市中感染症診療の考え方と進め方 第2集
IDATEN感染症セミナー実況中継
研修医・若手医師から支持されている人気のセミナーを書籍化!
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わが国の感染症診療の新時代を切り拓いてきたIDATEN(日本感染症教育研究会)。その気鋭の講師陣が研修医・若手医師を対象に開いた感染症サマーセミナーの内容を、診療の現場で役立つ実践的な情報として理解できるように、思考プロセスがみずみずしく伝わるスタイルでまとめた。セミナーで演者に寄せられた質問は「臨床で悩みがちなQ&A」として、各章の項末に掲載。
編集 | IDATENセミナーテキスト編集委員会 |
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発行 | 2015年07月判型:B5頁:364 |
ISBN | 978-4-260-02056-5 |
定価 | 6,050円 (本体5,500円+税) |
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- 序文
- 目次
- 書評
序文
開く
序
IDATEN(Infectious Diseases Association for Teaching and Education in Nippon:日本感染症教育研究会)は毎年夏と冬に感染症セミナーを開催してきました.これは,洛和会音羽病院の大野博司先生が研修医(当時,麻生飯塚病院)だった2002年頃から始められた感染症勉強会がもとになり,2005年1月のIDATEN発足の際にIDATENの事業として開始されました.以後,北は北海道,南は沖縄まで,全国津々浦々で開催され,今年で10年が過ぎました.
セミナーは開催当初から製薬企業の資金援助を受けずに,受講生から参加費をいただき,開催地の病院スタッフと講師のボランティアによって運営されてきました.募集を開始すると,毎回定員の2倍近くの応募がありますが,会場のキャパシティなどの問題で,応募者全員の参加をお受けすることはできていませんでした.また,金曜日から日曜日の2泊3日で開催してきたため,金曜日の業務を休めないという方からはなかなか参加しづらいという声をいただいていました.
そこで,セミナーのレクチャーを実況中継風にまとめた本書が刊行されることになりました(タイトルでの「実況中継」使用については,語学春秋社の許可を得ています).本書に収録されたレクチャーは,2013年7月26日から28日に京都府福知山市で開催されたサマーセミナーでのレクチャーがもとになっています.実況中継「風」と書いたのは,レクチャーの録音をそのまま文字起こししたのではなく,講師同士で査読を行い,内容を洗練させ,また単行本化まで少し時間があいてしまったので,その間に発表された知見について加筆されている部分があるからです.
セミナーを立ち上げた大野先生は2012年2月のウィンターセミナーをもって運営から勇退され,上山と山本が運営を引き継ぐことになりました.ここまで続けてこられたのは,ボランティアでレクチャーを引き受けて下さった講師の方々と開催地の病院スタッフの皆様の「自分の病院の,地域の,ひいては日本の感染症診療をよくしたい」という想いによるところが大きいと思います.また受講生の方々の感染症診療への熱意にも毎回励まされました.運営係として,この場を借りて改めて皆様に感謝を申し上げたいと思います.ありがとうございました.
2015年6月
編集委員
山本舜悟・上山伸也
IDATEN(Infectious Diseases Association for Teaching and Education in Nippon:日本感染症教育研究会)は毎年夏と冬に感染症セミナーを開催してきました.これは,洛和会音羽病院の大野博司先生が研修医(当時,麻生飯塚病院)だった2002年頃から始められた感染症勉強会がもとになり,2005年1月のIDATEN発足の際にIDATENの事業として開始されました.以後,北は北海道,南は沖縄まで,全国津々浦々で開催され,今年で10年が過ぎました.
セミナーは開催当初から製薬企業の資金援助を受けずに,受講生から参加費をいただき,開催地の病院スタッフと講師のボランティアによって運営されてきました.募集を開始すると,毎回定員の2倍近くの応募がありますが,会場のキャパシティなどの問題で,応募者全員の参加をお受けすることはできていませんでした.また,金曜日から日曜日の2泊3日で開催してきたため,金曜日の業務を休めないという方からはなかなか参加しづらいという声をいただいていました.
そこで,セミナーのレクチャーを実況中継風にまとめた本書が刊行されることになりました(タイトルでの「実況中継」使用については,語学春秋社の許可を得ています).本書に収録されたレクチャーは,2013年7月26日から28日に京都府福知山市で開催されたサマーセミナーでのレクチャーがもとになっています.実況中継「風」と書いたのは,レクチャーの録音をそのまま文字起こししたのではなく,講師同士で査読を行い,内容を洗練させ,また単行本化まで少し時間があいてしまったので,その間に発表された知見について加筆されている部分があるからです.
セミナーを立ち上げた大野先生は2012年2月のウィンターセミナーをもって運営から勇退され,上山と山本が運営を引き継ぐことになりました.ここまで続けてこられたのは,ボランティアでレクチャーを引き受けて下さった講師の方々と開催地の病院スタッフの皆様の「自分の病院の,地域の,ひいては日本の感染症診療をよくしたい」という想いによるところが大きいと思います.また受講生の方々の感染症診療への熱意にも毎回励まされました.運営係として,この場を借りて改めて皆様に感謝を申し上げたいと思います.ありがとうございました.
