糖尿病に強くなる!
療養指導のエキスパートを目指して
長い療養生活で無理のないセルフケアを実現するために
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治療が生活に密着し、その主体は患者自身という糖尿病の療養生活は、山あり谷ありで、ドロップアウトしがち。多くの壁を乗り越え、無理なくセルフケアを行えるよう、患者のもつ力を最大限に引き出す療養指導の「プロ」としてのあなた自身、そしてチームに必要な知識・スキルを、この1冊にまとめた。
編集 | 桝田 出 |
---|---|
発行 | 2015年06月判型:B5頁:224 |
ISBN | 978-4-260-02102-9 |
定価 | 2,860円 (本体2,600円+税) |
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- 目次
- 書評
序文
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読者のみなさんへ
わが国の糖尿病を取り巻く状況は,転換期を迎えています。2012年厚生労働省の国民健康・栄養調査では,糖尿病予備軍が初めて減少し,糖尿病患者の増加も少なくなりました。糖尿病予備軍が減少した理由としては,2001年から発足した日本糖尿病療養指導士認定制度や2010年から特定健診・特定保健指導が開始されたことが要因と考えられています。このような好影響がみられる反面,糖尿病患者が高齢化して,糖尿病歴が30年を超える方も多くみられるようになりました。また近年では,認知症,がん,骨粗鬆症などと糖尿病との関連が示唆され,介護の問題やこれらの疾患についても考えねばなりません。さらに,インクレチン関連薬やSGLT2阻害薬など,新たな糖尿病治療薬が相次いで登場しており,薬の特徴や副作用などにも十分な注意が必要です。
状況がどのように変わろうとも,患者さんの自己管理が糖尿病の予防や治療の基本であり,療養指導にあたる医療スタッフの役割が重要であることに変わりはありません。したがって,医療スタッフには今まで以上に幅広い知識が必要です。
本書は,2011年に発刊された『JJNスペシャル これだけは知っておきたい糖尿病』をもとに,糖尿病療養指導に必要な最新の知見を加えて書き改めました。執筆者は,糖尿病療養指導に造詣の深い専門医,第一線で療養指導に携わっている看護師や健康運動指導士,看護・栄養学の教鞭をとっておられる教員の方々にお願いしました。種類の多い糖尿病治療薬の機序や使い方など,全体をとおして理解しやすい記載を心がけていただきましたので,糖尿病診療に従事しているすべての職種の方の参考書として活用していただけると思います。また,事例やコラムも多数収載しましたので,日頃の疑問の答えが見つかるかもしれません。糖尿病療養指導自験例の記録例も追記しましたので,糖尿病療養指導士を目指す方の参考にもなるでしょう。
糖尿病診療には「和」と「輪」が大事です。「和」は患者さんとのハーモニー,「輪」は介護スタッフなどを含めた幅広い職種とのネットワークと捉えています。また,一緒に語り合うという点での「話」も必要です。「和」と「輪」を拡げるための一助として,本書がお役に立てることを願ってやみません。
最後に,本書の刊行にご尽力や有益な助言をいただいた医学書院看護出版部 山内 梢氏に深謝申し上げます。
2015年5月吉日
桝田 出
わが国の糖尿病を取り巻く状況は,転換期を迎えています。2012年厚生労働省の国民健康・栄養調査では,糖尿病予備軍が初めて減少し,糖尿病患者の増加も少なくなりました。糖尿病予備軍が減少した理由としては,2001年から発足した日本糖尿病療養指導士認定制度や2010年から特定健診・特定保健指導が開始されたことが要因と考えられています。このような好影響がみられる反面,糖尿病患者が高齢化して,糖尿病歴が30年を超える方も多くみられるようになりました。また近年では,認知症,がん,骨粗鬆症などと糖尿病との関連が示唆され,介護の問題やこれらの疾患についても考えねばなりません。さらに,インクレチン関連薬やSGLT2阻害薬など,新たな糖尿病治療薬が相次いで登場しており,薬の特徴や副作用などにも十分な注意が必要です。
