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乳幼児健診マニュアル 第5版

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本書編集の委員会は、全国でもアクティブに活動する先導的な団体として、特に乳幼児健診では『福岡式』として認知度が高い。改訂にあたって基本のコンセプトは第4版までを踏襲、詳しさよりは要点をまとめた使いやすさを心がけ、乳幼児健診を良く知らない人でも合格点の健診ができることを目標としている。今版では、情報内容を更新し、さらに各月齢別健診の目安やコラムを新たに整理することで読者の利便性を追求した。
編集 福岡地区小児科医会 乳幼児保健委員会
発行 2015年08月判型:B5頁:160
ISBN 978-4-260-02158-6
定価 3,520円 (本体3,200円+税)
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第5版を編集するにあたって

 近年,子どもたちがおかれる環境は大きく変化しています.しばしば社会問題として取り上げられる少子化,結婚・出産年齢の高齢化,共働きの増加,核家族化,貧困・格差の広がりは大人の問題として捉えられがちですが,子育てに大きな影響を及ぼしています.子育ての場として保育園が大きな役割を担うようになり,家族の役割分担も変化しています.大人の生活の多様化に伴い,子育てとそれにかかわる問題は多様化し,地域,行政,医療からの柔軟な支援が求められています.
 このような状況のなか,母子の健康水準を向上させるためのさまざまな取り組みを,関係者,関係団体,関係機関が一体となって推進する国民運動計画として平成13年に開始された「健やか親子21」は,平成27年度から新たな10年計画(第2次)が始まりました.そのなかに主要な課題として取り上げられている,切れ目ない妊産婦・乳幼児への保健対策,子どもの健やかな成長を見守り育む地域づくり,育てにくさを感じる親に寄り添う支援,妊娠期からの児童虐待防止対策,といったテーマに小児科医が最も身近にかかわるのが乳幼児健診です.

 今回の改訂にあたって,各月齢別健診の項の最初に「発達の目安・ポイント一覧」としてその月齢のイメージをつかむための要約を追加しました.また,育児相談・育児支援のパートでは「子どもの虐待への気づきと支援」,「母親のメンタルヘルスと育児支援」を新たな執筆者にお願いし,全体を通して細部にわたるまで精査し改訂を加えました.
 今年は本書の前身である「乳児健診マニュアル」が1985年6月に発刊されて30年になります.福岡市では1985年10月から公費負担による10か月児健診が地区で初めて個別健診として開始されることになり,「乳児健診マニュアル」は必要な内容を網羅し,かつわかりやすい講習会用のテキストとして,「健診する開業医の先生方のために」の副題で小児科を専門としない他科の医師の参加も考慮し作成されました.1992年4月に医学書院から「乳幼児健診マニュアル」として出版されてからも,その流れを引き継ぎ今回の第5版に至っています.なお1985年当初から,本書のわかりやすさの象徴である赤ちゃんのイラストは,松本壽通先生がお描きになったものです.

 最後になりましたが,多忙ななか改訂作業に多くの時間を割いていただいた執筆者の先生方,第4版から細部にまで目を通し編集に深く携わっていただいている花井敏男先生,第5版の発刊にご尽力いただいた医学書院の塩田高明・杉林秀輝両氏に心より感謝申し上げます.

 2015年7月
 乳幼児健診マニュアル編集委員会
 編集責任者  稲光 毅

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乳幼児健診について
  健診の心構え
  乳幼児健診はいつ行うか

乳幼児健診の実際
  診察の前に行うことがら
  一般理学的検査の手順
  発達診断学的診察の実際
  発達障害が疑われる子どものみかたと対応

月齢別の健診のしかた
  1か月児健診
  4か月児健診
  7か月児健診
  10か月児健診
  12か月児健診
  1歳6か月児健診
  3歳児健診
  5歳児健診

育児相談・育児支援
  1.育児相談のポイント-特に健診現場における育児支援の実際
  2.乳幼児の生活習慣
  3.乳幼児の栄養指導
  4.事故防止
  5.予防接種
  6.食物アレルギー
  7.スキンケア
  8.禁煙指導
  9.子どもの歯の衛生
  10.子どもの虐待への気づきと支援
  11.母親のメンタルヘルスと育児支援

索引

コラム
  発達検査
  日本語版M-CHATと使用法
  修正月齢(年齢)
  病児保育
  乳幼児突然死症候群
  障害児の育児
  シャフリングベビー
  乳幼児揺さぶられ症候群
  お乳離れの時期は?
  ペリネイタルビジット
  真性・仮性包茎
  保育園・幼稚園と健康診断

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さらに細やかな見直しがなされた乳幼児健診必携のマニュアル
書評者: 横田 俊一郎 (横田小児科医院院長)
 小児診療に携わる者であれば誰もが知る『乳幼児健診マニュアル』の第5版が出版された。本書は1992年に医学書院から第1版が出版されたが,その前身となる『乳児健診マニュアル』は1985年6月に発刊されており,今年で30年という節目の年を迎えることになるという。当時新たに始まった10か月児健診に,他科の医師も参加することを視野に入れて作られたと最初のマニュアルには記されている。