2015年6月
編集委員
山本舜悟・上山伸也
目次
開く
序
第1章 感染症診療の基本原則(大曲貴夫)
1.臨床推論は一般診療の大前提
2.患者背景を理解する
3.どの臓器の問題か
4.原因となる微生物を詰める
5.どの治療を選択するか
6.適切な経過観察
take home message/臨床で悩みがちなQ&A
第2章 小児の発熱へのアプローチ(上山伸也)
1.小児の特殊性—成人との違いとは?
2.3歳までの小児の発熱のマネジメント
3.小児における熱源不明の発熱へのアプローチ
4.WBCとCRPは有効か
5.予防接種の重要性
6.ヒブワクチンと小児用肺炎球菌ワクチン—何回接種していれば有効か?
take home message/臨床で悩みがちなQ&A
第3章 予防接種入門(齋藤昭彦)
1.定期接種と任意接種ワクチン
2.同時接種
3.接種部位と接種方法
4.異なるワクチンの接種間隔
5.ワクチンの副反応と有害事象
6.ワクチンの効果と副反応
7.ワクチンの集団免疫効果
8.最近注目されているワクチン
9.日本小児科学会の予防接種に関する活動
take home message/臨床で悩みがちなQ&A
第4章 「風邪」の診かた(岸田直樹)
1.風邪って何でしょう?
2.風邪(急性上気道炎)の定義
3.ところが風邪診療は意外に侮れない.その現状を把握しよう
4.「風邪」に対する医師の役割って何でしょうか
5.イメージからわかる風邪(ウイルス性上気道感染症)の特徴とは?
6.「3症状チェック」のコツと注意事項
7.3領域でも特にピットフォールが少ないのは鼻症状がある時.
喉症状,咳症状が強い時は注意
8.風邪のことが多い鼻症状メイン型からわかる
細菌性とウイルス性へのアプローチ
9.膿性鼻汁(膿性痰)は細菌性か
10.膿性細菌性副鼻腔炎の特徴からみえる,細菌性を見極めるコツ
11.細菌性かウイルス性か? 2峰性の病歴に注目
12.片側性の頬部痛も細菌性の特徴
13.ではどうする? 細菌性副鼻腔炎として治療が必要な場合
14.「細菌感染症=全例抗菌薬治療」ではない
15.気道感染症では「ウイルス vs 治療が必要な細菌感染症」と考える
16.細菌性副鼻腔炎の治療薬適応
take home message/臨床で悩みがちなQ&A
第5章 急性咽頭炎のマネジメント(米川真輔)
1.喉が痛い!?
2.扁桃って何してる?
3.咽頭炎・扁桃炎の原因
4.咽頭痛を3つに分類しよう
5.A群β溶連菌は奥が深い!?
6.その他の細菌感染症
7.ウイルス感染症
8.見落としてはいけない咽頭痛+全身症状
take home message/臨床で悩みがちなQ&A
第6章 肺炎のマネジメント(森岡慎一郎)
1.症例提示
2.胸部単純X線写真を撮るか
3.入院適応はあるか
4.どうやって原因微生物を詰めるか
5.どの抗菌薬を選択するか
6.肺炎診療での適切な経過観察
7.肺炎がよくならない時に考えること
8.抗結核薬でもあるニューキノロン系抗菌薬
9.予防接種と患者教育
take home message/臨床で悩みがちなQ&A
第7章 リンパ節腫脹のマネジメント(馬渡桃子)
1.何がリンパ節腫脹を起こすのか
2.年齢に注目
3.問診事項
4.リンパ節の触診
5.リンパ節の性状
6.全身性リンパ節腫脹
7.限局的リンパ節腫脹
8.随伴症状から鑑別
9.症例提示
10.生検はどんな時に適応するか
take home message/臨床で悩みがちなQ&A
第8章 頭頸部感染のマネジメント(上蓑義典)
1.症例提示
2.深頸部感染症の特徴
3.解剖学的なスペースをまず理解する
4.スペース間はつながっている
5.顎下隙の感染症—Ludwig angina
6.症例の経過
7.咽頭側隙の感染症とLemierre症候群
8.咽頭後隙の感染症—咽後膿瘍
take home message/臨床で悩みがちなQ&A
第9章 感染性腸炎のマネジメント(倉井華子)
1.下痢の定義
2.その下痢は本当に腸炎か
3.脱水の評価と補正
4.微生物の推定
5.下痢の発症場所から考える
6.大腸型か小腸型か
7.各微生物の臨床像
8.抗菌薬治療
take home message/臨床で悩みがちなQ&A
第10章 腹腔内感染症のマネジメント(大路剛)
1.腹腔内感染症を疑う時—診断の3要素からみる腹腔内感染症
2.症例へのアプローチ
3.腹腔内感染症の診断の落とし穴
4.腹膜炎と膿瘍
5.急性胆管炎
6.急性胆嚢炎
7.虫垂炎
8.憩室炎
take home message/臨床で悩みがちなQ&A
第11章 胆道系感染症のマネジメント(矢野晴美)
1.急性胆道炎の歴史
2.現場での鑑別診断のポイント
3.急性胆道感染症の診断基準と重症度
4.抗菌薬による治療
5.抗菌薬の最適化
6.抗菌薬の治療期間
take home message/臨床で悩みがちなQ&A
第12章 尿路感染症のマネジメント(織田錬太郎)
1.症例提示
2.分類
3.症状とリスクファクター
4.身体診察のポイント
5.尿路感染症を疑ったらどのような検査をするのか
6.診断のポイント
7.尿路感染症に入院は必要か
8.尿路感染症の治療
9.治療効果判定
10.再発予防
take home message/臨床で悩みがちなQ&A
第13章 PID・STIのマネジメント(本郷偉元)
1.症例提示
2.女性の腹痛
3.PIDとは?
