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基礎から学ぶ楽しい学会発表・論文執筆

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若手医療関係者や医療系学生に向けて、学会発表や論文執筆のコツを具体的に解説。学会選び、抄録・スライド・ポスターの作成、口演とポスター発表の違い、投稿雑誌選び、投稿規定の重要さ、編集委員会とのやりとり、やってはいけない「べからず集」など、実践的な情報が満載。「基礎から学ぶ 楽しい~」シリーズ第2弾。隠れファンの多い脚注も一読の価値あり。本書を読めば、学会発表がうまくなる、論文執筆が楽しくなる!
中村 好一
発行 2013年08月判型:A5頁:240
ISBN 978-4-260-01797-8
定価 3,080円 (本体2,800円+税)
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 頑張って2年間続けた雑誌連載の原稿が書籍になるのはこれが2冊目,すなわち本書は姉妹本である『基礎から学ぶ楽しい疫学』第3版(以下,前著)に続く本である.本のタイトルも類似のものとし,装丁も類似,「柳の下の2匹目のドジョウ狙い」と言われてもしかたがない.しかし,前著「黄色い本」に倣って,本書も「青い本」としてベストセラーになることを望んでいる.
 月並みなことだが,雑誌の連載,あるいは書籍の刊行に際しては対象とする読者を絞り,読者層を想定した文章とする必要がある.第1章に詳しく記載したが,本書は(1)保健活動を念頭に置いて,(2)コメディカルスタッフを対象に,(3)日本語での学会発表や論文執筆を目指す,というのを連載時には念頭に置き,書籍化に際しては学生を含む医学/保健科学の初心者もターゲットに含めた.研究の公表について,「学会発表すれば完了/完成」と考えている人たちが一部に存在する.しかし,ここで確認したいのは,学会発表はあくまでも形が残らないものが中心(学会での口演,スライド,ポスターなど)で,文書として残る抄録はこれらのいわば「おまけ」である.したがって,論文を作成するときに学会の抄録を引用文献として使用することは原則としてできない.一方で,研究を始めるときから論文執筆を念頭に置いていれば,学会発表から論文執筆までのハードルはそれほど高いものではない.
 考えた末に,体裁についても姉妹本の前著に合わせることにした.趣味の鉄道が背景にあり,コラムは前著と同様に「デッドセクション」(詳細は前著の序を参照)とした.脚注が突っ走っているのは相変わらず.「著者紹介」欄の写真は,もしかしたら「ついにここまで来たか?」と批判を受けるかもしれない(覚悟しています (^o^)).
 いろいろな方面にお世話になったが,本書の医学書院の編集担当は,これも前著と同じ西村僚一氏で,「著者紹介」欄の写真撮影に,わざわざ宇都宮までお越しいただいた.雑誌「公衆衛生」の連載時に担当だった野中良美氏を含め,本書の完成にご尽力いただいた関係者に感謝申し上げたい.

 2013年5月
 中村好一

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第1部 発表や執筆を始める前に
 第1章 なぜ,成果を報告しなければならないのか(本書の主旨)
   ごあいさつ  筆者の過去  なぜ,学会発表/論文公表が必要なのか
   やはり,専門家の指導を  本書のねらい(ターゲット)
 第2章 まずは日本語
   言葉はものを考える際の道具である  学会発表や論文に使う日本語
   見本とする文章  日本語での論文執筆のお約束
   明快な文章のコツ  役に立つ文献など
 第3章 文献検索
   そもそもは…  日本語の文献検索  英語の文献検索
   究極の文献検索(芋づる式)  文献検索のコツ  書籍の検索
   これだけは,やってはいけない

