作業療法学概論 第3版
作業療法を学ぶにはこの一冊から。カラー化でより一層見やすくなった待望の改訂版
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作業療法士を志す学生のための導入編となるテキスト、その改訂第3版。作業療法の中心概念である「作業」とは何かという点を軸に、前版までと同様、原理・理論や歴史から始まり、作業療法教育、実践の流れ、実践過程の実際例、さらには医療福祉制度や管理・運営に至るまで紹介。今回の版から全面カラー化となり、より見やすく分かりやすい紙面となった。作業療法の奥深さを知るとともに、その魅力的な世界を存分に味わえる1冊。
*「標準作業療法学」は株式会社医学書院の登録商標です。
シリーズ | 標準作業療法学 専門分野 |
---|---|
シリーズ監修 | 矢谷 令子 |
編集 | 二木 淑子 / 能登 真一 |
発行 | 2016年12月判型:B5頁:304 |
ISBN | 978-4-260-02535-5 |
定価 | 4,400円 (本体4,000円+税) |
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序文
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第3版 序
本書は,2004年の初版,2011年の第2版を継いだ,改訂第3版となる.初版の序にあるように,本書の役割は作業療法士を志す人たちのためのガイドブックであり,作業療法という深い森の道案内的役割を果たしている.
本書の初版は,従来のWHOの障害モデルがICFという社会科学的相互交流モデルに変わり,また,介護保険制度が導入されたことで健康保険制度が変わり,作業科学や人間作業モデルなど新しい作業療法の理論が主流になりつつある状況のなかで編集された.新しいICFの概念に適合しやすいように,クライエント中心の概念,EBM,そして専門職としての役割や資質という観点から新しい作業療法士像が示されている.
初版,続く第2版と,いずれも従来の医学モデルの作業療法を基盤に,社会科学的側面にスポットライトを当てた新しい作業療法の考えを伝え,新たに作業療法士の仲間となる人たちの動機づけを促進することを第1の目的としていた.そして健康施策の大きな変革の時期は過ぎ,医療・福祉・保健領域において説明合意を中心とした治療や支援の形が整い,ICFモデルは今やすっかり定着している.
今回の改訂においても作業療法の基本をしっかり押さえながら,今の作業療法を伝えるという姿勢は,初版,第2版から続く編集方針として一貫している.今版では作業療法の中心概念である「作業」とは何かといった点を中心に,作業療法のよさや,作業療法がなぜ健康に寄与できるのかといった,作業療法の魅力を伝えることに重点をおいている.とはいえ,クラフト・手作業を使った作業療法を後ろ向きに懐古したわけではない.作業療法学は独立した学問として独自の教育研究の成果を求められており,そのなかで医学と社会学的理論が融和した実践モデルに進化してきている点をていねいに説明したつもりである.
世界的にみても作業療法の医学的専門職としての特質は見直されつつある.そのなかで医学的知識とスキルについてていねいな教育を受け,かつ温かい視点で対象者を見つめ,阿吽の呼吸で支援できるセラピストがたくさんいるという点では日本が一番といってよい.
雇用の未来に関する英オックスフォード大学のオズボーンらの研究では,大量データ解析と人工知能・ロボット技術のさらなる躍進で,2030年には,今の職業のおよそ半分ほどがなくなってしまうという.そのなかで,消える確率が低い職業の第6位に作業療法士があげられている.この上位の職業の特徴は,「社会性,創造力,臨機応変さ」とのことである.つまり,個々のニーズや社会の緊急事態に対応し,その人たちの心身の状態に合わせて問題解決し,クライエントが喜び満足するようなサービスを提供する職業であるといえよう.
マニュアル化できる職業はいずれは消えていく運命にある.だからこそ作業療法の全人的なアプローチという特徴が,まさに生き残る決め手となるのかもしれない.逆にいえば,マニュアル化されたことしかできない作業療法士はこの先,生き延びていくことが難しいという点を心して進んでいく必要があろう.人の心に寄り添い,人の喜びを糧として,自らの心と頭脳を鍛える,そうしたことを志向する人であってほしい.