状況がどのように変わろうとも,患者さんの自己管理が糖尿病の予防や治療の基本であり,療養指導にあたる医療スタッフの役割が重要であることに変わりはありません。したがって,医療スタッフには今まで以上に幅広い知識が必要です。
本書は,2011年に発刊された『JJNスペシャル これだけは知っておきたい糖尿病』をもとに,糖尿病療養指導に必要な最新の知見を加えて書き改めました。執筆者は,糖尿病療養指導に造詣の深い専門医,第一線で療養指導に携わっている看護師や健康運動指導士,看護・栄養学の教鞭をとっておられる教員の方々にお願いしました。種類の多い糖尿病治療薬の機序や使い方など,全体をとおして理解しやすい記載を心がけていただきましたので,糖尿病診療に従事しているすべての職種の方の参考書として活用していただけると思います。また,事例やコラムも多数収載しましたので,日頃の疑問の答えが見つかるかもしれません。糖尿病療養指導自験例の記録例も追記しましたので,糖尿病療養指導士を目指す方の参考にもなるでしょう。
糖尿病診療には「和」と「輪」が大事です。「和」は患者さんとのハーモニー,「輪」は介護スタッフなどを含めた幅広い職種とのネットワークと捉えています。また,一緒に語り合うという点での「話」も必要です。「和」と「輪」を拡げるための一助として,本書がお役に立てることを願ってやみません。
最後に,本書の刊行にご尽力や有益な助言をいただいた医学書院看護出版部 山内 梢氏に深謝申し上げます。
2015年5月吉日
桝田 出
目次
開く
読者のみなさんへ
I 糖尿病の基礎知識
1 糖尿病の原因と分類
2 健常人と糖尿病患者の代謝の違い
3 糖尿病の診断基準
COLUMN
・糖尿病診療システムの今
・HbA1c表記がNGSPで統一に
II 糖尿病の症状と治療
1 糖尿病の症状と問診方法
2 糖尿病の治療
1 基本的な治療方針
2 血糖コントロールの指標と血糖自己測定
3 食事療法
4 運動療法
5 薬物療法
1 経口血糖降下薬
2 注射薬
COLUMN
・月経と血糖値
・持続血糖モニター(CGM)
・服薬継続を向上するための考え方-アドヒアランスとコンコーダンス
・災害時の対策と対応
III セルフケアを支援するための療養指導
1 ライフステージ別日常生活の指導
1 療養指導の基本的な考え方
2 乳幼児期~思春期
3 就労期(単身者)
4 高齢期
5 妊娠・出産
2 セルフケア行動を促すこころのケア
1 場面別患者の心理とケア
2 行動変容を促すアプローチ
COLUMN
・内臓脂肪測定をいかした療養指導
IV 合併症・併存疾患とそのケア
1 急性合併症と慢性合併症
2 急性合併症
1 糖尿病昏睡と低血糖
2 感染症とシックデイ
3 慢性合併症・併存疾患
1 眼合併症
2 腎症
3 動脈硬化
4 神経障害
5 足病変
6 骨粗鬆症
7 皮膚疾患
8 歯周病
9 尿路系障害
10 消化器障害
11 認知症
COLUMN
・無自覚性低血糖と自動車運転
・糖尿病腎症病期分類改訂のポイントとCKD 重症度分類との関係
・糖尿病とがん
付録 糖尿病療養指導の記録例
索引
I 糖尿病の基礎知識
1 糖尿病の原因と分類
2 健常人と糖尿病患者の代謝の違い
3 糖尿病の診断基準
COLUMN
・糖尿病診療システムの今
・HbA1c表記がNGSPで統一に
II 糖尿病の症状と治療
1 糖尿病の症状と問診方法
2 糖尿病の治療
1 基本的な治療方針
2 血糖コントロールの指標と血糖自己測定
3 食事療法
4 運動療法
5 薬物療法
1 経口血糖降下薬
2 注射薬
COLUMN
・月経と血糖値
・持続血糖モニター(CGM)
・服薬継続を向上するための考え方-アドヒアランスとコンコーダンス
・災害時の対策と対応
III セルフケアを支援するための療養指導
1 ライフステージ別日常生活の指導
1 療養指導の基本的な考え方
2 乳幼児期~思春期
3 就労期(単身者)
4 高齢期
5 妊娠・出産
2 セルフケア行動を促すこころのケア
1 場面別患者の心理とケア
2 行動変容を促すアプローチ
COLUMN
・内臓脂肪測定をいかした療養指導
IV 合併症・併存疾患とそのケア
1 急性合併症と慢性合併症
2 急性合併症
1 糖尿病昏睡と低血糖
2 感染症とシックデイ
3 慢性合併症・併存疾患
1 眼合併症
2 腎症
3 動脈硬化
4 神経障害
5 足病変
6 骨粗鬆症
7 皮膚疾患
8 歯周病
