作業療法学概論 第4版

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作業療法士を志す学生にとって最適の導入テキスト、その改訂第4版。本書では、作業療法の歴史・原理・理論から始まり、教育体系・関連組織、臨床現場での実践過程、研究手法、社会保障制度、管理・運営・記録の方法に至るまで、作業療法に関わる知識について、網羅的かつ深く学ぶことができる。前版より目次構成を刷新し、より分かりやすい記述で、奥深く、魅力的な作業療法の世界に読者を導く。巻末資料として授業プランを収録。

シリーズ 標準作業療法学 専門分野
シリーズ監修 矢谷 令子
編集 能登 真一
発行 2021年12月判型:B5頁:304
ISBN 978-4-260-04785-2
定価 4,400円 (本体4,000円+税)

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第4版 序

 本書は作業療法をおおまかに理解してもらうことを目的にまとめられた教科書である.とはいえ,その内容は国家試験受験のためにも,さらには作業療法士となって臨床現場で働くためにも必要かつ十分に役立つものとなっている.そのため,それらのすべてを修得するには多くの困難が待ち受けていることと思われる.本書を手にしている皆さんにはその困難に果敢に立ち向かってほしいと期待しているが,それでも挫折しそうなときは,そのプレッシャーから離れても構わない.ただし,そのプレッシャーが薄れたときのために本書は手元に置いていつでもページをめくれるようにしておいてほしい.作業療法士を目指す皆さんの傍らでそっと後押しをし続けたい,というのがこの教科書を執筆した者たちの願いであり,役割だと考えている.
 さて,本書は2004年に発刊された初版から3度目の改訂を行った第4版である.年数にして約18年が経ち,初版の執筆に携わった先輩たち,つまりわが国の作業療法の発展に大きく貢献した人たちであるが,彼らの多くは臨床や教育現場から退いた.日本で初めての作業療法士が誕生して55年余りとなり,臨床や教育の現場でも世代交代がおこったということになる.そのため本書を編集するにあたっては,そのような先輩たちに敬意を表しながら,日本における作業療法の文化ともいうべき,受け継がれてきた理念や精神をまっすぐに引き継ぐことを心がけた.しかしその一方で,作業療法に関連した種々の概念や学習環境も大きく変化してきたため,今の時代に合わせた変化も取り入れた.端的にいえば,「温故知新=古きをたずねて新しきを知る」という新鮮な気持ちで編集に挑んだことになる.
 本書は大きく前半と後半に分けて編集されている.前半は,作業療法の理解と作業療法士になるための基本的な知識の修得が目標となっている.第I章では,作業療法の概略を理解するために,作業療法で用いられる「作業」の意味や作業療法の歴史や原理を学ぶ.ここでは作業療法がどのように誕生し,今日まで発展してきたのかという,いわば作業療法の物語を紐解いていくことになる.続く第II章では,「作業」をどのように評価や治療に用いていくのかという,作業療法の醍醐味ともいえる作業の分析のしかたや治療への応用のしかたを理解する.第III章では,作業療法士になるために必要な倫理的な構え,養成制度,生涯教育,研究,そして職能団体といったさまざまな関連事項にふれながら,医療関連職としての意識を高めていくことになる.本書の後半は作業療法のより実践的な内容を修得することが目標となる.第IV 章では,作業療法の評価から治療に至る実践的な流れを修得する.続く第V章では,その実践的な流れを身体・精神・発達・高齢期という4つの分野ごとにそれぞれの目的や事例を通して確認していく.そして最後の第VI章では,作業療法の基盤となる医療や介護など社会保障制度について学び,臨床現場で必要とされる管理運営業務を把握することで,臨床現場を意識した専門職としての自覚を研ぎ澄ましていくことになる.
 このように本書は,作業療法の初学者である皆さんが,作業療法の「作業」とは何かということから学習し始め,臨床現場における管理業務の理解までを一括して収めてあるわけであるが,この内容すべてを1年生のうちに修得すべきであるというわけではない.リハビリテーション医学をはじめとした臨床医学の学習もこの先に控えている以上,それらを修得したあとでようやく理解できるといった内容も多く含まれている.この観点に立てば,臨床実習に出るころ,あるいは卒業するまでに概略を理解すればよい,という程度の心づもりでいていただければ幸いである.
 最後に本書を手にしている皆さんに,作業療法士になることを急がないでほしいということをお伝えしたい.私の経験に照らしても,自分自身の成長なくして,作業療法士としての成功は難しいと感じるからある.もちろん,このことは留年や休学をして卒業を遅らせるべきだと言っているのではない.学生時代にいろいろな出会いや経験を通して多様な価値観にふれ,自分自身を成長させていってほしいということを強調したいのである.
 日本は少子高齢化がよりいっそう進み,人口減少社会に突入している.少子化は勤労世代の縮小に直結し,人口減少は国内経済の縮小をもたらす.そのため,税や保険料など働く世代の負担は今後ますます大きくなっていくであろう.一方で,このような時代に,あえて作業療法士を目指す皆さんには社会から寄せられる期待も大きい.それは病気や障害をかかえた対象者を治療したり援助したりして医療や介護の臨床現場で貢献することはもちろん,誰もが健康で安心して生活できる地域社会を築いていってほしいという期待にほかならない.その意味では,人々の生活や環境の専門家である作業療法士はそれだけやりがいのある職業になりうるのである.私が作業療法士になったのは30歳のときであるが,皆さんの多くは高校を卒業して間もない,物心がついてたかだか10年足らずという年月で作業療法士という職業にたどり着いた.そのような決断に対し,素直に敬意を表するとともに,本書が次世代を担う皆さんの支えになれるよう心から祈っている.