作業を通して対象者の方々とともに作業療法を行えば,必ず自分のよいところが伸びていくはずである.あなたがもし作業療法が面白そうと少しでも感じたなら,臨床家となって実践経験を重ねられるようになるまで自分を信じて頑張ってみてはどうだろうか.また,臨床家として経験を積んだのちも,もし作業療法という深い森で迷ったときには,ガイドブックとなる本巻に立ち戻ってみてほしい.
今回の改訂版をまとめるにあたり,作業療法のよさや醍醐味を教えてくださった諸先輩,対象者の皆さん,チームを組んだ各専門職種の方々,そして多大な労を執っていただいた編集部の皆さんに感謝申し上げる.
2016年10月
二木 淑子・能登 真一
本書は,2004年の初版,2011年の第2版を継いだ,改訂第3版となる.初版の序にあるように,本書の役割は作業療法士を志す人たちのためのガイドブックであり,作業療法という深い森の道案内的役割を果たしている.
本書の初版は,従来のWHOの障害モデルがICFという社会科学的相互交流モデルに変わり,また,介護保険制度が導入されたことで健康保険制度が変わり,作業科学や人間作業モデルなど新しい作業療法の理論が主流になりつつある状況のなかで編集された.新しいICFの概念に適合しやすいように,クライエント中心の概念,EBM,そして専門職としての役割や資質という観点から新しい作業療法士像が示されている.
初版,続く第2版と,いずれも従来の医学モデルの作業療法を基盤に,社会科学的側面にスポットライトを当てた新しい作業療法の考えを伝え,新たに作業療法士の仲間となる人たちの動機づけを促進することを第1の目的としていた.そして健康施策の大きな変革の時期は過ぎ,医療・福祉・保健領域において説明合意を中心とした治療や支援の形が整い,ICFモデルは今やすっかり定着している.
今回の改訂においても作業療法の基本をしっかり押さえながら,今の作業療法を伝えるという姿勢は,初版,第2版から続く編集方針として一貫している.今版では作業療法の中心概念である「作業」とは何かといった点を中心に,作業療法のよさや,作業療法がなぜ健康に寄与できるのかといった,作業療法の魅力を伝えることに重点をおいている.とはいえ,クラフト・手作業を使った作業療法を後ろ向きに懐古したわけではない.作業療法学は独立した学問として独自の教育研究の成果を求められており,そのなかで医学と社会学的理論が融和した実践モデルに進化してきている点をていねいに説明したつもりである.
世界的にみても作業療法の医学的専門職としての特質は見直されつつある.そのなかで医学的知識とスキルについてていねいな教育を受け,かつ温かい視点で対象者を見つめ,阿吽の呼吸で支援できるセラピストがたくさんいるという点では日本が一番といってよい.
雇用の未来に関する英オックスフォード大学のオズボーンらの研究では,大量データ解析と人工知能・ロボット技術のさらなる躍進で,2030年には,今の職業のおよそ半分ほどがなくなってしまうという.そのなかで,消える確率が低い職業の第6位に作業療法士があげられている.この上位の職業の特徴は,「社会性,創造力,臨機応変さ」とのことである.つまり,個々のニーズや社会の緊急事態に対応し,その人たちの心身の状態に合わせて問題解決し,クライエントが喜び満足するようなサービスを提供する職業であるといえよう.
マニュアル化できる職業はいずれは消えていく運命にある.だからこそ作業療法の全人的なアプローチという特徴が,まさに生き残る決め手となるのかもしれない.逆にいえば,マニュアル化されたことしかできない作業療法士はこの先,生き延びていくことが難しいという点を心して進んでいく必要があろう.人の心に寄り添い,人の喜びを糧として,自らの心と頭脳を鍛える,そうしたことを志向する人であってほしい.