4.発症機序
5.PIDがなぜ大事か
6.起因菌
7.リスクファクター
8.sexual historyのとり方
9.症状
10.診断と治療開始
11.入院
12.治療レジメン
13.経過フォローと治療期間
14.他に留意すべきこと
take home message/臨床で悩みがちなQ&A
第14章 皮膚・軟部組織感染症のマネジメント(法月正太郎)
1.皮膚・軟部組織感染症を理解するためのポイント
2.見た目だけで判断できるのか
3.丹毒や蜂窩織炎はcommonだが要注意
4.重症皮膚軟部組織感染症の代表格,壊死性筋膜炎
5.注意深く経過フォローすることの大切さ
take home message/臨床で悩みがちなQ&A
第15章 骨・関節感染症のマネジメント(上原由紀)
1.骨髄炎
2.関節炎
3.症例提示
take home message/臨床で悩みがちなQ&A
第16章 髄膜炎のマネジメント(蓮池俊和)
1.細菌性髄膜炎は内科エマージェンシー
2.細菌性髄膜炎ってどんな病気?
3.症例提示
4.いつ髄膜炎を疑うか
5.検査
6.治療
take home message/臨床で悩みがちなQ&A
第17章 感染性心内膜炎のマネジメント(山本舜悟)
1.IEの頻度
2.抗菌薬がなかった時代
3.疑う人がいれば診断される
4.診断するにはIEを疑うところから始める
5.症例における診断の流れ
6.同時多発テロ的
7.Dukeの基準
8.IEの診断で心エコーはやっぱり経食?
9.黄色ブドウ球菌の菌血症をなめるな!
10.IEの治療期間
11.IEの手術適応
12.早期診断で早期治療を
take home message/臨床で悩みがちなQ&A
第18章 敗血症のマネジメント(大野博司)
1.症例提示
2.敗血症とは何か
3.バイタルサインと採血データを確認
4.ERでの循環管理
5.敗血症の患者評価に必要な診察・検査
6.敗血症における抗菌薬投与のポイント
7.重症敗血症,敗血症性ショックに対する循環管理
8.EGDTの問題点
9.現在のICUでの循環管理
10.クリティカルケアでよく使われる強心薬・血管収縮薬
11.輸液負荷による体液過剰
12.重症敗血症,敗血症性ショックでの補助療法
13.皮膚軟部組織感染症と敗血症
take home message/臨床で悩みがちなQ&A
第19章 致死的・緊急的感染症のマネジメント(細川直登)
1.致死的・緊急的感染症の考え方
2.病態を知る・病原微生物を知る
3.緊急事態を起こしやすい患者背景(基礎疾患)
4.症例提示1:「こんなの切るの?」
5.症例提示2:「Yにきました」
6.症例提示3:電撃性紫斑病
7.その他の緊急的感染症
take home message/臨床で悩みがちなQ&A
第20章 非専門医のためのHIV感染症のマネジメント(松永直久)
1.症例提示
2.性感染症(STI)
3.STI関連の問診で大切なこと
4.HIVの診断
5.HIV検査の流れ
6.HIV/AIDSの疫学
7.HIV診断後の流れ
8.HIV患者が受診したら
9.HIV専門医からのメッセージ
take home message/臨床で悩みがちなQ&A
第21章 海外渡航帰りの発熱患者へのアプローチ(岩渕千太郎)
1.症例提示
2.「海外」とひとくくりにしない
3.潜伏期と滞在歴から絞り込む
4.滞在先の行動は重要な手がかり
5.現地の情報を自分でも確認しよう
6.症状では発熱以外に着目し国内で診断・対応が難しいものは早めに除外
7.海外帰りの発熱ではマラリアを見逃さない
8.マラリア診断のポイント
9.マラリア以外に注意すべき発熱
10.初期ワークアップで行う検査
11.海外渡航後の発熱患者は帰宅させてもよいか.フォローアップは?
12.海外渡航で感染症による死亡割合は少ない
take home message/臨床で悩みがちなQ&A
索引
第1章 感染症診療の基本原則(大曲貴夫)
1.臨床推論は一般診療の大前提
2.患者背景を理解する
3.どの臓器の問題か
4.原因となる微生物を詰める
5.どの治療を選択するか
6.適切な経過観察
take home message/臨床で悩みがちなQ&A
第2章 小児の発熱へのアプローチ(上山伸也)
1.小児の特殊性—成人との違いとは?
