大腸がん検診マニュアル

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大腸がん検診の概要・基礎知識から実施方法、問題点に至るまでを解説。重要事項については漏れなく、詳しい説明がされている。現場で携わる医師・技師双方にとって、知っておくべき情報・知識がコンパクトに整理されまとめられているので、検診従事者には手元に置き、日々の業務に役立ててもらいたいマニュアル。
編集 日本消化器がん検診学会 大腸がん検診精度管理委員会
発行 2013年04月判型:B5頁:96
ISBN 978-4-260-01776-3
定価 3,300円 (本体3,000円+税)
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発刊にあたって

 がん対策基本法に基づく第2次がん対策推進基本計画が厚生労働省から示され,これをもとにして各都道府県では,平成25年度を初年度とする都道府県がん対策推進計画の策定が進められています.折から,健康増進法に基づく健康増進計画,医療法に基づく医療計画も更改の時期を迎え,それぞれの計画の策定にあたっては,相互の計画の事項と調和をとることが求められ,都道府県として一本化された健康づくり計画が進められることになったことは喜ばしい限りです.これまでは,例えば「喫煙対策」のようにいずれの計画にも項目立てしている場合,策定時期や策定にあたった有識者の意見が異なるため具体的施策の中身や目標値などの記載が微妙に違うことがありましたが,今回からは「喫煙対策」はどの計画でも同一になったというわけです.
 この時期に,本学会の大腸がん検診精度管理委員会(委員長斉藤博先生)による「大腸がん検診マニュアル」が発刊されることになったのは,まさに時宜を得たといってよいと思います.1992年,大腸がん検診が老人保健法の保健事業に採用された際に「老人保健法による大腸がん検診マニュアル」が厚生省の監修で発刊されているので,同名の刊行物として本書は第2版にあたりますが,大腸がんの疫学と臨床から説き起こし,がん検診の原理や精度指標などの理解を深めたうえで,本題の実施方法と精度管理についてわかりやすく解説するなど,マニュアルというよりは完成度の高い「がん検診学」のテキストブックといってもよいほど変貌を遂げており,あえて第2版というクレジットをつけなかった理由がよくわかります.がん検診の精度管理については,平成20年に厚生労働省がん検診事業の評価に関する委員会報告書「今後の我が国におけるがん検診の在り方について」に基づいて「がん予防重点健康教育及びがん検診実施のための指針」として具体的な手法が示されています.この委員会には,本書の編者である斉藤博先生が委員として入っておられ,検診機関,都道府県,市町村に分けて精度管理の事業評価のためのチェックリストの作成にあたられています.その中で,便潜血検査の精度管理については「大腸がん検診マニュアル(1992)に記載された方法に準拠して行う」と記載されていますが,本書の発刊を機に1992は2013に書き直す必要があるのではないでしょうか.
 わが国の大腸がんの年齢調整死亡率は,男性では肺がん,胃がんに次いで第3位,女性では第1位ですが,1990年以降男女とも減少傾向にあります.地域がん登録データを用いた罹患率の全国推計では,明らかな減少が見られないことを考えると,死亡率の減少には予後の改善を促進する要因が寄与していることが示唆されます.その1つの要因として,本書でも記載があるように進行度の高い症例の治療成績が向上したことが挙げられますが,大腸がん検診による早期発見もその1つとして挙げられるかもしれません.「かもしれません」と推定形にしたのは,受診率が低いため寄与の程度が小さいと思われるからですが,本書を活用した正しい大腸がん検診の普及によって,がん対策推進基本計画で受診率の目標値として示された50%(当面40%)を達成し,それを「確信」に持っていきたいものです.
 最後になりましたが,本書を発刊するに当たり多大なご尽力をいただいた斎藤博先生を委員長とする大腸がん検診精度管理委員会の各位に深く感謝を表します.