作業を通して対象者の方々とともに作業療法を行えば,必ず自分のよいところが伸びていくはずである.あなたがもし作業療法が面白そうと少しでも感じたなら,臨床家となって実践経験を重ねられるようになるまで自分を信じて頑張ってみてはどうだろうか.また,臨床家として経験を積んだのちも,もし作業療法という深い森で迷ったときには,ガイドブックとなる本巻に立ち戻ってみてほしい.
今回の改訂版をまとめるにあたり,作業療法のよさや醍醐味を教えてくださった諸先輩,対象者の皆さん,チームを組んだ各専門職種の方々,そして多大な労を執っていただいた編集部の皆さんに感謝申し上げる.
2016年10月
二木 淑子・能登 真一
目次
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第1章 作業療法とは
I 「作業」とは-作業療法にとっての「作業」の意味
A 作業と作業療法
B 作業療法の定義
II 作業療法の原理
A 時代背景と作業療法の歴史の概略
B 作業療法の萌芽
C 作業療法の誕生
III リハビリテーションの歴史と作業療法
A 社会情勢の変化とリハビリテーションの歴史
B 作業療法の位置づけ
C ICFと作業療法
D リハビリテーションの今後と作業療法
IV 作業療法の領域
A 作業療法の対象
B 作業療法の実践の流れ
C 作業療法の実施場所
V 作業療法の理論
A ICFモデル
B 作業療法の基礎理論
C 作業療法の実践理論
VI 世界の作業療法
A 世界作業療法士連盟(WFOT)
B 諸外国の作業療法
第2章 作業療法の教育
I 作業療法の教育体系
A 作業療法および作業療法士に関する法律
B 作業療法の教育制度
C 作業療法のカリキュラム
D 作業療法の生涯教育
E 作業療法の実践教育(臨床実習を中心に)
II 医療倫理と作業療法士に求められる資質・適性
A 医療保健福祉職に求められる倫理
B 作業療法士に求められる資質・適性
III 多職種連携によるチームアプローチ
A 専門職チームの意義と意味
B チームのタイプと特徴
IV EBMと作業療法
A EBMの概念
B 作業療法におけるエビデンスとは何か
C EBOTの実践
第3章 作業療法の過程
I 作業療法の実践過程
A 医療技術としての作業療法
B 作業療法の目的
C 作業療法の実践過程
II 評価と問題点の抽出
A 情報収集
B 初回評価
C 問題点,利点の抽出
D 統合と解釈
III 治療・指導・援助計画の立案・フォローアップ
A 治療目標の設定
B 治療内容・方法・手段の決定
C 再評価による効果判定と目標の再検討
D フォローアップ
IV 作業療法における思考過程と態度
A クリニカルリーズニング
B 自己活用
V 作業療法の現場
A 対象疾患
B 対象の時期
C 対象の場所
第4章 作業療法の実際
I 身体機能分野における作業療法実践過程
A 急性期の作業療法実践過程
B 回復期の作業療法実践過程
C 2症例を通しての身体機能領域での作業療法治療構造とリーズニング
II 精神機能分野における作業療法実践過程
A 急性期の作業療法実践過程
B 回復期の作業療法実践過程
C 2症例を通しての精神機能分野での作業療法の治療構造とリーズニング
III 発達過程分野における作業療法実践過程
A 病院での成人脳性麻痺者に対する個別作業療法
B 地域の小学校におけるコンサルテーションを主とした作業療法
IV 高齢期分野における作業療法実践過程
A 通所リハビリテーション
B 訪問リハビリテーション
C 2症例を通しての高齢期領域での作業療法治療構造とリーズニング
第5章 医療福祉制度と作業療法の管理・運営
I 医療福祉制度
A わが国の医療福祉政策
B 作業療法の診療報酬・介護報酬
C リハビリテーション医療に対する経済学的な視点と作業療法の未来
II 作業療法部門の管理・運営