2.3歳までの小児の発熱のマネジメント
3.小児における熱源不明の発熱へのアプローチ
4.WBCとCRPは有効か
5.予防接種の重要性
6.ヒブワクチンと小児用肺炎球菌ワクチン—何回接種していれば有効か?
take home message/臨床で悩みがちなQ&A
第3章 予防接種入門(齋藤昭彦)
1.定期接種と任意接種ワクチン
2.同時接種
3.接種部位と接種方法
4.異なるワクチンの接種間隔
5.ワクチンの副反応と有害事象
6.ワクチンの効果と副反応
7.ワクチンの集団免疫効果
8.最近注目されているワクチン
9.日本小児科学会の予防接種に関する活動
take home message/臨床で悩みがちなQ&A
第4章 「風邪」の診かた(岸田直樹)
1.風邪って何でしょう?
2.風邪(急性上気道炎)の定義
3.ところが風邪診療は意外に侮れない.その現状を把握しよう
4.「風邪」に対する医師の役割って何でしょうか
5.イメージからわかる風邪(ウイルス性上気道感染症)の特徴とは?
6.「3症状チェック」のコツと注意事項
7.3領域でも特にピットフォールが少ないのは鼻症状がある時.
喉症状,咳症状が強い時は注意
8.風邪のことが多い鼻症状メイン型からわかる
細菌性とウイルス性へのアプローチ
9.膿性鼻汁(膿性痰)は細菌性か
10.膿性細菌性副鼻腔炎の特徴からみえる,細菌性を見極めるコツ
11.細菌性かウイルス性か? 2峰性の病歴に注目
12.片側性の頬部痛も細菌性の特徴
13.ではどうする? 細菌性副鼻腔炎として治療が必要な場合
14.「細菌感染症=全例抗菌薬治療」ではない
15.気道感染症では「ウイルス vs 治療が必要な細菌感染症」と考える
16.細菌性副鼻腔炎の治療薬適応
take home message/臨床で悩みがちなQ&A
第5章 急性咽頭炎のマネジメント(米川真輔)
1.喉が痛い!?
2.扁桃って何してる?
3.咽頭炎・扁桃炎の原因
4.咽頭痛を3つに分類しよう
5.A群β溶連菌は奥が深い!?
6.その他の細菌感染症
7.ウイルス感染症
8.見落としてはいけない咽頭痛+全身症状
take home message/臨床で悩みがちなQ&A
第6章 肺炎のマネジメント(森岡慎一郎)
1.症例提示
2.胸部単純X線写真を撮るか
3.入院適応はあるか
4.どうやって原因微生物を詰めるか
5.どの抗菌薬を選択するか
6.肺炎診療での適切な経過観察
7.肺炎がよくならない時に考えること
8.抗結核薬でもあるニューキノロン系抗菌薬
9.予防接種と患者教育
take home message/臨床で悩みがちなQ&A
第7章 リンパ節腫脹のマネジメント(馬渡桃子)
1.何がリンパ節腫脹を起こすのか
2.年齢に注目
3.問診事項
4.リンパ節の触診
5.リンパ節の性状
6.全身性リンパ節腫脹
7.限局的リンパ節腫脹
8.随伴症状から鑑別
9.症例提示
10.生検はどんな時に適応するか
take home message/臨床で悩みがちなQ&A
第8章 頭頸部感染のマネジメント(上蓑義典)
1.症例提示
2.深頸部感染症の特徴
3.解剖学的なスペースをまず理解する
4.スペース間はつながっている
5.顎下隙の感染症—Ludwig angina
6.症例の経過
7.咽頭側隙の感染症とLemierre症候群
8.咽頭後隙の感染症—咽後膿瘍
take home message/臨床で悩みがちなQ&A
第9章 感染性腸炎のマネジメント(倉井華子)
1.下痢の定義
2.その下痢は本当に腸炎か
3.脱水の評価と補正
4.微生物の推定
5.下痢の発症場所から考える
6.大腸型か小腸型か
7.各微生物の臨床像
8.抗菌薬治療
take home message/臨床で悩みがちなQ&A
第10章 腹腔内感染症のマネジメント(大路剛)
1.腹腔内感染症を疑う時—診断の3要素からみる腹腔内感染症
2.症例へのアプローチ
3.腹腔内感染症の診断の落とし穴
4.腹膜炎と膿瘍
5.急性胆管炎
6.急性胆嚢炎
7.虫垂炎
8.憩室炎
take home message/臨床で悩みがちなQ&A
第11章 胆道系感染症のマネジメント(矢野晴美)
1.急性胆道炎の歴史
2.現場での鑑別診断のポイント
3.急性胆道感染症の診断基準と重症度
4.抗菌薬による治療
5.抗菌薬の最適化
6.抗菌薬の治療期間
take home message/臨床で悩みがちなQ&A
第12章 尿路感染症のマネジメント(織田錬太郎)
1.症例提示
2.分類
3.症状とリスクファクター
4.身体診察のポイント
5.尿路感染症を疑ったらどのような検査をするのか
6.診断のポイント
7.尿路感染症に入院は必要か
8.尿路感染症の治療
9.治療効果判定
10.再発予防
take home message/臨床で悩みがちなQ&A
第13章 PID・STIのマネジメント(本郷偉元)
1.症例提示
2.女性の腹痛
3.PIDとは?
