 23 甲羅に阻まれて
Case 24 エプロンが雑巾みたいに…
Case 25 眼は口ほどに?
Case 26 ヒントは痛みの部位
Case 27 降参を取り下げる時
Case 28 バナナはおやつに含まれますか?
Case 29 めまいが… 左もなんだか… ふたつに見えます…
Case 30 ひとくい的症候群
Case 31 PriMaRy? いいえ,Secondary,Tertiaryです
Case 32 びっくり! 開けたら「え~!?」
Case 33 Ah-Ha?

紹介受診
Case 34 注射? ビビるだけじゃあきません!
Case 35 海面上のイッスイ
Case 36 どこから漏れた?
Case 37 仇ならぬ穴
Case 38 手と手を尽くして探しても見えない
Case 39 ティアニー先生も初めて!
Case 40 きってもきれない
Case 41 じりつしんけい?
Case 42 もう,無い? もう,無い!?
Case 43 抗原が違う?
Case 44 I was too much.
Case 45 血小板減少,すなわち
Case 46 否定が足りない!
Case 47 感知されたHな関係
Case 48 看板に偽りあり! 名が体を表さない?
Case 49 狩のバリエーション
Case 50 深イイ話

 診断名一覧
 索引

Bullet
01.こんな患者は強制収容だ!
02.Two-egg Soup
03.婆さんじゃないのに
04.脳内のリエちゃんは時々メーリスする
05.甘いジェットコースター
06.足が痛いのはくしゃみのせい?
07.ピクピクしたぞ!
08.パッと見たところ輪があって膿瘍?
09.GAかと思ったらHSPだった
10.胃外にいない
11.L.A. Story
12.アンドロイドは光速で
13.ゲゲゲの島は近いのに
14.宙に浮いた診断
15.地下鉄酔いみたい
16.ゴミの中にあった探し物
17.世間を騒がせたアレルギー
18.それは違うよー
19.深く考えずに血液検査?
20.七年目の浮気
21.ローン払いは丁寧に
22.「だいたいでいいのでは?」「いいえきっちり調べましょう.穴があるかもしれません」
23.痛みをとめてくれっちゅーに
24.8×3=?
25.Hopely, C has the pneumonia.
26.山中の小僧,来客を無視して神仏の経典を繙く
27.師匠の教えは頭の奥に静かに詰め込め
28.白人
29.暴行もないのに破裂?
30.Evidence Based Victory
31.めに見えないぜ関節炎
32.BOSSのある渋い一言
33.愛の跡
34.低酸素血症のPEARL
35.さいきん増えました
36.汗をかかなくても消臭剤?
37.録画できないビデオテープ
38.男もセクシー?

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「京都GIMカンファレンス」白熱討論の迫力
書評者: 小泉 俊三 (東光会七条診療所所長)
 本書は,書名が示すように2008年に刊行された『診断力強化トレーニング』の続編である。今回は監修の立場に移られた松村理司先生(洛和会総長)が,巻頭の「序」で本書の礎となっている「京都GIMカンファレンス」が1998年以来,休むことなく開催され,昨年2月には200回を数えたことを紹介しておられる。評者も,5年近く毎月第一金曜日は「京都GIMの日」と決めて参加しているが,京都・山科にある洛和会音羽病院の会議室を埋め尽くす熱気には,毎回圧倒される。

 本書をひもといてみると,前書を踏襲して50症例が「救急外来」「一般外来」「紹介受診」に色分けされ,その合間に要点を短くまとめた「Bullet」症例が38例掲載されている。

 ご存知の方もおられると思うが,「京都GIMカンファレンス」のちょっとした楽しみは各症例の“表題”である。時に羽目を外すこともある意味不明のタイトルは,言葉遊びといっても多くの場合,語呂合わせ(ダジャレ)の類であるが,症例提示と謎解きを試みる“真剣勝負”が終わったところで紹介されるタネ明かしの一瞬が何ごとにも代えがたい(心地よい脱力,と言えようか)。一堂に会した同好の士として,場の空気を共有できる一瞬でもある。