第2部 学会発表
 第4章 発表する学会を選ぶ
   学会とは  学会に参加しよう  発表する学会を選ぶ大原則
   そのほか,配慮すべき事項  些細なことだが…  いずれにしても
 第5章 学会発表演題申し込み(抄録作成)
   演題募集に関する情報入手  演題申し込みの実際  共同演者を決める
   演題名を決める  抄録を書く
 第6章 スライドの作成
   スライドというけれど…  まずは,枚数  スタイル  使用するフォント
   全体の構成  抄録を書いたときと状況が変わっていたら
   細かな留意点(しかし,重要)  究極の文字化け対策
 第7章 ポスターの作成
   内容よりもまず…  口演との大きな違い  ポスターに盛り込む内容
   ポスターだからこそ,できること  最後にひと言
 第8章 発表原稿
   その前に考えなければならないこと  原稿の量  文体
   スライドとのリンク  口演にメリハリをつけるために
   口演のスタートは  ストーリー(流れ)
   原稿ができあがったら,予行演習会  余裕をもって
 第9章 学会発表当日(前後を含めて)
   会場の都市まで  発表当日の学会場まで  受付  発表前
   発表(口演の場合)  発表(ポスターの場合)  質疑応答
   発表の後で  ポスターの張り逃げ  座長を依頼されたら

第3部 論文執筆と投稿
 第10章 さて,論文執筆(投稿雑誌を選ぶ)
   なぜ,論文執筆か?  論文公表の方法
   では,投稿先としてどの雑誌を選ぶか  最後にひと言
 第11章 論文執筆の前に(投稿規定を読む)
   投稿規定の入手  投稿規定は憲法
   特に注意すべきこと(重要な点から順に)  投稿規定以外の有用な情報
 第12章 論文の構成
   主要部門(4部構成)  その他の部分  論文を書く順序
   文献の記載
 第13章 「緒言」
   「緒言」に何を書くか  では,具体的には  Study question
   「緒言」べからず集  「考察」との関係
 第14章 「方法」
   科学と非科学を分けるもの:再現性  では,どのように書くか
   具体的には  When  Where  Who  What  Why
   How  あるいはPECO  計測単位  倫理問題  研究の登録
   省略形  最後にひと言
 第15章 「結果」
   投稿規定では  では,何を書くのか  まずは参加率から
   次に対象者の属性  大きなところから詳細部分へ
   「結果」べからず集  最後にひと言
 第16章 「考察」
   例によって投稿規定では  書き出しはどうするか  次は,どうする?
   「考察」べからず集  「考察」を書くために研究を行う?  最後にひと言
 第17章 図表の作成
   どこで使うか  図か表か  表の作成  図の作成
   Figure legends(図の説明文)  図表についての注意事項
   本章(本書)の図表について
 第18章 論文のその他の部分
   表題  著者  短い表題(running title)  対応著者と連絡先
   抄録  キーワード  謝辞  引用文献  図の説明  最後にひと言
 第19章 論文投稿の前に
   推敲  ボスの校閲  共著者からの意見聴取  音読
   再確認  投稿の準備  英文論文の英文校閲
 第20章 編集委員会とのやりとり
   投稿された論文の大まかな流れ  まず,投稿
   投稿受領通知の受け取り
   第1回投稿に対する編集委員会の方針連絡受領
   「掲載不能」だったら  「意見に沿った修正原稿を再検討」
   英文について指摘されたら
   「意見に沿った修正原稿を再検討」でも再投稿しない場合  再投稿
   初回で指摘されなかったことを指摘されたら 気持ちの問題
   採用通知  掲載料  著作権の譲渡  原稿の確認
   著者校正  別刷の申し込み
 第21章 論文刊行の後
   別刷の請求  共同研究の申し込みなど
   「編集委員会への手紙」への対応  誤りに気づいたら
   査読を依頼されたら  査読依頼が来たら  査読を引き受けたら
   再査読  査読意見に対する編集委員会の修正  「査読」べからず集

第4部 おわりに
 第22章 なぜ研究や発表が必要なのか
   まずは指導者を  そして準備  Study question  研究計画
   回収率/参加率  倫理的配慮  研究の実行
   学会発表/論文執筆と投稿  そして,次の研究
   なぜ研究や発表が必要なのか(まとめ)  論文執筆の参考書籍

 column 学会発表・論文執筆デッドセクション
   書き言葉だけでなく
   所変われば……
   隔世の感
   座長は大変
   「国際公衆衛生学会」
   上手な英語を書くためには(1)
   学会
   名前の表記
   編集委員会も結構大変(だった)
   著作権の新しいルール
   統計的手法:どれを使うか
   上手な英語を書くためには(2)
   循環器病予防セミナー