4.発症機序
5.PIDがなぜ大事か
6.起因菌
7.リスクファクター
8.sexual historyのとり方
9.症状
10.診断と治療開始
11.入院
12.治療レジメン
13.経過フォローと治療期間
14.他に留意すべきこと
take home message/臨床で悩みがちなQ&A
第14章 皮膚・軟部組織感染症のマネジメント(法月正太郎)
1.皮膚・軟部組織感染症を理解するためのポイント
2.見た目だけで判断できるのか
3.丹毒や蜂窩織炎はcommonだが要注意
4.重症皮膚軟部組織感染症の代表格,壊死性筋膜炎
5.注意深く経過フォローすることの大切さ
take home message/臨床で悩みがちなQ&A
第15章 骨・関節感染症のマネジメント(上原由紀)
1.骨髄炎
2.関節炎
3.症例提示
take home message/臨床で悩みがちなQ&A
第16章 髄膜炎のマネジメント(蓮池俊和)
1.細菌性髄膜炎は内科エマージェンシー
2.細菌性髄膜炎ってどんな病気?
3.症例提示
4.いつ髄膜炎を疑うか
5.検査
6.治療
take home message/臨床で悩みがちなQ&A
第17章 感染性心内膜炎のマネジメント(山本舜悟)
1.IEの頻度
2.抗菌薬がなかった時代
3.疑う人がいれば診断される
4.診断するにはIEを疑うところから始める
5.症例における診断の流れ
6.同時多発テロ的
7.Dukeの基準
8.IEの診断で心エコーはやっぱり経食?
9.黄色ブドウ球菌の菌血症をなめるな!
10.IEの治療期間
11.IEの手術適応
12.早期診断で早期治療を
take home message/臨床で悩みがちなQ&A
第18章 敗血症のマネジメント(大野博司)
1.症例提示
2.敗血症とは何か
3.バイタルサインと採血データを確認
4.ERでの循環管理
5.敗血症の患者評価に必要な診察・検査
6.敗血症における抗菌薬投与のポイント
7.重症敗血症,敗血症性ショックに対する循環管理
8.EGDTの問題点
9.現在のICUでの循環管理
10.クリティカルケアでよく使われる強心薬・血管収縮薬
11.輸液負荷による体液過剰
12.重症敗血症,敗血症性ショックでの補助療法
13.皮膚軟部組織感染症と敗血症
take home message/臨床で悩みがちなQ&A
第19章 致死的・緊急的感染症のマネジメント(細川直登)
1.致死的・緊急的感染症の考え方
2.病態を知る・病原微生物を知る
3.緊急事態を起こしやすい患者背景(基礎疾患)
4.症例提示1:「こんなの切るの?」
5.症例提示2:「Yにきました」
6.症例提示3:電撃性紫斑病
7.その他の緊急的感染症
take home message/臨床で悩みがちなQ&A
第20章 非専門医のためのHIV感染症のマネジメント(松永直久)
1.症例提示
2.性感染症(STI)
3.STI関連の問診で大切なこと
4.HIVの診断
5.HIV検査の流れ
6.HIV/AIDSの疫学
7.HIV診断後の流れ
8.HIV患者が受診したら
9.HIV専門医からのメッセージ
take home message/臨床で悩みがちなQ&A
第21章 海外渡航帰りの発熱患者へのアプローチ(岩渕千太郎)
1.症例提示
2.「海外」とひとくくりにしない
3.潜伏期と滞在歴から絞り込む
4.滞在先の行動は重要な手がかり
5.現地の情報を自分でも確認しよう
6.症状では発熱以外に着目し国内で診断・対応が難しいものは早めに除外
7.海外帰りの発熱ではマラリアを見逃さない
8.マラリア診断のポイント
9.マラリア以外に注意すべき発熱
10.初期ワークアップで行う検査
11.海外渡航後の発熱患者は帰宅させてもよいか.フォローアップは?
12.海外渡航で感染症による死亡割合は少ない
take home message/臨床で悩みがちなQ&A
索引
書評
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コンパクトにまとめられた臨床感染症の優れた入門書
書評者: 清田 雅智 (飯塚病院総合診療科診療部長)
大野博司先生(洛和会音羽病院感染症科)は,研修医時代に筆者が指導医として実際に接した勤勉なる先生である。2年次の2002年に抗菌薬の適正使用をめざし,自ら講師になり感染症の院内勉強会を自分で計画立案した。さらには院外でも夏と冬にその勉強会を自主開催し,それが後にIDATEN感染症セミナーとなり,現在も続いている。彼はその準備のために深夜まで資料作りに励んでいたことを間近で見ていたが,その企画力とバイタリティーには深く感銘を受けた(研修医ですよ!)。筆者はこの感染症の勉強会資料を「贈り物」として受け取っていたが,その内容はさらに発展し2006年,医学書院より 『感染症入門レクチャーノーツ』 として上梓された。
その彼の発案でIDATEN感染症セミナーを2007年1月に飯塚病院で行いたい旨の連絡があった。二つ返事で了承し,筆者は幹事として全国80名の医師と学生さんのお世話をさせていただき,今でもIDATENの活動を陰ながら見続けている。その当時の参加者リストは今でも持っているが,現在色々な分野で活躍をされているのに気付き,この活動がもたらした効果を今さらながらに驚いている。この飯塚開催のスライドも手元にあるが,IDATENが伝えてきた教育のコンテンツのレベルは,2005年メイヨー・クリニック感染症科に留学時のモーニングレクチャーとさほど遜色がないことに気付いていた。この教育内容を活字化した前書が2009年に上梓され,筆者は当然のように購読したが,セミナーを受講できない人に対する重要なテキストになっているという感想を持っていた。