 本書はほぼ完成された乳幼児健診のマニュアルである。携帯しやすく手元に置きやすいサイズで,しかも小児科専門医以外の医師が診察することも考え,乳幼児健診に必要な事項が過不足なく網羅されている。さまざまなマニュアル本が出版されているが,実際に健診を行う際にこの本ほど手ごろなものはない。

 内容も第4版で既に完璧と思われたが,第5版ではさらに細かいところの改訂がなされている。まずは表紙をめくった見開きに,各月齢の発達の目安・ポイントが本文より抜粋されて掲載されている。これから健診を行う児の月齢を頭に入れ,このページを確認してから健診に臨むことができる。「月齢別の健診のしかた」は8項目中6項目の執筆者が交代した。内容に大きな変更はないが各月齢の「発達の目安・ポイント一覧」が最初に示され,さらに利用しやすくなるよう細やかな見直しがなされている。

 「すべての子どもが健やかに育つ社会」を目指して今年から始まった健やか親子21(第2次)の新たな計画を踏まえ,重点課題である「育てにくさを感じる親に寄り添う支援」「妊娠期からの児童虐待防止対策」に主眼を置いた改訂も行われている。「育児相談・育児支援」のパートでは,「母親のメンタルヘルスと育児支援」の項目が独立してより詳細な内容となっており,「子供の虐待への気づきと支援」では,健診の場での虐待防止へのかかわりが述べられている。

 米国と同様に,わが国の小児のプライマリケアを担う医師の仕事が感染症診療から,子どもの健康を守り,増進させることに重心を移してきていることは明らかである。小児のプライマリケアを担う医師,小児科専門医だけでなく,脚光を浴びている総合診療専門医をはじめ地域のプライマリケアを担っている医師の誰もが,乳幼児健診に取り組まねばならない時代になった。日本小児科学会も「小児科医は子どもの総合医である」と宣言し,乳幼児健診を中心とする研修会を定期的に開催するようになった。本書の果たす役割は,ますます大きくなっているように見える。

 本書を親しみやすいものにしている大きな要因の一つに,可愛い赤ちゃんのイラストがある。30年間使われ続けているこのイラストが,乳幼児健診マニュアルの生みの親の一人である松本壽通先生がお描きになったものであることを巻頭言で知り,この本への愛着がますます強くなった。乳幼児健診にかかわる全ての人に利用していただくことを切に願うものである。
的確な指導に必要な知識をわかりやすく解説
書評者: 五十嵐 隆 (国立成育医療研究センター理事長)
 小児科医は子どもの総合医です。小児科医を長年やってきて,他の診療科の医師,とりわけ内科医と比べると,小児科医は臓器別ではなく子どもに関する全ての問題に対応しようとする姿勢が鮮明に記憶に残っています。では,他の診療科の医師にはできない小児科の究極の専門性はどこにあるのでしょうか?

 子どもの感染症への予防・対応と発達への評価・対応の2つの点に,小児科医の独自性が強く表れると私は考えます。

 子どもの感染症への予防・対応の点で,大きな変化が生じています。これまで先進諸国に比べてずいぶんと遅れていたわが国の予防接種体制も,近年少しずつ改善されてきました。その結果,わが国の子どもの疾病構造に極めて大きな変化が生じています。b型インフルエンザ桿菌による細菌性髄膜炎,敗血症,中耳炎,股関節炎などが激減し,ロタウイルスが原因となる下痢嘔吐症による入院治療が必要な脱水症患者も減少しています。小児に比較的多く見られる感染症への対策においては,発症前の予防や重症化の軽減のほうが発症後の治療よりも有効であることが証明されつつあります。

 一方,子どものこころと体の発達を適切に評価し,問題点を探し出して的確に対応し,子どもの発達に関する養育者の不安にも適切に対応することは小児科医としての基本で,小児科医にしかできない仕事です。これまでに子どもの発達評価を含めた健診についてさまざまな解説書が出されてきましたが,日本小児科学会として乳幼児健診の仕方を標準化するには至っていませんでした。そのため,日本小児科学会は日本小児科医会や日本小児保健協会と協力して,2年ほど前から乳幼児健診の標準化を目指した合同委員会を立ち上げ,年2回の頻度で乳幼児健診に関する講習会を日本各地で開催しています。

 このたび,福岡地区小児科医会 乳幼児保健委員会が『乳幼児健診マニュアル 第5版』を刊行されました。すでに30年ほど前に作成された『乳児健診マニュアル』を定期的に改訂された集大成がこの第5版です。

 本書では乳幼児健診を担当する医療関係者の心構えが初めに記載され,健診の手順や月齢別の健診の仕方が大変わかりやすく解説されています。

 乳幼児健診では,明らかになった子どもの健康問題にこれからどのように対応するのかを親御さんに説明することが最も重要です。さらに,親御さんの不安を取り除くことも大切です。的確で温かな思いやりにあふれた指導をするために必要な小児保健と小児医療の知識が,育児相談・育児支援の項目で具体的でわかりやすく記載されていることが本書の最大の特徴です。さらに,最近増えている発達障害が疑われる子どもの診かたと初期対応についても,とても丁寧に記載されています。

 本書は乳幼児健診を担当する医療関係者に参考になる本であり,多くの医療関係者に健診の場で大いに利用していただきたいと思います。

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