   巻末資料(1) 日本医学会,日本看護系学会協議会に加盟する学会
   巻末資料(2) 資料(1)以外で保健学に関連する学会
   索引

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著者が長年蓄積してきたノウハウを惜しげもなく伝授
書評者: 若林 チヒロ (埼玉県立大学准教授・生活科学)
 疫学研究の方法を解説した,「楽しい研究」シリーズ第一弾『基礎から学ぶ楽しい疫学』は,「黄色い本」として辞書代わりに活用している人も多い。第二弾として今回出版された「青い本」では,研究の発表方法を一から学べるようになっており,やはり長く使い続けることになるであろう。疫学や公衆衛生学をリードしてきた研究者であり,医学生や保健医療者の研究指導をしてきた教育者でもある著者が,長年蓄積してきた学会発表や論文執筆の方法を惜しげもなく伝授してくれている。さらに,学術誌の編集委員長を務めてきた経験から,査読者の視点や意識まで解説してくれている。2年間に及ぶ連載をまとめただけあって,ノウハウが詰まった濃い一冊である。

 この本はコメディカルや大学院生など研究の初学者向けに執筆した,と著者は書いている。発表する学会の選び方や抄録の書き方,口演での話し方からポスター用紙の種類まで,至れり尽くせりで効果的な学会発表のノウハウが示されており,確かに初学者が「基礎から」学べるようになっている。しかしこの本は,キャリアのある臨床家や研究者が,よりインパクトのある発表をしたり,より採択されやすい論文を執筆したりするためにも,十分に適している。「基礎から,かなり高度なレベルまで」学べるようになっているのである。

 特に必読なのは,論文執筆の項。「論文の緒言で書くべきこと,書くべきではないことは何か?」「諸言と考察の内容はどのように書き分けるか?」「読者をひきつける結果の書き方は?」など,事例を示しながら解説してくれている。さらに,著者はJournal of Epidemiology(日本疫学会刊行)の編集委員長を務めた経験から,印象のよいカバーレターや査読者への返信の文案を事例で示し,採択されやすい論文について懇切丁寧に教えてくれている。掲載不能,いわゆるボツ原稿を受け取っても,「めげずに元気を出して,別の雑誌に投稿する」ための,気持ちの立て直し方まで書かれている。

 職人技ともいえるノウハウをここまでオープンにしてくれるのは,著者がこの本を書いたモチベーションによるのだろう。医師やコメディカルは経験知を共有することで,より良い技術を開発したり新たなパラダイムを展開したりできるが,特に保健領域では,論文が公表されにくいため経験知が蓄積されておらず,各地で同じ問題に直面している場合が多いという。「対象が異なれば公表する意味がある」。臆せずにそれぞれのフィールドでの経験知を論文化してほしいという著者の熱意が,この本での細やかな配慮につながっている。

 黄色い本にはコラムファンが多いとのこと。青い本書でも,満載のコラムが面白い。本文と合わせて読み進めると,一歩踏み込んで理解が深まるようにできている。仲間や指導者と雑談をして研究をブラッシュアップしているような,そんなうまみのあるコラムである。
はじめの一歩を踏み出すための勇気を与えてくれる本
書評者: 渡辺 晃紀 (栃木県県北健康福祉センター・地域保健部長補佐)
 保健医療では地域保健という分野がある。全国の地方自治体に勤務する保健師32,124人(常勤,2012年)をはじめ,多くの職種が携わり,地域住民の疾病予防や健康増進のためと称し,啓発,教育,健診など日々介入の努力をしている。ところが実際に地域保健活動に取り掛かると,エビデンスや効率などが重視される昨今,「うちの地域でもこの方法で良いのか」とか「この点を明らかにしないと次の施策に進めない」など,たちまち疑問や課題に包まれ,評者も含め従事者の悩みは尽きない。

 「この地域や集団の実態をまとめたい,自分でもエビデンスを作りたい,そして保健活動を進めたい」と考えている人は多いと思う。この本は,そのような人が調査や研究の成果を「世に出す」はじめの一歩を踏み出すための勇気を与えてくれる本である。調査や研究を「まとめたい」「発表してみたい」と思っている人,あるいは「発表することになってしまった!」という人は,ポスターやスライド,論文の該当する章から読み進めれば,すぐに実践的なアドバイスが得られるだろう。