 2013年4月
 一般社団法人 日本消化器がん検診学会
 理事長 深尾 彰

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I 大腸がんの疫学と臨床
 A 大腸がんの疫学
  1 死亡数・死亡率
  2 罹患数・罹患率
  3 生存率
 B 大腸がんの臨床
  1 大腸の区分
  2 大腸がんの発生,病理
   1)大腸がんの発生
   2)病理
  3 診断と臨床病期
   1)診断
   2)臨床病期(進行度)
  4 治療の進歩
   1)Stageごとの治療方針
   2)内視鏡治療
   3)外科治療
   4)化学療法
  5 予後
   1)Stage I
   2)Stage II
   3)Stage III
   4)Stage IV

II 大腸がん検診の基礎知識
 A がん検診の基本的考え方/原則と大腸がん検診
  1 対象,目的と原則-診断との違い
   1)目的
   2)対象
   3)検診と検査
   4)指標
   5)不利益
  2 有効であり,不利益が少ないがん検診の条件:自然史と検診法の関係
  3 がん死亡率の減少と不利益の最少化に必要な体制
 B わが国における大腸がん検診の位置づけと実施状況
  1 これまでの経緯
  2 わが国の大腸がん検診の位置づけ
  3 実施状況
 C 便潜血検査
  1 概要
  2 化学法と免疫法
  3 精度:感度,特異度
  4 便潜血検査による大腸がん患者の拾い上げ機序
  5 免疫法便潜血検査への影響因子
  6 便潜血検査のエビデンス
   1)有効性
   2)検診間隔
   3)対象年齢
   4)不利益

III 大腸がん検診の実施方法
 A 対象者および検診間隔
  1 対象者と検診実施の周知
   1)対象者
   2)検診実施の周知
  2 検診間隔
 B 集団検診と個別検診
  1 集団検診
  2 個別検診
  3 集団検診・個別検診の問題点
 C 便潜血検査の実施方法
  1 採便容器
   1)濾紙法
   2)スティック法
  2 採便方法
  3 保存方法
  4 採便回数
  5 検体の回収
  6 検体の測定と検査処理能
 D 精検法
 E 検査結果
  1 検査結果の判定
  2 必要な結果通知の内容
   1)「便潜血陰性」と区分されたもの
   2)「要精検」と区分されたもの
   3)「判定不能」と区分されたもの
  3 精検受診に関する指導
  4 精密検査の結果把握
  5 精検未受診者調査と精検受診勧奨

IV 大腸がん検診の実施体制-精度管理
 A がん検診精度管理の手法について
  1 現状と目標
  2 わが国のがん検診の精度管理体制の概要
  3 精度管理指標とその活用方法
   1)プロセス指標の意味と活用方法
   2)チェックリストの意味と活用方法
 B 検診機関における精度管理
  1 検診機関の役割
  2 検診機関が行うべき精度管理
  3 「事業評価のためのチェックリスト(検診機関用)」の活用
   1)受診者への説明
   2)検査の精度管理
   3)検体の取り扱い
   4)システムとしての精度管理
 C 市町村における精度管理
  1 市町村の役割
  2 市町村が行うべき精度管理
  3 「事業評価のためのチェックリスト(市町村用)」の活用
   1)検診対象者(受診勧奨について)
   2)検診方法,受診者の情報管理
   3)「要精検率の把握」「精検受診勧奨の有無の把握と受診勧奨」
    「精密検査結果の把握」
   4)受託実施機関の選択と仕様書の活用
  4 個人情報の取り扱い
  5 地元医師会との連携(個別検診)
 D 都道府県における精度管理
  1 都道府県の役割
  2 都道府県が行うべき精度管理
  3 「事業評価のためのチェックリスト(都道府県用)」の活用
 E 国における精度管理
 F 大腸がん検診実施体制上の問題点
  1 死亡率減少のためのがん検診のあり方とわが国の現状
  2 検診の質-精度管理の現状

V 新たな検査方法とその問題点
 A 全大腸内視鏡検査
 B CT colonography(CTC)
 C 便中がん遺伝子検査

文献
別添_がん予防重点健康教育及びがん検診実施のための指針(抜粋)
索引

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