 2021年8月
 能登真一

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I 作業療法の紹介
 GIO,SBO,修得チェックリスト
 1 「作業」の意味
  A 作業療法の定義
  B 医療とリハビリテーションの理念
  C 作業療法における「作業」
  D 「作業」を治療として用いる意味
  E 作業療法の対象
  F 作業療法の現場
  【COLUMN】社会参加と分身ロボット
 2 作業療法の歴史と原理
  A 作業療法の歴史
  B 作業療法の原理
  【COLUMN】恢復するということ――大江健三郎さんの講演から
 3 作業療法に関連する予備知識
  A 人間とその理解
  B 病気と障害の理解
  C 対人関係ダイナミクス
  D コミュニケーションスキル
  【COLUMN】対象喪失と障害受容
 4 作業療法の実践現場
  A 医療の実践現場
  B 介護や福祉の実践現場
  C 療育や教育の実践現場
  D 行政や司法の実践現場
  E その他
  【COLUMN】作業療法士はコンピュータ化した社会でも生き残れるか?

II 作業の分析と治療への適用
 GIO,SBO,修得チェックリスト
 1 作業の分析
  A 作業分析とは
  B 作業分析の目的
  C 作業分析の手法
  D 評価と治療への適用
  E まとめ
  【COLUMN】作業療法に副作用はあるか?
 2 作業の治療的適用
  A 心身機能面への適用(基本的能力)
  B 活動・参加面への適用
  C 環境因子への適用
  【COLUMN】ことわざに作業療法の本質を学ぶ
 3 作業療法の理論
  A 理論を学ぶ目的
  B 作業療法の諸理論

III 作業療法士の養成と教育
 GIO,SBO,修得チェックリスト
 1 作業療法士に求められる資質と倫理
  A 作業療法士に求められる資質・適性
  B 作業療法士が守るべき倫理
  【COLUMN】自分を好きになるということ
 2 作業療法士の教育
  A 作業療法士の養成制度
  B 指定規則とカリキュラム
  C 作業療法の実践教育
  D 卒後教育
 3 作業療法研究とエビデンス
  A 作業療法のエビデンス構築とその活用
  B 作業療法の研究方法
 4 日本作業療法士協会とその役割
  A 日本作業療法士協会の設立
  B 職能団体としての役割
  C 学術研究団体としての役割
 5 世界作業療法士連盟とその役割
  A 世界作業療法士連盟(WFOT)の成り立ち
  B WFOTの役割
  C 諸外国の作業療法

IV 作業療法の実践過程
 GIO,SBO,修得チェックリスト
 1 作業療法の仕組み
  A 作業療法士の業務
  B 作業療法の目的
  C 作業療法の実践過程
 2 評価と問題点の抽出
  A 情報収集の段階
  B 初回評価
  C 問題点と利点の整理
  D 統合と解釈
  E 治療目標の設定
 3 治療プログラムの立案・フォローアップ
  A 治療プログラムの決定
  B 治療・指導・援助の実施
  C 再評価による効果判定と目標の再検討
  D フォローアップ
 4 臨床的思考過程と作業療法士の自己活用
  A クリニカル・リーズニング
  B 自己活用
  【COLUMN】作業療法と手――「さわる」と「ふれる」の違い
  【COLUMN】バーチャル・リアリティと2次元の世界

V 作業療法の実際
 GIO,SBO,修得チェックリスト
 1 身体機能分野における作業療法の実際
  A 身体機能分野における作業療法の原則
  B 身体機能分野における作業療法の実際
 2 精神機能分野における作業療法の実際
  A 精神機能分野における作業療法の原則
  B 精神機能分野における作業療法の実際
 3 発達過程分野における作業療法の実際
  A 発達過程分野における作業療法の原則
  B 発達過程分野における作業療法の実際
 4 高齢期分野における作業療法の実際
  A 高齢期分野における作業療法の原則
  B 高齢期分野における作業療法の実際

VI 作業療法の管理運営
 GIO,SBO,修得チェックリスト
 1 社会保障制度の理解
  A 社会保障制度のあらまし
  B 医療保険制度と診療報酬
  C 介護保険制度と介護報酬
  D 障害児・者サービス
  【COLUMN】作業療法の金銭的価値について
 2 作業療法部門の管理運営
  A 作業療法部門の位置づけ
  B 業務管理
  C 組織マネジメント
  D 多職種連携(チーム医療)
 3 作業療法の記録と報告
  A 記録の目的と種類
  B 記録の書き方
  C 報告のしかた

 作業療法教育の発展に向けて
  A 作業療法教育の両義性
  B 優れた作業療法士になるための人間教育
  C 今こそ教養教育

 さらに深く学ぶために

 【資料】作業療法学概論の授業プラン

索引

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