9 尿路系障害
10 消化器障害
11 認知症
COLUMN
・無自覚性低血糖と自動車運転
・糖尿病腎症病期分類改訂のポイントとCKD 重症度分類との関係
・糖尿病とがん
付録 糖尿病療養指導の記録例
索引
書評
開く
糖尿病を取り巻く環境の変化に素早く順応する力を養う
書評者: 鞍田 三貴 (武庫川女子大准教授・食物栄養学)
私が管理栄養士として病院に勤務し,糖尿病教室や栄養食事指導を始めたのは1990年頃です。当時の糖尿病教育入院は,40~50歳代の肥満を伴う糖尿病患者さんが多く,食品交換表の勉強などが組み込まれていました。糖尿病療養指導は,多職種によるチームで行われておらず,栄養・食事指導は食物栄養のみに着目した指導型教育であったように思います。
しかし時が流れて今,わが国は世界に類を見ないスピードで高齢化が進行し,超高齢社会に突入しました。その中で,医療においては,単に長く生きるのではなく,健康を維持・増進しつつ寿命を延ばす取り組みがなされています。これを実現するために,医療従事者には,指導教育型から脱却し,セルフエフィカシィ(自己効力感)を高める技術が求められます。本書は,そんな社会のニーズに合わせて,糖尿病の基本から,ライフステージごとの生活指導に留まらず,心理面とそのケア,行動変容を促すアプローチなどについても述べられています。また,災害時の対策と対応から服薬アドヒアランス,糖尿病とがんなど,教科書にはみられないコラム記事がとても新鮮です。
本書は,食事・運動療法の実践,薬物療法などの糖尿病自己管理に必要な事柄に加え,要所に挙げられた事例では高齢者特有の問題にも着目しています。私は今,地域医療を担う開業医院と連携し,地域の糖尿病患者さんへの栄養支援を行っていますが,老老介護,独居高齢者の増加により,今までの食事指導では通用しない難しさを感じています。糖尿病のより良い治療のためには,患者自身が自己管理を継続することが必要ですが,高齢者にみられる認知機能障害は糖尿病治療を妨げる最大の要因です。
われわれ療養指導者は,糖尿病を取り巻く環境の変化に素早く順応する力を養うことと,「糖尿病に強くなる」ことが必要です。本書はそれに大いに役立つ参考書であると思います。
療養支援のノウ・ハウが,ぎっしり満載!
書評者: 森谷 敏夫 (京大大学院教授・応用生理学)
このユニークで,しかもほぼ全ての糖尿病療養指導に必要な項目が網羅されている本を編集された桝田出先生とは,京都大学附属病院第二内科で当時の主任教授をされていた中尾一和先生のもとで運動療法に関する共同研究を開始した時からのお付き合いである。もう,30年近くになる。桝田先生は心臓循環器系のエキスパートで,その手腕を買われて東京慈恵会医科大学から京大第二内科に来られた経緯がある。その後は民間のJT専売病院を経て,現在は,武田病院健診センター所長としてご活躍である。基礎研究,臨床応用,健診業務など実に幅広い経験を持たれた先生であり,現場のニーズを肌で感じ,この素晴らしい本ができあがった背景もそこにあるだろう。執筆を担当された先生方も京大医学部の専門医をはじめ,糖尿病療養指導に直接かかわっておられる先生方で構成されている。
本書は,「I.糖尿病の基礎知識」「II.糖尿病の症状と治療」「III.セルフケアを支援するための療養指導」そして「IV.合併症・併存疾患とそのケア」の4章から成っている。どの章も一貫して最新の知見が見やすい図表などで説明されており,ツボを押さえたコラムも散りばめられており,一口メモ(NOTE)と相まって絶妙なコンビネーションとなっている。糖尿病患者が無理なく継続的に療養生活を送れるよう支援するためのノウ・ハウが,ぎっしり満載されている必読の書である。
糖尿病患者の高齢化がますます進んでいる現状と,糖尿病が認知症,がん,骨粗鬆症などの疾患とも関連している事実は,医療スタッフとしてこれまで以上に幅広い知識が必要になってくることが容易に考えられる。長期にわたる糖尿病患者の療養指導が患者のQOLや認知機能維持,合併症予防・改善に絶対不可欠な状況の中で,本書の果たす役割は絶大であると確信している。医師をはじめ,コメディカル,糖尿病診療に従事している全ての職種の方々の参考書として大いに活用していただきたい。
長年,運動生理学,運動医科学に携わってきた専門家の一人として,この本を120%推薦する次第である。