そして今回,6年の歳月を経てその第2集が刊行された。大野博司先生が勇退し,その事業を彼の飯塚病院の後輩でもある山本舜悟先生と,IDATENのメーリングリストで素晴らしい発言をされていた上山伸也先生が引き継いだことに時代の推移を感じ取った。
前書に比べて,本書はさらに臨床的な広さと奥行きを増した本となっていた。以前は感染症の基礎知識である微生物や抗菌薬の記載もあったが,省かれている(つまりはそれを伝える類書が十分にある)。新たに,小児の感染症,ワクチン,「風邪」,リンパ節腫脹,HIV診療,渡航医学の領域の執筆内容が加わり,時代の要請に沿った内容の変更が行われていることがわかる。それでも前書より100ページ以上増えている。
本書は臨床感染症の優れた入門書という位置付けが確定したと思う。感染症を極めようとすると,4,000ページにも及ぶ膨大な“Mandell”(Saunders)のような成書をひもとく羽目になるが,300ページ程度でコンパクトにまとめられた本書は最初に読むべき本であろう。初学者にも,後期研修医にも対応できている内容であることが,筆者の目からは確認できた。
執筆陣の「感染症診療の質向上を目指す想い」が詰まった“Priceless”な1冊
書評者: 川島 篤志 (市立福知山市民病院研究研修センター長・総合内科医長)
「感染症診療は日本の医療で遅れている分野である」というニュアンスのコメントを見たり聞いたりする人も多いのではないだろうか? 筆者自身も感染症診療や臨床推論に関連する講演でも頻用するが,同時にこの数年で感染症診療のボトムアップが進んでいるのを実感する。その最大の貢献者はIDATEN(Infectious Diseases Association of Teaching and Education of Nippon)と言っても過言ではない。もしIDATENという言葉にピンとこない方がおられれば,HPの閲覧や周囲の若手医師に「IDATENって何?」ときかれることをお薦めする1)。
さて,IDATENは過去にも複数の書籍を刊行している2)。それぞれ秀逸であるが,今回はセミナー実況中継「風」の体裁で,施設内・地域内での感染症診療の質向上に心強い1冊として出版された。セミナーは夏と冬に行われているが,日程やあまりの人気で「狭き門」となっている。サマーセミナーはBasic編と位置付けられているが,「風邪」を含めてよくある感染症から,比較的稀で対応困難になりかねない疾患・状態への備え(海外渡航帰りの発熱やHIV診療,集中治療),感染症診療の原則や小児診療,予防(ワクチン)についても網羅されおり,大変ぜいたくなセミナーである。これらがUpdateされ,カラー図表が豊富な書籍として一般公開されたことは,本当にありがたいことである。個人的には筆者自身が施設責任者としてかかわった2013年の「IDATEN Summerセミナー in 福知山」がBaseになっているのも感慨深い3)。
執筆者はセミナーの発起人の大野博司先生をはじめ,超豪華メンバーである。個性豊かな演者を知っている方はその人を想起しながら読むとなお面白い。「臨床で悩みがちなQ&A」という項目は,全国から集まった熱意のある参加者からのセミナー終了時の生きた質問事項で,「悩んでいるのでぜひきいてみたい!」というものばかりである。
さて,この書籍は誰に向けられたものであろうか? 編集委員の上山伸也先生,山本舜悟先生からの「序」でも触れられている,「自分の病院の,地域の,ひいては日本の感染症診療をよくしたい」という言葉に強く共感する医療従事者向けではないだろうか? 一医師が感染症診療に強くなることはもちろんだが,その施設・その地域で感染症診療の質が向上することが,IDATENメンバーの「想い」,設立趣旨に合致するのではと感じる。一例になるが,稀ながら致死的かつ緊急性が高い壊死性筋膜炎についての当院のプラクティスはIDATENサマーセミナーを境に劇的に向上した。いつか“Dish Water”を診る機会があると「備えて」おり,今や救急にかかわる医師,また切開していただく医師とも共通認識を高め,適切な診療を提供できていると自負している。また,筆者は前任地でも現在の赴任地でも,研修医・専攻医が主体となった「院内感染症勉強会」を行い,感染症診療の文化を高めている。その原案になるのがIDATENセミナーである(第1回の洛和会音羽病院で行われたセミナーにもお邪魔した)。IDATENセミナー受講は狭き門ではあり,院内勉強会を立ち上げるのも少しハードルが高いかもしれない。だが,施設内での通読は容易かつ安価であり,その効果はPricelessである。IDATENメンバーの「想い」が詰まったこの書籍が共通認識(心のよりどころ)となり,読破会や院内勉強会に発展すれば,施設内・地域での感染症診療の文化の醸成につながると確信する。ぜひ,多くの人の手に取って欲しい書籍である。
執筆陣の「日本の感染症診療をよくしたい」思い,心意気が伝わる
書評者: 松村 正巳 (自治医大教授・地域医療学センター総合診療部門)