 20年近く綿々と続いてきた白熱討論の記録集としての本書の迫力は,どのページからも直ちに伝わってくるが,実際に本書を参考書や教科書,教材として活用するには一工夫も二工夫も要るように思える。巻末に症例の「診断名一覧」が示されているので,例えばまれな疾患の概要を復習したい読者はすぐに読みたいページに移ることが可能である。

 しかし本書の値打ちを最大限に引き出す利用法は,自分でペースを決め,じっくり時間をかけて読み進むことであろう。早く正解を知りたい衝動を抑えて,自分なりの思考(診断推論)を反芻しながら,執筆者と対話する気持ちで読み進むことによって,疾患の生きたイメージを頭の中に組み立てることができる。言い換えると,プレゼンターとの対話を通じ,また同様の対話を多くの症例で繰り返すことで,私たちの記憶装置の中に“類似”の症例が重層的に蓄積される。こうして無味乾燥な情報の塊でしかなかった疾患概念に肉付けが与えられ典型的な“病像”として定着し,機に応じて参照可能となるのである。

 もう一つの利用法として,研修医ら勉強仲間で役割を決め,カンファレンスを再現するつもりで読み進むことも考えられる。担当者だけがしっかり予習をしてプレゼンターの役割をし,上級医が討論の進行を引き受ける,などの方法である。模擬体験的学習を通じて,症例についての理解だけでなく,その問題点をまとめ,相手に伝える力も身につくと思われる。

 そこまで来ると,次は「京都GIMカンファレンス」そのものに飛び入り参加することをお勧めせざるを得ない。評者は近隣の研修病院のカンファレンスに参加する機会が少なくないが,研修医たちに,何とか時間を捻出してあるいは上司の許可を得て「京都GIMカンファレンス」に参加するよう強く勧めている。文字通り,「百聞は一見に如かず」である。少々遠方の方も,一度は足を運んでいただきたいと思う。

 付け加えると,本書は結果としてまれな疾患の集大成(まれな疾患の典型例,よくある疾患のまれな症候,さらにはまれな疾患のまれな症候)となっているので,やむを得ず数多くの特殊検査が行われている。救急外来では,時に迅速に検査を行う機敏さが必要であるが,「一般外来における診断の心得」(p.52)にあるように,読者には「まず病歴だけで診断に迫ってやろうとの気概を持って」診療に当たり,検査も「仮説を効率よく支持・否定するものに絞」ることを心掛け,臨床推論を無視した過剰検査に陥ることのないよう,賢明な選択(choosing wisely)を心掛けていただきたいと考えている。
「われわれは症例からしか学ぶことができない」
書評者: 清田 雅智 (飯塚病院総合診療科診療部長)
 前著 『診断力強化トレーニング』 に引き続き7年の歳月を経て出版された待望の続編である。監修者である松村理司先生が第1弾の序文の中で述べられていた,日本の臨床研修で不足しているのが「診断推論の徹底した訓練」であるという指摘は,現在でも続いていると感じる。この涵養には多くの医師は10年程かかるのではなかろうか。初期研修では,病歴聴取の型やコモンな疾患に関する一般的な知識を習得することが可能であるが,後期研修を終えたとしてもまれな疾患は遭遇する機会に乏しく,そのような疾患は鑑別の仕方もわからないものである。より深い臨床上の疑問や知恵というのは,ケースカンファレンスで扱われる類いまれな疾患や,コモンな疾患のまれな徴候への洞察により生まれる。そのための教育手法はcase discussionであると私は思っているが,この環境がなかなかできない。私は京都GIMカンファレンスには出席したことがないのだが,その環境ができているであろうことをこの本から察することができる。