A 作業療法部門の開設と起業
B 管理運営の要素
C 日常業務と管理運営
III 作業療法の記録と報告
A 記録の目的と種類
B 記録の書き方
C 報告
作業療法教育の発展に向けて
A 作業療法に対する期待の高まり
B 作業療法の発展に必要なもの
C 作業療法士の生涯教育
D 皆さんに期待すること
さらに深く学ぶために
索引
I 「作業」とは-作業療法にとっての「作業」の意味
A 作業と作業療法
B 作業療法の定義
II 作業療法の原理
A 時代背景と作業療法の歴史の概略
B 作業療法の萌芽
C 作業療法の誕生
III リハビリテーションの歴史と作業療法
A 社会情勢の変化とリハビリテーションの歴史
B 作業療法の位置づけ
C ICFと作業療法
D リハビリテーションの今後と作業療法
IV 作業療法の領域
A 作業療法の対象
B 作業療法の実践の流れ
C 作業療法の実施場所
V 作業療法の理論
A ICFモデル
B 作業療法の基礎理論
C 作業療法の実践理論
VI 世界の作業療法
A 世界作業療法士連盟(WFOT)
B 諸外国の作業療法
第2章 作業療法の教育
I 作業療法の教育体系
A 作業療法および作業療法士に関する法律
B 作業療法の教育制度
C 作業療法のカリキュラム
D 作業療法の生涯教育
E 作業療法の実践教育(臨床実習を中心に)
II 医療倫理と作業療法士に求められる資質・適性
A 医療保健福祉職に求められる倫理
B 作業療法士に求められる資質・適性
III 多職種連携によるチームアプローチ
A 専門職チームの意義と意味
B チームのタイプと特徴
IV EBMと作業療法
A EBMの概念
B 作業療法におけるエビデンスとは何か
C EBOTの実践
第3章 作業療法の過程
I 作業療法の実践過程
A 医療技術としての作業療法
B 作業療法の目的
C 作業療法の実践過程
II 評価と問題点の抽出
A 情報収集
B 初回評価
C 問題点,利点の抽出
D 統合と解釈
III 治療・指導・援助計画の立案・フォローアップ
A 治療目標の設定
B 治療内容・方法・手段の決定
C 再評価による効果判定と目標の再検討
D フォローアップ
IV 作業療法における思考過程と態度
A クリニカルリーズニング
B 自己活用
V 作業療法の現場
A 対象疾患
B 対象の時期
C 対象の場所
第4章 作業療法の実際
I 身体機能分野における作業療法実践過程
A 急性期の作業療法実践過程
B 回復期の作業療法実践過程
C 2症例を通しての身体機能領域での作業療法治療構造とリーズニング
II 精神機能分野における作業療法実践過程
A 急性期の作業療法実践過程
B 回復期の作業療法実践過程
C 2症例を通しての精神機能分野での作業療法の治療構造とリーズニング
III 発達過程分野における作業療法実践過程
A 病院での成人脳性麻痺者に対する個別作業療法
B 地域の小学校におけるコンサルテーションを主とした作業療法
IV 高齢期分野における作業療法実践過程
A 通所リハビリテーション
B 訪問リハビリテーション
C 2症例を通しての高齢期領域での作業療法治療構造とリーズニング
第5章 医療福祉制度と作業療法の管理・運営
I 医療福祉制度
A わが国の医療福祉政策
B 作業療法の診療報酬・介護報酬
C リハビリテーション医療に対する経済学的な視点と作業療法の未来
II 作業療法部門の管理・運営
A 作業療法部門の開設と起業
B 管理運営の要素
C 日常業務と管理運営
III 作業療法の記録と報告
A 記録の目的と種類
B 記録の書き方
C 報告
作業療法教育の発展に向けて
A 作業療法に対する期待の高まり
B 作業療法の発展に必要なもの
C 作業療法士の生涯教育
D 皆さんに期待すること
さらに深く学ぶために
索引
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