IDATEN(Infectious Disease Association for Teaching and Education in Nippon:日本感染症教育研究会)から『市中感染症診療の考え方と進め方 第2集』が出版された。「IDATEN感染症セミナー実況中継」と副題が付いている。IDATENにより夏と冬に行われ,受講希望者の多い感染症セミナーの2013年サマーセミナーにおけるレクチャーを基にした内容である。「系統的に感染症を学ぶために受講したい」と思いつつ未受講の身にとっては,朗報である。
プライマリ・ケア医の診療において,感染症の占める範囲は広い。それ故,市中感染症診療の知識と経験は極めて重要である。本書では市中感染症診療の課題に対し,良きアドバイスとなるであろう項目立てとなっている。いくつか挙げてみると,「小児の発熱へのアプローチ」「予防接種入門」「風邪の診かた」「肺炎のマネジメント」「尿路感染症のマネジメント」「PID・STIのマネジメント」「非専門家のためのHIV感染症のマネジメント」となる。われわれが日々遭遇する具体例の提示の後に,おのおのへの対応が記述され読みやすい。
今まで経験的に「こうであろう」と考えていたことも,理論的に説明され,ふに落ちる。「風邪の診かた」は,“風邪の定義”,“「3症状チェック」のコツと注意事項”など,多くの方に読んでもらいたい内容である。「PID・STIのマネジメント」での“sexual historyのとり方”は,経験を重ねた医師にも参考になる。もちろん病院総合医にとっても感染症の良き指南書である。
本書の執筆陣が「自分の病院の,地域の,ひいては日本の感染症診療をよくしたい」(「序より」)と思い執筆した心意気がよく伝わる書である。医学生,若手医師,プライマリ・ケア医に推薦したい。本書が感染症を患う人の守護神になることを願っている。
書評者: 清田 雅智 (飯塚病院総合診療科診療部長)
大野博司先生(洛和会音羽病院感染症科)は,研修医時代に筆者が指導医として実際に接した勤勉なる先生である。2年次の2002年に抗菌薬の適正使用をめざし,自ら講師になり感染症の院内勉強会を自分で計画立案した。さらには院外でも夏と冬にその勉強会を自主開催し,それが後にIDATEN感染症セミナーとなり,現在も続いている。彼はその準備のために深夜まで資料作りに励んでいたことを間近で見ていたが,その企画力とバイタリティーには深く感銘を受けた(研修医ですよ!)。筆者はこの感染症の勉強会資料を「贈り物」として受け取っていたが,その内容はさらに発展し2006年,医学書院より 『感染症入門レクチャーノーツ』 として上梓された。
その彼の発案でIDATEN感染症セミナーを2007年1月に飯塚病院で行いたい旨の連絡があった。二つ返事で了承し,筆者は幹事として全国80名の医師と学生さんのお世話をさせていただき,今でもIDATENの活動を陰ながら見続けている。その当時の参加者リストは今でも持っているが,現在色々な分野で活躍をされているのに気付き,この活動がもたらした効果を今さらながらに驚いている。この飯塚開催のスライドも手元にあるが,IDATENが伝えてきた教育のコンテンツのレベルは,2005年メイヨー・クリニック感染症科に留学時のモーニングレクチャーとさほど遜色がないことに気付いていた。この教育内容を活字化した前書が2009年に上梓され,筆者は当然のように購読したが,セミナーを受講できない人に対する重要なテキストになっているという感想を持っていた。
そして今回,6年の歳月を経てその第2集が刊行された。大野博司先生が勇退し,その事業を彼の飯塚病院の後輩でもある山本舜悟先生と,IDATENのメーリングリストで素晴らしい発言をされていた上山伸也先生が引き継いだことに時代の推移を感じ取った。
前書に比べて,本書はさらに臨床的な広さと奥行きを増した本となっていた。以前は感染症の基礎知識である微生物や抗菌薬の記載もあったが,省かれている(つまりはそれを伝える類書が十分にある)。新たに,小児の感染症,ワクチン,「風邪」,リンパ節腫脹,HIV診療,渡航医学の領域の執筆内容が加わり,時代の要請に沿った内容の変更が行われていることがわかる。それでも前書より100ページ以上増えている。
本書は臨床感染症の優れた入門書という位置付けが確定したと思う。感染症を極めようとすると,4,000ページにも及ぶ膨大な“Mandell”(Saunders)のような成書をひもとく羽目になるが,300ページ程度でコンパクトにまとめられた本書は最初に読むべき本であろう。初学者にも,後期研修医にも対応できている内容であることが,筆者の目からは確認できた。
執筆陣の「感染症診療の質向上を目指す想い」が詰まった“Priceless”な1冊
書評者: 川島 篤志 (市立福知山市民病院研究研修センター長・総合内科医長)
「感染症診療は日本の医療で遅れている分野である」というニュアンスのコメントを見たり聞いたりする人も多いのではないだろうか? 筆者自身も感染症診療や臨床推論に関連する講演でも頻用するが,同時にこの数年で感染症診療のボトムアップが進んでいるのを実感する。その最大の貢献者はIDATEN(Infectious Diseases Association of Teaching and Education of Nippon)と言っても過言ではない。もしIDATENという言葉にピンとこない方がおられれば,HPの閲覧や周囲の若手医師に「IDATENって何?」ときかれることをお薦めする1)。