 またこの本には,系統立てて聞く機会が少なく,何となく済ませてしまっているが実は重要なことも数多く書かれている。例として,「そもそも研究や発表とは」(1,4,10,22章),「まず日本語から」(2章),「申し込みの段階から既に始まっている」(5,19章),「発表本番でしくじらないために」(8,9章),「論文投稿後も抜かりなく」(20,21章)など。本書は実用書として使ってもよいし,折に触れて通して読んでみると襟を正す思いがするであろう。調査や発表の意義(22章)については励まされる思いで読むことができる。これらのほか,これは著者と接する者だけが味わえる思いなのだが,言文一致ぶりが素晴しい。まるで教室,教授室,講演会場,移動の車内,酒の席などあらゆる場で聞こえる著者の声がそのまま活字になっている。例を挙げれば,著者が「広辞苑にこう書いてある」と言って相手を黙らせようとしている場面(2章)を,私は何度か目撃したことがある。

 こうした実用的な,教育愛あふれる内容は,一朝一夕にまとめられるものではない。著者の勤務先がある栃木県では,地域で保健活動に取り組むグループを対象とした調査研究支援研修が行われている。著者は教室を挙げて十数年にわたって指導に取り組まれているし,あらゆる相談や指導の要請を,多忙な中先着順で受けている(らしい)。そうした著者の姿勢と実績が具体化したようなものであり,今まで「口伝」や「秘伝」だったものが「経典」になったような本である。さあ皆さん,心して読もう。そして読んだ後は「知の共有」に力を合わせよう(22章)。
楽しく,まじめで,人なつこい。そんな著者の人柄あふれる入門書
書評者: 川村 孝 (京大健康科学センター長・教授)
 前著に続いて楽しい本である。本文を補足する記述はすべて脚注もしくはコラムの形になっている。この付随的な記事がないページはほとんどなく,多いところではページの半分を超える。その分,本文は本筋のみで構成され,見出しの適切さもあって論旨は大変明快である。このような構成をとっているため,著者は安心して脱線ができるのである(著者の中村氏は名だたる鉄道マニアなので「脱線」という言葉は嫌うだろうが)。

 楽しい本だが,内容は大まじめである。アカデミアの世界で求められる考え方のイロハから説き起こし,CONSORTやSTROBEなど国際的な指針,倫理問題や著作権にも言及している。さらにエディター経験を生かし,図表やスライドの作り方から一文の長さに至るまで,ほぼ余すところなく記載されている。学会発表や論文執筆の初学者は,本書を(もちろん脚注でなく本文を)丁寧に読み込んで実践すれば,かなりの水準に達することが期待できる。すでにある程度の経験を持っている方々には,弱点補強のよい指南書となろう。

 人に科学的なメッセージを伝えるときは,まずは一定のお作法に従った方がよい。本書以前の問題であるが,日本人は論理的に語ることがあまり得意でないように評者は感じている。小学校の作文で「思ったとおり書きなさい」と言われたからだろうか。しかし,お作法に従うことによって論理に流れができ,メッセージが読者の頭にスーッと入っていく。その一つが論理の一塊をなす「パラグラフ」を重視した書き方(パラグラフ・ライティング)である。パラグラフの冒頭の一文でそのパラグラフの主題を示し(トピック・センテンス),パラグラフの末尾の一文でそのパラグラフを締めくくる(コンクルージョン・センテンス),という枠構造をとる。論文の緒言や考察ではこの書き方(というより考え方)は特に重要である。思ったとおり書いてよいというのは,その先の話である。

 本書に戻って……。著者は今や日本の疫学界の重鎮になっているが,本当は人なつこく親切な人である。その人柄が随所に出ていて,記述は実に懇切丁寧である。ノウハウを解説した本なのだが,世界に通じる科学コミュニケーションについて考えさせられる一冊でもある。

 なお,奥付に著者の近影が出ているが,著者が後ろ向きに写っている本に初めて出会った。彼は決してバックシャンではない。後ろ姿でモノを語れる稀有〈けう〉な人なのである。

※後ろ姿の美しい女性。特に,後ろ姿だけが美しい女性を俗にいう語。

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