痒いところに手が届き,振り返りにも役立つ
書評者: 和田 幹子 (NPO法人西東京臨床糖尿病研究会理事/けいゆう病院看護部統括師長)
“療養指導のエキスパート”には,患者さんの心理状態を踏まえた個別指導ができ,糖尿病教室での集団指導の講義内容もわかりやすく,カンファレンスでも専門的知識に裏付けられた根拠をもって積極的に発言して糖尿病医療チームを牽引する……というイメージがあります。この本は,隅から隅まで読むことで,「熟練者」であり,「専門家」でもあるエキスパートになれる! と思わせる一冊です。
私が糖尿病ケアの初心者だったら,第1章,第2章の基礎的な部分を,専門用語などが解説されている“NOTE”を使いながら,重要なところに付箋をたくさん貼って読み進めます。そして,患者さんへの個別指導の時はもちろんのこと,カンファレンスの時も,糖尿病教室の時も,すぐ開けるように近くに置きます。そして来たるべき療養指導士の認定に向けて,付録の自験例の記録を参考に,自分が指導した患者さんを思い出しながら事例をまとめます。
すでに療養指導士として2回更新している私の活用方法としては,まず“COLUMN”で最新の知識やトピックス,今取り組む必要がある災害対策などを確認します。次に,第1章,第2章で「糖尿病の基礎知識」や「糖尿病の症状と治療」を復習します。本書は「このようなことがある」というところから,「どう対応すればよいか」まで述べられています。例えば,“よくある質問と思い違い”には,患者さんからよく聞かれる質問や,療養指導士の資格を持っていても回答に迷う事柄がまとめられています。「そこが知りたかった!」ことへの理解が深まり,後輩の療養指導士の指導にも活用できます。
そして,さらに療養指導の質を上げるべく,第3章,第4章を基にセルフケア支援や合併症を持つ患者さんの支援について,これまでの自分の指導を振り返り,「自分が行った指導が患者さんのためになっていたか」「患者さんのセルフケアを支援していたか」「チームで取り組めていたか」などを評価します。実際,本書を読むことが,これまでの指導の中で根拠のある知識を患者さんの個別性に合わせて真摯に伝えてきたか,患者さんのこころのケアが十分にできていたか,自己の姿勢を見直す機会となりました。
痒いところに手が届き,振り返りにも役立つ本書は,療養指導のエキスパートを目指すひとりとしてもとてもお勧めの一冊です。
書評者: 鞍田 三貴 (武庫川女子大准教授・食物栄養学)
私が管理栄養士として病院に勤務し,糖尿病教室や栄養食事指導を始めたのは1990年頃です。当時の糖尿病教育入院は,40~50歳代の肥満を伴う糖尿病患者さんが多く,食品交換表の勉強などが組み込まれていました。糖尿病療養指導は,多職種によるチームで行われておらず,栄養・食事指導は食物栄養のみに着目した指導型教育であったように思います。
しかし時が流れて今,わが国は世界に類を見ないスピードで高齢化が進行し,超高齢社会に突入しました。その中で,医療においては,単に長く生きるのではなく,健康を維持・増進しつつ寿命を延ばす取り組みがなされています。これを実現するために,医療従事者には,指導教育型から脱却し,セルフエフィカシィ(自己効力感)を高める技術が求められます。本書は,そんな社会のニーズに合わせて,糖尿病の基本から,ライフステージごとの生活指導に留まらず,心理面とそのケア,行動変容を促すアプローチなどについても述べられています。また,災害時の対策と対応から服薬アドヒアランス,糖尿病とがんなど,教科書にはみられないコラム記事がとても新鮮です。
本書は,食事・運動療法の実践,薬物療法などの糖尿病自己管理に必要な事柄に加え,要所に挙げられた事例では高齢者特有の問題にも着目しています。私は今,地域医療を担う開業医院と連携し,地域の糖尿病患者さんへの栄養支援を行っていますが,老老介護,独居高齢者の増加により,今までの食事指導では通用しない難しさを感じています。糖尿病のより良い治療のためには,患者自身が自己管理を継続することが必要ですが,高齢者にみられる認知機能障害は糖尿病治療を妨げる最大の要因です。
われわれ療養指導者は,糖尿病を取り巻く環境の変化に素早く順応する力を養うことと,「糖尿病に強くなる」ことが必要です。本書はそれに大いに役立つ参考書であると思います。
療養支援のノウ・ハウが,ぎっしり満載!