 熟練者の思考プロセスを敷衍することが,臨床教育上最も重要であり,そのシラバスとして前書と本書が存在していると私は考えている。通常の診療をしていても,おそらく10年に1回程度しか経験しない症例から臨床上の深い知恵が生まれるが,その経験には時間と空間を必要とする。この本は実は時間を買っているのである。clinician educatorを目指す医師はcover to coverで熟読すべき必携の本であろう。編集者である酒見英太先生が発案されたClues,Red Herring,Clincher,Clinical Pearlsという,前書から引き継がれている体裁にこの本の深みを感じ取るヒントがある。病歴と身体所見,付け加えられる検査所見(病歴と身体所見があくまで情報の中心というコンセプトは随所に垣間見られる)を同じように見せられても,初学者と熟練者では見ているところが異なることに気付かない。適切な指南者がいて症例から学ぶべき道筋が得られるものであり,それがこの体裁に現れている。ともすると堅苦しくなりがちなケースカンファレンスを,その強引とも言えるタイトル命名!(この辺りは関西人の発想であろう)とその種明かしというオブラートで楽しく包んでいる。

 講演で「われわれは症例からしか学ぶことができない」と酒見先生が仰る。その真意がこの本には散りばめられていると感じている。参考文献も含めて十分な考察がなされている本書のコンセプトは,William B. Beanの『Rare diseases and lesions: Their contributions to clinical medicine』(Charles C. Thomas. 1967)に匹敵するのではないだろうか。
臨床推論のトレーニングに至適な88のリアル・ジャパン・ケース
書評者: 徳田 安春 (地域医療機能推進機構(JCHO)本部顧問)
 この本は1998年から現在もなお継続して開催されている京都GIMカンファレンスの中から珠玉のケースを収集した第2弾である。今年200回記念を迎えた京都GIMカンファレンスは毎回100人以上もの医師が参加し,立見が出るほどの人気を博しているという。難解なレアケースが多く,ほとんどの医学生や初期研修医には太刀打ちすることは至難であり,後期研修医以上の中堅やベテラン医師あたりがターゲット読者層であろう。

 ケースは全て実際の症例。病歴や身体所見がリアル情報として提示される。この本のケースのうち,全ての疾患を診断したことがある医師は世界広しといえども皆無であろう。そう断言できる理由は,この本の中に「ティアニー先生も初めて」のケースが掲載されていることや,世界で2例目のケースなども収載されているからだ。

 しかしながら,本邦の市中病院で実際に遭遇したケースについて習熟することは大変重要である。疫学的・遺伝的な影響があるために,日本人に特有な疾患や日本でよく使用される薬剤に関連した病態は,日本で診療活動を行っているわれわれ自身もまた遭遇する可能性があるからだ。そういう意味では,「欧米で出版された症例集」のみで学習していると,日本における最新の臨床現場の情報について思わぬ「知識欠如」を持ったまま臨床を行うという危険性がある。日本で総合内科を標榜する医師全員に,本書を読んでおくことをお勧めする。

 本書の最終診断内容を吟味してみると,薬剤の副作用が関連するケースが18例もあった。88ケースのうち約20%となる。一般には総合内科入院ケースの原因中5~10%が薬剤の副作用である。本書でのこの高頻度は,診断困難例では薬剤性疾患がいかに多いかということを示している。

 「臨床推論のよいトレーニング方法は何か」という質問をされることが評者自身もよくある。日常診療をまじめに継続し,多数のケースを経験しながら,優秀な指導医の意見を積極的に聞いていくことはもちろんである。でもさらにもっと飛躍して早くエキスパートになりたい,という希望を持つ若い医師は本書を利用するとよい。具体的には,病歴,身体所見,簡単な検査が提示されているページを読んだら一度本書を閉じて,脳内シミュレーションで自分自身の鑑別診断を考えることだ。あるいは,寝る前にそこまで読んで,解答編は翌日に読む,というのもよい。人間の脳は,問題が与えられると,意識しなくても(睡眠中でも)自動的に考えているということが脳科学研究で明らかになっているのだ。

 本書に収載されている88のリアル・ジャパン・ケースの曝露は,1人の臨床医の実臨床経験では得られない。評者も含め,京都GIMカンファレンスに参加することのできなかった医師たちへ,これらの貴重な症例を提示してくださった先生方,ならびに監修者の松村理司先生,編集者の酒見英太先生に敬意を表する次第である。

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