さて,IDATENは過去にも複数の書籍を刊行している2)。それぞれ秀逸であるが,今回はセミナー実況中継「風」の体裁で,施設内・地域内での感染症診療の質向上に心強い1冊として出版された。セミナーは夏と冬に行われているが,日程やあまりの人気で「狭き門」となっている。サマーセミナーはBasic編と位置付けられているが,「風邪」を含めてよくある感染症から,比較的稀で対応困難になりかねない疾患・状態への備え(海外渡航帰りの発熱やHIV診療,集中治療),感染症診療の原則や小児診療,予防(ワクチン)についても網羅されおり,大変ぜいたくなセミナーである。これらがUpdateされ,カラー図表が豊富な書籍として一般公開されたことは,本当にありがたいことである。個人的には筆者自身が施設責任者としてかかわった2013年の「IDATEN Summerセミナー in 福知山」がBaseになっているのも感慨深い3)。
執筆者はセミナーの発起人の大野博司先生をはじめ,超豪華メンバーである。個性豊かな演者を知っている方はその人を想起しながら読むとなお面白い。「臨床で悩みがちなQ&A」という項目は,全国から集まった熱意のある参加者からのセミナー終了時の生きた質問事項で,「悩んでいるのでぜひきいてみたい!」というものばかりである。
さて,この書籍は誰に向けられたものであろうか? 編集委員の上山伸也先生,山本舜悟先生からの「序」でも触れられている,「自分の病院の,地域の,ひいては日本の感染症診療をよくしたい」という言葉に強く共感する医療従事者向けではないだろうか? 一医師が感染症診療に強くなることはもちろんだが,その施設・その地域で感染症診療の質が向上することが,IDATENメンバーの「想い」,設立趣旨に合致するのではと感じる。一例になるが,稀ながら致死的かつ緊急性が高い壊死性筋膜炎についての当院のプラクティスはIDATENサマーセミナーを境に劇的に向上した。いつか“Dish Water”を診る機会があると「備えて」おり,今や救急にかかわる医師,また切開していただく医師とも共通認識を高め,適切な診療を提供できていると自負している。また,筆者は前任地でも現在の赴任地でも,研修医・専攻医が主体となった「院内感染症勉強会」を行い,感染症診療の文化を高めている。その原案になるのがIDATENセミナーである(第1回の洛和会音羽病院で行われたセミナーにもお邪魔した)。IDATENセミナー受講は狭き門ではあり,院内勉強会を立ち上げるのも少しハードルが高いかもしれない。だが,施設内での通読は容易かつ安価であり,その効果はPricelessである。IDATENメンバーの「想い」が詰まったこの書籍が共通認識(心のよりどころ)となり,読破会や院内勉強会に発展すれば,施設内・地域での感染症診療の文化の醸成につながると確信する。ぜひ,多くの人の手に取って欲しい書籍である。
文献 | |
1) | IDATENのHP:http://www.theidaten.jp/ |
2) | IDATENセミナーテキスト編集委員会:市中感染症診療の考え方と進め方.IDATEN感染症セミナー.医学書院,2009;病院内/免疫不全関連感染症診療の考え方と進め方.IDATEN感染症セミナー.医学書院,2011. |
3) | IDATEN Summer Seminar in 福知山のBlog:http://idatenfukuchiyama2013.blogspot.jp/ |
執筆陣の「日本の感染症診療をよくしたい」思い,心意気が伝わる
書評者: 松村 正巳 (自治医大教授・地域医療学センター総合診療部門)
IDATEN(Infectious Disease Association for Teaching and Education in Nippon:日本感染症教育研究会)から『市中感染症診療の考え方と進め方 第2集』が出版された。「IDATEN感染症セミナー実況中継」と副題が付いている。IDATENにより夏と冬に行われ,受講希望者の多い感染症セミナーの2013年サマーセミナーにおけるレクチャーを基にした内容である。「系統的に感染症を学ぶために受講したい」と思いつつ未受講の身にとっては,朗報である。
プライマリ・ケア医の診療において,感染症の占める範囲は広い。それ故,市中感染症診療の知識と経験は極めて重要である。本書では市中感染症診療の課題に対し,良きアドバイスとなるであろう項目立てとなっている。いくつか挙げてみると,「小児の発熱へのアプローチ」「予防接種入門」「風邪の診かた」「肺炎のマネジメント」「尿路感染症のマネジメント」「PID・STIのマネジメント」「非専門家のためのHIV感染症のマネジメント」となる。われわれが日々遭遇する具体例の提示の後に,おのおのへの対応が記述され読みやすい。
今まで経験的に「こうであろう」と考えていたことも,理論的に説明され,ふに落ちる。「風邪の診かた」は,“風邪の定義”,“「3症状チェック」のコツと注意事項”など,多くの方に読んでもらいたい内容である。「PID・STIのマネジメント」での“sexual historyのとり方”は,経験を重ねた医師にも参考になる。もちろん病院総合医にとっても感染症の良き指南書である。
本書の執筆陣が「自分の病院の,地域の,ひいては日本の感染症診療をよくしたい」(「序より」)と思い執筆した心意気がよく伝わる書である。医学生,若手医師,プライマリ・ケア医に推薦したい。本書が感染症を患う人の守護神になることを願っている。
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