書評者: 森谷 敏夫 (京大大学院教授・応用生理学)
このユニークで,しかもほぼ全ての糖尿病療養指導に必要な項目が網羅されている本を編集された桝田出先生とは,京都大学附属病院第二内科で当時の主任教授をされていた中尾一和先生のもとで運動療法に関する共同研究を開始した時からのお付き合いである。もう,30年近くになる。桝田先生は心臓循環器系のエキスパートで,その手腕を買われて東京慈恵会医科大学から京大第二内科に来られた経緯がある。その後は民間のJT専売病院を経て,現在は,武田病院健診センター所長としてご活躍である。基礎研究,臨床応用,健診業務など実に幅広い経験を持たれた先生であり,現場のニーズを肌で感じ,この素晴らしい本ができあがった背景もそこにあるだろう。執筆を担当された先生方も京大医学部の専門医をはじめ,糖尿病療養指導に直接かかわっておられる先生方で構成されている。
本書は,「I.糖尿病の基礎知識」「II.糖尿病の症状と治療」「III.セルフケアを支援するための療養指導」そして「IV.合併症・併存疾患とそのケア」の4章から成っている。どの章も一貫して最新の知見が見やすい図表などで説明されており,ツボを押さえたコラムも散りばめられており,一口メモ(NOTE)と相まって絶妙なコンビネーションとなっている。糖尿病患者が無理なく継続的に療養生活を送れるよう支援するためのノウ・ハウが,ぎっしり満載されている必読の書である。
糖尿病患者の高齢化がますます進んでいる現状と,糖尿病が認知症,がん,骨粗鬆症などの疾患とも関連している事実は,医療スタッフとしてこれまで以上に幅広い知識が必要になってくることが容易に考えられる。長期にわたる糖尿病患者の療養指導が患者のQOLや認知機能維持,合併症予防・改善に絶対不可欠な状況の中で,本書の果たす役割は絶大であると確信している。医師をはじめ,コメディカル,糖尿病診療に従事している全ての職種の方々の参考書として大いに活用していただきたい。
長年,運動生理学,運動医科学に携わってきた専門家の一人として,この本を120%推薦する次第である。
痒いところに手が届き,振り返りにも役立つ
書評者: 和田 幹子 (NPO法人西東京臨床糖尿病研究会理事/けいゆう病院看護部統括師長)
“療養指導のエキスパート”には,患者さんの心理状態を踏まえた個別指導ができ,糖尿病教室での集団指導の講義内容もわかりやすく,カンファレンスでも専門的知識に裏付けられた根拠をもって積極的に発言して糖尿病医療チームを牽引する……というイメージがあります。この本は,隅から隅まで読むことで,「熟練者」であり,「専門家」でもあるエキスパートになれる! と思わせる一冊です。
私が糖尿病ケアの初心者だったら,第1章,第2章の基礎的な部分を,専門用語などが解説されている“NOTE”を使いながら,重要なところに付箋をたくさん貼って読み進めます。そして,患者さんへの個別指導の時はもちろんのこと,カンファレンスの時も,糖尿病教室の時も,すぐ開けるように近くに置きます。そして来たるべき療養指導士の認定に向けて,付録の自験例の記録を参考に,自分が指導した患者さんを思い出しながら事例をまとめます。
すでに療養指導士として2回更新している私の活用方法としては,まず“COLUMN”で最新の知識やトピックス,今取り組む必要がある災害対策などを確認します。次に,第1章,第2章で「糖尿病の基礎知識」や「糖尿病の症状と治療」を復習します。本書は「このようなことがある」というところから,「どう対応すればよいか」まで述べられています。例えば,“よくある質問と思い違い”には,患者さんからよく聞かれる質問や,療養指導士の資格を持っていても回答に迷う事柄がまとめられています。「そこが知りたかった!」ことへの理解が深まり,後輩の療養指導士の指導にも活用できます。
そして,さらに療養指導の質を上げるべく,第3章,第4章を基にセルフケア支援や合併症を持つ患者さんの支援について,これまでの自分の指導を振り返り,「自分が行った指導が患者さんのためになっていたか」「患者さんのセルフケアを支援していたか」「チームで取り組めていたか」などを評価します。実際,本書を読むことが,これまでの指導の中で根拠のある知識を患者さんの個別性に合わせて真摯に伝えてきたか,患者さんのこころのケアが十分にできていたか,自己の姿勢を見直す機会となりました。
痒いところに手が届き,振り返りにも役立つ本書は,療養指導のエキスパートを目指すひとりとしてもとてもお勧めの一冊です。
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